表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/13

ありえない出来事  「始まり・・・だよ?」


「ん? なんか言ったか?」


救動(きゅうどう)さんが私の呟きを聞き直す。


「・・・! う、ううん、なんでもない・・・」


「そうか?」



なんだろう、この事には突然、触れてはならない気がして

なかった事にする。

そうしてる間も救動さんは病院に入っていくのでした・・・。







・・・・・









私は検査の為に色々、医者さんに調べられたが、

なにせ、初めての病院なので、辺りをずっとキョロキョロしてしまい。

医者の話を聞き逃したり・・・。

普通より検査の時間がかかったそうな・・・。


まぁ、何はともあれ検査結果はすぐに出ました。


魂想(こんそう) 月希姫(るいひめ)さんには特に異常はありませんね、

むしろ、健康そのもので逆に羨ましいぐらいでしたよ」


その結果には何故か救動さんは驚いていました。


なぜならば、長期間監禁されてきた子供のほとんどが

健康失調になる事が多く、

最悪、何か障害を抱える事になる場合があるのに、

全くの健康なのは、とても珍しいケースらしい。


「そもそも、“家庭教師”をつける時点で、

監禁されている事がバレるリスクを無視している・・・

珍しいどころの問題じゃない・・・どう考えてもおかしい・・・」


また救動さんがブツブツ呟き始めた。


「というより! 長く歩く事が出来ないのに、

異常がないっていう方がおかしい!」


「その物言いじゃ、私が異常じゃないといけないみたいですね・・・」


「いや、そういうわけじゃないが・・・」


「筋肉の発達は間に合ってはいるのですが・・・

単に、鍛えられてないだけですよ」


「何!? じゃ、鍛えればいいんだな!?」


「嫌だ、救動(きゅうどう)さんの目つきに加え物言いが怖い・・・」


救動さんはどうやら私があまり歩けない事を心配してるみたい

だけれども・・・。

何をされるかわからないから怖い・・・。


「後は、お兄さんに会うだけですよね!?

早く行きましょ!」


「あ、あぁ、そうだが・・・」


問答無用に私は救動さんの腕を引っ張る。

渋る救動さんを無視して廊下まで引きずった所で私は倒れる。

ここまで引っ張り出せた事を褒めてほしい・・・。


「おい! 無理をするな!」


そう言ってまたもや慣れた手付きで私を抱える。

やはり、会って間もないとは思えない程

とても慣れた手付きだ。

実に不可解。


「救動だ、通してくれ」


いつの間にやら移動して、青い制服を着た警察の人が警護してる

病室の前にいた。

コクリと頷いて警護をしていた警察官が扉を開けて、

私達を病室の中に通してくれた。


「・・・!? おにい・・・さん・・・?」


そして、私は絶句した。

後ろでガラッと扉が閉まった時、私の目からは

涙が溢れていた。


ベットの上には私がよく知るお兄さんが横たわっていた。

けれど・・・そのお兄さんは腕、頭、首、と

包帯がグルグル巻いてある。けれど、腕の包帯は真っ赤だった。

血が滲み出したから・・・?

救動さんはゆっくりと私を下ろして


「彼が君の言う“お兄さん”で、間違いはないか・・・?」


静かに言った。

黙って私はコクリと頷く。


ゆっくりと私はお兄さんに歩み寄った。


黒いお兄さんの髪はサラサラだったが、所々、血が固まったのか、

髪が固まっていた。


お兄さんはまぶたを閉じて静かに寝ているだけのように見える・・・。

けれど違う。意識がない。

その証拠なのかは知らないが

お兄さんの口には透けた白いマスクみたいな物が付けられていた。


「大丈夫か・・・? 月希姫(るいひめ)・・・」


「だ、大丈夫・・・う・・・うぅ・・・!」


大丈夫と答えたのに耐え切れず。

泣き声を上げて泣いてしまう。


だって、

お兄さん、このまま死んじゃうかもしれない、

それに、襲われたのだからまた襲われる可能性は高い。


「嫌だ・・・お兄さんが死ぬなんて・・・

起きてお兄さん・・・! 私はお兄さんに起きて欲しい・・・!」


月希姫(るいひめ)・・・!」


「こんなひどい傷なんて消えて、今すぐ起きて・・・

お兄さんっ・・・・・!!」


「!?」


無意識に私の口から無茶な願いが放たれる。

こんな事言っても無駄なのに・・・。

      



        「言ったね?」




「!?」


突然、女の人の声が聞こえた。

その時・・・・。




「・・・!!?

