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自由からまた束縛へ・・・ 「もう・・・終わりだ・・・」




私は目の前の絶望的な光景を目の当たりにして、

座り込んでいた。


真っ赤な炎に包まれる真っ赤な真っ赤な夜・・・。

崩れ落ちる城を見つめながら


私は絶望した。


恐怖した。


赤く揺らめく炎の中・・・。


「アっハハハ・・・!!!」


けたましく笑う、狂ったように笑いながら。

大鎌を振り回す・・・死神・・・。

       ラルーだ。


「何で・・・あの女は一体何故、我が国を破壊しているの・・・?」


私は呟いた。


「逃げなくてはならない、私の役割だ・・・!」


私の身体がいきなり宙を浮く。

私は男性に抱きかかえられる。

      救動さんだ・・・・。


「でも・・・!

私の守護騎士が・・・!」


「頼む!生きようとしてくれ!あいつは・・・・

役目を全うした・・・だから・・・」


「・・・!?」


私は目に涙を貯める。

崩れゆく城を見てみると、傷だらけで私達を見つめる、

人の姿が・・・

     お兄さんだ・・・。


嗚呼、だからなのかな?お兄さんの名前は

「守城 紅夜」


城を守り、紅色の夜に朽ちる。

私の大切な守護騎士・・・。


「アハハハ・・・!!

待ちなよ・・・お姫様・・・!!


炎の奥、狂った死神が凄まじい速さで私の元へ走る。


「な・・・!?」


男性は私を抱え、走り逃げようとした。


けれども、死神から逃れることなんて出来ない。

男性は結局死神に地面に叩きつけられる。

そして、死神は私の首を握り締め持ち上げる。


「う・・・がッ・・・!」


「大丈夫、すぐに死なせたげるから」


死神はより手に力を込める。

急速に私の意識は途切れていく、


私は「魂想 月希姫」


想いを魂に込め、今に生きるかつての月希姫。


かつて、死神に殺された哀れな月希姫。


その想いを、因果を、祈りを、宿命を、

全てを背負って私は今を生きる。











・・・・












私は思い出した事、

全てを家に到着してから、言った。


馬鹿みたいだけれども、私の前世はどこかの国の姫で、

ラルーこと死神に殺された。


そして、お兄さんはこの姫を守る守護騎士で、

城を守り、紅色の夜に死んだ。


「・・・突拍子のない話だ・・・」


「さすがに信じられん・・・」


「でも、ハッキリと思い出したんです・・・!

私の魂そのものに前世の私の想いが組み込まれていて・・・

だから、無意識にラルーを・・・

現に、予兆と思わしき夢も見たし・・・!」


「落ち着け 月希姫!」


「・・・」


救動さんが私の肩を掴み言う。


「ご、ごめんなさい・・・」


「い、いや、こちらこそ、すまん、

大声を上げてしまって・・・」


「・・・・」


「・・・・」


「おい」


「はい!?」


沈黙が流れ始めると、お兄さんが声を上げた。


「確かに、不思議と俺の中でも、

月希姫の言う通りなら、とてもしっくりくる。

だが、死神たるラルーが何故、お前を見逃そうとする?」


「それは・・・」


「解らない、そうだろう?

俺なりの推察があるんだが・・・聞いてくれ」


お兄さんは真剣な表情で私を見据えた。

私は首を縦に振る。


「・・・

 

