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あの人の本格的な攻撃 「もしかして、君達って・・・」



あれ? ここはどこ?

気がつけば私は真っ白な何もない世界に立っていた。

なんだか、私が監禁されていた部屋みたいな世界・・・。

私はあのあと疲れきってベットの上で寝たんですよね?

じゃ、これは夢?


「・・・ヤッホー 元気だった?」


「!?」


不意に声がする。

この声は知っている。

私がついさっきまで話していた声・・・。


驚いて私は後ろを振り向く。

案の定、そこには一人の女の子が立っていた。

とても大人びいた少女。


黒いマントにフードを被っている。

マントの下は洒落た黒いドレスを着て

黒いドレスのスカートから伸びる綺麗な脚は長く黒い靴下を履いていて、

真っ黒なハイヒールを履いている。

全身、真っ黒。


「・・・元気も何も、さっきまで普通に話してましたよね?」


「まぁねぇ~」


フードを深く被っていてあまり顔が見えない・・・。

髪さえもフードの中に収めているようでちっとも見えない。


「・・・何の用ですか?」


「探りに来たのよ」


「はい?」


夢の中に現れるなんて、おかしいと思うが、

契約により、人の怪我を瞬時に癒しその意識を取り戻させたり、

頭の中に直接、話しかけたり、

本を何もない空中に出現させたり、


既に様々な不可解な現象を見せつけられているので、私はあまり驚かない。

でも、彼女の言動は何かおかしい・・・。


「やっぱり、貴女 おかしいわ」


「いや、契約したり夢の中に現れたりするあなたに言われても・・・。」


「そこがおかしいのよ、」


「は?」


「はぁ・・・解ってないわね

私がこういう事が出来ることくらい知ってるでしょう?

もう、とぼけるのはよして」


「意味がわからない・・・」


何かがおかしい。

彼女は何か誤解をしている・・・。


「フフフ…アハハハハ・・・!!

貴女、演技がとても上手い事! でもね、知っているのよ、

私は貴女の正体・・・イカれた本性をね・・・!」


「!?」


ザワザワと私の心の中に凄まじい恐怖を覚える。

何で、正体を知っているって、

この人に聞けば何か分かるかも知れないのに・・・

なんで・・・私は逃げたくて仕方がなくなっているの・・・!?


「さぁ・・・本当の悪夢は目覚めてからよ・・・!」


突然、少女は私のすぐ目の前まで迫ると、両手で私の顔を挟み、

顔を限りなく私に近づけて言う。


ち、近すぎる・・・!!


「い、嫌ぁ・・・! 来ないで・・・!!」





私はガバっと飛び起きる。


「はぁ・・・! はぁ・・・!

