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箱をあけよう  作者: ひろりん
第2章:無人島編
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探検しましょう。

手を穴に入れて下を探っていたはずなんですが、

滑って落ちました。


ええ、もう、頭からずっぽりと。



で、顔で着地しました。



ここで、反射神経のあるないを問われると

私は、猫の様に丸まることすら出来なかったです。

でも、人間なのでいいことにしたいと思います。


顔で着地して、下は土です。

同然、顔は擦り剥けています。

額と頬と鼻の頭です。

この三点がほぼ同じ高さにあるのは

日本人特有の平面顔だからです。

民族的特長ですね。

だから、気にしてません。ええ、ほんとに。


血は出ていないようですが、擦りむけたところが痛いです。


涙目になりながら、落ちてきたところの穴を振り仰ぎました。


下から穴までの距離は3メートル位でしょうか。

ちょっとした井戸のような高さです。


穴から月の光が皓々と照らしているため、

私のいる場所はスポットライトのように明るいです。


私の周囲は暗くてなにがあるのかは

解りませんが、かなり広い空間のようです。


落ちてきた穴からは上がれないみたい。

穴の周りに壁はないので、

ぽかっとひろい天井に穴が開いている状態。


足場になるものがあればいいのだけど、

やっぱり奥の方に行ってみるしかないようです。


私がここにいることは誰も知りません。

ということは、朝になっても助けはこないかも

しれないという事。

自力で脱出方法を見つけなければ。


明かりが欲しいです。

暗い奥に進むのにはちょっと勇気がいります。

でも、行かないと欲しいものは手に入らない。

つばをごくりと飲み込みます。


足を一歩踏み出したその時、


「おい、メイ、そこを動くな。」


この声はレヴィ船長。


「何を夜中にふらふらして穴に落ちてんですか、馬鹿ですね、貴方は。」


カース。


「派手に落ちてたけど、怪我してねえか?」


セラン。


上の穴から、こちらを覗いている人の頭の影が見えました

三人の声が聞こえてきたとき、

一瞬、願望がみせる幻想かと思いました。が、

それならば、カースはもっと優しい言葉を言ってくれるはずなのです。

現実です。


ああ、よかった。


「今、ルディがロープをもって来るから、そこ動くな。」


そう言って、船長が穴から降りてきてくれました。

レヴィ船長は足からざっと滑るようにおりて

すたっと着地しました。


かっこいいです。

助けに来たヒーローって感じの登場ですね。

惚れ直しちゃいます。



でも、穴が広がったみたいで、レヴィ船長の頭の上に

落ち葉の雪崩が降って来ました。


すぐに気がついてよけたけどよけ切れなかったみたい。

頭や肩や背中が落ち葉だらけです。


レヴィ船長は体のあちこちをはたいて落ち葉を落としていたけど、

髪の毛にかなり絡んでます。


「レヴィ船長、髪に落ち葉が。」


そう言って、私は船長の髪に手を伸ばしました。

船長は私の側まで来て、

私の眼の高さまでかがんでくれました。


「ん。」


これは落ち葉を取ってくれということですね。

レヴィ船長の髪はさらさらしてました。

赤褐色の髪から落ち葉を取り除いていきます。

あらかた取り除いたけど、もうないかなっと。

仕上げに船長の髪に息を吹きかけて埃を飛ばしました。


うん、取れたかな。いい感じ。


頭をなでていると、私の手をレヴィ船長がつかんで、

そのまま手の平を口元に持っていき、ぺろってなめられました。

レヴィ船長の緑の目がじっと私を見つめます。


舐められている手のひらには無数の傷跡があります。

軟膏のおかげで、痛くはないいのですが、くすぐったいです。

でも、傷に気がついてくれたんですね。

ありがとうございます。


「レヴィ船長、大丈夫、手はもう痛くないです。

 痛いのは今は、顔だし。」


感謝の笑みを満面に浮かべてレヴィ船長を見上げる。


レヴィ船長は私の手を離して、屈めていた姿勢を元に戻しました。

顔はあさっての方向を向いてます。

どうしたんでしょうか?


「顔を怪我したんですか?」


あら、カースも降りてきてくれたんですね。

カースが近寄ってきてくれて、ポケットから軟膏を

取り出しました。


「セランから預かってきました。 随分赤くなっていますね。

 痛みますか?」


そういいながら、軟膏を傷に優しく塗ってくれました。

カースの冷たい指がすっーと私の傷の上をなぞっていきます。


顔を見上げると、自分のほうが痛そうな顔をしてます。

心配させてごめんなさい。


「大丈夫、軟膏ありがとう、カース。」


「それにしても、顔から落ちるって仮にも貴方は女の子でしょう。

 傷が残ると大変ですよ。気をつけなさい。」


はい。お兄様。


軟膏を塗り終わった頃、レヴィ船長が穴上のセランと話してた。

カースも話しに加わった。


私は、今、一人、ぽつんと立ってます。


そうしたら、どこからか、水の流れる音がしました。


奥からですね。


ちょろちょろではなくて、

川が流れるような音です。


そおっと後ろに行ってみようとしたら、たちまち止められました。

二人とも、後ろに眼がついているのでは。


「動くなっていっただろ。 メイ」


「縄で縛られたいんですか?」


二人とも怖いです。


「水の音がするんです。 あっちから。」


そういって、奥を指差した。


レヴィ船長とカースは目を合わせて無言で会話。


「セラン、松明とロープを投げろ。ちょっと奥に行ってくる。」


セランはその言葉で松明と予備のロープを渡してくれた。


「朝になってからの方がいいんじゃねえか? 夜動くとろくなことないぞ。」


「なりゆきだ。 それに、ここは今日探していた水源かもしれない。」


レヴィ船長は松明に火打石で火をつけて、カースに渡しました。


「朝になるまでに、戻らなければ、バルトに伝えて迎えを頼む。」


船長は私の背中に手をあてて、カースの後ろに行くように

誘導してくれてます。


カースを筆頭に私、レヴィ船長。ですね。


真っ暗の中を松明の光が照らします。


大樹の根っこはびっしりとこの空間を守るかのように

縦に張り巡らされています。

私達がいる空間は、30畳くらいの大きな空間。

繭のように大樹の根っこが円形に囲っているのです。


周りがもっと見えるようにカースが松明を右に左にと

移動させて、やっと見つけました。


大樹の根っこと根っこの間。

隙間のような空間に道らしきものがありました。


耳を澄ませてみると、そこから水の音がしました。


レヴィ船長は腰のベルトに挿した短剣を抜き、

道の周囲を切って人が通れるようにしてくれました。

私の大きさなら、なんとか通れるのだけども、

レヴィ船長やカースは無理ですから。


道にはいると、そこは、石畳でした。

昔の文明の跡地って感じの誰かが大昔に整備した道。

丁度、レヴィ船長達の身長ぎりぎりの高さ。

多分、2mぐらいかな。

横幅は人が一人とおるのがやっと。


船長やカースの足音がかつかつと音を立てて、

石畳に響いていきます。

私の革靴は響きません。



先には何がまっているのでしょうか。

でも、この二人と一緒なら安心です。


さあ、行きましょう。



















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