狂った少女の正義と想い 「お前は誤った。私を・・・怒り狂わせた」
「もしもぉーし?
メイにゃん!元気だったぁ?」
「なんですか、その変な口調は。
貴女には恐ろしく似合わない口調ですよ」
「バッサリ切り捨てるねメイにゃん。
まぁいいや、早速本題に入ろうか」
「・・・。メイにゃんは止めてくれないんだ・・・」
「アハハハ!!やぁーだね!!
メイにゃん気に入ったもん!」
「あんた一体何歳・・・?」
「13」
「お嬢様と同年代!!?
あんたどっから見ても二十歳にしか見えないんだけど!?」
「そう見せてるだけだよ。
てか、もう本題に入りたいんだけど・・・」
「ごめん・・・。ついツッコミが止まらなくなった・・・」
「私色に染まったねぇ、メイにゃん・・・」
「う、うるさい!元はといえばアンタのせいでしょうが!!」
「ああもう、本題に入れないぃぃぃ!!
入らせろやぁぁぁ!!」
「関西弁!!?と、どうぞ本題に入ってください・・・」
「はぁ・・・。
メイにゃんの言うお嬢様ってさ・・・。
魂想 月希姫だよね?」
「な!!?なんで知ってるの!?
あんたはお嬢様と関わり合いを持っちゃいけないんだよ!?」
「落ち着いて落ち着いて・・・。
確かに関わり合いを持っちゃいけないのは分かってるけど、
このままじゃ月希姫、更なる手術が加えられて
私よりも最悪で超ひどい事になるよ?」
「・・・!そ、そんな・・・!」
「嫌でしょう?だからさ、手術が加えられる前に
月希姫救出作戦を決行して、あのクソ邪魔男を
嘲笑ってやろうよ!!」
「後のやつはアンタの願望だよね・・・?」
「うん!そうさ!」
「その願望に私を巻き込まないで・・・。
ていうか、なんでそんな話をわざわざ私にするの・・・?」
「それはね・・・。
ふふ・・・。メイにゃんに協力してほしいからさ?」
「・・・。は?そんな事したら私、
ご主人様にぶっ殺されるよ!!?」
「そうなる前にそのご主人様を逆に私が
ぶっ殺す」
「アンタ、マジで殺す人だから止めてよ・・。
私が裏で協力するんでしょ?だったら私、
共犯者じゃない!私、犯罪者にはなりたくないわ!」
「人は生きている事自体が罪。
よって、これ以上の罪を犯しても何ら変わらないでしょ?
問題ないって」
「アンタ頭イカれてる!!」
「イカレて結構。だから協力してよ・・・。私達、友達でしょう?」
「アンタ、重い・・・・!!超重いよ!
もう責任取れないわ・・・」
「・・・。月希姫を見捨てるんだ?
そっちのほうがよっぽど罪深いと思うよ?
「罪なき哀れな少女の手を振り払う事程罪深い事はない」って、
どっかの偉い人が言ってるよ?ねぇ?犯罪者になりたくないんでしょ?
ていうか、監禁されてる少女を警察に通報しない時点、もう犯罪者だよね?
そうでしょ?」
「あああもう!!!分かったわよ!!もう・・・。
今は業務中だから後で詳しい事を教えて!
具体的に私が何をすればいいかとか!!」
電話の奥でブツっ!と乱暴に切られる音がする。
あぁあ、メイにゃんを怒らしちゃったよ・・・。
まぁ、月希姫を救いたいと思う気持ちはあるから、
すぐに機嫌を直すでしょう。
と、まぁ、軽く説明した方がいいのかしら?
ええと・・・。
私は膨大なエネルギーをちょうどこないだ行った刑事の家から
感じたので慌てて行ってみれば、
月希姫達が殺し屋共に襲われてたのよね、驚くべき事が二つあった。
まず一つは、その現場に行ってみれば刑事の周りに炎の壁が現れてた事。
あれは、強力な守護法。万物を焼き尽くす炎を対象の周りに出現させる事で
対象に危害を加えるものを燃やして、対象を守り通す。
ただし、これには弱点がある。それは炎の壁を維持するのに
意識を集中させ続けなくてはいけない事。その為、自らの守りが
疎かになる。故に、対象を守れても自分は狙われる対象になり、
殺されてしまう。リスクが伴うという事・・・。
何よりも、あの炎の壁の膨大な防御力と殺傷力を実現させるには
高い実力がなければ不可能なのだ。
だから、初心者同然の月希姫が使えるのは、
ありえない事なのだ。いや、言い換えればそれだけ月希姫には
才能がある・・・。そういう事なのだろう・・・。
「そりゃ、そうだよね・・・。
二つの人生、二人分の宿命・・・。因果があるんだから・・・。
これも、私のせい・・・」
この力は才能や努力によって変わるが、
最も大きくその差を決めるのは、その人物の因果・・・。
どれだけ不幸な宿命が課せられているか、なのだ・・・。
よって、生まれてからずっと監禁されていた月希姫は
素質があると言っていい。いや、あの邪魔男が素質があるように
仕組んだのだ。邪魔男のせいで月希姫は苦しめられているのだ・・・。
でも・・・。それだけではあれほどの実力を発揮するのは
不可能。ならば何故それを実現させる事が出来たか?
・・・。もう、私の中ではその理由は判明している。
正真正銘、私のせいだ・・・。
「ごめん、月希姫、貴女は何が何でも救わなくてはならない。
責任を・・・。取らなきゃ、だもの・・・ね?」
と、いつの間にやら私はブツブツ独り言を呟いている事に
今更ながら気が付いた。
それに思考の路線も変わってるよ!
元に戻そう・・・・。
そして、もう一つ私が驚いた事は・・・。
「忠告したその翌日に襲撃されてる事!!