う・・・かはぁ・・・!」


息遣いがとても荒れていた。

ポロポロと汗が髪から滴り落ちる。

私は汗でびっしょりになっていた。


「何あれ・・・」


だいぶ落ち着いてきた私は呟いた。

あの夢、あまりにも鮮明すぎる。

怖い・・・この夢・・・

前に救動(きゅうどう)さんの車の中で見た夢によく似ている。


私はふらついた足取りで部屋を出る。

どうしよう、汗で私の服・・・。

白いワンピースが濡れてしまった・・・。


着替えは持ってないのに・・・。

廊下を歩き、リビングに入る。

救動(きゅうどう)さんが料理をテーブルに置いていた所だった。


「な!? 月希姫(るいひめ)、大丈夫か!!? 何があったんだ!?」


「す、すみません・・・」


「謝るな! ひどい痣だな・・・」


「え・・・?」


「気づいてなかったのか・・・!」


救動さんは私の姿を見てとても驚いた様子で、私を心配する・・・

それは、汗でびっしょりになった私の姿を見たからと思ったが、違うらしい。


救動さんは私を私の部屋に連れて行くと、鏡の前に立たせる。


「!?」


私は驚愕した。


私の顔・・・。


頬にくっきりと、

人の手の形をした痣が残っていた。


「一体何が・・・」


救動(きゅうどう)さんは、とても心配して私をリビングに連れて行くと

ココアをすぐに作って私の前に差し出す。


私はテーブルの椅子に座り、ココアを飲む。


その間に救動さんはタオルをお湯に浸して、

私の顔の汗を拭き取る。


「ごめんなさい・・・」


「・・・・心当たりがあるのか・・・」


出来れば、話したくはなかったが事態が急変した。

あの少女が最後に言ってた、


「さぁ・・・本当の悪夢は目覚めてからよ・・・!」


あの台詞が頭からずっと離れない。

あの少女が私に牙を向いたのだ。

今まで友好的に思えてたのが急に恐怖の対象になった事には、

戸惑いがあった。


でも・・・。


もし、

救動(きゅうどう)さんや、お兄さんに危害が加わるのなら、

そうは言ってられない・・・!


私は昨日の出来事をありのままに話した。

救動さんはさすがに“そんな馬鹿な”と言っていたが、

証拠に本を見せれば目の色を変えて、私の話を真剣に聞いた。

そして、夢の話を話した。


「・・・その女は、敵だと言ってたんだな?」


「・・・はい」


「そしてその痣は、女の手によって加えられたものなんだな?」


「・・・多分・・・」


救動(きゅうどう)さんは本を開いてパラパラと流し読む。


月希姫(るいひめ)・・・これで・・・その・・・力を使えたのか?」


「・・・・・・・はい・・・」


「今、私に見せられるか?」


私は首を縦に振り、

昨日、無事に成功した炎を指先に出す奴をする。


ボウッ・・・


指先に現れる炎を見て救動さんは目を見開く。


「信じて・・・くれますか・・・?」


「驚いたな・・・」


いつの間にかお兄さんがリビングの入り口に立っていた。


守城(しゅじょう)・・・月希姫(るいひめ)を信じるしかないだろうな・・・

幻覚かもしれないが、確かにこの火は熱を持っているし・・・

アチっ・・・それに確かにこの本にも書かれているしな・・・」


「・・・私は・・・どうすればいいんだろう・・・?」


「まずは、服を買う事から始めるしかないな」


「え!? でも、いつあの人が・・・!」


真剣に悩んでいるのに、お兄さんは変な提案をする。


「だがな・・・そんなびしょ濡れじゃ、抵抗出来ないだろ?

着替えもないし・・・」


お兄さんは意外と真面目に考えていた。


「そうだな・・・とりあえず、デパートで買いに行くか・・・

一応、念の為に銃を携帯しておけば問題はない」


救動(きゅうどう)さんは携帯で銃の所持許可を得ようと話す。


「救動さん・・・」


「とりあえず、デパートに行くんだから一応、これを着ていろ」


救動さんは携帯をパタンと閉じると、

白いシャツとジーンズを渡してくる。


「許可は取れたんですか?」


「取れた、銃を取りに出かけるから、少し待っていろ」


「はい・・・気をつけてください・・・」


「あぁ・・・」


救動(きゅうどう)さんは椅子にかけてあったコートを取ると、

裾に手を通す。


「理由はどうするんだ?」


「今は、お前を保護しているおかげであっさり許可が取れた。

理由はなくとも問題はない」


「そうか」


お兄さんは救動(きゅうどう)さんに銃を所持する仮の理由について、

問いかける。


魔法を使う女から私を守る為。という理由じゃ、銃は確実に

使えないから・・・。


「じゃ、行ってくる」


「い、いってらっしゃい」


救動(きゅうどう)さんはコートを着るとリビングの入り口のところで立ち止って言う。

そうして、家を出る。


私は救動さんに借りたシャツを着るため、

二階にある。洗面所に行き、着替える。


明らかにサイズが合わない。

小さな私が着ると、シャツもジーンズもなんとか着れるけど・・・。

裾が長すぎる・・・。


お兄さんに助けを求める為に一階に頑張って降りたところで、


バタンっ!