 「研究」「邪魔男」「仲介人」「魂想 隠生」

「最初の作品」「関係者」「他の作品」「ラルーの目的」

「協力者」「報告書」

「邪魔男の研究に自らその身を差し出す、酔狂なイカレ人間」「力」・・・


ラルーは様々なヒント、手がかりを口にしていた

これらをつなぎ合わせてみれば・・・


「邪魔男の研究」「多くの関係者」「多くの作品」

「研究には協力者が必要・・・」

「研究に身を差し出すような人間は酔狂なイカレ人間」・・・


要するに、「邪魔男は何かを研究をしていて、

その研究には多くの関係者、協力者が必要・・・

そして、もうすでに多くの作品を作られており・・・

だが、その研究に身を差し出すような人間はイカレている」

ラルーの目的は恐らく・・・


この研究を止める事・・・その為なら殺しだっていとはない、

いや、殺さなくてはならない

だからラルーは死に物狂いで人を襲っている・・・

と、ここまでは推測できる・・・」


「パスワード形式か・・・考えたな・・・」


「まぁな、これで、はっきりした事が多くある」


「何だ?」


「・・・


「研究に身を差し出すような人間は酔狂なイカレ人間」


ラルーがこう言うという事は、

研究そのものもイカレているという事だ、

これから、もし、首を突っ込む気なら・・・

かなり危険だぞ?刑事」


「!?」


お兄さんは救動さんに警告した。


「わざわざ、ラルーはハッキングまでして報告書を確認したんだ、

それほど、止めなくてはならない研究という訳なら、

映画さながらの危ないヤツを連想した方が早い

さぁ、どうする?刑事?」


「・・・月希姫が、確実に何か利用されているのなら・・・

月希姫を救うと決めたんだ、無視する訳が無いだろう・・・?」


「・・・ふん、そうか」


素っ気なく返すお兄さん。


・・・大丈夫だよ、お兄さん

私は誰も死なせるつもりなんてないから、

絶対に守るから・・・。


・・・ピンポーン・・・


「ん?」


ピンポーン・・・


玄関のチャイムが鳴らされ。

救動さんは玄関に行く、そして扉を開けると、




ガチャ・・・



「はいはぁーい入れて・・・くれるよね?」


「!?」


扉を開けたその瞬間。

扉の向こうから、手が伸びて救動さんのこめかみに何かを押し付けた。


そして、はっきりと、黒いマントの姿が・・・。


「な・・・!

何をしに来たんだ・・・!」


「何も?

ただ・・・月希姫ちゃんに用があって・・・」


救動さんはゆっくりと後ずさる・・・。

その弾みで、私ははっきりとこの目に捉えた・・・。

ラルーが握っている黒い銃に・・・。


「銃を・・・下ろして・・・」


「ん?いいけど・・・色々と私、疑われてるみたいだから、

一応、警戒してるんだけど・・・」


「!!

大丈夫です・・・少なくとも、あなたみたいに

簡単に殺したりはしませんから・・・」


「ちょいちょいちょい!

確かに、よく殺すけど!ああもう!

分かったよ!銃下ろしゃいいんでしょ!?」


ヒステリックな声を上げると、ラルーは銃を下ろした。

なんかこの人の扱い方が分かってきた・・・。

彼女は家に上がろうとしたが、


「土足禁止」


救動さんに止められる。

彼女は靴を履いたまま家に上がろうとしたのだ。


「アメリカの癖がまだ残ってるよ・・・畜生」


立ったまま靴を脱ぎ始めるラルーさん。


駐車場の時は黒いハイヒールを履いていたのに、

今は大きめな黒いブーツを履いている。

(ブーツはストラップ付きで、彼女に良く似合ってた。)


ブーツから抜ける足は小さく、私は思わず、


「ブーツのサイズが合ってないんじゃ・・・」


「このブーツはね、「仕掛け」があるのよ、

だから大きく見えるけど、私の足にはちゃんと合ってるから、

大丈夫、放っておいて」


彼女はすぐ答えると、

ブーツを脱げ終えたラルーさんは

リビングに入り、部屋を見回し、

真っ直ぐソファに向かうと、座り込み、足を組む。


礼儀が悪い・・・・。


そして、駐車場の時は黒い靴下だったのに、

今は白と黒のしましまの靴下を履いている。

それ以外は駐車場の時とは変わらず、

黒いマントを羽織り、フードを深くかぶっているため、


顔はあまり良くは見えない。


「おい、一体どうやって私たちの家の場所を特定した?」


救動さんはとても厳しい口調でラルーさんに言う。


「単純よ、君達の車に発信機を付けさせてもらった

そうすれば、家の場所の特定は簡単でしょう?」


「・・・殺人未遂と違法発信機の使用

そして、我々の生活をお脅かした罪で逮捕する」


怒りのオーラを滲ませながら救動さんは手錠を取り出す。


「ちょ!最後のは法律にない罪だよね!?」


カチャリ・・・・


「ああああああ!!本当に手錠をはめんなよ!」


手錠を本当にかけられて慌てふためくラルーさん。


うん、自業自得・・・。

刑事さんの前で殺人宣言したから・・・。


「ああもう!えい!」


ブチっっ!!


「どういう力だよ!?」


彼女は両手にかけられた手錠の鎖を力ずくで、引きちぎる。


凄く・・・・トンデモナイ、力技・・・。


「ちょっとくらい月希姫と話したっていいじゃない!!」


彼女はそう言うと凄まじい速さで私の目前まで迫ると、

両手で私の顔を挟む


え?これじゃ・・・あの、怖い夢みたいじゃ・・・。


ゴンッッッ!!!


