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箱をあけよう  作者: ひろりん
第3章:港街騒動編
57/240

思い出してください。

警邏の人がきて話を聞かれました。


カースは私の側にいると主張してくれたのですが、

警邏の人が二人だけで話したいらしく、

カースを追い出してしまいました。


ちょっと心細いです。



尋ねてきた警邏の人は、ずんぐりむっくりの厳ついおじさん。

特徴といえば、顔のパーツが真ん中にすべて集中している男の人。


昔みた古いアメリカ映画の某刑事の顔を、

ぎゅっと真ん中に固めた様な顔です。

心のなかで、命名、残念なコロンボと呼びたいと思います。



あの市場での誘拐騒ぎで一体何があったのか、

おかみさんとミリアさんを交えて、

他の警邏の人にすべて話したはずなのに何が聞きたいのだろうか。

何か話してないことってあったかな。


しかし、残念なコロンボは質問まで頓珍漢です。

顎をしゃくりながら威嚇するように首をかしげて、

次々に質問に答えていくが、

私が全然答えられない質問ばかりしてくる。



質問の内容は、主にあの怪しい男の人について。


彼はどこに住んでいるとか、

何故私に声をかけたのかとか、

彼の仲間を知っているかとか。


知り合いでもない変質者、もとい、

誘拐犯の何を私が知っていると言うのでしょうか。


わからないので知らないと答えると、

昔からの知り合いだろうとか、

訳のわからない当て推量ばかり。


その上、最後には私も誘拐犯の一味だろうって。

あきれて目が丸くなりました。


これが噂に聞く、刑事の自白による恐喝捜査、

みたいな感じでしょうか。


本当に、残念なコロンボです。

思わず、遠い目をしてしまいました。


経緯をきちんと聞いていたなら解っているはず。

私は、あの怪しい男の人についてほとんど何も知らないのですが。

知っているのは、インチキ壺販売者という行だけです。


多分、警邏の人達は、彼から何も情報が得られなかったんだろうな。


だから、わらをもつかむ感じで、

私のところにきているんでしょう。


警邏って、警察官のことだものね。


中間管理職とか、したっぱ役人とかは、

上からは文句を言われ、下からは突き上げられで、

大変なんでしょうね。


テレビドラマでも大変そうだった。



そう思ったら、コロンボが、なんとなくかわいそうな気がしてきた。


そうか、この人、

残念な人の上に可哀相な人なんだ。


「なんだ、その目は」


ぎゃんぎゃんと怒ってます。

頭の天辺から湯気が出そうです。


ああ、そういえば昨日のミリアさんは、

こんな風に怒ってたなあ。



あ、その怒り方で思い出しました。


「そういえば、あの男の人、チェットから聞いたって言ってた」


「チェット? 知ってるのか?」


「私は知らないけど、市場の女性やミリアさんは知ってるみたい」


「何故、あんたがミリアを知ってるんだ」


ん? 話がずれた?


「私は、今、ミリアさんと同じお店で働いているから」


「あんたが? そうか」


なんとなくですが、いきなりコロンボの態度が軟化した。


「そうです。

 ピーナさんとリリーさんって人が出られないので、

 その間のお手伝いです」


「なんだ。ミリアが言ってた新しい子って、あんただったのか」


この人、ミリアさんの知り合いですか?

