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刃~やいば~  作者: 忌名 (いむな)
プロローグ
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プロローグ

~蒼~

暗闇の中、その部屋には一人の少女のみ立っていた。

うつむき、長い髪に隠れて顔は見えない。

その手には一振りの太刀。

小さな少女が持つには大きすぎる「それ」は淡い光を放っていた。

淡い光は闇夜の月光が如く、しかし、その蒼い太刀は今、赤く血塗られていた。

刃の先には今しがた永久の眠りについたモノがいた。

「モノ」。

それは数時間前まで共に笑い、様々な知識を少女に教えた師と呼ぶべき存在だった。

もはや開くことのないその眼はいつも自分をまっすぐ見抜いていた。

いや、さらにその先を見ていたというべきか、それに憧れ弟子になったのだ。

遠くから嗤い声が聞こえた。

もう、ここにいる理由はない。

顔を上げた少女は師の死体に背を向け歩き出した。

新たに手に入れた力と、名を持って…。


***


~黒~

森に囲まれ、周りに人の気配はない。

今しがた起きたことを思い出しながら彼女は嗤う。

妬み恨んだ者を殺し、後は消えるだけのはずだった。

なのに、それは彼女を切った。

闇に生き、闇こそが彼女の世界だった。

そこに光はない。有ってはならないのだ。

断ち切ったと思っていた。ようやく解放される。そう思ってた。

しかし、それは違った。思い違いも甚だしい。

自分のあまりの滑稽さに嗤いが止まらなかった。

森の中に響き渡る嗤い声。

壊れたような、泣いてるような。

傷だらけの彼女は去っていく…。


***


~紅~

当てもなくふらふらと街を彷徨い続ける小さな影。

有ったものをすべて捨て去った後も誇りだけは持ち続けた。

どんなことをしても、捨てたものは戻らない。

飢えで意識は朦朧とし、今まで無視してきた後悔が募ってきた。

誇りも捨て去ってしまおうか。

先ほどから自問自答している。

だからだろうか。

普段ならわかる後ろから近づく気配もきずかず、壁に寄り掛かった。

小さな影を覆うように後ろから大きな影が被る。

大きな影が去った後には何も残っていなかった…。


***


~白~

生まれた時から、常に幸福の中にいた。

なんでも望めば手に入るわけでも、世界の頂点に立ってるわけでもなかった。

だけど、人並みの優しさと温かさの中で生きてきた。

それが当然のことではない。

わかっていたのに…

目の前で、今まで生きていた場所が燃えていく。

いつからだろう、ここにいるのが当たり前になってきたのは。

いつからだろう、幸せなのが当然だと思い込んでいたのは。

いつからだろう、守られるのはいつものことで自分は守られるのだと安心していたのは。

もう、ここには何も無い。

当たり前の居場所も、必然の幸せも、自分を守るものも。

無くなってしまった。

呆然と炎を見上げる。

踵を返し、歩き出した者は既に守られる子どもでは無くなってていた…。


*** 


 もう終わっている世界。

 そこに希望はなく、生き残りは滑稽に踊る。

 圧倒的絶望の中、人は何を選び、何を求めるのか。

 終末の幕も閉じた世界で、何を望むのか。

 これは、そんな世界とそこに生きる人々と、彼女たちの生きた道のりをたどる御話。

 希望とはそこに有るモノではないのだ。

 この世界は新たなる世界に変わっていったのだから。


 大学生の初長編です。

 誤字、脱字、引用の誤解、矛盾点などありましたら、お知らせ下さい。

 二週間ごとの更新です。

 よろしくお願いします。

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