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箱をあけよう  作者: ひろりん
第2章:無人島編
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とりあえず探します

レナードさんが大きな鉄串のようなものに

お肉を刺してました。


大きさは私の身長と変わらないかもって

感じのお肉。


正確にいうと豚か何かの動物の丸焼きです。

それに、いろんなスパイスを練りこんでいきます。


私は、船から取ってきた薪を組む。

お肉に満遍なく火が通るように、組み方は円になるように、

薪を組んでいく。それから中央に円柱型に薪を組んで火をつける。


風上になるように向きを計算して、 

焚き火の両脇にマートルが串を2本地面に突き立てた。

串の頭部分は丸く穴が作られていて、そこにさっきレナードさんが味付けしていたお肉の串の量端を通す。


これが、お肉の丸焼きのためのセットです。

ぱちぱちと火花がお肉の油と匂いを出し始めました。

たまらない匂いです。


レナードさんは焼き具合を確認しながら、時々

串をくるくる回して、満遍なく火を通します。


時折、ソースのようなものをかけてます。



そういえば、私、お昼ごはんを食べてない。

部屋で繕い物しながら朝食の残りのサンドイッチを食べたのは、

随分前です。


そして今、多分午後三時を軽く越えた頃、

レナードさんたちが用意しているのは夕食。


船の行く先が気になって、カースを探して廻っているうちに

お昼がすぎていったんだよね。

望まぬダイエットは辛いです。


お腹が酷く鳴き始めたのは当然だよね。

ぐーぐーとうるさいです。



私のお腹の自己主張を無視できなかったのか、

レナードさんは、ポケットの中から白い丸いものを出して、

私の手のひらに乗せてくれました。


「食っとけ。それで、夕食まで我慢しろ」


これは、いつもの硬いパン。

チーズのような香りもするけど、美味しそうです。

レナードさん、いい人です。


「ありがとう。レナードさん」


大きく口を開けて、ばくっと噛み、べりっとパンの繊維を食いちぎります。

そのまま、口の中の唾液でやわらかくして咀嚼。

この硬いパンも食べなれてきました。

もう、上級者の食べ方です。


「喉に詰まらせるな」


そういって、ラルクさんが、そっとコップに水を入れて渡してくれました。

お腹に染み渡る味です。


ごくごくお水を飲み干し、最後のパンをごくりと飲み込んでお礼を言いました。

「ありがとう、ラルクさん」



ラルクさんは竈の上に大きな平鍋を用意して、

中に多分今朝練っておいたパンを入れました。


竈の火が大きくなっていったら

鍋の中のパンがプーって大きく膨れました。

膨れたところで、裏返し。

うん、綺麗な狐色です。


「メイ、はい」

ラルクさんに残りのパン生地とフライ返しもどきの木ヘラを渡されました。


はい。がんばりますよ。

よっ、ほっ、とひっくり返すのが慣れてくると、ホットケーキみたいで面白い。

パン自体はインドのナンみたいな感じ。


ラルクさんは後ろで野菜をざくざく大きく切っていた。

それをマートルが串で刺していく。


野菜の串はお肉の焚き火の側で

鮎を焼いているみたいに、斜めに土に刺していく。



これはバーベキューですね。

野外の料理の王道ではないですか。



日本のBBQは鉄の網の上で焼くものだったりするけど、

人数多いからね、この場合、丸焼きが一番かもね。


焼き鳥屋さんって匂いで客を呼び寄せるって聞いたこと在るけど、

丸焼きも同じだよってくらい良い匂いです。






夕食は基本、立食?でした。

皆、土の上、草の上、木の根っこの上などに直接座り、

大きめに組んだ薪の周りでご飯を食べます。



船の外での食事って、この世界に来て初めてだけど、開放感がある。 

それに、潮以外の匂いも久しぶり。

天井がないっておっかない気がちょっとするけど、

圧迫感がないので、のびのびすごせる。


そう思っているのも、私だけじゃないはず。

だって、皆の顔が、のんびりしてる。

それに、なんだか皆も船外での食事に手馴れている感じ。


大きな籠一杯のパンを焼き終わりました。

後は、レナードさんのお肉を待つのみです。


私は後片付けのための盥を探してたら、今度は、ルディが呼びに来ました。

今日は盥は必要ないそうです。 何でだろ?