首をかしげていると、コロンボは

顔をくしゃっと歪めて大きなため息をついた。


「なんだ、ただの被害者か。 外れたな」


「ミリアさん、知ってるんですか?」


「ああ、俺の姪っ子だ」


私の敬愛する姉御、ミリアさんの叔父さん。

そうと知ったら、ちょっとだけ親近感がわいてきた。


「良く似てますね。そういえば」


にこにこしながらコロンボに話しかけると、

とたんにコロンボの顔が嬉しそうに崩れた。


「そっそうか、そうか。

 似ているか。似ているんだな。わははは」


「はい。似てますよ」

怒り方がそっくりでした。

あれは、血筋のなせる業。


ひとしきり、嬉照れ笑いをしたコロンボは

気のいい叔父さんにみえた。


「ああ、ありがとうよ」


「いいえ。本当のことですから」


コロンボは、手をひらひらさせながら、

元のまじめ仕事顔に戻した。


「おいおい、もう、いいよ。

 はあ、それより、そうか。チェットだったな」


頭の切り替えが早いです。

流石警察官。コロンボに似ているだけあるのかもしれない。


「チェットっなら、リリーだな。

 家によって、聞いてみるか」


うんうんと頷きながら、腕組みして、

大きな声の独り言計画。


うん?


「リリーさんは、警邏の宿舎にいるはずですが」


「警邏の宿舎? 何でだ?」


「昨日、ミリアさんが、リリーさんを

 警邏の宿舎に預けてきたって言ってました」


「ああ、ミリアか。わかった。ありがとう。

 えーと、俺の名前はオーロフだ。

 メイさん。 いろいろ、すまんね」


オーロフさんは、鼻の頭をぽりぽりとかいて、

ちょっとだけ苦笑いしました。


その照れ方も似ているみたい。


「いいえ。お仕事ご苦労様です」



「最近、この街で誘拐が多発しているんだ。

 狙われるのは、見目のいい子供か女、

 もしくは、変わった毛色のアンタみたいな女か子供だ。

 ミリアにも言ってるが、メイさん。

 アンタも気をつけてくれよ」


コロンボ、もといオーロフさんは、

きりっと真剣な仕事モードの顔で注意を促した。


誘拐事件が、多発しているんですね。

たくさんの人が、さらわれて売られているんだ。


見たことの無い人達にちょっとだけ同情する。

もし、私が身分証明書を持ってなかったら?

もし、市場の人に助けられなかったら?