と倒れる。


またか・・・。


私が倒れた音に気づいたお兄さんはリビングから出て、

廊下で倒れている私を起こしてリビングまで、

私を抱えてくれた。


すみません・・・お兄さん・・・。


「裾が・・・・」


「大丈夫だ」


お兄さんは私をソファに座らせると、まず、

ジーンズの長い裾を器用に折りたたみ、私の脚の長さに合わせてくれた。

同じくシャツの裾も折りたたんでくれました。


「ありがとうございます・・・」


「感謝するなら、刑事にしろ

お前に住居を提供して、わざわざお前のために銃で守ろうとして、

服まで貸してくれるなんて、とんだお人好し刑事に巡り合えた幸運に」


「・・・だったら、それはお兄さんにも言える事ですよ・・・?」


「は!?」


救動(きゅうどう)さんが私を連れてこなければお兄さんは今もなお、

ベットの上でしたからね?」


「・・・ふん」


お兄さんはまたムッとした表情を浮かべる。


「お兄さん、せっかく救動さんが朝ごはんを作ってくれたんですから、

食べましょう?」


「・・・」


お兄さんは黙ったまま、テーブルの方に移動する。

私もそのあとを追って椅子に座り、

救動さんが置いていった朝ごはんを食べる。


白いごはんにお味噌汁。

焼き魚の、「和食」

救動さんの料理はいつも美味しい・・・。


「ごちそうさまでした」


ご飯を食べ終えたので私は手を合わせて言う。

お兄さんに教わった物だ。


「お粗末さまでした」


「!?」


いつの間に救動(きゅうどう)さんが帰ってきた。


「遅いぞ、刑事」


「すまない、手続きに手間取っていた

だが・・・」


救動(きゅうどう)さんは私を見ると、コートを広げてみせる。

腰にベルトを巻いている。


そのベルトに黒い物入れ?が付けられている。


「無事に銃を手に入れた

これでもう心配する必要はないぞ?」


「安心しきるのは早いだろ?」


「確かにそうだな、だが、銃があるというだけで、

引き下がる奴が多いからな、ある程度は安心してもいいんだ」


「ふーん・・・」


救動(きゅうどう)さんはどうやら無事、銃を確保したらしい。

これで安心らしい。

私は椅子から立ち上がる。


「デパートに行くんですよね?」


「もちろん」


救動(きゅうどう)さんはそういうと私を抱える。

お兄さんも一緒に行く・・・。








・・・・









私達は車に乗り、デパートに向かった。

デパートは病院並みに大きく

中に入ればたくさんの人の姿で溢れていた。


「・・・人間って、こんなにいるんですね・・・」


月希姫(るいひめ)、その物言いじゃ、自分は人間じゃないと言ってるようなもんだぞ、

マジでそうなんじゃないか心配になる」


「ごめんなさい・・・」


お兄さんは言う。

確かに、人にはない力を私は持っているから・・・。









・・・・









「つ、疲れた・・・」


「すまん、月希姫(るいひめ)・・・」


「お前、絶対おかしいだろ」


「返す言葉もありません・・・」


何が起きたかというと、

洋服を買うために洋服屋さんに行きました。

可愛い洋服がいっぱいで、いっぱい洋服を買いました。

その時に従業員さんが、


「お客様にはこちらもお似合いになられると思います」


と言って、私にとても可愛い靴を差し出しました。


(月希姫は長く歩けないので、救動(きゅうどう)さんに抱きかかえられていますが、

月希姫は歩く以前に靴を持っていないので、

常に素足で行動してます。)


そして、人生初、靴に挑戦。

ぴったりと私の足に合いました。


「か、可愛い・・・!」


私は初めての靴に嬉しさのあまり、

テンションアップ。


そして、歩こうとしたら・・・・・・・・・。



バタッ!!



・・・・。



は?



私はたったの一歩で倒れてしまった。



嘘・・・。



気を取り直して、私は立ち上がり今度こそはと、

歩こうとする。


バタッ!!