「痛ッっっ!!」


彼女は私に頭突きを一撃。


凄く・・・痛い・・・!!


「ほい、じゃ、私の用は済んだから帰る」


「はぁぁぁぁ!!?

あんた結局、何しに来たんだよ!?」


「月希姫に頭突き」


「ただそれだけ!?」


「すごく痛いんですけど・・・」


「月希姫、ほれ、氷。」


痛みを訴えると、お兄さんが氷入り袋を私に渡す。


「お前の目的は何だ!

答えろ!」


救動さんは核心を突く質問をする。


「・・・さぁ?何でしょうね?

私が君達に答える義務なんてないんだから、別にいいでしょう?」


「な・・・!!

なら・・・せめて、答えてくれ、

月希姫は・・・命を狙われているのか?」


「・・・私の推察通りなら・・・

月希姫は、命を狙われてはいない

けど・・・このままでは、確実に月希姫は・・・・

あの邪魔男の手に落ちるでしょうね」


「!?」


「んーでも、不公平だねー?

こっちは情報がいっぱいあるのに、君達には皆無なのは、

分かった、軽くヒントをそれぞれ一人ずつに上げるよ」


ラルーはリビングの入り口に立つと、

言い放つ。


「そこの家庭教師君、私はとても耳がいいから、

偶然、君達の会話を聞いたんだけど・・・。


パスワード形式だっけ?いい点を突いてるよ!

だから、そのパスワード形式とやらで、

どんどん突き進んでしまえ!


君なら・・・軽い、知恵による契約はきっと成立するでしょうから」


「知恵による契約・・・?」


「月希姫の話を聞いたでしょう?


本当は君の傷を癒したのは私で、

それは月希姫との契約で行ったって・・・まぁ・・・

悪魔との契約を連想した方が早いかも・・・?」


意地悪な笑みを浮かべて私達の会話の真似をする。

次にラルーさんは救動さんを見ると、


「ここで、一つアドバイス!

銃一つじゃ、月希姫、守りきれないよ?


あの邪魔男、殺し屋を何人か雇ったみたいだから・・・


じゃ、どうしろと?単純、単純!

包丁でもカッターナイフでも、

はたまたは私が剣とかをあげるとか!

ちゃんと頼めば私はいつだって、武器をあげるよ?」


「ふざけるなっっ!!」


「ふざけてなんかいないさ・・・

真正面でプロの殺し屋と銃一つで戦うなんて、

無茶、無謀、無理、不可能!

   むしろ、ふざけてんのは・・・

     お前だよな?」


「な・・・」


「ふふ・・・後・・・


邪魔男の研究は家庭教師君の推理通り、イカれた研究

だけど、問題は・・・一体何の研究か?だよ?

そして、どう、月希姫が関係してるか?だよ?いいね?」


そして・・・ラルーさんは私を見据えて言う・・・


「・・・・・・・・・・・


 忘れてはいけない・・・・・・・・


その決意が確かなら、今、お前にある力を・・・


・・・魂に込められた祈りを・・・


そして・・・苦しいと思うけど・・・現実の悪夢を・・・


         ごめん」


まるで、私の耳元で囁いているみたいに、

ラルーは優しく、ハッキリと、寂しげに、言った。

彼女はそれだけ言うと玄関の扉の向こうに消えた・・・。


 その決意が確かなら、今、お前にある力を・・・。


それは恐らく、

私が絶対にお兄さんと救動さんを守るという私の決意の事・・・。


 ・・・魂に込められた祈りを・・・。


それは・・・私の前世の事・・・。

一体、私は自らの魂に何の祈りを込めたの・・・?


 そして・・・苦しいと思うけど・・・現実の悪夢を・・・。


これが、わからない・・・。

現実の悪夢?そんなの心当たりはあまりない、

私が監禁されていた事とは思えない・・・現実の悪夢・・・。

私はまだ何かを忘れているという事・・・?


「・・・あの物言いは・・・

とりあえず俺達に協力はするって事だよな・・・?」


お兄さんは私達に確認をするように呟いた。


「はっきりと、頼めば私はいつだって・・・

って、言ったからな・・・」


本当に曖昧な立場にいるラルーさん。

でも、確実にあらゆる主導権を握っている。


「何かしらの研究は確かだという事も分かった。

だが・・・刑事に言った・・・


 “問題は・・・一体何の研究か?だよ?

そして、どう、月希姫が関係してるか?だよ?”