それじゃあ、向かい打つ準備出来ないじゃない!!
あんの邪魔男、超ウゼェェェェっ!!!
ただ殺すだけじゃ、足りないわね!!?
フフフ…、いいわ、世にもおぞましく、誰よりも
世界最大の苦痛を徹底的に与えてやんよ・・・。
そしてじっくり時間を掛けながら、その身を引き裂いて・・・・!!
フフ、アハハハハハハハ!!!!はぎあふtだうvちpじおお
あうyヴょおdjhうdbyvふ・・・。と、意識が飛んだわね・・・。
失礼・・・」
「おい、地味に怖いぞ・・・」
「刑事・・・。俺はもうコイツと一緒にいたくないんだが・・・。
怖すぎるだろ・・・。意識が飛ぶとか、独り言がやたら恐怖的とか、
突然、けたましく笑い出すとか!!」
「ああ、私もちょうど同じ事を思った・・・」
結局、月希姫をさらわれてしまった・・・。
けれど、その代わりに刑事と家庭教師君を私の家に匿っている。
とりあえず、月希姫の精神状態を安定させることにあたって、
この二人の安否が最も重要となる。
それゆえに私はこの二人を守らなければならない・・・。
「ごめんって!!私の悪い癖だから許してよ・・・。
でも・・・。あの邪魔男を殺すさまを考えるだけでもう・・・。
hぢあうはいあいふゃごいぇお!!!アハハハハハハハハ!!!」
「怖ェェぇ・・・。もうその邪魔男とやらの命はないな・・・」
最近よくある事だ、あの憎らしくて憎らしくて仕方の無いあの
邪魔男を殺すさまを考えると、意識が飛んで、
めちゃくちゃになっている・・・。それだけ私が邪魔男を
憎み、殺したくて仕方のない事を表している。
・・・。別にいいよね?どうせ私は殺し屋だし・・・。
殺人狂だし・・・。多重人格だし・・・。
「まぁ、そんな事よりも、二人共。
早速明日、月希姫の救出に向かうわよ?」
「!!急だな!?計画はちゃんとあるんだろうな!?」
「ちゃんとあるわよ、それに急がないと月希姫が危ないわ」
「月希姫・・・。だが報告書には期待はできないとあったが・・・」
「・・・。ねぇ、報告書を読んだの・・・?」
「?読んだが・・・」
「そりゃ特定されてもおかしくないじゃない!!」
「ええええ!!?」
なるほど、そういう事か、忠告した翌日に襲撃されたのは
いくらなんでも早すぎると思ったけど、
報告書をハッキングしたのなら、パソコンのGPS情報を
逆に相手にハッキングされて居場所を
特定されてしまったという訳か・・・。
「はぁ・・・。私は頼まれれば協力はすると言ったでしょう?
私に言えばいくらでも報告書は見せたのよ?全く・・・。
ていうか、ハッキングが出来るなんてハイスペックな能があるんだ!?」
「おい、それは俺達を見下し過ぎだ。いいから早く
計画を言え」
「なんか言葉の端々に怒りを感じるけど、まぁいいわ」
黒い髪の赤い瞳の不思議な容姿の家庭教師君には、
なんだか親近感が沸くので、許す。
(ラルーは命令口調がとても嫌いなので、そうされたら普通は
腹パン二回顔面キック一回をかます。例え相手が人間じゃなくても
容赦なくそうする。それがラルー。よって、今回の例は極めて珍しい)
「まず、今回はいち早く月希姫を救出しなければならないので、
念入りな準備は出来ない。故に戦闘は避けられないでしょう。
だけれども、なるべく戦闘は避けたいのよね・・・。
なので・・・。今作戦は月希姫監禁に内通している協力者が
必要。その内通者が人のいないルートを提示してくれるでしょう。
それで誰にも気づかれずに月希姫の元に行き、
月希姫と共に屋敷を脱出すれば作戦完了。けれどもここからが、
大事よ?」
作戦を刑事と家庭教師君に伝えた私は武器の調達をしていた。
これは私の武器ではない・・・。
「そうね・・・。銃だけでは色々とまずいから・・・。
素人でも扱える手頃な武器ってあるかしら?」
「やはり、ナイフでしょうね、お客さん。
あれ?でもお客さんは素人じゃないでしょう?」
「よーく考えれば分かるわ、他人にあげるのよ」
「まさか、表の人間にあげるつもりですか?」
「・・・。もう表でも裏でもないからね・・・。
問題はないはずよ?」
「左様ですか・・・」
私は武器を販売している表向きは修理工の店に来ていた。
別に行きつけではないが、何回か訪れた事があるので
私の名が知られてる。
「じゃ、そこの切れ味がいいやつと
投げナイフを八個頂戴」
そう言って私は札束をカウンターに置く。
通常の感覚からすれば武器の買い物は非常に高額だ。
だが、殺しの依頼の報酬だって高額だ。
それに加え私は殺人狂なので連続で殺しの依頼をこなさなければ、
足りない、殺戮衝動に駆られてしまう。その為私は
とにかくいっぱいお金を稼げているので、
札束をポンっと幾つも出してもそれほど問題はない。
「狂気の死神にナイフをプレゼントしてもらう人って、
一体何者なんでしょうね?若干、興味がありますね・・・」
狂気の死神・・・。それは私の二つ名だ。
裏の世界で売れる殺し屋になると、二つ名を付けられる。
そして、私も売れる殺し屋の為、二つ名が付けられた、それが
“狂気の死神”
誤解がないように言うが、これは私自ら名乗っているわけではない。
勝手に付けられた、勝手にそう呼ばれるようになったから、
そう名乗るようにしただけだからね?
