「一話目」めんふくろうターン@
「ただいまー」
始業式を終えて華麗に帰ってきたあたし、四葉真琴は、靴を脱ぎながら「ん?」と首を傾げた。
見たことない靴が並んでる。それもいっぱい。母さんか父さんのかな? とは思ったけど、明らかに親の趣味じゃない靴ばっかりだ。そしてもちろん、あたしの趣味でもない。
お客さんがきてるのかな? そう思いながらあたしは家にあがった。洗面所で丁寧に手を洗い、うがいも忘れずきちんとする。うがい手洗いは大切だからねっ!
そうして手を拭いていると、二階から誰かが降りてくる音がした。軽い足音。何気なく顔をあげて鏡を見た時、あたしは固まった。
「ええと、こんにちは」
金髪、ブラウンの目、彫りの深い顔。そのわりには流暢な日本語。
見知らぬ外国人の少年が、鏡に映っている。ばっと振り返れば、背後にいた少年がにっこり笑った。
もしこのような事態に遭遇したら、みんなはどうする?
あたしは、迷わず叫ぶね!
「母さん! 父さん! なんかウチに知らない人がいるんだけどー!!」
★★
近所迷惑など一切考慮していない絶叫の後、あたしは母さんに捕まって、外国人の少年と一緒にリビングのソファに座らされた。お互い距離をとって、ソファの端っこに座っている。
不審者ではないようだが、この少年は一体何者だろう。
「真琴、この子はこれからこの家に住むのよ。ホームステイ。知ってる?」
「ほーむすてい?」
うーん。そんな言葉は脳内辞書には存在しないね! あたしの頭の弱さに、母さんが哀れむような視線を送ってきたけど気にしないよ!
「海外からやってきた留学生が住む家庭のことよ。彼はその留学生なの」
「へー。どこから来たの?」
「アメリカ。っていうか、真琴、あんたまだ気づかないの?」
「何が」
言葉を続けようとした母さんを、外国人の少年が止めた。そうしてあたしをじっと見つめて、戸惑った様子で言う。
「久しぶり、真琴。僕のこと、忘れちゃった?」
え? 知り合いだったっけ? でも友達に外国人なんて。
と、そこであたしは頭の中で何かが繋がったような気がした。たくさんの思い出がぐるぐると頭の中を駆け巡り、あたしはしばらく言葉が出てこなくなる。口をパクパクさせているあたしを見て、彼は言った。
「カイ・エドワーズ。相良海っていう名前の方が、馴染みがあるかな」
「……そう、だね」