ちっとも・・・わからない・・・

様々なヒントを教えてくれるクセに、核心を突くヒントはくれない。

こればかりは自力で見つけろってか?全く・・・」


不機嫌そうにお兄さんはテーブルの椅子に座る。


「はぁ・・・明らかな犯罪者を目の当たりにして、

一度は手錠をかけたのに

引きちぎられたから、戦意喪失してしまうなんて・・・

私は刑事失格だ・・・」


「救動さん、しっかりしてください

一度、手錠をかけられただけでも凄いじゃないですか!

ただ、ラルーさんが破天荒、非常識のトンデモ人間だったのが

いけなかっただけですよ!」


「ていうか、何、あの女、個性的すぎる

なんか何も考えてなさそうだけど、

裏では様々な事を緻密に計算してるみたいで、

かなり苦手だ・・・」


お兄さんが頭を抱えて言った。


確かに、ラルーさんはかなり個性的だ。

もし、友達になればとにかくいっぱい楽しませてくれるだろうけど、

色々と危険すぎるし、あの人間性は強烈過ぎるから、

楽しむ前に疲れ切りそう・・・。


「ははは・・・確かに、頭のネジがただブッ飛んだだけじゃなくて、

ネジそのものが最初からないみたいだな・・・

その上、超がつく程の天才で、常に人の裏を突くし・・・」


力なく救動さんは笑う・・・。

どうやら、疲れきったそうです。


「天才で、殺人者で、異常者

超個性的で、正義だか、悪だか分からなくて、

魔法みたいな力を持って・・・何者だよアイツ


神に愛されまくってるんじゃなくて、

神に嫌われまくってるんじゃねーの?

はぁ・・・疲れた・・・」


お兄さんは愚痴のように言い、溜め息をつく。

神に嫌われている、天才異常者。

これだけでも十分称号になりそうだ。


「私も疲れました・・・

ここ最近は私にとって、ありえない事づくしです・・・」


私も疲れたのでソファに座る。

思い直せば、これらの事は全て、数日のうちに起きたことなのだ。


「なぁ・・・刑事」


「何だ?」


お兄さんは机に突っ伏したまま言う。


「パソコン、借りてもいいか?」


「別に・・・いいが、何をするんだ?

ラルーのせいで疲れきっているんだから休んでいたらどうだ?」


「いや・・・むしろ、あの女のせいで疲れきっている今だから

やっておきたいんだ」


「・・・?」


「ほら、超天才のご利益があるかもしれないし・・・」


「何を言っているんだ?」


「ははは・・・おかしくなっちまったな、俺」


救動さんは不可解そうな顔をするが、

パソコンを持ってきてテーブルの上に置くと、回線を繋ぐ。


救動さんのパソコンはノートパソコンといって、

持ち歩くことができる優れもの。


お兄さんは、自分の家から持ち込んだ物を詰め込んだリュックサックを

開けて中から何かの道具を取り出す。

何か・・・データチップ?みたいな物・・・。


「何をするつもりなんだ?」


救動さんはお兄さんに聞く。


「ラルーは一度、ハッキングで研究の報告書を確認した

ならば、同じくハッキングすれば確実に情報を得られるって事だろ?」


「!?

お前、そんな事が出来るのか!?」


「実を言うと俺は・・・機械系には強いんだ

大学卒業後はパソコン関係の仕事に就こうと思ってたし・・・」


「・・・違法行為だぞ・・・?」


「情報を得る為だ・・・

それに、相手は違法にイカれた研究をしてるんだぞ?

