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箱をあけよう  作者: ひろりん
第2章:無人島編
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出航です。

両脇を岩に囲まれた、細い山道をゆっくりと降りて、

つきあたり。

そこには、大きな木の根が張り巡らされている

一面の壁。


レヴィ船長とカースが、短剣で、蔦や根っこを

切っていくと、照の言ったとおりに、あの湖の側にでた。


あいかわらず、鏡のように澄んだ湖。

外から入る光が岩や湖に反射して、周りを照らしている。

ちょっと荘厳な雰囲気がする場所だ。


(この場所は、古代遺跡の神殿跡だって彼は言ってたの)


へえ。

さすがにこういうことには、詳しかったんだね。


でも、そういった趣味も理解も

あんまり興味が無い。


ロマンじゃお腹は膨れないのよ、照。


さあ、早く皆を、レナードさんを起こして

美味しいご飯をいただきましょう。


待っててね。私のお腹。


まだ見ぬご飯の誘惑に思わずスキップして

しまいそうだが、ぐっと我慢する。


これ以上、お腹を減らしてどうする。


すでに、お腹の皮と背中の皮がくっつきそうでした。










広場に戻ると、皆は目が覚めていました。

無事に帰った私達3人をみて、一同、大きなため息をつき、

安堵した顔をしてました。

ちょっと涙ぐんでいる人もいたような。


なんて、説明したの、セラン。



「ごくろうさま。よくやったな。メイ。」


「おかえりなさい、船長、カース、メイ。」



セランとルディが、にこやかに出迎えてくれました。


セランは私の頭をぽんぽんと叩いて、褒めてくれました。


セランって、そんなに年寄りって訳じゃないのに、

お父さんみたいだよね。


うん。単純だけど、褒められると嬉しいな。

顔がにやけてきます。


ふふふ、そう、思い出しました。

セランにはお土産があったのです。


「セラン、これ、薬。あげる。」


ルーレの花です。


「おう、気が効くな。あん? なんだ、このへたくそな花輪は。」


セランの持っているのは、照が作ったネックレス。




(あの男、殺していい?)


待て待て、あれはかなり最初につくった物なんだから

へたくそでも当たり前でしょ。


「まあ、乾燥させて粉にしてしまえば、いい薬になるからいいか。」


乾燥させて、粉にするの?

うえぇ 粉薬嫌い。


(メイが痛くならないなら、いいんじゃない。)


