プロローグ「いつかの記憶」
始めまして。
デル・アキトです。
上手く表現できているか心配ですが、是非読んでみてください。
―ありえるのか?
たった1日で街の、いや、国の英雄になってしまうなんて。
眼前にいるのは、この国にとって最悪の敵と言われている「エンド」
これといった特徴もなく、男性にしては長くてボサボサな黒髪。
身長は成人男性の平均身長くらいだろう。年齢は知らない。
そして、華奢な体型からは想像もできないほどの、パワー、もといフォースを内に秘めていて、国1つを壊滅出来るという。
その国の破壊の最初の標的となっているのが、僕が立っているこの国「アナスタシス」。
別にここは僕の国というわけではない。
ただ頼まれたから、この国を必死で守ろうとしているのだ。
守るべき場所なのか、守らなければいけないものなのかは、7歳の僕には分からない。
ただ、彼に「救って欲しい」と言われた。
だから僕は、僕のうちに秘めているフォースをありったけ右拳に集中させる。
「ウオオオオオォォォォォォォ!!!!」
ビリビリと地面が揺れる。
光は徐々に大きくなり、やがて小さく収束し、一定の形を保っている。
「これほどとは……。くっ。ならっ!!」
焦りの表情を浮かべるエンド。
それを良しとしないのか、エンドも僕と同じように右拳にフォースを集中させる。
そして僕とエンドは注ぎ込めるだけのフォースを込めた右拳を振りぬく。
互いに振りぬいた拳は、ぶつかり合い、激しい衝撃音が国中に響き渡る。
その衝撃は音だけではなく爆風も生み出し、爆風だけで近くにある建物を崩壊させた。
こう、建物が壊れているさまを見ると、まるで僕も国の崩壊に加担しているように思える。
だがこの破壊も「悪」だけのせいになるのだろう。
「正義」の破壊は不可抗力。
「悪」の破壊は「悪そのもの」なのだから。
この理不尽さも「正義」にとってはありがたいことなのだけれど。
勝敗はあっけなく、エンドだけが僕らの拳が衝突したところから50メートルほど離れている建物ににめり込んでいた。
エンドは拳だけでなく右腕が無残にも粉々となり、原型をとどめていない。
血はドバドバと溢れ出ていて、このままでは出血多量で死んでしまう。
国民にとってはそれで良いのだろう。それが彼らの求める結末。
だから僕も何も思わない。
そしてまだ少し意識のあるエンドの前にへとゆっくりと歩み寄る。
「く、来るな……」
エンドは力のない声で僕に言った。
だが、僕の足が止まることはない。
エンドの死が国のためというのだから僕はエンドが死ぬまで暴力を続けようと思う。
「正義」という名目で暴力を続けようと思う。
「これが、この国の人達の正義らしいよ。あなたの死が国を平和にするんだ。だから死んでもらいます」
「ククッ。ガキのくせに、立派なことだな」
「その笑い方。古いですよ。なんか使い古されている感じで好きじゃないです。まだ7年しか生きてないのですが。」
「王道……だろ?」
「そうですか?まあどうでもいいんですけど」
僕は再びフォースを右拳に集中させる。
前回の一撃でフォースを多量に使用したため、今回貯めることが出来たのは、自然回復した分だけ。それでも常人の100倍。達人と言われる人の3倍はあるらしい。
「最後に言い残す言葉は?」
僕はなんとなくエンドに問いてみた。傍から見ると、何だか僕が悪役みたいだ。
するとエンドは、かすかな笑みを浮かべ、何かを言う。
だがあまりにも小さな声だったため僕はその言葉を理解する事が出来なかった。
まあいいか。
「さようなら」
言葉とともに右拳を振り下ろした。
が、それは叶わなかった。
「ダメーーーーーーー!!!」
その言葉を放った女の子は僕に抱きつくように飛びつき、そして僕とその女の子は地面に倒れ込む。
突然の出来事に多少は困惑したが、少女が誰なのか直ぐに分かった。
背丈は僕と同じくらいで100cmくらい。だから年齢も恐らくそんなに変わらない。
けれどその割には顔立ちは整っていて、将来有望といえる。
ぱっちりな目に、碧眼。
セミロングヘアに髪色は少し暗めなレッドオレンジと言えば良いのだろうか。
服装は、全身に何の特徴もない白いローブを着飾っている。
白いローブを着飾っている時点で、ものすごい特徴的なのだけれど。
7歳にしては、一瞬で現状を飲み込むことに成功したが、次の瞬間。
僕、皐月來兎は目を覚ました。