「私と同類の友達よ・・・」
「同類・・・ですか」
私は武器を受け取り、裾の中に隠す。
見つかったら大変だからね・・・。
「それじゃ、また来るわ」
「毎度!」
挨拶をしてお店から出る。
人気のない道路。ポツポツと古ぼけたお店が立っているけど
商売繁盛してるとは思えない。
うん、せっかくだし、ちょっと散歩するか。
のんびり私はしばらく歩いていると、
いつの間にか木が覆い茂る公園に入っていた。
私はずっと気付いていた。
「ふふ、ここなら人気もないし、誰かに目撃される心配はないよね?
だからさ、コソコソ隠れてないで出て来なよ?
卑怯者共が・・・」
私はちゃんと聞こえるように大きな声で吐き捨てた。
すると、木の陰から13人もの人が出てくる。
ありゃ、以外。
こんなに集まってたなんて、
「はぁ・・・。ちょっと私、派手に暴れすぎたかな・・・?」
こういう輩はよくいる。
売れる殺し屋には二つ名が与えられる。けれど、
裏を返せば、売れなくては二つ名さえ与えられないという事だ。
なので、売れない殺し屋は名のある殺し屋を殺して、
名を売るのだ。それも、有名な殺し屋を殺せば実力が認められるので、
名を売るために有名な殺し屋を殺す。
「まぁ、都合がいいわ、ちょうど・・・。
殺したくなってたからねぇ・・・!!」
私は相手を睨みつけて、本音を漏らす。
殺戮中毒。
影から私はお気に入りの大鎌を握る。
すると、相手は動いた。
サイレンサーを付けた銃を私に向ける男が二人。
「遅いなぁぁぁ・・・!!」
私は大鎌を横に振りかざして、地面を蹴り上げる。
一瞬にして私は男の目の前に迫ると大鎌を横に薙ぎ払った。
綺麗に宙に浮く二人の男の首。鮮血が断面から滴る。
私の脚力なら、相手の目の前に一瞬で迫るくらい、簡単だ。
「2・・・」
ポツリ呟いて私はまた大鎌を振るう。
さっきの男の後ろに立っていた女を撥ねた。
アハッ、上半身と下半身を真っ二つにしちゃったよ?
「3」
地面に足が着くと私はすぐに後ろを振り返る。
私が殺してる間に他の10人が私の後ろに回り込んだからだ。
だが、今度は私が遅かったようだ。
サイレンサー付きの銃を私に向けて発砲した男が3人。
音のない弾丸の嵐。普通なら避ける事は出来ないだろう、けどね・・・。
「舐めないでよね・・・!!」
私はまた地面を蹴り上げた。
真っ直ぐ垂直に私は跳ぶ、軽く4メートルは飛んだだろう。
さすがに驚いた相手は口を開けたまま、私を見上げる。
「はぁ・・・。この程度で驚いてるんじゃ、
売れないわけだ・・・」
そして私は影から銃を取り出した。もちろんサイレンサー付きだ。
狙いを相手に定めて、引き金を引いた。
音のない私の弾丸を相手は受けた。私は連続して他の9人を撃った。
だが、私はカウントはしなかった。
何故なら、私はわざと急所を外したのだ。
よって、相手はまだ死んでない。ただ動けないだけだ。
「ふふ、痛い?そりゃ痛いよね?
解放されることのない痛みはとても痛いもんね?分かるよ・・・。
それは、誰よりも私が知ってることだからね・・・」
意味深く私はまた呟いて、地面に着地する。
右手に大鎌を、左手には銃を握った死神に見下ろされた、
哀れな思い上がりの人間共・・・。楽に殺してあげてもいいんだけど、
思い上がった罰を与えなきゃ気がすまない。
「私を殺せるなんて・・・。ホント、
思い上がり過ぎにも程があるわ・・・」
誰にも本当の意味で私を殺せない・・・。神でさえも、
私を殺せない。
痛みに苦しむ人間達をしばらく私は見下ろしていたが、
私は飽きたので、容赦なく大鎌を振り下ろした。
振り下ろす度に真っ赤な血しぶきが上がる。
血を身に受け、私はまた呟く。
「・・・。赤い・・・。真っ赤だぁぁ・・・!!」
ブツブツと私は狂気に満ちた呟きを繰り返して、
気が付けば私は真っ赤な血の池の真ん中に突っ立ていた。
ゴロゴロと首をなくした胴体と生首が転がっている。
「・・・。ヤッバ・・・・。また記憶が飛んでる・・・」
うん、残りの10人を殺している間の記憶が全くない。
中毒すぎて、稀に殺してる間の記憶がない事がある。
そして、この間私はとにかく敵味方問わずに首を撥ねるらしいのだ。
うん、記憶がないからあくまでも他人事のように言わざる得ない・・・。
「もしもし?狂気の死神だけど、○○公園に来てくれない?