・・・・。


「ま、まだまだ!」


「やめろ月希姫(るいひめ)!! お前が靴を履くと長く歩けない性質が促進して、

大変なことになる事が分かったから!!」


「嫌です! この可愛い靴を履いて私は歩きたいんです!!」


バタッ!!


バタッ!!


バタっ!!!!



そうして、私は派手に倒れに倒れ、

疲れきったのです。


「私が靴をいらないと拒否ってれば・・・」


救動(きゅうどう)さんの責任ではありません・・・」


「その前にどうして靴を履くと悪化すんだよ、

絶対なんかの病気だろ」


「うぅ・・・」


幸い怪我だけはしてませんでした。

けれども、

これで、私は当分は靴を履くことが出来ない事が決定されました・・・。


可愛い靴だったのに・・・。


「まぁ、目的は果たせたし、帰るか?」


「そうだな」


「はい・・・」


私達は駐車場に向かいました。

人気はなく、多くの車が留められています。


そして、救動(きゅうどう)さんの車の前まで私達は来たので、

車に乗り込もうとします。


ですが・・・。

私の目には写ってしまいました。


横にゴロンと倒した三日月のように口を歪めて、

笑うあの女の姿が・・・。


「やぁ、その男性と青年は傷つけても問題ないよね?」


「!?

救動(きゅうどう)さん!! アイツです・・・!!」


はっきりと、少女は言い放った。


傷 つ け て も 問 題 な い よ ね ?


まずい・・・救動さんとお兄さんが危ない・・・!

私は救動さんにあの恐ろしい少女を指差しながら現れた事を伝える。



「な・・・!?」


救動(きゅうどう)さんは私が指さしてる方向に確かに女の姿を確認すると、

腰の物入れから銃を取り出して、


「手を上げろ!!」


大声を張り上げた。


「・・・・・・撃てば?」


「私はお前を撃ちたくはない」


「アンタ、そいつの味方?」


「そうだ」


「そう・・・ならば私の敵」


短く女は吐き捨てると、腕を横に伸ばす・・・。


    「「「な・・・・!!?」」」


救動(きゅうどう)さんもお兄さんも、そして私も、言葉を失った。

女の細く白い腕・・・その手には・・・・。

細い女の腕には似つかわしくない大振りの大鎌が握られていた。


夢で見た時のような幼さは感じられない・・・。

私と同年代くらいだと思っていた、その女は成人女性の見た目で

まるで、死神のような服装で現実感が存在していない・・・。


そう・・・この世の外から突然、現れたような・・・。


「いやぁ・・・私は驚いたよ、とっても。

だって、私がわざわざ殺すよ?って伝えたのに

呑気にこんなデパートで、買い物とは・・・


うん、やっぱりアンタおかしいわ」


「あ、 あなた程じゃ・・・ない・・・」


「アハハハハ!! 言うねぇぇ・・・!

面白いやぁぁ・・・!! フフフ…じゃ、ちょっと遊んであげるよ・・・」


そう言うと大鎌を振り上げた女はゆっくりと

私達に向かって歩みだす。


「・・・!! ま、待て・・・!!」


「待たない」


救動(きゅうどう)さんの制止さえも簡単に払いのける。


「クソッ・・・!」


救動(きゅうどう)さんは舌打ちをすると、


   パンっっ・・・!!!


!?


救動(きゅうどう)さんが・・・発砲した・・・・。


それに女は歩みを止めた。


弾丸は女には当たらなかった。


「・・・ねぇ、ふざけてんの?」


そして冷たい言葉を少女は放つ。


「威嚇射撃とか、大事な弾丸を無駄な事に使ってんじゃねーよ・・・


アンタは警察? だったらいい事、教えたげる


まず、私みたいな人間に刃を向けられたら・・・

考える余地を与えずに・・・

      殺しな」


女は怒った。

救動(きゅうどう)さんが、自分を撃たなかった事に、

そして、警察に人を殺すように促した。


この人・・・おかしい・・・!!


「そうだぁ・・・フフフ…目には目をって言うんじゃん?

