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箱をあけよう  作者: ひろりん
第2章:無人島編
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予期せぬ遭遇です。

見つけました。ありました。

レーンの花、月光草です。


今日一日探して探して、見つからなかった黄色い花の群生地。


あんなところにありました。


セランは山間部とかいってたけど、

あれは、岩場と岩場の間ではないですか。


ちなみに、あの岩場は、探すポイント26箇所の最後の候補地。

一番の難関なポイントだから最後にまわしたそうです。


うん?

難関なポイント?

でも、難関でも行かなくちゃね。


あそこに行けばセイレーンに会える。

はずだよね。

で、会ってどうするんだっけ?


輪がなんちゃらって言ってたけど、

詳しくは覚えてない。


あの子、もう一回出てきて教えてくれないだろうか。

一回ですべて覚えるなんて、超人スキルがあるはずないのだ。


レヴィ船長とカースが岩場をじっと見ながら、

いつのまに作ったのか精巧なこの島の地図を

見比べて、あっちから上って、こっちから下がってとか言ってます。


一体、いつの間に地図が出来ているんでしょうか。



「メイ、湖に行って来い。」


レヴィ船長の言葉で我に返る。


「はい。いってきます。」


よし、花は見つけたから、後はどうするか

教えてもらおう。

他力本願万歳だ。


意気揚々と、湖に向かって、待つこと数時間。

立ってた足が疲れてきて、地面に座った。


朝日が昇ってきそうなぐらいに空が白んできました。


結果、会えませんでした。


ふう。

待ってないときにはホイホイ現れるくせに、

待ちわびている時には姿を見せないなんて、

幽霊さん、酷くないですか?



待ってる間に眠くなってきて、うとうとしてしまい、

気がついたら、体育座りのまま、寝ちゃってました。


あまりにも帰りが遅いので、

迎えに来てくれたカースに揺り起こされるまで、

熟睡してました。


カースは焦った様子で、乱暴に揺さぶりました。

そして、私の脳みそが揺れました。


「メイ、良かった。眼が覚めたのですね。」


あまりに乱暴に起こされたので、文句を言おうとしました。

が、やめました。

カースが、泣きそうな顔をしていたので。

真っ青な顔色に下がった片眉が震えてました。


カースに随分、心配かけたみたい。


「ごめんなさい。カース。」


よく考えたら、こんなとこで寝てしまった私は心配されて

当然なんだよね。そんなことも考えないで、寝てしまうなんて。


がくっと頭をうなだれて、

眼をつむって、反省いたします。

今度は、本当に。


そうしていたら、

そっと、私の瞼の上にカースの唇が押し当てられました。

そして、そのまま、ゆったりと抱きしめられました。


「眼が覚めて、本当に良かったです。」


カースお兄ちゃん。

本当に至らぬ馬鹿な妹です。私は。


心から反省しました。

ここでは寝ないようにします。



カースの腕の中はとってもあったかいです。

ほっこりして、幸せ気分になります。


しばらくして、カースの腕から開放され、

ちょっとだけ残念だなあと思いながら、カースの顔を見上げました。


「馬鹿は早死にしないと昔から決まってるんですが、

 万が一があるかもしれないので、

 時と場合を良く考えて臨機応変に行動しましょうね。」


あっ 

わざとわからない難しい言葉使ってる。

でも、悪口はわかるんですよ。 


顔を膨らませて、カースを睨み返す。


カースの顔は人をからかっているような顔。

いつものカースの顔です。


さっきまでのしおらしい顔はなんだったんだ。

ちょっとだまされたような気分です。


「それで、彼には会えたのですか?」


「いいえ。ずっと待ってたけど、会えなかったです。」


そうだ、どうしよう。

あの花の咲いている場所にいっても、

どうしたらいいのかわからないままだ。


「朝になりました。広場に下りて、皆を起こしましょう。」


そうですね。とりあえず、行きましょうか。


高台に出ると、昨夜の内にどうやら靄が出たらしく、

広場の周りや森の木々に岩場の陰。

あちらこちらが靄に包まれてました。


朝日が靄に当たって少しづつ薄くなっていますが、

昨夜、あれほどくっきりと見えた岩場のレーンの花の群生地も

真っ白になっていて、見えません。



昨日の夜は湖の側にいたし、途中で寝ちゃったけど、

そんなに寒暖差ってあったっけ?