そう思うと、ぞっとする。


「二度と、変な男達に近づくなよ」


オーロフさんは、低い声で忠告をし背を向けると、

手を上げてひらひらと手のひらを左右に動かした。

来たときとは違い、さわやかに去っていった。


「ありがとうございます。気をつけます」 


私も、笑ってオーロフさんが出て行くのを見送りました。


カースは、私の様子を見てなんだか拍子抜けしたみたい。

肩の力を抜いて、安心したように大きな息を吐きました。


「何事もなく、よかったですね」

私の目をみて笑って言いました。


「はい。ありがとう、カース」

心配してくれてありがとう。

その優しい笑顔が嬉しいです。


カースは、手早く周りを片付けて船のドックへ行くようです。


ですので、ちょっと早いけど、

カースと一緒にお昼をレナードさんの屋台で食べて、

そこで分かれてピーナさんのお店に行くことにしました。


ミリアさんに会ったら、叔父さんのお話しようかな。






レナードさんの屋台の焼きソバが本当に美味しかったと、

力説しながら広場にいくと、

レナードさんの頭が、いえ、姿がみえません。

いるのは見知らぬ男女2人。


屋台は同じ場所にあります。


でも、働いている人はレナードさんではありませんでした。

ですが、確実にレナードさんの家族でしょう。

それはわかります。


男の人は、レナードさんと同じくつるつるでした。

女の人は、レナードさんと同じく小鹿のような目をしてました。


レナードさん、船から降りても、あの規則は適応なのですね。


カースと二人で屋台に行き、料理を頼みました。


今日は、あの焼きソバはないそうです。


いささか、がっくりしてます。


でも、サンドイッチもどきのランチも美味しそうです。


薄くスライスした野菜をナンのようなパンではさみ、

間には、はんぺんのような魚のすり身を油で揚げた物、

それに、スライスした、癖のあるチーズ。

ソースはぴりっと辛い、チリソースのような感じでした。


うーん。

これはこれで、美味しいです。


ゆっきり食べていると、

昨日、見かけた人たちが、焼きソバの有無を聞いて、

がっくりと肩を落としていた。


そのまま、帰るのかなあって見てたら、

目がばっちりと合いました。


そらすのも変なので、大きく口をあけて、

サンドイッチを頬張ります。


うん。 美味しいです。

レナードさんみたいに完成された美味しさではないけど、

まだまだ、将来が楽しみな味です。

もっと、もっと美味しくなるでしょう。

得点で言うと70点くらい。


じっと、私が食べるのをみていた彼らは、

屋台で、サンドイッチを食べることにしたようです。

昨日と同様に改めて列を作りました。



とりあえず食事をすませて広場でカースと別れ、

昨日と同じように市場を抜けて、

ピーナさんのお店に行くことにしました。


市場を抜けていくたびに

いろんな人に声を掛けられます。


「メイちゃん。気をつけるんだよ」とか

「今日は見ていかないのかい」とか

「後で、夕食を食べにいくからね」とかです。


「はい。ありがとう」

皆に笑顔で返事を返しながら、市場を抜けていきました。

下町の人達は、いい人たちですね。


思わず、鼻歌が出てしまいそうなくらいにいい気分です。

るんるんと足取り軽く歩いていました。


もう少しで、ピーナさんのお店がみえるとこまできた所。

市場を抜けてすぐの道端で、細い女の人が壁にもたれて

座り込んでました。


薄い金の長い髪の毛が、座り込んでいるため、

石畳にべったりとついてます。


顔は膝を抱え込むように座っていたので見えませんが、

相当な痛みがあるようで小さな唸り声が聞こえました。


体調が悪いのでしょうか。



近づいてもいいよね。

女の人だし、なんだか痛そうだし。



側にしゃがんで、声を掛けた。


「あの、大丈夫ですか? どこか痛いんですか?

 お医者様呼びますか?」


彼女は、私の声でゆっくりを顔を上げて、

こちらを見た。


薄い金の長い髪、薄い灰色の瞳。

びっくりするほど、細い。

頬はこけて、手首や首は、子供のように細い。

顔立ちは特に際立ったところもないが、

全体的に幽霊のような印象をうける。


多分、皮膚の色が余りに白すぎるせいもある。


彼女はか細く小さな声で、返事をした。


「大丈夫です。足が痛むだけですから。

 少し休んだら、治ると思います。

 ご心配おかけして、すいません」


足?


彼女の足元を見ると、

長いスカートから、包帯で巻かれた足が見えた。


怪我をしているんだ。


彼女の顔色は酷く悪いのに、

汗はびっしょりとかいている。


貧血も入っているのかも。


一人では歩けないよね。これは。


「家はどこですか? この近く?」


彼女は、軽く頷きました。


まだ、時間があるので、この近くなら、

送っていってもいいよね。


怪我した足を下につかないように、

彼女の脇に頭をくぐらせ、

ぐっと体重の比重が私の方に掛かるように、

肩に担ぎました。


立ち上がって、わかりました。

細いとはいえ、私よりも身長さが10cm以上ある。

それに、ぐったりとした体は、思ってたよりも重いです。


火事場の馬鹿力は、発動してくれません。


よたよたしながら、歩いていると、

前から、黒トンボのスミフさんが、歩いてきました。


お昼を食べたばかりのようです。

お腹をぽんぽんと叩いて、嬉しそうです。


「やあ、メイちゃん。リリー。どうしたの?」


うん? 今、なんて言った、スミフさん。


「スミフ。」

彼女のか細い声が、スミフさんの名前を呼びました。


思わず、ぎょっと彼女の顔を見ました。

彼女がリリーさんなんですか?


「リリーさん?」


「そうだよ。リリー、足怪我してるんだろ?