こうでもしないと、月希姫を守ろうにも守れない


・・・相手は殺し屋を雇っているなら・・・

月希姫は殺されるしかない


例え、刑事が銃構えていようが、

確かにラルーの言ったように、銃一つじゃ・・・

月希姫を守りきれない」


「く・・・!分かった・・・

いよいよ私も本当に刑事失格だ・・・

あとどれくらいで、出来そうだ?」


「簡単なら、すぐにわかるが・・・。

どうせ、面倒なロックでもかけてるんだろうから・・・

短くて2時間ほど・・・

長くて徹夜、だな」


お兄さんはそう言いながらパソコンに、

道具を繋ぎ始める。


お兄さんって、やっぱり奥の手を隠し持っていた。


「予想通り、面倒なロックを何重にもかけてやがる

こりゃ・・・徹夜確定か・・・


月希姫、刑事、聞いての通り、すぐには解らないから、

休んだらどうだ?もうこんな遅い時間になっているし・・・」


パソコンと向き合いながらお兄さんは言った。


「そうだな・・・」


救動さんは返事をすると、そのままリビングを退室する。

よほど疲れている様子。

ラルーさんのせいで・・・。


「お兄さん、頑張ってください・・!」


私はお兄さんに声をかける、


「言われずとも頑張るさ、」


お兄さんはカタカタとパソコンを打つのを止めずに、返事をする。

私は、パソコンに向き合うお兄さんをしばらく後ろから見守っていたが、

進展が全然ないので、自分の部屋に戻る。


ガチャ・・・


後ろで扉を閉めて私はベットに座る。

ベットの上にはラルーからもらった本が置いてあるので、

私は本を手に取る。


今日も力の練習をするつもりだ、

ラルーさんは私たちに殺し屋が仕向けられている事を、

親切にも教えてくれたから、

私はそれを無駄にしないよう強くならないといけない。


・・・救動さんは銃一つでは私達を守れないと指摘された。


でも、それはあくまでも救動さん一人の場合だ、

私も力を使って共闘すればいいのだ。


だからラルーさんは私に、


忘れてはいけない、と言った。


それは・・・私の力を忘れてはいけないと言っているんだ・・・。


情けない事にも私は駐車場の時、

頭が真っ白になって私は力の存在を忘れていたのだ。

きっと、ラルーさんはそれを指摘したんだと思う・・・。


救動さんは、勇気がある。

あったから、駐車場の時、強烈な雰囲気を醸し出していたラルーに

立ち向かえた。


それに対して、私は・・・勇気がない・・・。

私は、強烈な印象を植え付けられていた事もあると思うが、


ラルーを目の当たりにして恐怖のあまり動けなかった・・・。

だから、私は恐怖に打ち勝たねばならない。

そうしないと二人を守れない・・・。


その晩、私は必死に本に書いてあることを頭に叩き込んだ。

いくつかの力を実際に行った。

だが、使わなかった物もある。


なぜならば、本には解り易く力の解説が書かれており、

高い破壊力を持つ力などには、警告文が書かれる。

下手に使って、救動さんの家を破壊したくはない・・・。


それほど、これには強力な力があるという事だ。


・・・ふと、私は疑問を抱いた。

私はラルーさんと契約をしたから、

この強力な力を手にする事ができた。


ラルーさん自身にもこの強力な力があると言った。

ならば、ラルーさんはどうやってこの力を手にしたのだろう?

私と同様、力を持つ何者かと契約を交わした?


いや・・・ラルーさんは恐らく契約で力を手にしてはいない・・・。

直感的に何故か私には分かった。

もっと、別の理由がある・・・?


・・・解らない・・・。


「これ以上、考え込んでても、分かるはずがないから、

もう寝よう!」


私は独り言を大きな声で漏らして、

毛布に包まる。

すると、強烈な睡魔に襲われる。

おやすみなさい・・・・・・・。





 Zzzzzzz・・・・。







・・・。












真っ暗で何も見えない・・・。

気がつけば私は何も見えない世界に立っていた。

何故か、私には自覚する事ができた。


これは夢だ。


こういうのをお兄さんは「明晰夢」と言ってた記憶があります・・・。


「月希姫・・・」


ふと、背後から声が聞こえる。

もうこれで誰だかわかってしまった。


「ラルーさん・・・また夢に出てきて・・・

一体何の用ですか?」


「だいぶ慣れてきたようね?

こないだの恐怖の夢の感想はいかが?」


「怖かったです

怖すぎてます・・・」


「アハハハ・・・!!

やっぱり!尋常じゃないくらい怯えてたものね!?」


「笑いすぎですラルーさん、

ただ感想を聞くためにわざわざ私にこの夢を見せてるなら、

もう私を起こしてください・・・」


「ごめん、ごめん、ただ月希姫をからかいたくてさ、

本題を出すから・・・


月希姫、貴女は何よりも恐怖に支配されやすい特性があるみたいね?

だから、いい事を教えに来たの」


「いい事・・・?」


「ええ、いい事よ

怖くて怖くて仕方のない時には・・・。


 私が貴女に見せたあの怖い夢を思い出しなさい!」


「へ!?何故!?」


「今、目の前の恐怖と私が見せた恐怖

どっちが怖かったか見比べるのよ、


そうして、私が見せた恐怖の方が怖かったのなら、

「私は今よりももっと怖い目に遭っているんだ

それと比べればこの程度の恐怖、大丈夫・・・!」


って、唱えれば自然と平気になるわ?」


「な、なるほど・・・」


「ちゃんと覚えた?」


「はい・・・!