また襲撃されたから返り討ちにしちゃった。
うん、いつもの如く派手にやっちゃった。
はい・・・。金は後でちゃんと振り込みます・・・。
・・・。ブラックリスト、ランク上げですか・・・。
はい・・・。猛反省中です・・・。
仕事にちゃんと専念します・・・」
掃除屋に電話をしてこの13体の死体の始末を依頼する。
そしたら、叱られた。
うん、叱られるよね、だって、こないだ一般市民を虐殺してしまったばかり
だもんね・・・。その上、私がブラックリストのランク上げされた事を
親切にもたまたま掃除屋さんと一緒にいた情報屋さんが教えてくれた。
ちなみにブラックリストとは、
殺し屋を逆に殺す者達のリストのことで、
優先的に殺すべき殺し屋の順位がこのリストには載せられている。
よって、順位が高いほど狙われるという事だ。
順位が上がる基準というのは、単純に名が有名になる事と、
一般市民を殺しすぎる事だ。
うん、いい事じゃないね・・・。狙われやすくなってしまうのは・・・。
まぁ、仕方がない。
「一般市民を殺してランクが上がるような事するくらいなら、
仕事に専念した方がいい。」
なんて、掃除屋さんに警告されちゃったからね・・・。
仕事に専念するようにします・・・。
私は今度こそ寄り道せずに家に帰った・・・。
「ラルー!・・・。また殺ったのか・・・」
家に帰って早々、嫌な顔をされた。
「刑事さんは、正義感が強いから逮捕が出来なくて
不満なのかもしれないけど、あからさまに嫌な顔をされると、
私、傷つくなぁ・・・」
「すまん、どうしても顔に出てしまう・・・。
でも、あからさまに返り血を拭ず放置するラルーも悪いと思う」
「・・・。そうね、私の方が悪かったわ・・・」
返り血を浴びた私の姿を見ると、刑事はいつも嫌な顔をする。
それにいつも私は傷つく。
「明日のためにも、早く寝なさい」
なので、傷ついた私は些細な反撃として、
命令口調で言う。
「そうだな・・・」
だが、素直に刑事は従った。
つまんないな・・・刑事さんよ・・・。
私は何か楽しい事を期待していたが、あっさり刑事さんは部屋に戻って
しまったために、退屈だ・・・。
「ラルー、早く返り血を取らないと大変だぞ?」
不意に背後から声をかけられる。
「・・・。カルム、手伝って」
「いや、俺が一人でやる。だからラルーは休んでいろ」
私は後ろを振り向く。
そこには思わず息を飲んでしまう程の美しい顔があった。
銀色に輝く髪はまるで寝癖のように跳ねている。
これは私の指示で、わざと跳ねさせている。だって、
その方が様になるから、現にとてもよく似合っている。
鎖骨まで伸びた長い髪を撫でるのが私はとても好きだ。
なんたって、撫でるとカルムはとても情けない顔をするから、
情けない顔、見たさに撫でるのが好きになった。
今にも吸い込まれそうな黄金の瞳はとても綺麗だ。
「銀色の髪に黄金の瞳、お前は贅沢づくしだなッ!?」
いつぞや、私はそうカルムに言った記憶がある。
信じられないかもしれないがこのカルムは吸血鬼だ。
この世の中には吸血鬼や、魔女、などなど、
様々なファンタジーな者達が多くいる。
だが、その多くは人間と違わぬ容姿、性格、言動のため、
すぐ隣にいても気付かない。
せいぜい思う事があれば、
「相変わらずイケメンだなぁ・・・」
「えええぇぇぇぇ!!?突然、何言ってんのラルー!!?
いや、嬉しくないってわけじゃないんだ、むしろ嬉しすぎるくらいだ、
だが!!ラルーはそういう事を言う人間じゃなかった・・・!!」
なんかめちゃくちゃ驚かれた、
なんだよ、人がせっかく褒めてやってるのに・・・。
吸血鬼や、魔女は美男美女である事が多い。
「ふふふ・・・。この私がラルーだと思ったか?カルム」
「・・・!?お、お前は・・・。何者だ・・・!?」
「・・・。我は・・・。さて、茶番は終いにして・・・。」
「途中で茶番を強制終了した!?せめて最後までやって!!
俺を騙すんだったら、ちゃんとやって・・・!!」
「え?やだ・・・。
カルムの為にわざわざそんな労力を費やしたくない・・・」
「何その言い方、傷付く・・・。しかも、妙に言い方が
マジっぽいから、尚更、傷付く・・・!」
「うん、私はカルムを傷つけたかったからわざと、言ったのよ」
「ラルーってドS!!?」
「誰がドSじゃ、ボケッッ!!」
私はカルムの腹を殴る。全力で。
カルム、ノーダメージ。
「吸血鬼って、ホント、腹ただしいわね・・・。
殴ってもダメージを喰らわないとか・・・」
「ラルー、悪意に満ち溢れすぎだろ・・・。
てか、早く血を取らないと取れなくなるぞ?」
「あ、そうだった。カルム、急ぐわよ!」
私は血が固まりかけてるのを見て、
風呂場に急ぐ。
「カルム、待て!!私がいいと言うまでここで待ってなさい!」
「俺は飼い犬!!?」
カルムを脱衣所の前に待機させて、
私は脱衣所に入り、すぐに服を脱ぎ始める。
脱いだ服はカゴに入れて、風呂場に入った。
「カルムいいわよ。覗かないでね?」
「それは変態に対していう言葉だろう?それを俺に言うなんて、
心外だよラルー・・・」
「ふ、それを私は狙ったのさ・・・」
「何その、なんか地味に格好良い言い方!!」
隣接してる脱衣所にカルムは入る。
まぁ、確かにカルムはそんな変態じみた行動はした事がないわね・・・。
・・・。たまには感謝した方がいいかしら?
「・・・」
いや、感謝はしない、
したところで何もないから・・・。
黙って私はシャワーを浴び始める。
髪に血がついてしまったので、血を落とす為にいつもより長めに
シャワーを浴びた。
「カルム?いる?」
「・・・」
私は脱衣所にカルムがいるか確認する。
返事はなかったので、いないという事だ。
なので風呂場の扉を開く。
誰もいない。新しい着替えがカゴの中に入っている。
「・・・。カルムって、とても気が利くから夫にしたら
幸せな家庭が築けそうね?」
あえて、私は呟いた。
そして目を閉じる。
ニ階の書斎で私の呟きを聞いて吹き出しているカルムの姿が
私にはよく見える。
何故、一階の脱衣所から二階の書斎のカルムの様子が見えるかというと、
俗に言う千里眼を私は持っているから、
そして、二階の書斎にいるカルムが一階の脱衣所にいる私の呟きを
どうして聞こえたかというと、
吸血鬼は人離れした怪力、能力、そして聴覚、嗅覚、視覚、味覚、触覚が
優れているのだ。なので、
一階の私の呟きもカルムにはハッキリ聞こえるのだ、
ヤバイ、カルムいじり、マジ、楽しいんだけど・・・!