月希姫(るいひめ)・・・!! 大丈夫か!?」


部屋を照らしてた蛍光灯がものすごい音を立てて切れた。

真っ暗になる室内、驚いた救動さんが私を呼ぶ。


「私は無事です・・・!

でも、女の人の声が・・・!」


「女の人!? そんなもの聞こえなかったぞ!?」


「!?」


そんなもの聞こえなかった?

そんなわけない、だってはっきり聞こえた。

“言ったね?”って・・・。


どういう事・・・!?





「ぐ・・・うるさいな・・・誰だ 俺の部屋で喚いてるのは・・・」


「「!?」」


そして、不意に聞こえた声・・・。

私は知っている。この声を、


そうだ、ずっと待ってた人の声・・・。

お兄さんだ・・・!


「お兄さん・・・!?」


「な・・・!? 何で月希姫(るいひめ)がッ・・・!?

って、電気のスイッチもない!?

てか、口に着いてるこれは何!?」


「“守城(しゅじょう) 紅夜(こうや)”か・・・!?」


「は・・・!? 誰だよ!?」


「き、救動(きゅうどう)さんもお兄さんも落ち着いて!?」


暗闇の室内でプチパニックに陥る。


すると、

一瞬だけ光を照らすと何事もなかった様に正常に部屋を照らす蛍光灯。


そのおかげで私ははっきりとその姿を捉える事が出来た。

起き上がったお兄さんの姿を・・・。


「お兄さんッ・・・!!」


堪えきれずに私はお兄さんに抱きつく。


「イテ!? る、月希姫(るいひめ)! って・・・

ここはどこだっ!?」


驚いたお兄さんは赤い瞳の妖異な目をこれでもかと見開いて病室を見回す。

うん、いい具合にパニックになっているお兄さんを見て、

私は安心する。


「ど、どういう事なんだ・・・!?」


救動さんもとてもびっくりしている。

けれど、私はそんな事はどうでも良かった。

お兄さんが起きてくれた、その事だけで私は幸せになっていた。


でも、これで、

あの恐ろしい女の人から逃れる事は不可能になったという事も知らずに






・・・・







あのあとがかなり面倒だった。


意識不明の患者が目覚めて医者達はお兄さんを検査に連れてっちゃうし、

起きた経緯を説明するよう警察官に尋問されるし、

(説明はほとんど救動さんがしました。ですが真っ暗だった為

細工を語れず、終始、警察官に疑惑の目で見られました・・・)


検査から帰ってきたすっかり混乱しきったお兄さんに

全てを説明するわで・・・。


疲れました。疲れ切りました・・・。


なので、病院にあるふかふかした横に長い椅子。

お兄さん曰く“ベンチ”というものに、座って

私と救動さんで事情を説明しました。


「そんな事が起きてたのか・・・」


「しかし、何で突然目覚めたのかが不可解だ・・・」


「それは俺にも解らない、

切り傷からちょっとしたかすり傷、古傷まで全部、

まるでなかったみたいに綺麗さっぱり消えてるし・・・

訳を説明して欲しいのは俺の方だ・・・」


「!?

それって・・・、月希姫(るいひめ)が言ってた通りに・・・?」


そう言って救動さんは私を目視する


「わ、私、確かに

“こんなひどい傷なんて消えて、今すぐ起きて・・・”って、

言いましたけど・・・こんな事私に出来るはずがない・・・」


そんな魔法みたいな事が私に出来るはずがない・・・。


「す、すまん、だがやはりこれは不可解すぎる現象だ・・・・

守城(しゅじょう) 紅夜(こうや)”襲われた夜の事は覚えていないか?

