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箱をあけよう  作者: ひろりん
第1章:船上編
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男の子になりましょう

ルディが連れてきたのは二人。


一人はあの時医務室にいた緑色の目の彼。


3週間ぶりにあえた彼の姿にどきどきした。

少し長くなっていた赤褐色の前髪から

見える緑の目が、明かりとりの窓から差し込む

光に反射して、まるで猫の目のようにきらきらしていた。



じっと彼を見つめていたら、どこからか

黒髪の男の人が出てきた。


いや、そばにいたのだろう。

私が目に入れなかっただけなんでしょうね。



黒髪の人は水で薄めた感じの水色の目をしていた。

にこりともしないその表情がちょっと冷たそう。


なんとなく、どこかで見たことがある容貌をしていた。

でも、外人に知り合いなんていないし。

芸能人に似た人いたかな。



黒髪が私に話しかけてきた。


「貴方はどこの国の人ですか? 何故、あんなところで漂流していたんです。

 この船の航路を知っていたのですか?

 海賊の一味ですか?」



うーん。わからない単語が沢山でできた。


「航路? 海賊? その言葉わからない。」


首をかしげて聞き返すと、すっと目を細めて、にらんできた。


うぅ だって、知らないんだもの。

説明プリーズ。



「航路とは、船の進んでいく進路のこと。海賊とは無法者、無頼漢、犯罪者です。」


航路は何とかわかったけど、

その後の言葉はもっと知らない言葉だったよ。

どうしよう。



「カース、まだ難しい言葉は教えてないんだ。もっと子供に話す言葉を選んでやれよ。」


セランありがとう。


「面倒ですね。」チッ。


舌打ちしたよ。この人。



「メイは海賊ではないよ。だって子供だし、多分 僕と同じ歳くらいだよね。

 それに、メイは驚くほど何にも知らないんだよ。」


「そうだな、スパイとかでもありえないな。色気が無さ過ぎる。」


ルディとセランは私のこと、今、かばってくれたんだよね。

でも、なんとなく、頭のはじでちくちくする。



「可笑しな格好した漂流者、それも、この海賊がよく現れる海域で。

見たことも無い持ち物。毒物を持ち込んでいるかもしれません。

言葉の通じない振りをしているのでは?」



カースさん、怖いです。

それに、またわからない言葉でてきた。

きっ聞くべき?


「漂流者? 海域? 毒物? セラン、 ルディ何?」


怖かったので、カースさんから目を逸らしちゃった。


「あーっと、後で説明してやるよ。

 カース、この三週間ずっと、見てきたんだ。

 振りをしていたら俺にだってわかる。

 それに、さっき彼女の持ち物、食ったけど

 なんともないぞ。毒の持込はないな。」


「食べ物らしきものありましたか?」


「ああ、あのきらきらした袋の中は砂糖菓子みたいだ。

 あと、薬ビンみたいな中にはいっていたのは、

 ハーブみたいなものだな」


「そう、すっごい甘いんですよ。はじめて食べました」



「この船唯一の船医がおかしげなものを口にしないでください」


厳しい口調でたださえも怖いのに、右のこめかみに青筋が浮かんでます。

いやぁ、カースさんは怖い人です。


「それに、やっとケガが治ってきたので働きたいって言ってんだ。

 普通の感性をもった普通の子だよ。

 言葉はまだカタコトなんだ。このまま、次の港でそのままおろしたら、

 あっと言う間に、だまされて、奴隷いきなのは目に見えているだろ。

 この船はつぎの港に着くまで少しでも、世間の常識と働ける仕事の目星を

 つけてやったって罰は当たらないと思うんだがな」



「貴方は宣教師ですか?医者でしょう。施しは誰かに任せとけばいいのでは?

 次の港の教会にでも連れて行けば、面倒見てくれるでしょう。

 この船の中で揉め事は困るんですよ」



「漂流者を引き上げて助けるのは船乗りの義務だろうが」



「ですが、この船に火種をばら撒く必要がどこにあるんです。

 この子は女の子なんですよ」



「知ってるのは、ここにいる4人だけだ。

 黙っていれば、ばれない」


セランさんとカースが難しい顔でにらみあってる。

私のことで弁護してくれているんだろうな。

カースはとっても意地悪を言っている気がするので、

言い捨てにする。さん なんてつけてやるものか。

カースで十分だ。

でも、ここで見捨てられたら、とっても困る。



「あの、働く、私、駄目、怒る、ごめんなさい」



頭を思いっきりさげて謝る。

私が、この部屋を出るのは駄目、に理由があるみたいなのは

なんとなくわかった。


じっと黙って聞いていた緑の目の彼がゆらっと私の前に

たった。


「メイ。お前は何が出来る?」


張りのあるテノール。

一言、彼が話すだけで、全てが注目する。

言われて初めて自覚するというのだろうか。

そういえば、私に出来る事って、なに?

緑の目をじっと見つめ返していると、考える前に口からするりと答えが出てきた。


「私、簡単、お掃除、片付け、料理 する。」


彼の目を見ながら、答える。


彼の瞳に私の顔がうつってる。

綺麗な緑色なのに、不思議な光がゆらゆらと揺れて、揺り籠に似た安心感が広がっていた。


「ルディ、明日から、朝は甲板磨きに厨房の下働き、

 午後は家畜の世話と洗濯、夕方は各所の雑用だ。

 一緒に連れて行け。 無駄飯分くらいは働いてもらおう。」


うん? 何言ったの?

わかんないよ。

もっとゆっくりプリーズ。


「おい、ちょっと厳しすぎないか?

 病み上がりだぞ。」


「無理しないように、ルディが面倒みればいいだろう。

 それなら、見張りも兼ねられるし、ルディの仕事も早く終わるだろう。」


どうやら、話が決まったようだ。


カースが苦々しい顔をしてる。

ということは、私、この船で働けるの?

恩返しOK?


ルディが嬉しそうに返事する。

「はい。任せてください。レヴィウス船長。」


レヴィウス船長?

それが、この人の名前?

緑の目の彼を見上げる。


「レヴィ船長? 貴方の名前?」


うん、違ったかな?


「ああ、そうだ。

 メイ、俺が、この船の船長だ。

 明日から、お前はこの船で働く。

 だが、女ではなく男としてだ。 

 この船には女はいない。

 だから、問題が起こらないように、男になるんだ。

 わかったか?」


はい。解りましたよ。

そうゆう風にゆっくりと簡単な言葉で話してくれたら、

解ります。



しっかりと頷く。

「はい。男、なる。よろしく、頑張る ありがとう、レヴィ船長」


にっこり。感謝笑顔全開です。

かっこいい上に理解ある男性、いいなぁ。


レヴィ船長はちょっと目を見開いて、私の顔を

じっと見ていましたが、その後、にやりと

笑って言いました。


「ああ、頑張って働いてもらおうか」


ちょっと笑顔が黒い気がするのは

気のせいでしょうか?




その後、セランさんとレヴィ船長、カースさんは

他の事で用事があるらしくて、そろって医務室を出て行きました。


部屋には、私とルディくん。


「明日朝早いから、今日は早く寝たほうがいいよ。

 そうだ、服を着替えたほうがいいよね。

 後で、持ってくるよ。

 夜明けに向かえにくるからね」


朝早いのね。

了解です。


「ありがとう。ルディ。よろしく」


さぁ、明日から働きます。






 


















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