こんなにいじってもいいのかイケメン吸血鬼を、
と思っているかもしれないけど、これはラルーの特権だ。
どういう事かと言うと、
カルムがラルーに従っているのはラルーと契約を交わしたからだ。
よって、いくらカルムをいじめても問題ない!上下関係だもの!
黙って私は服を着始める。
黒のフリフリのスカートに白いシャツに黒いベスト。
なんだかバーテンダーっぽい格好だ。それに私は黒いマントを羽織り
フードを深くかぶる。私はカルムを除いて、誰にもこの顔を晒したくない。
コンプレックスなのだ・・・。この容姿のおかげで私の人生は・・・。
何から何までめちゃくちゃだ・・・・!!
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
「アハッ・・・。邪魔男、絶対許さない、
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!
アハハハハッッ・・・!!にあsgふゅえsvfgふyぐw!」
「ラルー!」
「!?」
マッズ、怒りや憎しみ憎悪、殺意に支配されてた!思考まで!
気付けば私は自分の顔を両手で挟むように覆い、
狂気の言葉を吐き散らしてたようだ・・・。
そして、すぐに駆けつけてくれたのはカルムだった。
カルムには私の危険領域が分かっているから、止めに来たのだろう。
「・・・。ごめん、怒りに支配されてた・・・」
「もう、休めよ、あの博士の事、考えただけでそうなるんじゃ、
色々と精神的に疲れるだろう?」
「いいえ、こうしている間も月希姫はたった一人で戦っているのよ?
それなのに私だけ休んでいるわけにはいかないわ」
「・・・。無茶はできればして欲しくない、だから
俺も手伝う」
どうやら目を離した所で私が狂気に支配されたから、
もう目を離したくないようだ。
「分かったわ」
短く私は返事を返して、
カルムと今回の計画について話し合った。
気付けばもう朝になっていた。
さて、計画を決行する・・・!
「・・・。分かった。・・・。ええ、じゃ、合流場所で」
私はメイにゃんに計画を説明した。そして、
安全なルートと危険なルートを聞いて、合流場所を決め、
電話を切った。
今更説明するのは遅すぎでは?と思うかもしれないが、
これには理由がある。
敵にはメイにゃんが私に協力しているという事がバレてはいけない。
だが、計画を説明されれば、何かしら動揺したり、
挙動不審になってしまったり、いつもと様子が違ってしまったり、
それらの事で、捕まり尋問されこの計画を敵に話してしまうかも知れない。
そうなってはまずいので、ギリギリまでメイにゃんには
計画を伝えないようにしていたのだ。
「さて、二人共、大丈夫?」
「大丈夫だ」
「・・・」
刑事さんは仕事柄、こういう事は慣れているようだ。
だが・・・。家庭教師君が・・・。
「だ、大丈夫?家庭教師君。」
「だ、黙れ・・・・」
緊張のあまり、言葉まで震えている。
こういう時は、ジョークを言ったほうがいいのかしら?
「えと・・・。ミイラって、カラカラに乾燥しているイメージでしょう?
でも、実際は油とかを死体に染み込ませてからミイラにするから、
それほどカラカラじゃないのよ、
え?何でそんなことを知っているかって?それはね、
ピラミッドに入って、ミイラ実物を拝見したからよ!
ピラミッドの帰り際に何か視線を感じたけど気のせいだと思うわ・・・」
「・・・」
「・・・意図がわからない」
家庭教師君が正論を言い、刑事さんは冷めた目で私を睨む。
「ラルー!めっちゃ、面白い!うん、面白い・・・」
「ねえ、励ましているつもりみたいだけど、
それ、励ましになってないわよ?」
「・・・。ごめん、ラルー」
「謝るくらいなら、黙ってて」
「いつもより刺が増してるなぁ・・・」
車を運転しながらカルムはがっくりとする。
今、私たちは「魂想グループ」の屋敷に向かっている所だ。
「二人共、計画は覚えているかしら?
と、こんな単純作業、忘れるはずがないよね?」
「もちろん」
「この程度の事、忘れるやつがいるのか?」
家庭教師君はだいぶ落ち着いてきたようだ。
こんな毒を吐けるようなら・・・。
「ハハハ・・・・」
どうしよう・・・・。乾いた笑みしか漏らせない・・・・。
「到着したぞ」
車を止めてカルムは言う。
「そう、じゃ、二人共。10分後に出なさい」
私はそう言い残して車から降りる。
カルムと刑事、家庭教師君の3人は車に残る。
私は車のドアを閉じて、「魂想グループ」の屋敷を見上げる。
薄く日の光に照らされて、小奇麗な屋敷は上品な雰囲気を醸し出す。
朝に襲撃するのは、朝という時間帯だと派手にドンパチは出来ない。
故に、相手は本気で抵抗するわけにもいかない。
実に都合のいい時間帯だ。
立派な門の上を飛び越え、私は屋敷の裏口を目指す。
メイにゃんとの合流場所は裏口の台所。
そこなら、自分の管轄内だから誰にも気付かれないとメイにゃん自身が
指定した。
裏口を見つけて、ドアノブに手をかけ、開く。
鍵をあらかじめメイにゃんが開けてくれたようだ。
「時間通り・・・、ね」
そして、奥から声がする。
「私が今まで遅刻したこと、あるかしら?メイにゃん」
「そのメイにゃん、というのは止めてください。
普通にメイナでお願いします!」
「電話でも言ったけど、やぁーだね!!気に入ったから!」
「はぁ・・・全くもう・・・」
真っ黒な髪に白いメイドカチューシャを着け、
真っ黒な瞳の日本人のメイド長。
白いエプロンドレスに赤い長袖のワンピースを着ている。
「・・・。血がついてもいいの、その格好?」
「血がついても、替えがあります。問題はありません」
「ふーん・・・。はい、これ、ナイフ、アンド投げナイフ」
「え」
「使い方はね・・・」
「なんか恐ろしい無理難題を突き付けてきたよ!!?」
「大丈夫。簡単だから」
「いや、それはプロの殺し屋なら、の話でしょ!
