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箱をあけよう  作者: ひろりん
第4章:王城編
78/240

侍女の仕事をがんばります。

何とか、格好を整えた私が、マーサさんに連れていかれたのは、

お城の左翼上部にある、王妃様のお部屋。


私の部屋が、侍女専用の一人部屋。

つまり、お城右翼1階の使用人部屋。


私のお部屋から、王妃様のお部屋まで、実に、15分掛かります。

もし、火事が発生したら、お部屋まで、大事なものを取りにかえることは、不可能です。

ので、大事なものは肌身離さずが基本です。


まあ、私には、首から掛かっている玉と照が居る腕輪くらいしか

大事なものはここにはないのですから、安心ですね。




そして、本日、教えてもらいました。

お城の中で、迷子にならずにすむ方法。


このお城は、城砦でもある為、外部からの襲撃に備えて、

敵が迷う造りに、なっているんだそうです。


その上、微妙に床の高さを変えてある為、

今一階に居ると思ったら、実は二階でしたとか。



私は、方向音痴ではないという自信が、かなりぺっちゃんこに

へこんでましたが、これは、お城のせいだったんですね。

ちょっと、ほっとしました。


目印は、廊下の灯り様に取り付けてある、ランプや燭台。

それに、窓枠の桟の部分です。


ランプの場合は、ランプの芯の部分に色がついているそうです。

ランプは、お城の内部に属している部分だけに配置されてます。

その内部を東西南北4つに分けた場所で、芯の色を変えてあるそうです。


これは、じっと見ないとわかりませんよね。

それに、ランプの光をじっと見ると、目がちかちかしてくるので要注意だとか。


燭台は、お城の外部とその付近、近辺に配置され、

台座の唐草模様は、右向きなら、右の塔付近。

左向きなら、左の塔付近。

そして、取っ手の部分が、丸みをおびているものは、城の前部南よりに

ストンとしているものは、城の後部北よりに位置しているそうです。


そして、窓枠の桟の部分。

一階は、桟が一重、2階は二重、3階は3重になってます。

三階より上には、常時は入ることは無いが、それより上には、

窓にしっかり格子が入っていて、空けることが出来ない造りになっているらしい。


まあ、落ちたら大変だからね。

日本の背の高いビルのホテルの窓は確か、

全開に窓が開けられない造りだったような違ったような。


だから、それらを確認しつつ、場所を把握することを教わりました。


これは、説明されないと、わからないでしょう。


お城には、4つの塔が、お城を真ん中に、

東西南北にすえられてます。


塔の名称は、それぞれ用途によってつけられてます。

が、今、殆どの塔は、物置代わりに使われているとか。

だから、目印がわりで、東の塔とか、西の塔とか、言われてます。


塔の背の高さは国議会の天辺とほぼ同じ高さ。

多分、ビル5階建てよりも高い位置にあると思います。


石造りの真っ白な塔は、遠くからでも凄く目立ちました。

ここを始めてみた時、馬車の中で、うわあっセレブって思ったのです。

それが、物置だなんて、ちょっとがっくりきます。


実際に使われているのは、祈りの塔とか、塔の教会と

言われている北の塔で、礼拝堂があるそうです。


その塔の教会は、もともと王族専用の場所なので、現在、

その礼拝堂を使っているのは、王妃様、ただ一人だけとか。


王様や坊ちゃんは、基本、

どの宗教も信じてらっしゃらないので、利用されないらしいです。


そうか、苦しい時の神頼みは、坊ちゃんや王様はしないのね。





それは、さておき、お城での迷子防止法がわかって、

今、私はというと、王妃様のもう一人の侍女、ローラさんと

一緒に、お茶の用意に、厨房に向かってます。


ローラさんは、綺麗な濃茶色の髪に、若草色の目をした

女性で、王妃様の侍女になって5年目だそうです。

てきぱきと実に要領よく、実務をこなしていくベテランです。


年は、多分40代。

旦那さんと死別して、この城に来たとか。

はきはきとして、面倒見がよく、女性らしい体つきをもった

かっこいい人でした。

顔つきは美人というより、愛嬌のある可愛い顔立ちです。


想像では、王妃さまって、沢山の侍女とかメイドとかに

傅かれているのが、当然だと思っていたんですが、

この国では、違うようです。


余分なお金は、一切、国議会が認めてくれないので、

節約につとめて、質素倹約がモットーの王城なのだそうです。


だから、王妃様とて、侍女は基本、一人。

そして、このお城のメイドさんは、全員合わせても、10名居ないそうです。


お城でパーティーなんかがあるときは、臨時で、軍部から借りてくるそうです。


だから、お城なのに、人少ないんですね。

