プロローグ― モノローグ
――たったひとつだけ願いが叶うなら。
そんな質問があれば、人それぞれ色々な答えを返すのだろう。
人間生きていれば常に欲しいもののひとつやふたつある。
叶えたい夢や、実ってほしい想い。長い時間を熟考すれば、この問いに答えられない人間なんていない。そんな人がいるとしたら、生まれた時から全てが叶ってしまうような不幸なほどに恵まれた人間だろう。
当然、ボクにも――大鳥瑞端にも願いはある。
普通に生きたいとか、平穏無事な生活を送りたいとか、そんなことを言うつもりはない。そもそもそんな当たり前すぎることを至極真面目に願う人こそ、決まって何処か外れているのだから。
これまで十七年の人生で平々凡々から外れたことなんてほとんどない。だからこそむしろ、多分ボクは何らかの刺激を求めていたのだろう。
ほんの少しでいい。
ボクは形骸化したつまらない日常の中にドキドキするような展開を求めていた。
平穏のもたらす恩恵に慣れ過ぎたボクたちは贅沢にもちょっとした変化を願うようになっていたのかもしれない。
普通であることの意味を忘れていたのかもしれない。
そう。あの日までは――。