確か、靄って寒暖差があったり、雨が降った後とかに

起こる現象だよね。

でも、道は乾いている。


「カース、昨夜って寒かったですか?」


歩きながら、前を行くカースに話しかけた。


「いいえ。今までと変わりなかったですよ。

 だから、この靄はおかしいですね。」


やっぱり、カースも気がついていたんだ。


下に降りていくにしたがって、濃くなっていく靄。

前を行くカースの背中も見えなくなっていた。



道はひろいので、足を踏み外すことはないけれど、

前がきちんと判別しないのは不安。


「手をつないでもいいですか。カース。」


迷子になると、やっかいですから。私が。


左手を前に伸ばしました。


その手は、ぎゅっと握られました。

小さな手に。


うん?


カースってこんなに手が小さかったかしら。

私よりもずっと小さくて、柔らかな子供のような手。


なわけないでしょ。

この手誰?


ぐいって引っ張ると、

靄の中から、10歳くらいの可愛い女の子が

私の手をぎゅっと握ってました。


じっと見上げてきた女の子の顔に見覚えがあります。

あれ、最近見た顔だよね。

綺麗な金の髪に、金の眼。

見つめていると、引き込まれそうです。

なんだか、意識がぼうっとしてきました。


「貴方、どうして、眠らないの?」


言葉が勝手に私の口から出てきます。

「セイレーンを探してるの。」


少女は険しい顔をしはじめました。


「何故、探してるの?」


「頼まれたから。シャチ達とあの男の子に。」


「男の子?シャチ?」


「助けてくれって。 だから、探してる。」


少女は眉を顰めてます。


「助けるって、誰を、どうやって、貴方ナンなの?」


「わからない。でも、男の子もセイレーンも苦しんでいるのはわかる。

 だから、会って、話をしてみたい。だから、探してる。」


「話? 私と? 私は化け物よ。」


「でも、助けたいの。だから、会いたい。」


ちょっと乱暴に、つないだ手を離される。


「いいわ、私のところに来なさい。今から、招待してあげる。」


怒った顔で、私をみている。

でも、その眼はなにかを怖がっているようだ。

どうして?


私は、なんだか、意識がはっきりしない。

靄といっしょでぼんやりした感じ。


足は相変わらず、歩いていたけど、

上に向かっているのか、下に向かっているのかわからない。

頭と体がふわふわして、体がゆらゆら揺れる。


考え事が出来ない。

頭の中がただ真っ白で、

だんだん、私が誰なのかもわからなくなりそうだ。


そうして、どのくらい歩いただろう。

誰かに、後ろから背中を押された。


そのとたんに、いままで歩いていた足元がなくなった。


体が宙に投げ出される感覚で、恐怖が体を凍りつかせる。

落ちる。



一瞬で頭の靄がはれる。

それと同時に、落ちている現状と今いる場所を一瞬でわかった。


ここはあの岩場。

切り立った岩場から、下に見えるのはレーンの花の群生地。


岩場の天辺からレーンの花が咲いている窪みまで

ぱっとみてビル3階分くらいある。


ここで、怪我したら、ゾンビになる。

足もげて、頭もげて、手がもげて、もしかしたら

頭もぐちゃぐちゃに。


いやぁあああああ。




悲鳴を心のなかで、精一杯あげて落ちた。


ぼす。



誰かに受け止められた。


私は頭を下にして、落ちていたので、

よくタロットカードに書かれている吊られた男のような

逆様の格好でとめられた。


現在、私の頭と地面の距離は約20cmほど。

私の目に映るのは足。


そして、その足の持ち主は私の両足をしっかり

抱えていた。


助かった。



そう思ったとき、意識がふっと跳んだ。











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