もしかすると、襲われた時に何かされたかもしれない・・・」


救動さんはお兄さんに目線を変えて聞く。


「目が覚めた時は、襲われたことをこれっぽっちも覚えてなかった

だけど・・・二人の話を聞いてるうちに曖昧だが思い出してきた・・・


黒い覆面の男、3人に囲まれて・・・

俺は逃げようとしたが、足を撃たれて、倒れて・・・

そこで・・・記憶が途切れている・・・

すまない・・・この程度の事しか思い出せなくて・・・」


お兄さんは手で顔を押さえて、思い出しながら言った。

犯人は複数犯・・・。


「大丈夫だ、十分、有力な手がかりだ

ありがとう、それと、もう一つ聞きたい

月希姫(るいひめ)の事だ」


「・・・」


月希姫(るいひめ)が監禁された幼い少女だという事を知りながら、

君は何もせず、それどころか“家庭教師”として、

毎日のようにあの屋敷に通いつめた。

犯人に従って・・・それはどうして?」


「・・・否定は出来ない・・・

だけど、“彼女を守るためだ”と言われたから、

監禁だという事には気づかなかった」


「鎖に繋がれていたのに・・・?」


「鎖に繋がれていた・・・・? そんな事知らなかったぞ」


「そんなわけ無いだろう!