だから、私も銃、使うわ」


女は笑う。


手を前に差し出すと、突然、手のひらに銃が現れる。


そして・・・銃口を・・・救動(きゅうどう)さんに向けた。


「く・・・!」


救動(きゅうどう)さんは銃を構えたまま、また舌打ちをする。


「あぁぁ、そうそう

一つ聞いてもいいかしら?」


「・・・なんだ」


救動(きゅうどう)さんが答える。


「あんた等と邪魔男の仲介人?

魂想(こんそう) 隠生(いんせい)」だっけ?

アイツ、どこにいるか知らなぁい?」


「仲介人・・・? 何の話だ・・・!?」


「だぁかぁらぁ! あらかじめ伝えられてたはずだよね!?

“最初の作品が関係者も殺そうとしているから、一応、気をつけたし

特に他の作品、関係者が狙われている”って、だったら、

私の目的は知ってるよね!?」


やっぱり、この女は何か誤解をしている・・・。


「あの・・・! 誤解をしているんじゃ・・・!」


私は誤解を解こうと声を上げる。

もしかすれば見逃してもらえるかもしれない。


月希姫(るいひめ)! 危険だ!」


「私は大丈夫です・・・!」


救動(きゅうどう)さんは私を制止しようと叫ぶ。


「誤解ぃ!? なんでそうなるの! 私の調べにはぬかりはないもの!

間違いなくあんた等は邪魔男の協力者だって、

ハッキングした報告書にはそう書いてあったわ!!」


「協力・・・? 

私、何かに協力したことなんて・・・ない・・・」


「え、アンタは邪魔男の研究に自らその身を差し出す、

酔狂なイカレ人間じゃなかったの!?」


「私は最初から酔狂なイカレ人間として認識されていたんですか・・・」


「いや・・・間違いなんてないわ! 現に、貴女は力を持っている!!」


やはり、確実にこの女は誤解をしている。


でも、ハッキングという不穏な言葉は無視して、

彼女が確認した何かの報告書には、

私達は何かの協力者になっているらしい・・・。


どういう事・・・?


「おい! 月希姫(るいひめ)、どうなっているんだ!」


お兄さんは言った。

うん、いい質問。


「解りません


彼女は誤解しているみたいです!

でも、彼女なりの確実な根拠が幾つもあるみたいだし・・・。

救動(きゅうどう)さん、銃を下ろしてください・・・。」


「はぁぁ!? アイツはその気だぞ!?」


「大丈夫です!! 私がどうにかします!!」


「・・・出来るのか・・・」


「出来ます・・・!」


「………………分かった、月希姫(るいひめ)を・・・

信じよう・・・」


そう言って、救動さんは銃を下ろした。


「ちょ、アンタ、何、銃を下ろしてんの!?」


「私の話を聞いてください!」


「!?」


「私達はあなたと戦う気なんてありません

私は、あなたと話し合いをしたいんです!!」


「意味がわからないわ! 私と話したいって!」


「お互い、情報を整理しましょう・・・

戦うのは、そのあとでもいいでしょう・・・?」


「・・・意味がまるで理解出来ないけど・・・

貴女なりの事情があるって事?」


「はい」


「・・・ああ、そう、分かった

一旦、貴女の話・・・聞いたげる


でも、そのあとは戦う、いいわね?

だから、そこの警察も今度こそは本気で殺しに掛かりなさい!」


「ありがとうございます・・・!」


話はちゃんと聞いてくれるみたいだ、良かった・・・。


私は今までの事を話した。


自分は今までお父さんによって監禁されていて

つい昨日、救動(きゅうどう)さんの手によって、初めて外に出た事。


お兄さんは今まで部屋から出れない私のために様々な事を

教えてくれた「家庭教師」だった。

けれど、突然、襲われ、意識不明の重体になった事。

全てを、


「・・・ねぇ、家庭教師君」


「その呼び方は気に食わん、」


「まぁ、いいじゃないの、それで、聞いてもいいかしら?