そうよね。頭が痛くならないように、

考え事や心配事はやめよう。


はっ、この匂いは。









レナードさんのご飯。








匂いに振り返ってみたら、ルディが美味しそうな、

食事の用意をしてました。


「こっちにきて下さい、船長、カース、メイ。お腹すいてるでしょ。」


そのまま、ルディに手を取られ、席まで案内してくれました。


私とレヴィ船長、カース、セランが同じテーブルにつき、

そこに、美味しそうな匂いのご飯が、並んでました。


「いま、飲み物を持ってくるね。」


そう言って、ルディが側を離れるところで、気がついた。


仕事、私もしなくちゃいけないよ。

私も手伝いを。


そう思って、席を立とうとしたら、ルディに肩を押さえつけられた。


「メイは座ってて、今日は特別だよ。」


そのとたんに、私のお腹が、返事を高らかにしました。


ぐぅうううう。


「ほら、僕は大丈夫だから、食べてよ。」


「でもっ。」


ぐぅぅぐぐぐぅうううう。


ああ、お腹が。


必死で、お腹を押さえるけど、

一向に言うことをきかない。


背後で、ぷっと笑い声がした。

そのとたんに他の皆も、一斉に笑い出した。


「おう、メイ。腹の方が正直だ。」

「すげえ音だったな。初めて聞いたぜ、あんな大きな音。」

「それだけ腹減ったんだろ。早く食っちまえ。」

「よく頑張ったな。たっぷり食って、ゆっくりしろや。」


周りの皆はにこにこ笑いながらも、ご飯を勧めてくれる。


レヴィ船長もカースも笑ってた。


ありがとう、皆。

がっつり食べさせてもらいます。









ご飯を食べた後、レヴィ船長は皆に、

この島で一体何が起こっていたのかを、簡単に説明した。


この島には人を眠りに誘う物があって、眠ってしまった船員達は、

目覚めなければ、この島で死んでいたかもしれなかったと。


眠ってしまった皆を起こすために、

レヴィ船長とカースとメイが、岩場に上って行ったこと。


メイが眠りの原因の物を突き止め、それを排除した為、

皆は無事に目覚め、明日にでも、この島から出られるだろうとも。



うーん、随分簡単な説明だ。

ちょっとだけ、事実は違ってたけどね。

それに、かなり省略している。


私は、岩場を登ってないし、

照のことも言ってない。


眠りの原因はあの鏡だったから、

割っちゃった今、排除したことになるのか。




話は終わった時、大まかな話の筋はセランから

聞いていたんだろう、驚いた顔をしている人はいなかった。

皆の顔が、ほっとした表情をしていた。


眠ってしまう夜、目覚めない恐怖は終わったんだ。

皆の顔が明るい。



「明日、日の出とともに出航する。

 準備を急げ。」


レヴィ船長の言葉で、皆の顔がびしっと引き締まる。


ああ、よかった。


そう思ったとき、欠伸が出た。


口をあわてて押さえたけど、

手の大きさが口の大きさに間に合ってない。


「もう寝ろ、明日は早い。」


「今日は良く頑張りましたからね。早く寝てしまいなさい。」


二人にかわるがわるに言われて、お礼を返して、

張ってあったテントの中に入って横になった。


お腹一杯になったら、すごく眠いです。

ああ、瞼が落ちる。

でも、その前に、確かめとかなきゃ。


照、明日の出航の時、私、何かすることある?


(特にないわ。朝になったら、メイの側を離れて、海流に同化するけど、

 船が出航して、無事目的の海流に乗ったら、メイの側に戻るから。)


そう、よろしくね、お休み、照。


(おやすみなさい、メイ)



そのまま、すうっと眠りに落ちていった。








「メイ、起きろ。朝だ。」


レヴィ船長の声。ばっちり眼が覚めました。


眼を覚まして、周りを見渡すと、皆、片付けはじめている。

凄く手際が良い。

顔を洗いに行って、帰ってきたら、寝ていたテントすらなかった。。

私は、マートルとルディと一緒に、鍋や食器を

リアカーに乗せ、船まで運ぶ。



空が白くなりかかっている。

すべて、船に積みおわり、皆が乗船し終わった。


海の水が渦を巻きはじめ、外海へと動き始めた。


「碇をあげろ。出航だ。」

レヴィ船長の声が高らかに響く。



岩に囲まれた場所とするりと抜け、

船は風もないのに、真っ直ぐに外海へと進んでいた。


大丈夫かな、照、帰ってこれるよね。


はらはらしながら、波の動きをじっと船の縁で見つめていた。


船は無事に島から離れ、大きな外海の波が

船の横腹に当たる音がした。


「面舵。」


レヴィ船長が合図する。


バルトさんが復唱する。


船員が鐘を鳴らす。


船の向きが右へ、動き始めた。


島影が後ろに小さくなりかけた頃。

海を渡る風が、強く顔に当たり始めた。


「帆をはれ、追い風だ。 航路に戻る。」


レヴィ船長の声に、皆が嬉しそうに声を返す。


「おう。帰るぞ。」


ずっと船の下をみていたら、

小さな波しぶきが下から飛んできて、

メイにあたった。


(ただいま。メイ)


照の声。

よかった。

帰ってこなかったら、どうしようと思ってたよ。



(もう、眠るわ、またね、メイ)


疲れたんだろうな。

言葉少なで、照は眠りについた。



船の舳先から、太陽が昇っている。

真っ白い光が、すべての夜を塗り替えていく。


船は強い風を受けて、ぐんぐん進んでいく。


レヴィ船長やカース、皆の国はどんな国なんだろう。

まだ見ぬ国にわくわくしてきた。


「メイ、仕事に行こう。」



「はい。」


ルディから声を掛けられ、私は体軽く

厨房に降りていった。


さあ、今日も一日が始まる。


































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