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箱をあけよう  作者: ひろりん
第2章:無人島編
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上陸しました。

島が見えました。



割合、大きめな島です。

某テレビのひょっこo島みたいに小さくありません。



私達の船はどんどんその島に向かってすべるように

進んでいきます。


レヴィ船長もカースも、バルトさんも険しい顔をしてました。


他の船員達は予定外の島に立ち寄ることに、

ちょっと戸惑いがあったみたいだけど、今は気にしてないみたい。


多分、船長たちを信頼しているからだろうね。


そんな中、私はちょっと複雑な心境です。


だって、この状態って明らかに私を連れて行くための巻き添えだと思うのです。


あのシャチ達が呼んでいたのは、私だよね。


でも、一人でなんかあそこまで行けないし、

それに、正直に言って、あの島で置いてけぼりなんて、

そんな事、絶対嫌だし。

でも、皆を巻き込んで平然としていられるのかって、

私の中の良心がちくちくと胸を刺している。


でもでも、あのシャチ達がいってたなぞなぞ。

全然、全く、さっぱり、わからないし。

私、基本、頭脳派ではないのよね。

それなのに、もっと解りやすく言ってくれてもいいじゃない。


だから、私よりも数段頭の回転の速いカースやレヴィ船長やセランに

ちょっとだけ助けてもらえないかなあ。

なんて、甘え心がある。


うん。

人間、一人じゃ何も出来ないから助けてもらうんだって

誰か有名な人が言ってたような言わないような。



よし、私の良心がちょっとだけ小さくなった。




天使と悪魔のささやきで私の頭が一杯だった為、

カースに声を掛けられるまで、島のすぐ側まで来ている

のにも気がつかなかった。



「メイ、どうしたんですか? 気分でも悪いのですか?」


カースの澄んだ水色の眼が心配そうに私の顔を覗き込んだ。

本当に、優しい兄様です。


「大丈夫です。考え事していただけです」


カースがほっとしたように、顔のこわばりが解ける。


「普段から考え事なんかしない貴方が、考え事しても解決なんかしないんですから、意味のない行動はしないほうがいいですよ」



そうですね。

事実だけど、だからこそカチンとくる。


でも、カースだもんね。

口のひねくれ度数が120度くらいいっちゃってる。


さっきの言葉、解せば、考え事する前に相談しろってことだよね。

多分。


顔を引きつらせながら、笑顔をつくる。


「なら、解らないことがあったら、カースに相談していい?」


カースの顔がちょっと意地悪っぽく笑った。


「おかしげな答えにたどり着く前に、相談するくらいの脳みそはあるようなので

 今回はいいことにしましょう」



カースは嬉しそうです。

その反対に私の心は北風が吹いているような気がします。


打たれ強く生きようってキャッチフレーズが、今の私の心の目標かも。



気を取り直してカースに聞いてみる。


「この船、あの島のどこにつけるの? 正面?」



「いいえ、もっと島の入り江に近いところで接岸しようと思っています」



船はカースの言葉を聞いていたかのように、島の周りを廻り、

島の裏側に外海からは見えないようになっている小さな入り江があり、そこに船は運ばれた。


その入り江は外側からは、切り立った崖の窪みにしか見えず、

ぱっと見ただけでは、まったく解らない。


また、外の波が嘘のように感じられるほど、

この入り江の波は穏やかだった。


船は入り江を通り、岩と岩の間を通り、

丁度船の高さに位置された石の台場が右側にあり、

そこに船はぴたりと止まった。

ちなみに、船の舵はまったく動かしていない。

すべて波任せだ。

それなのにこの技は、ちょっとしたものだと思う。




着岸した場所は港のようなつくりに見える。


切り立った岩の上部から太陽の光が岩に反射して、周りを十分に見渡せる程に明るい。


船の中から、周りを窺ってみる。

だが、人の気配がまったくない。



一言、誰かが何かを言うと、小声でもエコーが掛かる。

周りの岩が声を反射させるのだ。


皆の顔に緊張が走る。

しんとした静けさがひろがる。




そんな中、皆の視線はやっぱり自然に船長に向く。




ただ一人の例外を除いては。




はい、それは私です。


エコーが掛かるってヤッホーって出来るってことでしょ。

してみてもいいかな?


あの石のお台場ってヤッホー発声にいい感じの場所では?