私、接近戦とか無理!死ぬ!銃とかにしてって、言ったじゃん!」
「銃だと、弾がいつか必ず尽きるし、
素人が扱ったら、暴発とかしかねないし・・・」
「・・・。分かったわよ・・・」
「それでよろしい」
私は昨日買ったナイフをメイにゃんに渡す。
「じゃ、行こう」
「え、早いよ!もう少し、詳しく説明を・・・」
「自由にメイにゃんのやりたいようにやればいいよ、
それに時間がないし!」
「うぅ・・・」
私は渋るメイにゃんの手を引っ張って、台所から出る。
そして、メインホールを目指す。
「メイナさん、そちらの御方は誰です?」
途中、メイにゃんの知り合いに声をかけられるが、
私が問答無用にその首を撥ねる。
メイにゃんは黙って、知り合いの転がる首を見下ろす。
「メイにゃん、平気?」
「・・・。ここには、それほど深い関係の人はいないので、
別に平気です。ただ、本当に簡単に片手で人の首を跳ね飛ばせるんだな、
と思ってただけです」
「メイにゃん、冷静だね、意外」
本当に私は意外だと思う。
人は例え見知らぬ人でも、殺される様を見ればパニックになる。
なのに、メイにゃんはとても冷静だ。
「・・・ご主人様はこれまで、“裏切り者”を銃で撃ち殺して、
公開処刑をしてきました。だから、人が死ぬ様は見慣れています」
「・・・大丈夫だよ、そのご主人様、本気で今日
私が殺すから、メイにゃんはもう人が死ぬ姿なんて、
見なくていいんだよ。もう、そんな悲しい事、言わなくてもいいんだよ?」
「・・・!!」
そうか、こんな環境下にいたからか、
私はメイにゃんに優しく言う。私はメイにゃんは勇気があるいい人だと、
そう思う。下手したら“裏切り者”として殺されるかもなのに、
でも、メイにゃんはこのイカれた環境を終わらせる為に
私に協力してくれたんだ。だから、私はメイにゃんに、
言って欲しいと思っているだろう言葉を言った。せめてもの褒美だ。
すると、メイにゃんの瞳から、涙が溢れる。
「ほら、使いにゃ?」
私はハンカチをメイにゃんに渡す。
「・・・。ラルー、アンタ、本当は善人だね・・・?
だから、こんな優しい言葉をかけてくれるんだよね・・・?
私、犯罪者なのに・・・、なのに、優しいんだ・・・?」
「犯罪者だから何よ?私は数え切れない犯罪者を見てきた
好きで人を殺すやつ、脅されて仕方なく人を殺すやつ、
人を困らせたいから、物盗んだり、壊したりしてるやつ、
構ってほしいから、派手に暴れるやつ、
とにかくいぃーっぱい!!見てきたわ、そんな私の結論わね・・・。
“どんな犯罪者でも、心はあるし、正真正銘ずっと人間なんだ。
辛いと思うし、楽しいとも思う、そんな彼らを、差別して、
一方的に話さえ聞かずに、犯罪者、犯罪者言ってるやつも、
人間。では、一体どっちが悪?そんなの曖昧極まりない。
ならば、平等に救いはあってもいいんじゃない?”
だから、私は救える人は救って、
救えない人は死によって救う。それが、私のやり方よ?」
「・・・やっぱりイカれてるんだか、善人だか、
わからない・・・」
「アハハハハッッ!!まぁ、好き勝手やって、自由にやってる
だけ、なのが私の本当の所なんだけどね!」
メイにゃんは涙を拭いて私に返す。
「じゃ、今度こそ、行きましょ?」
「ええ」
私はメイにゃんの手を取り、
真っ直ぐ歩く。メイにゃんの為に、月希姫の為に、
二人共気に入ったから、私は二人を救う。
「ヤッホーー!!
テメーら、聞きな!!私は「最初の作品」
ラルーだ!!さぁ、絶望しな、私の大鎌に首を捧げな!!
君達は今日。死ぬッッ!!」
メインホールに到着して、私は力一杯叫ぶ。
パニックを引き起こすのが目当てだ。
そして・・・。
「私は今、メインホールにいる。
生きたいか!生きたいのなら、武器を手にメインホールに来なさい!!
私が正々堂々、正面から戦ってやる!私を殺せれば、君達の勝ちだ!!
10分、10分私はこのメインホールにとどまり、待ってやる。
その間に準備をしな!!ああ、それと、ドアというドアや
窓という窓には鍵をかけている。だから君達は逃れる事は出来ない!