貴方、一体いつから月希姫の家庭教師をしているのかしら?」


え? 何を聞いているの?

それは、私がとても小さな時から・・・。


「一年前からだ」


・・・・?


「え・・・!? たったの一年前!?

何年もずっとじゃなくて!?」


「・・・?

月希姫(るいひめ)、何を言っているんだ・・・

一年前からだろう・・・」


矛盾が生じた。


「じゃ、もう一つ質問、家庭教師君

君は大学卒業して、家庭教師になったんだよね?

じゃあさ・・・大学の前・・・

高校時代とか、覚えてる?」


「何を聞いて・・・


な・・・、どういう事だ・・・?」


最初は意味がわからないといった表情をしていたが、

次第にお兄さんは驚愕の表情に変わる。


「なんで・・・なんで、思い出せないんだ・・・・!?」


そして、ありえない事を言い放った。


な ん で 、 思 い 出 せ な い ん だ


え? どういう・・・?


「・・・まさか、とは思ったんだけど、ドンピシャだね・・・

月希姫じゃ、変わり映えのしない白い部屋の中に監禁されていたから、

記憶の矛盾に気づくのは難しいと思った


でも、家庭教師君は月希姫と違って、

普通に外の世界で生活をしてたんだもの、

きっと聞いてみれば気づくと思った

多分、月希姫と家庭教師君は・・・


        記憶喪失なんだと思うんだよねぇ・・・」


記憶喪失・・・?

そんなまさか、そんな事、わざわざ誰が・・・?


「ふ、ふふふ・・・アハハハハッ、

あぁぁはハハハ!!! 


君たち、つくづく面白いねぇ!?」


「!?」


そして、女は突然、狂ったように笑い出す。

あれ・・・? これ、夢のまんまじゃない・・・。


      ブツリ・・・・・・。


ここで私の記憶と意識は途絶えました。










・・・・・










「かはッッ・・・・」


いつの間にか私の前に立っていた女は、

力なく血を吐いた。


その血は私の顔にかかる。



   え・・・?



恐る恐る私は自分の手を見た。

私が持っているはずのない鋭いナイフが・・・・。





  少 女 に 深 々 と 突 き 刺 さ っ て い た 。





「ひッッ・・・!! なん、で!?」


私は驚いて手をナイフから離す。

私の手には真っ赤な血がとても綺麗な鮮血がついていた。


そのままゆっくりと、少女は倒れこむ。


「ご、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・!!!!!」


私は倒れた少女の元に駆け寄り必死に謝罪の言葉を並べた。

これは明らかに私がしたことなのだ・・・。


「だ、いじょ、ぶ・・・。貴女は・・・

何、も、悪く、な、い・・・

悪、いのは、あの、クソジジイ・・・」


途切れとぎれに女は言う。

私は悪くないと・・・。


月希姫(るいひめ)・・・!?」


救動さんが顔を真っ青にして、ハンカチで女の血を止める。


「ごめ、んなさい・・・」


私は涙を流して謝罪をする。

やっと、幸せになれたのに、それを自分の手で壊してしまった。

私はなんて馬鹿なんだろう・・・。

 

グイッ・・・。


突然、私の手を引かれ、無理やりその場に座らせられる。

女がそうしたのだ。


「フフフ…、そういえば・・・私、

名乗、って、なかった、ね・・・


わた、しは・・・ラルー・・・


貴女は、自分を、責めすぎている・・・よ?

ほら・・・見て、ごらん・・・」


女は力なく自己紹介をすると、

無理やり私の髪を引っ張って、自分の方へ私を寄せた。


すると女・・・ラルーは自分で、深々と刺さっていたナイフを引き抜く。

「グ・・・」

痛みに声を漏らすラルー、


「よせ、血が止まらなくなるぞ!?」


救動さんはラルーを制止しようと言う。


「馬鹿・・・ね、

わた、し、魔法、使える、のよ・・・?