ちょっと小声でヤッホーって言ってもいいかな。


そわそわしながら、周りの岩壁をきょろきょろしてたら、

セランがいつの間にか、私の後ろに立っていた。


私の襟首を後ろから、ぐいって持ち上げ、

私は猫の子がぶらんってなるような格好。


「ぐえっ」



ぐえっぐえっぐえっってエコーが響き渡った。

なんてこと、私の初ヤッホーが台無しになった。


涙目になりながら、セランを恨みがましい眼で見上げた。


セランはあきれたような表情で、私の涙目攻撃を受けた。


「メイ、おとなしくしてろ」



セランの言葉もエコーがもちろん入る。

何度も何度も怒られているようです。


私の初エコーを奪ったくせに、

なんですかこの仕打ちは。


「一番エコーは私がしたかったのに」





いきなり、周りがどっと笑い始めた。

アントンさんやコリンなんか、大笑いしてる。


「緊張感ねえな。メイ」

「しょうがないよ、メイだから」

「子供だしな。メイは」


次々に言いたい放題です。

その上エコーが続くので、まさに踏んだりけったりです。



頬をぷーって膨らませて、私の襟首をつかんだままのセランの手を軽く引っかく。


セランは笑いながら、降ろしてくれた。


「そりゃ、悪かったな」


レヴィ船長もカースも笑ってます。

皆とエコーに馬鹿にされたけど、彼らの笑顔を見たら、腹立ちもあっという間に消えてしまいました。


ああ、ミラクル。


へへって軽く笑っておく。




「上陸する。 バルト、10人選べ。先遣隊だ」


レヴィ船長の声が響く。


それまで、へらへら笑っていた皆の雰囲気が、ぴしって一本筋が通ったように引き締まった。


「おう、上陸だ、碇を下ろせ。一応、左の前と右後ろだ。

 橋桁の用意。帆は全部畳んでおけ。

 それから、アントン、お前のとこから3人、バース、お前のとこからも3人、

 ジャド、お前のとこから3人出せ。これで俺入れて10人だ」


皆、ばたばたと自分の仕事をし始めた。

ルディは洗濯ロープを下ろしてもらっていたので、私も手伝う。


うん。あらかた乾いている。


4つの籠に急いで、服を詰め込む。

しわになるだろうけど、気にしていられないよね。


10人の先遣隊の中に私はやっぱり入れてもらえない。

ちらっと横目で選ばれた人達を見たけど、

筋肉もりもりマッチョ。


無理だー



それにどうやら10人と一緒にレヴィ船長も行くみたい。


あとで、暗くなってから周りを一人で廻ってみよう。

それまで、船長や他の船員の皆に何も起こりませんように。





船から渓流ロープが3本張られ、橋桁が甲板から降ろされる。

レヴィ船長達が先に降りて、岩棚から奥に伸びている通路を歩いていく。


通路の上部は左右の岩壁のように開いてなかったが、

どこからか入った光が岩に反射していて、うっすらと明るい。

この岩って何で出来ているんだろ。

つるつるしてるように見えて、実はごつごつみたい。

白色に黒のゴマが混ざったような色合いの石がごろごろしていた。

なんだか墓石みたいな色です。




彼らが通路に消えてから2時間ほどたった頃、帰ってきた。


「特に問題はなさそうだ。何か生き物がいる気配はあるが、危険はなさそうだ。

 誰かが以前いたかもしれないが、真新しい家屋は見当たらない。

 それに、海賊の隠れ家とかの怪しい島ではなさそうだ」


えっと、誰もいないの?


隠れているのかな?


だって、シャチ達言ったよね。「助けて」って。


あっそうだった。

「見つけて」とも言ってたっけ。


じゃあやっぱり探さないといけないんだね。





一応、皆、荷物をいくつか降ろして、

通路を抜けた先の開けた場所にテントを張ることにした。


船番を何人か残して、皆、荷物を持って通路を抜ける。


船から降りて、久しぶりに揺れてない平面。

降りてすぐは、真っ直ぐ歩けなかった。

平衡感覚が狂っているみたいで、千鳥足。

硬い岩と土の感触を足で踏みしめながら、ゆっくりと歩く。



岩にはさまれた通路を抜けると、緑の大地が広がっていた。

それは、ジャングルです。とまではいかないが、そこそこ育った植物。

 

熱帯雨林の植物に似ているけど、ちょっと違う。

どちらかというと、人が程ほどに手入れしている裏山って感じの植物だ。

それがとても不思議だ。


足元のシダやたんぽぽ、ブナの木、クヌギに ヤツデ。


皆の後をついていくと、先遣隊が見つけた広場のような場所があった。

その中央に、テントを張るために持ってきた道具をどんどん置いていった。


私は、厨房の皆と一緒に食事の為の道具を運んできた。


小さな2輪のリアカーもどき(2輪に戸板を乗せただけみたいな簡単なつくり)

に使う銅鍋2つとフライパン1つ。あと、食材。

水の樽は重いので後回し。


私とマートルでリアカーを押してテントの広場まで行く。

レナードさんとラルクさんは大きな袋を3つ4つ抱えていた。

まるでサンタクロースのようだった。

真っ白い髭はないけどね。



広場についたら、レナードさんとラルクさんは少し土を掘り、

縦横1メートル、深さ20センチ位の穴を掘り

私とマートルが周囲に落ちていた大き目の石集めた。

ラルクさんが穴に沿って、三方を石で囲いをつくり、

マートルがその石の隙間に海水で練った土を埋め込む。



うん。見事な竈の出来上がりだ。



ハロルドさんやコリンが以前の嵐で溜めた雨水の樽を2つ降ろしてくれた。


この雨水。本当に重宝しているのよね。


あの嵐の前のどたばたの最中、

レナードさんやラルクさんはしっかり空ダルをセットしていたんだよ。


凄いよね。

嵐の雨水だろうが、真水は真水。 船旅に真水は貴重だものね。


この島で真水がどこかに見つかるといいんだけどって

二人が言ってた。


多分、あると思うよ。

だって、ブナとか、ならに似た木があるし、

あれって水すっごい必要な木だから。



後で、探検する時に水のありかも一緒にさがしてみようかな。


今日は多分満月だと思うんだよね。

昨日晩は大分丸に近かったし、雲が掛からないといいなあ。




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