ラルーさん、ありがとう!」


「いえいえ、これしき

まぁ・・・気をつけてね、月希姫」


ラルーさんはどうやら私のために

わざわざ私の夢に出てくれているらしい、


すると、気がつけば私はベットの上で目覚めていた。


「質問される前に逃げた・・・」


なんだろう、ここまで来ると、

ラルーさんって、質問されるのが嫌いなのかな?


いや、救動さんの質問にはノリノリで答えてたような・・・。

それとも、核心を突かれないようにしてる?一体何故?


私は相変わらず答えの出ない疑問を浮かべながら

ベットから起き上がり、部屋を出る。


「もう朝・・・」


廊下には光が差し込んでいた。


夢の中では10分しか経過してないように感じたのに、

現実では何時間も経過していた。


夢と現実って興味深い・・・。


私はそんな事を思いながらリビングに入る。

リビングにはもうお兄さんと救動さんがいた。


「おはようございます

ハッキングは成功しましたか?」


私は二人に声をかける。

お兄さんはパソコンに向き合っていて、

救動さんは横から覗き込んでいた。


そして、私が声をかけると救動さんとお兄さんは、

ビクッ!っと身を震わせあからさまに驚いたリアクションをする。


「あ、脅かしてしまいました?

すみません・・・」


あれ?おかしい・・・。


そこで、私は異変に気がついた。

どこか、救動さんの顔が青ざめている気がする、

お兄さんはパソコンを閉じて私から目をそらして知らん顔。


なんで?なんで二人は固まっているの?


「・・・ど、どうかしたんですか・・・?」


「その・・・月希姫・・・」


救動さんが明らかに困惑した表情を浮かべる。


「・・・何か、私に関することで分かった事があるんですか?

それも・・・知ってはいけない情報のようですね?

・・・教えてください・・・」


また、胸がザワザワする・・・。

前にも何回も経験した

嫌な予感・・・。


でも、今日、ラルーさんがやってきて、

恐怖に打ち勝つ方法を教えてくれた。


きっと、この事の為に私に教えてくれたのだろう。

ならば、私は何が何でもこの情報を知らなくてはならない。

その為の恐怖に打ち勝つ方法なのだ。


けれども、救動さんもお兄さんも口を閉ざしたまま。


私は我慢できず救動さんの脇をすり抜け、

お兄さんからパソコンを奪い、ソファまで走り寄って。

パソコンを開けた。


「待て!!月希姫!!

やめろ・・・!!」


珍しくお兄さんが声を荒げる。


私はその声も無視してパソコンのロック画面を解除する。

そして、現れた、

恐らくこれがラルーさんが言っていた「報告書」


「・・・え・・・?

どういう・・・事・・・?

嘘・・・・ですよね・・・?ねぇ・・・?」


私は声を震わせながら呟いた。


あまりにも私には過酷すぎた、

残酷な真実を私はまだ受け止められない。

理解出来ない・・・。


確かにそこにはあった


私の・・・、いや、


      私達の真実が、そこには・・・・






バリーーーーン!!!



突然、窓が割れ、人が飛び込んできた。


バタン!!!


玄関の扉を蹴破った音もする。


そして、リビングに黒ずくめの人達が入ってくる。


数は5人だった。


動きがとても遅く感じられる。


黒ずくめの人達は銃を取り出し、真っ直ぐ救動さんに向けた。


バーーーン!!!


発砲した。


   救動さんを殺しにやってきた殺し屋・・・?


   お兄さんはまるで狙われる様子はない。


救動さんが死ぬ・・・?



「うぅぅ・・・

ううううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

そうはさせない!!させるものかぁ!!させないぃぃ・・・!!」


私は叫んだ、喉の奥が痛くなる程、叫んだ。

そして、私は使った。


昨日頑張って覚えた

力を・・・。


救動さんを取り囲むように赤い赤い炎の壁が現れた。

そして、救動さんの命を狙った銃弾は、

炎の壁に触れた途端、燃えて尽きた。


救動さんは驚きのあまり目を見開き私に振り返る。


私はその姿を最後に意識を閉ざした・・・。






















真っ白な真っ白な、

何も何もない、その世界。


私はすべてを理解した。


               嗚呼、また戻ってきてしまった。


どうしよう、お父さんが怖い・・・。


もう、終わりだ・・・

      ラルーさん・・・

                    助けて・・・





意地悪ですが、まだ真実にはたどり着けません。

でも、6話で全ての秘密がわかるのはいくらなんでも、

早すぎる・・・。ので、もう少し先にします。

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