「七話目」ゆとなみターン☆彡
「うん、そうだよ」
あたしは頷くと、閉まっている校門に向かって走り、軽く飛び越える。
「ええ!?」
カイの驚く声が聞こえたが、気にしない。アスレチックとかハイテク(?)そうなものはこんな微妙な発展をしている街にはないのだけれど、色々なところを飛び越える遊びをしていたあたしは結構脚力には自信があるのだ。コツもだいぶと知っている。
「カイ早くー!」
実際、校門はカイの身長くらいだったので、脚力と腕力があれば飛び越えられる。
女の子でも小さい頃にヒーローとして活躍していた私ならいける! というか、遅刻し過ぎて慣れた。
「しょ、しょうがないなあ。ていうか、不法侵入にならない?」
「大丈夫大丈夫。誤魔化すから!」
カイは「えー」と文句を言いながらも「行くからどけてね」と忠告した。タッタッタと軽快な足音の後、カイの姿が見えた。そして、右手で校門を押して勢いをつけ、着地。ふわりと宙を舞うカイの金髪は太陽の光を受けて白銀に変化していた。
「おー、かっこいい……」
自分も同じことをしたのにも関わらずそう口から零してしまうと、カイはふわっとした笑みを浮かべた。
「ありがと」
そんな表情すらかっこよく思えてしまうのはカイがイケメンだからだろう。少しドキッとしてしまったのも、カイがイケメンだからだ。……多分。
「んー、どこ行きたい?」
放課後で、先生に見つからないところといったらあんまりない。
「そうだなあ……とりあえず屋上に行ってみたい! 屋上=日本のアニメ!」
知らない間にカイはアニオタになってしまったのだろうか。いや、きっとそんなことはない。
そんな残念なイケメンになっている筈がない。
「えー、あいてるかなあ……? じゃあ、こっち!」
「ん? そっちは靴箱じゃないよね?」
カイは校門から真っ直ぐ行ったところにある玄関を指差す。私が指差したのは右の草むらだ。
「そっちが靴箱だけど、そんな真正面から行ったらばれるに決まってるでしょ? だから裏ルートから行くの」
「う、裏ルートって……。ちょっとそそられる!!」
うわあ、煌いてるよ。目がきらきらしてる。ていうか、何そのガッツポーズ。ますますカイ、アニオタ説が浮上していくよ。
「行くよ! ちゃんとついてきてね!」
そう宣言してから、あたしは思いっきり地面を蹴った。そうそう、このぐんぐん加速していく感じが堪らないんだよねえ。
「ええっ!?」
案の上、後ろからは驚いた声が聞こえてくる。私は構わず、走るのをやめなかった。
だって見つかったらやばいからね! 早く入るに越したことはないでしょ!