その答えはすぐ解りました。



草刈です。

私達は、大きな背負いの籠を背負って、周りに生えている雑草を鎌で刈ってます。

ルディと二手に分かれて、広場からほぼ真っ直ぐに刈り込んで行きます。

迷子になったら刈っていった先を見れば、広場までかえれるようにだそうです。


いい具合に雑草は私の膝上位までの背丈まで生えていて、

ざくざくと刈り進めていくと、あっという間に

籠の中身が一杯になりました。



訳がわからないまま草刈りをしていたら、

夢中で刈ってたみたい。

振り返ると刈った道が出来てました。

ふう、いい仕事しましたよ。


でも、ちょっと腰が痛いので、籠を置いて、背中と腰を伸ばします。

中腰の姿勢は、結構辛い。


うーんって伸ばしていたら、右上の木の上に何かキラって光りました。


ナンだろう?


木に近づいてみたら、それは大きなブナの木でした。

光っていたのは、太陽の光が何かに反射したせいかな。

そう思って、木の周りを一周したら、私が来た道から見てほぼ裏側に大きな洞がありました。


洞は人が一人入れるくらいの大きさ。

洞の中身は落ち葉が溜まってて居心地よさそうです。


へえ、自然の洞っていいよねえ。


そう思っていたら、私の首から提げている白い玉がちょっと熱くなりました。


なんで? 人いないけど?


思いっきり服の襟首をぐいっと広げて白い玉を見ると、

ちょっとだけ熱を持っているようです。


前の時はもっと熱かったような気がしたんだけどね。


なんだろ?玉の気のせいとか?