さっさと覚悟を決めな!!10分を過ぎたら私が屋敷を徘徊して、
テメーらを探して殺すからねぇ・・・!!!」
あえて、私の居場所を教える。
そう、今回の計画。月希姫救出には、誰にも知られない事が重要。
だから、刑事さん、家庭教師君がこっそり月希姫を
連れ出す最中、誰かに出くわすのは避けたい。
よって、誰かが囮になり、人を一箇所に集め、相手をしなければいけない。
その囮役に、私は名乗りを上げた。
こういう殺戮はとっても得意だし、私の「最初の作品」
という名前はインパクトを与えるにはぴったりだ。
だから、私は刑事と家庭教師君に時間差の到着を指示した。
「ぜ、全員来ますか・・・?」
「絶対来るわ、気を常に張ってなさい」
「分かりました・・・」
緊張したメイにゃんが私に聞く。
それに私は確信の一言を返した。
何故、確信出来るか、それは・・・。
きっと、ここにいる人なら必ず、私の恐ろしさを知っているはず、
だから、戦わずに逃げようとするだろう。
なので、鍵がかかっている窓やドアを破壊して逃げようとするだろう。
でも、私はそれを許さない。
力を使って、窓やドア、など外に通じる物を全て破壊出来ないように、
強化した。例え、爆弾を使っても破壊は出来ない。
だから、ここにいる人間全員に残された選択肢はただ一つ・・・。
「彼らは戦うしかない・・・」
「・・・随分、意地悪な事をしますね・・・?」
「私はそういう事から、恐れられているんだよ」
「なるほど・・・。恐るべし、「最初の作品」ラルー」
「と、早速、来たわよぉ~?」
「え!?」
私は人の気配を感じ取り、メイにゃんに言う。
すると、ゾロゾロ人がメインホールに入ってくる・・・。
手にした武器はバラバラで、包丁、金属バット、銃、カッター・・・。
素人らしいセレクションだ。簡単だね。
「さ、殺戮を始めましょう。メイにゃん」
「は、はい!」
そして、私は大鎌を振り上げた・・・・。
~数分経過~・・・・
「はぁ・・・はぁ・・・!おえッ・・・」
疲れきったメイにゃんが肩で息をしながら、吐き気を堪える。
「大丈夫?」
私はメイにゃんの背中を撫でながら言う。
「元凶のアンタが言うな!!」
怒ったメイにゃんが私を指刺す。
「ごめん・・・」
なんでこんな事になっているかというと、
周りにいっぱい転がる死体を見ればわかる。
私はまた意識が曖昧になり、暴れたらしい、
メイにゃんは狙わなかったものの、死体の内蔵とか、
そういうの抉り出してたらしく、さすがに死体を見慣れている
メイにゃんでも、気持ち悪くなったという事です・・・。
ラルー、猛反省中です・・・・。
「だいぶ落ち着いたけど・・・私、よく生きていられたわ・・・」
「メイにゃん、才能あるんじゃない?殺し屋になったら?
人殺しのメイド!これ、人気出るんじゃない?いいと思うよ、
私が殺しのコツとか、そういうの教えるからさ」
「・・・後で考えることにするわ・・・」
メイにゃんは確かに、才能があると思う。
最初はどこを切ればいいか、分からず手間取ってたけど、
とても早いペースで、どこを切れば相手が死ぬかを理解し、
動きにキレが出始めたから・・・。
「最初の作品・・・これは奇遇だな、運命と言ってもいい・・・」
不意に背後から声が聞こえた。
この声は・・・!
「あら、確かに、運命的ね、だったら、付き合わない?」
「ほう、それはいい。では付き合おうではないか。ただし、
私に従ってもらうぞ。」
「それだったら、嫌だ。私は従うより従わすのが好みだからねッッ!!」
後ろに向かって大鎌を薙ぎ払う。
そこには顔を覆い隠す大きな白仮面をつけた黒髪の男性が立っていた。
首のすぐ横までに、大鎌の刃が迫っているのに、やたら冷静な男は
一瞬で大鎌の持ち手の部分を掴み、持ち上げた。
強制的に大鎌の軌道を止めたのだ。
私は空いている左手で、影から白い剣を取り出し、
また白仮面の男の首を狙う。
すると、男は大鎌ごと私をほおり投げる。
成す術のない私はそのまま大鎌を持ったままメイにゃんの方に、
飛ぶしかない。
「キャッ・・・!!」
短い悲鳴をあげてメイにゃんは私を避ける。
ちょっと、それはひどいんじゃ・・・?
そうして、私は、血と死体の海にダイブする羽目に・・・。
「・・・。血は別に問題ない・・・。でもね・・・。
自分が撥ねた生首と睨めっこするのは嫌だ!!」
怒った私は立ち上がる。
「そうか、可哀想に」
可哀想と言いながら
全然、可哀想とは思ってないみたいに言う。
この大変腹ただしい男は、イヲナ。
顔を覆い隠す白い赤い線が走る仮面を着け、
白い和風の着物を着ている。不審者感満載である。
でも、仮面を着けていても整った顔の線は見える。
絶対、仮面の下はイケメンである。
黒い髪は驚くことにも鎖骨に届く程長い髪、
寝癖のように跳ねている。
・・・カルムと同じ髪型なのだ。
でも、実を言うと、パクったのは私の方で、
この髪型は非常に好みなのだ。なので、カルムにこの髪型を指示した。
長い髪も、寝癖のように跳ねているのも・・・。
着物の振袖には黒い線が何本も交差して走っている、不思議なデザインだ。
これも私の好みだったりする・・・。
要するに、イヲナは大変腹ただしいと思っていても、
私の理想の男性なのだ!!だから、とても苦手な相手だ。
「しかし、最初の作品はやはり明らかなSだというのに
何故、否定するのだろうか、それが実に不思議だ」
「うるっさいなぁ!!