 病院じゃなくて、なんでここにいるの?」


スミフさんは、よたよたしている私達を支えるように、

私と反対側に回って、リリーさんの肩を担ぎました。


「ごめんなさい。

 家に帰ろうと思って。

 もう少しで、家なのに。

 痛くて、動けなくなったの」


リリーさんは、息切れしながら、

あそこに座っていた簡単な理由を、教えてくれた。




スミフさんと二人で、リリーさんを家まで送り届けました。

リリーさんの家はピーナさんのお店から、

普通に歩いても10分かからないくらいの近さ。


三回ほど、角を曲がったけど、

ここなら一人でピーナさんの店まで迷わないで行けるはず。


リリーさんを家のベットの上に降ろして、

ふうっと息を吐きました。


スミフさんは、トレードマークの黒めがねをはずして、

手ぬぐいで汗を拭いてました。


スミフさんの方が、背が断然高いので、

結果、リリーさんの体重の殆どが、

スミフさんにのし掛かっていたんです。


私は、かなり楽になりましたが。


ちょっとした、重労働でしたね。



スミフさん、めがねを取ると普通にかっこよかった。


めがねをしている時は、開いているのか、

閉じているのかわからないくらいに小さな目でしたが、

なのに、めがねを取ると、とたんにパッチリとした二重瞼の

涼しげな眼に変身しました。


めがねの下は、数字の3みたいな目だと思ってました。

ちょっと、楽しい期待してごめんなさい。スミフさん。



「ご迷惑をかけてしまって、ごめんなさい」


リリーさんは、悲しそうな顔で謝ってました。


「いいよ。僕たちが通りかかってよかったね」


スミフさんは、ははっと小さく笑ってました。

お昼休みがもうじき終わるからと、

スミフさんはすぐに部屋を出て行きました。


いい人ですね、スミフさん。


リリーさんのお部屋にはポンプが見当たらなかったので、

外にでたところにあったポンプ、多分、共同のポンプで、

水差しに水を汲み、リリーさんのところまで持って行きました。


コップに水を注いで、リリーさんに渡すと、

はかなげに笑って、ゆっくりと飲み干しました。


机に空いたコップを置いたら、そこには黒めがねがありました。


あーあ。スミフさん。忘れたんですね。

というか、めがね無くても見えるんですかね。

伊達めがねにしてはレンズが分厚い。

まあ、この世界には薄型レンズは無いので、

そんなものなのかもしれない。


夕食にお店に来るかもしれないので、

私が持って帰りましょう。




「大丈夫ですか?」


リリーさんは、小さく深呼吸を繰り返します。


「ええ、もう、大丈夫」


「警邏の宿舎に戻らなくていいんですか?