だ、から・・・」


え・・・。


ラルーは自分の傷口に手を当てると、

傷口が次第に閉じていく・・・。


凄い・・・。


「ゴホッ!」


血をまた吐くと、平然そうに起き上がる。


「嘘・・・」


「今更何よ・・・」


「ごめんなさいぃ・・・!」


「泣かなくたっていいわよ

もう、貴女は本当に何も悪くなんてないわ、」


「でも・・・!」


「・・・刑事さん?」


「なんだ・・・?」


「傷は自分で治した

だから月希姫(るいひめ)を見逃してあげて?」


「・・・っ・・・!?」


「今のは確かに月希姫(るいひめ)は悪くはなかったわ、

もう少し、こちらで調べないといけない事が出来たから、

それが分かった時まで待ってくれないかしら?


だから、メアドを交換しましょう? それならいいでしょ?」


「・・・そこまで言うなら・・・」


「ありがとう」


被害者が加害者を必死にかばう不思議な光景が出来上がる。


ラルーさんって、とても優しいんだ・・・。


その間、ラルーさんはピンクの携帯を取り出して、

救動さんの携帯と赤外線通信をする。


「じゃ、ちょっと、行かなくちゃいけないから、

じゃあね? 月希姫(るいひめ)


「あ・・・」


最後に優しく私の頭を撫でると走り去ってしまった・・・。

とても優しくて暖かい手だった・・・。


「・・・」


「・・・」


「・・・」


沈黙が流れる・・・。


「教えてください、一体、何が起きたんですか・・・?」


私は沈黙を破って、聞いた。


全く記憶にない、

ラルーさんをナイフで刺した事・・・。


「覚えていないのか・・・?」


「・・・はい・・・」


救動さんは、悲しみを堪えた表情をする。

ごめんなさい・・・・。


「突然だった・・・」


お兄さんが後ろから、答えた。


「ラルーが笑いながら俺達の事を、面白いと笑った時・・・


お前は、目を見開いてラルーを見ると、突然、


“来ないで、私の大切なものを壊させない”


そう言うと、いつの間にナイフを取り出して・・・

ラルーを真っ直ぐ迷いなく、刺した


“紅色の夜の二の舞にはさせない この・・・化け物・・・!”


そうブツブツ呟くと、

ラルーが、


“紅色の夜ですって・・・?

なるほど・・・・大丈夫・・・よ、私は明白に誤解していたわ・・・

だから・・・目を覚まして月希姫(るいひめ)・・・”


そう言ったら、お前は自分のナイフを見て・・・

もう、そこらへんでは、意識が戻ったんだろう・・・」


「・・・喋っていたんですか・・・」


「はっきりとな」


「また、紅色の夜・・・」


「また?」


「前にも、いつの間にか私は紅色の夜って心の中で呟いていたんです

全く心当たりなんてありません・・・」


「・・・」


丁寧にお兄さんは私に説明してくれました。

紅色の夜って・・・一体・・・何・・・?


「本当に・・・お前は意識がなかったのか?」


救動(きゅうどう)さんは私に問いかける。


「・・・確かに意識は途絶えました・・・

私が訳のわからない理由で、いきなりラルーさんを突き刺すなんて・・・

・・・・・・・・


    あれ? 紅 色 の 夜 ・ ・ ・ ?」


「ど、どうしたッ! 月希姫(るいひめ)!?」


私は自分の腕を抱いて下をうつむく。


「・・・あぁぁぁ・・・・・

嫌ぁぁぁぁ・・・・!


痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!」


月希姫(るいひめ)・・・!?」


お兄さんと救動(きゅうどう)さんが私の前に来ると、

必死に私に呼びかける。


痛い・・・痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!

頭がとても痛い・・・!!


  


「あああぁ・・・・わた、し、思い出した・・・

全部・・・何もかも・・・」


「「!?」」



私はラルーさんのおかげで自分は記憶喪失だと気付けた。

そして、またラルーさんのおかげで全部・・・。

思い出せました・・・。

やっぱり・・・。 





          ラルーさんは私達の敵だ。




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