いやいや、そんな訳ないよね。シャチ達がここに連れてきたんだし。

ここの近くに、宝玉を持った誰かがいるのだろうか。


周りを見渡したけど、姿は見えない。

まぁ、探してといってたからには、探さないと見つけられない場所に居るのだと思う。


後で皆が寝静まった後に、探しに来ようかな。


そうしていたらルディが呼びに来たので、

籠のとこまでもどって籠を背負って広場に帰りました。


その後、ルディとマートルがゴミ用のちょっと深めの穴を掘ってました。

私は、穴から出てくる土を一つにまとめてます。

木片を使って台形に形つくって、砂遊びならぬ土遊びのようですね。




太陽が傾き、残像と光の名残が夕日になって

水平線に消え始めた頃、ようやく夕食です。


今回の夕食はナンのようなパンにお肉をはさんだものと野菜の焼き串。

皆、フォークとか使わずに、手で食べます。

ビールのような飲み物が樽で出てきて、ぐいぐい飲んでます。

ペース速いですね。


使ったお皿は、ここまで皆さん返しに来てくれます。

セルフサービスですね。

だって、皆一緒に食べてますから、広場の中だけでなく、

いろんなとこで食べている人のお皿回収なんて無理でしょ。

機能的ですね。


その帰ってきたお皿は、ルディと私が受け取り、なんと、雑草籠の中に入れます。

お皿は一枚一枚草の中で汚れをすり落とすようにこすります。

すると、あら不思議! ギトギト油汚れも綺麗に落ちます。

雑草って馬鹿にしちゃいけない。

日本の家で使っていた洗剤とかよりも綺麗に落ちるの。

あらまあ。



汚れが落ちたら、布でふき取り、終わり。

雑草がへたる前に、へたった草は掘った穴に落とします。

ほうほう。


これなら手も水でしわしわにならずに済むね。


難を言えば、雑草って結構硬いし、自然の繊維100%なのです。

つまり、その中に手をいれてこするということは、手が切れる。

深い傷ではないんだけど、浅い切り傷みたいなもの。


そう、今、私の手は切り傷だらけです。

血とかは出てないんだけど、地味に痛い。

コピー用紙とかで手を切ると、切れ味鋭く痛いのに血はあまりでない。

あんな状態です。


ルディはと見ると、平然としていて、なんともない様子。

ルディの手はそういえばごつごつしていたなあ。


これは経験の差ってことでしょう。


それでも、我慢しながらお皿を片付けていたら、

セランがお皿を手に近づいてきて、私の膝の上に小さなビンを置いてくれました。


「メイ、後でこれを手に塗っとけ。多分、今夜痛むぞ」


小さなビンの中は白い軟膏が入ってました。

あのセランの特製軟膏ですね。

嬉しいなあ。


「ありがとう、セラン」


にこって笑います。


やっぱりセランはよいお医者さんです。

痛いセンサーをかぎつける鼻をもっているのかも。

見上げると、頭をポンポンってしてくれる。

だんだん習慣化してきてるなぁ。これって嬉しい。


にこにこしてたら、ルディも、最初にこの作業をした時は、

手が痛かったって教えてくれた。

じゃあ、セランの軟膏のお世話になっているんだね。

これは、雑用が誰しもが通る道なのです。


あらかたお皿を片付け終わったら、私達も夕食です。


ナンのような平焼きパンの中は空洞になっていて

そこに、ぎっしりと削いだお肉を入れたもの。

それに、ホカホカに焼けた野菜の串。


野菜の串から一番上の玉ねぎをぱくり。

玉ねぎが甘いです。

その上、果肉の汁が上手に閉じ込められていて、

噛むたび、じわっと甘い玉ねぎのスープが口の中で広がります。

かぼちゃのような野菜と大根のような野菜も甘いし、ほくほくです。


お肉をナンを一緒にいきます。

食べると、これは豚と牛の間のようなお肉でした。

たれと練りこんだ薬味が絶妙です。

ちょっと唐辛子かな? ぴりぴりした風味が美味しいです。

たれはニンニクが利いていて、それでいて、

トマトがベースなので、あっさりした感じもあるし。


うんうんと頷きながらご飯を食べ終わり、

至福の時が終わると、残りの後片付けをして鍋磨き。


鍋をすべて磨き終わる頃には、お月様が顔を出していました。


今日はやっぱり満月です。








食事が終わった後、半分が船に帰り、

半分がテントや木にハンモックを吊って寝ることにしたようです。


テントは三角テントではないです。

どちらかというと、見た目は四角テントです。


中央に大きな柱があって、4スミに柱。

その上からばさって大きな布をかぶせた簡単テント。


広場にテントは全部で5つ。

一つに10人から15人程度がごろ寝だそうです。


私のテントはレナードさんやラルクさん、セランやルディ、

カースにレヴィ船長と一緒です。もちろん他5人ほどがいますが。


私やルディは雑用で早く起きるので、出入り口の一番近くです。

すし詰め状態ですが、人の体温で温かくなったテントは、意外に寝やすい。 

皆、すーってあっという間に寝始めました。

初めての無人島の緊張ゆえなのか、私も釣られて寝てしまいました。






どこかで、歌が聞こえました。

ほそい旋律。何を歌っているのか

どこの言葉なのかさっぱりの異国の言葉だけど、綺麗な声です。

木々の風にゆれる音と重なって、幻想的です。

誰が歌っているんだろう。



多分、真夜中。

満月は丁度、中天。



ぱちっと眼を覚ましました。

もちろん、トOレ習慣でもありますが。

それでは、さっき草刈の時に見つけた洞に、行ってみようと思います。


あの近くに絶対誰か住んでいるはず。


その人があのシャチ達が言っていた人かも知れない。

怪我とかしてるんだったら、早く行ってあげなきゃいけないし。



そおっと起き出して、テントからでて、

誰もいないの確認してお花摘み。(お外って、嫌よね)

適当に、土を掛けてごまかす。



それから、満月の光をたよりに、今日私が刈り取った雑草道を歩いていく。




しばらく歩いていたら、あのブナの木がありました。


ブナの木の洞を覗き込むと、奥に下りる空洞がありました。

手を伸ばして下を探ったけど、手は空をすべるばかり。


どうしよう。

ロープをもってくるのに引き返そうか。


そう思いながら下を相変わらず手で探っていたら、

穴のふちについていたコケで滑りました。



ええ、見事に。頭からまっさかさまです。

つるんと滑って落ちました。

あんまりにびっくりしすぎて悲鳴も出てきませんでした。










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