 チェットさんの変なお友達が、またくるのでは?」


リリーさんは眉を寄せて、私の顔を見ます。


「私は、メイと言います。はじめまして、リリーさん」


「メイさん? チェットの知り合いなの?」


「いいえ、先日から、ピーナさんのお店で働いているんです。

 だから、警邏の宿舎にいるってミリアさんに聞きました」


リリーさんは、ちょっとだけ笑って、挨拶を返してくれました。


「そう、ミリアが言ってた新しい子って貴方なのね。

 はじめまして、リリーよ」


「どうして、家に?」


「チェットが帰ってきたとき、私がいないと、

 チェットが困ると思って」

リリーさんはなんでもないって感じで言います。


「リリーさんは、チェットさんが好きなんですか?」


ミリアさんの話では、チェットさんは酷い男で、

リリーさんを苦しめてばかりいるって言ってた。


なんでもないような顔で、チェットさんを待つリリーさんの

心を聞いてみたくなった。


「ミリアから、聞いたのね。

 そうよ。あの人には、私がいないと駄目なの。

 あの人は、どうしようもない人。

 でも、あんな人でも私の夫なのよ」


リリーさんの言葉は、すらすらと

どこかの台本のセリフのように出てくる。


「あの人は、いつか真面目になってくれるわ。

 今は、馬鹿な事ばかりしている人だけど、

 子供の頃から知ってるの。

 根は真面目なのよ」


下を向いたままで、リリーさんは、まったく痞えずに

チェットさんのための言い訳を言い放つ。


なんだろう。

リリーさんの言葉は、私には耳障りのいい

セリフにしか聞こえない。


リリーさんに、私が聞いたのは、


「違います。リリーさん。

 チェットさんが好きなんですかと聞いたんです。

 さっきの言葉は、その答えではありません」


真っ直ぐに、リリーさんを見詰める。


リリーさんは、一瞬顔を上げたけれど、

私を目線をあわそうとしなかった。


「好きとか、嫌いとかではないの。

 あの人には、私しかいないの。

 そう言ってるのよ」


好きとか嫌いとかではない。

その言葉で、なんとなく、ストンと納得してしまった。


「リリーさんは、チェットさんの事、

 好きで、嫌いなんですね」


リリーさんは、そらしていた目を私に向け、

手のひらをぎゅっと胸の前で握り、強い口調で言い返してきた。


「貴方に、何がわかるのよ。

 部外者は、勝手に私のことに口を出さないで」


関係ない。

口を出さないで。


そんな言葉を放つたびに、

リリーさんの心が、悲鳴を上げ始めたのを感じた。


今の言葉は、自分の心を守る為。

でも、そのままでは壊れてしまう。


駄目だ。壊れては駄目。


昔、見て、知った。

心が壊れた、かつて親友だった人。

手を離したから、そのままで放置したから、

壊れてしまった。


手のひらから砂がこぼれる様に、

私には何もつかめない。

彼の心はもう何も映さない。


首をぶるっと強く振る。


囚われるな。今はリリーさんのことだ。


好きと嫌いは相反する思い。


でもそれには、どこかの別の感情も混ざっていて、

ぐちゃぐちゃと色が混ざるように変化していく。

本人ですら、理解できなくなる。

本当の自分の心。


心の崩壊を止めるには、本当の心を見つけなければいけない。


本当の心の色を探すには、そう、原点に返ることだ。


高校の時、校長先生は言ってた。

迷った時は、何事も原点を見つめることで、

解決に導くことができる。


原点、リリーさんにとっての原点はどこだろう。

幼馴染だって言ってたね。

なら、子供の頃かな。


「ねえ、リリーさん、子供の頃のことって覚えてる?」


原点を知るための問い。


「え? ええ、 あの、そう、子供の頃ね。

 よく、憶えているわ」


リリーさんの顔が、泣き顔からびっくりした顔へ、

そして、昔を懐かしむような優しい顔になった。


「幼馴染だったんでしょ。ミリアさんたちと」


「ええそう、ミリアは昔からケンカも気も強くて、

 いじめられて泣いてばかりの私を、守ってくれる王子さま」


「へえ、ミリアさん。

 かっこいい」


「チェットやスミフも一緒に、よく遊んだのよ」


「スミフさんも?」


「そう、二人は、この辺の子供達の憧れの的だったんだから」


へえ、スミフさんが。


「皆で、かくれんぼや縄跳び、石蹴り、いろいろしたわ」


「その頃のリリーさんって、泣いてばっかりだったの?

 楽しいことなかった? 夢はあった?

 将来、何になりたいとか。

 お姫様とか」


「楽しいことも、たくさんあったわ。

 夢、そうね、私は、どうだったかしら。

 ミリアは、お嫁さんだったわ。

 スミフは、お父さんと同じ職人。

 チェットは、役人だったり、商人だったり」


「ふうん。ねえ、思い出して。

 リリーさんは、本当は何になりたかった?」


顔を交わせて、真っ直ぐに目を見つめて、

リリーさんの心に届くように、尋ねる。


リリーさんは、私の目の中に

何かを見つけようとするように、

じっと私の目を見返していた。


「どうして、そんなことを聞くの?」


「それは…」



バキっドガっ



答えようとしたら、いきなり、リリーさんの家の戸が

乱暴に蹴り開けられた。


「やっと、かえってきたか。

 リリーさんよ。 チェットはどこにいるんだい」


びっくりして、顔を戸口に向けるとあの人攫いの怪しい男。

とあと3人。

人相が、間違ってもいいとはいえない風体の男達が、

壊れた戸口を踏み越えて、入ってきた。





 



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