常備このお城にいるのは、警備の軍部の方をいれなければ、30人程だそうです。



厨房は、お城の一階右翼後方、北よりに位置していて、

厨房で働いているのはコックさん2人と手伝いが一人だけ。


厨房の大きさも、一般の厨房よりやや大きめなくらい。

レンガを汲んだ、がっしりとした大きめの竈が二つ。

そして、窯が、大小二つある、使い勝手の良い厨房のようでした。


挨拶をしたとき、とってもびっくりしました。

料理長を務めるトムさん。


頭がつるつるだったんです。

その上、体も大きく、逞しい体つきなので、

レナードさんと、一瞬、間違えてしまいました。


トムさんに、レナードさんって呼び掛けてしまって、笑われました。

実は、トムさんは、レナードさんの兄弟子だったそうです。


意外なところで、人間、繋がっているものなんですね。

それにしても、頭つるつる定義は、実は、彼らの師匠からの教えだとか。


理不尽は、その師匠からですね。

歴史があるんですね。


マートル、駄目だ、これは。

あきらめたほうがいいよって、思わず、遠い目をしてしまいました。


いずれ、小坊主頭のマートルを見ることになるのでしょう。


トムさんは、実にかっこいい、ナイスミドルと言う顔つきでした。

髪があれば、どこのジゴロかって感じ。

頭はつるつるなのに、嫌になるくらい色気があるんです。


その上、ローラさんが、近くに寄ると腰が砕けるよって

注意されるほどの美声の持ち主でした。


何をしても、何を言っても、真面目に答えてくれる

ローラさんの反応をいちいち面白がって、

トムさんは、ローラさんをからかってばかりです。


副料理長のルードさんが、こそっと教えてくれました。

トムさんは、実は、ローラさんに惚れているそうです。



気になる子ほど、いじめるって奴ですか。

子供ですね、トムさん。





さて、それはさておき、侍女のお仕事。

それは、王妃様のお仕事や生活の補助をすることです。


だから、基本、王妃様の側で、べったり張り付いてます。


朝は、夜明けと共に起き、王妃様の朝の支度の用意と

着替えの手伝い、化粧や、髪結いまでします。


それから、食事の支度。

厨房で、一通り、毒見を済ませた後、

王妃様のお部屋まで、運びます。


王妃様の食事をお手伝いして、後、

王妃様は、朝のお祈りに、塔の教会に入ります。


30分ほどしたら、出てくるので、外でじっと待ちます。

出てきた王妃様にお茶を入れて、本日の予定の確認と、

秘書の方から預かっていた、書類を渡します。



書類を読む王妃様の横で、お茶を片付けて、

王妃様からの、要望があれば、司書から、資料をもらいに、

お城の図書館に走ります。


午後からは、基本、執務室です。

書類を運んでくる、国議会からの役人を

王妃様の仕事がしやすいように、仕分けします。


執務室には、王妃様付の秘書が一人いるので、

お仕事が終わるまで、侍女は、侍女部屋で待機。


お昼は、軽食を厨房から運んできて、

執務室の隣の部屋で、昼食の配膳をしつつ、王妃さまの様子をチェックする。


王妃様が食事を残されたり、体調が悪そうなら、

侍女頭に相談に行くことなどの注意をされた。


昼食を終えると、また執務室で王妃様はお仕事です。

その後、一時間ほど、お休みを取って、休憩を入れます。

私達の休憩は三時くらいで、シオン坊ちゃんのお茶時間と重なります。


これなら、シオン坊ちゃんの部屋でのお茶習慣、続けられそうです。


お仕事は多岐に渡ってあり、内政のお仕事や、

今は、外出禁止ですが、普段は慰問や、視察も行われているそうです。

その時は、警護と一緒に、侍女もお出かけなんだそうです。


王妃様って、実は、大変なお仕事だったんですね。

もっと、食べて寝ての楽隠居仕事だと思ってましたよ。


執務の間をぬって、休憩を勧めるのも、侍女の役目だとか。

待機中も、2度、お茶をもって、執務室に入りました。


夕刻、執務を終えた王妃様に、夕食の支度。

王や坊ちゃんが食事を共にと言ってこられたら、食堂に。

それ以外は、基本、王妃の部屋でなので、

厨房から、ワゴンを走らせて、用意します。


夕食後、王妃様は、再度、塔の教会に入るので、

外で待ちます。


渡り廊下は寒いです。

朝は、あまり感じなかったのですが、

夕日が沈むと、風が冷たいです。


まあ、船に居た時よりも、比較的暖かな風ですが、

風除けになるところがないので、震えがきます。


なので、渡り廊下の向こう側、風除けの出来る建物の中で

大概待つことになります。

護衛の方々も同じく、一緒に待つことになってます。


30分ほどしたら、王妃様が出てくるので、

一緒に、お部屋に帰り、お風呂の手伝いに着替え。

髪を整えて、お休み前の支度をする。


ベッドサイドの水差しを確認してから、