一体、今回は何の目的で現れたのかしら?見ての通り、
私は殺戮してるから、黙って帰って欲しいんだけど!!」
「今回の私の目的は月希姫の話を聞くことだ。
だが、この際だ、理由を問題の元凶に聞こうではないか」
「ふーん、私が元凶なのね、いいわ、質問に答えてあげるから、
聞くことを聞いたら黙って消えて」
「いいだろう、では私の質問に答えてもらおう。
何故、月希姫を見逃した?」
「それは、彼女が私が殺した人と同一人物だったからよ。
これでいいでしょう?消えなさい」
「・・・。なるほど、ではもう一つ、質問に答えてもらおう。
今回、お前はどうしてここで殺戮をしている?」
「月希姫を救出するためよ」
「なるほど、では、私はここでお前を見過ごすわけにはいかない
月希姫は大事な試験体だ」
「やはり、そうくると思ったわ。メイにゃん!」
「へ!?」
私は、大鎌を構えて、メイにゃんを呼ぶ。
「先に行ってて、私はこの「博士殿の助手」の相手をしてなければ
いけないから、貴女も巻き込まれたら危険だから」
「!!?分かりました!」
私は状況の悪さ加減を知らせるために、
あえて、イヲナとは呼ばずに「博士殿の助手」と表現した。
そして、状況を理解したメイにゃんは、慌てて
メインホールから外に出る。
力を解除し、鍵を開けたのでメイにゃんは外に出れる。
「あら、メイドを見逃すのね、イヲナ」
「無用な殺人は労力を無駄に費やすだけだ」
「・・・私とよく似た事を言うわね・・・。
超・・・・ムカつくッッ!!」
私は大鎌を振り上げる。
その瞬間、私の周りに私を囲むように銀色の丸い物体が4つ現れる。
すると、丸かった物体は刺々しい形に変化すると、
突然、刺々しい形の物体から刺々しい鎖が凄まじい速さで上に伸びる、
そして、影に白い剣をしまって私は左手でイヲナを指刺す。
鎖は標的のイヲナに向かって伸びる。4本の鎖は渦を描くように
空中を回りながらイヲナを囲む。
微動だにしないイヲナは、そのまま鎖の結界に閉じ込められる。
脱出不可能の鎖の結界に囚われた者は私の好きにできる。
影から今度は銃を取り出し、私はイヲナに向かって発砲した。
だが、イヲナはついに動いた。
目で捉える事ができないほどの速さで、弾丸を切った。
イヲナはいつの間にか白く輝く美しい剣を握っていた。
「・・・ふん」
私は銃を投げ捨てて、鎖に指示を送る。
イヲナを束縛せよと、
鎖はイヲナを囲んでその周りを回っていたが、
どんどん小さくなっていく、
イヲナからすれば、迫る壁とは桁が違うだろう。
この鎖には刃があるのだ、びっしりと・・・。
だから下手に触れる訳にはいかない、逃れる方法のない迫る刃の鎖の結界。
一度束縛されれば、身動き一つ出来ない。刃がより深く食い込み、
脱出が尚更不可能になる。
誰からも恐れられるその理由は、逃れる方法さえ与えず、確実に殺す。
絶望させ、徹底的に苦しめてから殺す事から・・・。
そして、ついにイヲナは鎖に束縛された。
刃が食い込み白い着物がイヲナの血で、赤く染まる。
「さて、その首、もらうわよ?」
私はそれだけ言うと、大鎌をイヲナの首に突き付ける。
「・・・警戒していないな」
「は?」
突然イヲナはそう言うと、激しい痛みが走った。
驚いて私は後ろに飛ぶ。
「ぐ・・・」
痛みに私は座り込む。
何が起きたか、それを理解するためにイヲナを見た。
「!?」
そして、私は理解した。
この刃の鎖の正体は、
世界でも最高峰の強度を誇る金属体をドロドロに溶かして、
液体状にした物だ。それを、私は力を使って、
刃の鎖の形に変化させ、操作している。
イヲナも同じ力を持っているのなら、
同じようにこの鎖を操作することが可能だ。
・・・。イヲナも私と同じ力を使えるのだ。
鎖を操作し、束縛されながら、私の腹を貫こうとしたのだ。
「・・・聞いてないよ・・・?」
「ああ、そうだろう。お前たちのシリーズは公式に売り出す予定だから、
細工を記した報告書が必要だ。
だが、“我々のシリーズ”は売り出す予定はない。
よって、報告書に記す必要はない」
「シリーズが異なるのね・・・」
「ああ、まぁ、違いはとても些細なものだ。
お前たちのシリーズの条件は、因果が多い、女である、そして・・・。
アルビノである・・・。だ。
我々のシリーズの条件は、因果が多く、男である、そして・・・。
アルビノであるが、とある研究の実験体にされ、髪が黒くなりながら、
瞳はそのまま、だ」
「・・・!!ふーん・・・。じゃ、私が最初に選ばれたのは
“娘”だから、というわけではないのね・・・?」
「そうだ。お前が選ばれたのは博士自身が指定したからだ」
「・・・ふーん、そう・・・
フフフ…アハハハハハハッッッ!!!!!」
「!?」
「憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い!
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!
許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない!
呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う!
壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す!」
あうふぃげうあgふぉ8gwfvたいtqwふげywgヴdそうげw8yふぃgwgbyヴぉ
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私は怒り狂った。狂気に支配されないように自分を制御していたが、
私は怒りに支配され、制御するのを止めた。
月希姫や、今も苦しんでいる私と同じ境遇の哀れな少女達の為にも、
今、目の前にいるこの「博士殿の助手」を殺さずにはいられなかった。
みんなみんな、あの邪魔男のせいで・・・。
メイにゃんも月希姫も、刑事も家庭教師君も、酷い目に合わせられている。
早く、全てを終わらせないと、いけない。
「イヲナ、お前は判断を誤った。私を・・・怒り狂わせた」
月希姫視点に戻ります。
散々、真実を先延ばしにしましたが、今度こそ、
真実が判明します。