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ゆきどけ水
京のみやこにも
遅い春がやって来ました。
鴨川のせせらぎでは、
孤独な白鷺が
小魚か 沢蟹を
ついばむのが 見えたものです。
きらきら耀く 水面では
白い残雪を 押し退けて
漁師が 仕掛けから
川魚を取り込んでいた。
「お〜い」
河原の土手をたどると
漁師家から
若い娘が歩いて来る。
漁師がちらと振り返り
また、仕掛けに視線を戻した。
「行って来よるね。」
「おうよ。」
娘は頭に荷を乗せると
手慣れた様子で街に向った。
「花〜いらんかね〜」
是が大原娘であろうか。
街の方に向って、
その姿は米粒の様に
小さくなって行った。
頭の荷は
季節柄
水仙の切り花で有ったろう。
暫くすると反対方向から
何時もの様に、
一見、稚児のような顔の若者が
やって来た。
懐には一笛の技ものをしまい込んで居た。
人に言わせると
あれこそ
母者の形見
〝草刈り笛〟だそうな。
雅びた端正な作りの面で有るが、
時が時ならば、
飛ぶ鳥落とす程な
源義朝、
そして母 常盤御前の子
源 九郎判官 義経
だが此の頃は未だ稚児上がり、
名前を牛若丸。
と呼んだ。