お休みなさいませって言って、扉を閉める。


それから、執務室まで戻り、明日の朝、王妃様に確認してもらう

書類を受け取って、王妃様の私室まで運び、文箱にいれる。


明日の服や、お仕着せの用意をしてから、自分の部屋に帰る。


以上が、ローラさんに付き合った、今日一日の侍女仕事でした。


これ、ハードですよね。

一日の自由時間って、3時くらいのほぼ一時間のみ。


ローラさんは、

「大丈夫よ、すぐに、慣れるわよ。」


軽やかに言ってましたが、本当に慣れるでしょうか。


食事は、朝は、朝食の前に、

お昼は3時に厨房で用意されていたものを食べて、

夕食は、夕食をとりに行く時に。


駆け足で、食べるので、喉につまりそうでした。

ローラさん、ルディに負けず劣らずの早食いです。


明日から、ポケットにハンカチ常備でいきたいと思います。

今日は、早く早くとせかされて、満足に味わうことも出来ませんでした。


これでは、私の心が荒んでしまいます。

トムさんは、レナードさんの兄弟子なのですから、味は間違いないのです。

きっちり、味わわないと罰が当たります。





それから、仲良くなったって言うか、いつも一緒に居ることになった

警備の人達、ステファンさんとヨークさん、ワポルとゾイさん。

いつもは、前2人だけなのですが、

今回は、警備を強化するとの事で、軍部から、2人増員がきたそうです。


ステファンさんは、すらっとした体躯で、さらさらの褐色の髪に、緑の目。

絵本に出てくる、騎士さまのような美丈夫です。

そこに居るだけで、周りの視線を集めてしまう不思議な存在感と魅力をもってます。


ヨークさんは、すこしだけステファンさんより背は低いですが、

基本、筋肉がっちり系で、でも、ゆったりとした話方をする、

笑い方が素敵なお兄さんって人。 黒髪にグレーの目をしてます。



ワポルは、熊五郎みたいな筋肉マッチョです。

栗のような、つんつん茶色の髪に、顎から、もみ上げにかけての髭

が顔を覆ってます。

初対面ですが、余り好きになれません。


だって、挨拶の時に、普通の顔のちびって私のこと呼んだんです。

美人ではないこと、背が高くないこと、自分でもよく知ってますよ。

でも、人に言われると、むかっとくるんですよ。

身体的欠陥を論うのは、良くないと思います。


ゾイさんは、無口です。

灰色の髪に、黒い瞳。背は高く、すらっとしてます。

でも、手が早いです。

私に失礼なことを言ったワポルさんの後頭部を、ぼかっと殴ってくれました。

すっとしました。

ゾイさん、ありがとうございます。



あとは、執事のセザンさんとマーサさん。

私が失敗しないように、要所要所で、手を出し、口を出しを

してくれました。


本日、何とか一日を終えられたのも、皆様のお陰です。


このお城で、王族以外で、覚えたのは、これらの人達だけです。


あとは、おいおいに、覚えていくことにしたいと思います。





お部屋に帰って、お風呂に入り、ナイトキャップを被って、

お布団にもぐります。


今日も、よく働きました。

泥のように疲れてます。


(本当ね、私も疲れたわ)


そうです。

照も、実によく働いたのですよ。


主に、私のフォローですけどね。


わかっていても、体がついていかず、出来ないこと、

さっぱりと忘れていたこと、多々ありました。


体力に自信があったはずの私も、照の手助けがなければ、

もっと、失敗多発したに違いないのです。


部屋を間違えそうになったり、転びそうになったりと、

ひやっとしたこと、随分ありましたからね。


食事のワゴンを走らせすぎて、止まらなくなった時、

照の手助けで、ワゴンの車輪を止めてもらいました。


あれは、本当に、助かったよ。


私達は、二人三脚ですよ、照。


(なによ、それ)


2人でがんばろうってこと。

明日もよろしくね。


2人とも、疲れていたらしく、すぐに就寝しました。







月の光も差さない、使用人棟の侍女部屋の一つ。

歩哨の警備にもっとも近く、そして、

誰かが物音を起こしたら、すぐにわかる部屋。


そのメイの部屋の前に、すっと影が挿した。

音もなく、忍び寄り、メイの部屋のドアノブを回す。


がちっ


硬い、鍵の音がして、影がちっと小さく舌打ちをする。


そして、懐から紙のようなものを取り出し、

部屋のドアの隙間から、その紙を押し込んだ。


そして、音も無く、影が去っていき、

その跡には、押し込まれた一枚の紙。


「この城から、去れ。

 この忠告を無視したなら、命の保証はない。」


殴り書きのように書かれた忠告文。


そこには、確かなる殺意が見え隠れしていた。





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