あんな分かりやすい鎖に気づかなかった訳が・・・!」


救動さんは声を荒げて立ち上がった。

だから私は救動さんの黒いコートの裾を掴んで、


「それは、私のせいです・・・!」


「!?」


「お兄さんが来る度に私は鎖を毛布で隠していたの・・・」


「何でそんな事を・・・!」


「・・・お父さんにそうするように言われたから・・・」


救動さんは私を気遣って監禁されていた時の事を聞かなかった。

けれども、ここで白黒ハッキリさせなくてはならない。

お父さんはお兄さんに私が監禁されている事を気づかれないように

指示をしていた。


「ねぇ、救動さん、教えてください・・・

どうしてあの時、私が鎖が切れる事を恐れた理由が

お父さんを恐れ、お兄さんに害が加わる事も恐れたからだと

分かったの・・・?」


だから私は聞く、ずっと気になっていたけど、

なんだか聞いてはいけない気がした事を・・・。


「それは・・・

私がお前に“守城(しゅじょう) 紅夜(こうや)”との関係を聞いた時に、

お前は本気で心の底から泣いて・・・、

私に泣きついた時に、お前が“守城 紅夜”の事を慕っている事が伺えた


そして、鎖を切るために切断機を鎖に固定した時に、

お前は“お父さんに叱られる”って、

恐怖の表情に染っていた様子から、

お父さんを恐れている事が分かった


だから私は推測したんだ、お兄さんを慕って、

お父さんを恐れる そんなお前が、

鎖が切れる事を恐れる理由を・・・

それで大体の事が分かったんだ・・・」


「大体の事って何だ?」


お兄さんは恐る恐る聞いた、

救動さんの洞察力と推理力が確かだから・・・。


「・・・犯人が月希姫(るいひめ)の父親で・・・

動機は・・・まだわからないが、少なくとも、

守城さんに言った“彼女を守るため”というのは嘘だろう・・・


そんな奴なら、月希姫(るいひめ)が恐れるワケが無いからな


そして、月希姫(るいひめ)が真実を教えてくれたおかげで、

守城(しゅじょう)が犯人こと“お父さん”に騙されている事を・・・

きっと今回の傷害事件は月希姫の監禁事件と繋がっている・・・」


救動さんはまた苦しそうに言う。

私を本気で気遣っている救動さんの思いがひしひしと

感じる・・・。


「そうですか・・・救動(きゅうどう)さん、

答えてくれてありがとうございます・・・」



月希姫(るいひめ)・・・大丈夫か・・・?」

「いや、感謝されるような事では・・・」



ほぼ同時にお兄さんと救動さんが言った。

うん、ギリギリで聞き取れたからいいけど・・・。


そういえば二人共、見た目は似ていないのに、

中身はかなり似ている・・・。


二人はというと、お兄さんはムッとした表情を浮かべ、

救動さんは驚いた表情でお兄さんを見ている。


「・・・ブッ・・・ふふ、アハハハ・・・

二人共、本当は兄弟なんじゃないの・・・?」


「はぁぁぁ?」

「なんでそうなる!?」


なんだか、堪えきれず私は笑ってしまった。


「そうだ、お兄さん、このあとはどうするの?」


「話を突然変えたな・・・」


「いいから!」


「分かった分かった・・・そうだな・・・

とりあえず家に戻るか・・・」


「いや、それは止めた方がいい」


お兄さんが私の問いに答えると救動さんが真剣な表情で言う。


「なんで・・・」


「それは、守城(しゅじょう)を襲った犯人は銃を持って襲った

それは、相手が本気で守城を殺そうとした殺意の表れだろう。


それに加え、それが“お父さん”の差し金である可能性が高いから、

守城の住所はバレているだろう。


だから・・・守城さんの家は危険だ。

当分はホテルとか、ほかの場所に滞在しているべきだ」


冷静に救動さんは言う。

非常に的確な推理で、しかるべき対応だ。

でも、どうせなら・・・。


「あ、それなら、私と一緒に救動(きゅうどう)さんの家に来たらいいんじゃ・・・!」


「え!?」


「待て、どうしてそうなる!? って、月希姫(るいひめ)と一緒にって

どういう事だ!?」


「えーと、それは私が月希姫(るいひめ)を引き取る事になったから・・・」


「なんでこの刑事が月希姫(るいひめ)を引き取る事になってんだ!?」


「二人共!

落ち着いてください!」


私の提案に救動さんとお兄さんがパニックを引き起こし始めた。

一体、何故・・・。


「救動さん、私は救うのにお兄さんは救わないんですか・・・?」


「うッ・・・!!」


「お兄さん、一度、危うく死ぬところだったんですよ?

救動さんと一緒にいればきっと助かるはずだから、

一緒に来てください・・・」


「・・・!

分かった・・・」


「仕方がないな・・・」


二人は渋々、承諾する。

承諾してくれて良かった・・・。


「だけど、荷物だけでも取りに行かせてくれ」


「分かった、私の車で行くから少し待っていろ」


そう言って、救動さんは車を取りに行く。


「・・・」


「・・・」


そうして流れる沈黙。

気まずい・・・。


「なぁ・・・随分とあの刑事に懐いているな?」


お兄さんは沈黙を破るためなのか、

単なる疑問なのか、私に質問する。


救動(きゅうどう)さん・・・ね、あの人は・・・、

私を外に連れ出したから責任を取ってもらおうと

一緒にいるんだよ・・・っていうのも理由のこじつけかな?


あの人は私に“絶対にお前を救ってやる”って言ったくれたから、

救われたくて一緒にいるんだと思う・・・」


「救われたくて・・・・?」


「うん、あの人ならそれが出来るかもしれないって思ったから・・・」


「確かに、俺も同じ事を思ったよ、とても親切だし、

本当にお前の為を思っている

だけど・・・そこが危ないと思うんだ」


「危ない・・・?」


「きっと、犯人の居場所が分かればすぐに単身でも

行くだろうし、傷ついた人に手を差し伸べるだろう、

そして、今回 その傷ついた人ってのが月希姫(るいひめ)だ」


「・・・?」


だんだん具体的に言うお兄さん、

何が言いたいの?


「案の定、お前に手を差し伸べた、

それが、月希姫(るいひめ)を外に連れ出す事だ。

それを・・・あの人が許すか・・・?」


「!」


「あの人は、財力もあるし、権力もある

だから・・・」


「・・・!

止めてッ・・・!!」


「!?」


「・・・そうはさせない・・・私が、そうはさせないから・・・

既に、お父さんはお兄さんを傷つけた。

確かに傷は治ったけど、傷つけた事実は変わらない。

そして、こうしてる間もお兄さんの命を狙っている、

私は・・・それを許さないから・・・! だから・・・!」


月希姫(るいひめ)・・・?」


「大丈夫、お兄さんも救動(きゅうどう)さんも、大丈夫だから・・・

私がきっと、守るから・・・」


私は、確かに感じていた。

お兄さんに、


“あの人は、財力もあるし、権力もある、だから・・・”


そう言われて二人を失うかもしれない、

ザワザワとした恐怖を覚えた時・・・。


胸の奥の方から湧き上がる不思議な力を、

私は、確かに感じていた。

そうして、私は確信した、



      お兄さんの傷を治したのは、

       救動さんの言う通り、

        私だと・・・・





どこから湧いてくるのか、あれほど怖かったお父さんにも

負けない自信がいつの間にかあった。


確かに怖いけど、お父さんに、お兄さんと救動さんを奪われたくはない。

もう嫌なんだ。

大切なものを失うのは・・・あの紅色の夜みたいに・・・・。


 ・・・・・・あれ?紅色の夜って・・・何?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