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箱をあけよう  作者: ひろりん
第1章:船上編
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久しぶりな気がします。

おはようございます。


朝です。正確には夜明け前ですが、

今日から、前と同じ、厨房下っ端兼雑用下っ端に戻ります。


昨日の狸との夢のおかげで、中途半端に早い時間に目が覚めました。

もう一度寝なおすと絶対起きられないので、起きていることにしました。


昨日夕刻に、やっとのびのびになっていた私の引越し(部屋を替わるだけ)をしました。

よって、今は、狭い雑用部屋にルディと二人でハンモック吊って寝ていた状態です。


ハンモックって初体験だけど、意外に寝心地いいのよ。

体に網模様がつくかな、とか思ってたけど、全然、大丈夫。


それどころか、ハンモックだと、あまり船の揺れも気にならないし、

体にフィットしているので腰とか首とかの痛みがまったく無い。


以前、首や肩が痛くて友人に相談したら、とっても高いお値段の枕と布団を

買わされた。

その上、肩こりでマッサージに通ってたけど、肩こりって治らなかったんだよ。


でも、今は、肩こり首こりさようならです。

ハンモック健康法って、元の世界に帰ったら本だそうかな。


ただ、ハンモックって登り降りにコツがいります。結構難しいのです。本当に。

その証拠に、ルディに手伝ってもらってやっと昨日上がれたし、

今も、降りようとして、現在、逆さ吊り状態です。


うっ、右足が網に絡んで。


船室の中って明り取りの窓も夜は閉めてるから、基本、真っ暗闇です。


真っ暗の中、ハンモックと格闘していた私は、

文字通りの手探り状態でしたので苦労しました。


本当に、四苦八苦しながら、なんとかハンモックから降りれたのが奇跡のようです。


特に、隣のルディを起こさないように頑張るのは、至極大変でした。


でも、苦労のかいあって、ルディはまだ寝てます。


ここで、ルディの寝顔を見たと言いたいけど、部屋の中は真っ暗です。

見えないのよね、うっすらしか。


それはともかく、今は起こさないようにそっと服を着替えて、

外に出てみることにしました。






外は、まだまだ暗いです。

星も月も出ています。


今日は三日月です。どうりで月の光が弱いと思いました。

月の位置が低いので、じきに夜が明けるかな。


正直、夜の海はトラウマになってる。

この世界に来た初日の体験は、どうやっても忘れることなんて出来ない。


でも今は、誰かが必ずいるってわかっている船の上。

それならば、トラウマは発動しない。安心してるのかもね。

でも、船の端には正直近づきたくない。


甲板の中央よりのマストに括りつけてある樽の上に座って、足をぶらぶらさせてみる。

意外に、楽しい。

子供のころに返ったみたい。


そういえば、以前に、レヴィ船長がこの樽にもたれかかっていた時、

腰の位置がこの樽くらいだった。

青い空をバックに、海を渡る風に赤褐色の髪が揺れて、キリリとした真剣な顔の船長。

とても、ええ、とってもかっこよかったんです。

もし、ケータイを常備できたら、絶対写真やムービー撮ってるよ。

何度も何度も見返すお宝画像になること間違いなし。

その上、パソで拡大コピーして部屋に張るのです。

おう、想像すると、とても楽しい部屋。


それにしても、とふと、私の足を樽にピタリと添わせる。

うん、足、つかないよね。

でも、レヴィ船長の腰がここで、私の腰の位置と比べて、がくりと首を落とした。


うーん、遺伝子って不公平すぎると思わない?


でも、まあ、短いなら短いなりに小回りと回転数をあげて、

頑張るしかないでしょう。私。


とりあえず、ぐっと自分を立て直さなければ。うん。



「早いな。メイ、もう起きているのか?」


「ひょ?」


いきなり後ろから話しかけられました。

とってもびっくりしました。

だって、妄想していた相手がいきなり後ろから現れるなんて、夢にも思わないでしょう。


ばくばくしている心臓を押さえて、ご挨拶です。


「おはようございます。レヴィ船長。早いですね」


「ああ、おはよう」


ここ連日のカースの特訓、もとい、授業で、かなり会話が繋がるようになってきました。

いやあ、苦労しました。

誰がって? もちろん、私だよね。 

カースの方がって意見も多数ありますが、気にしません。

でも、ちょっとの日常会話なら何とか、レベル1から2まで上がったようです。


まだ、難しいこと言われたら解らないけどね。


レヴィ船長はわかりやすく、はっきり話してくれるので

かなり聞き取りOKなの。


挨拶をすると、レヴィ船長は側に寄ってきて、

私の頭をゆっくりと、撫でてくれます。

最近、どうやら、船長の中のマイブームなのかも。

幸運な事に、船長に出会うと、ほぼ、毎日、撫でてもらってます。



レヴィ船長の手はとても気持ちよいのです。

猫になった気分で、喉を鳴らしたくなる感じ。

目を閉じて、うっとりしちゃいます。


「メイ、カース見なかったか?」


カース?もう起きてるの?


「いいえ。見てないです」


「そうか、明方会う事になってたからな」


こんなに朝早くに何かあったのかな?

首を傾げてみる。


「ちょっと気になることがあってな。お前は気にするな」


頭を撫でる手が止まりました。

カースがやってきたからですね。


「おはよう、レヴィウス、メイ。早いな」


走り寄ってくるカースは、腕は三角巾で吊り下げていますが、

大分、元気になったんですよ。

それに、もともと足を怪我してるわけでは無いので、すぐカースはうろうろするんです。


「ああ、おはよう、カース。 早速だが、良いか?」


レヴィ船長、お手柔らかにお願いします。

カースお兄様は未だ怪我人ですので。


ああ、空が明けてきました。

西の水平線から日の光が差し込み、うっすら明るくなってきてます。

私も仕事に行かなければ。

船室へと続く戸口にルディの顔がのぞきました。

探しに来てくれたんですね。

ありがとう。


「メイ、おはよう。 起きたら、いないから探しちゃったよ。

 今日から厨房だよね。これ忘れてるよ」


エプロンと手ぬぐいを渡してくれました。あ、忘れてた。

これをもっていかなければ、レナードさんにつるつるにされてしまうかもしれないところでした。


「ありがとう、ルディ。私は厨房にいくね」


振り返ると、レヴィ船長とカースは真剣に話しをしてたけど、

こちらに気がついてくれて、手を振ってくれました。


二人に、にっこり笑って、手を振り返します。

よし、今日も頑張るぞ!






********





厨房に入ると、やっぱりラルクさんは、もう来てました。

今日の朝一番の仕事は、やっぱり石釜の火入れからです。


以前の教えてもらったように、火種をつかって石釜に火を入れていきます。

うん、大丈夫、覚えてるよ。


火を入れ終わったら、ラルクさんに呼ばれました。

ラルクさんは竈の脇に置いてあった樽の中から、大きな壷を取り出しました。


これは壷っていうか瓶ていうか。

人が一人、丸まま入りそうです。


その中に入っているのは、これは塩漬けです。

頭がないし、魚の種類には詳しくないのですが、

紛れも無く青背の魚。一匹の大きさがおおよそ30cmくらい。


ラルクさんは包丁の掛棚の中から、長い包丁を取り出しました。

長さでいったら20cmくらいあります。

でも、刃は日本刀のようにまっすぐです。


それで、さくさく魚を捌いていきます。

私は出刃包丁派だったので、魚は全部出刃包丁だったな。

じっと見ていると、私の捌き方と若干違います。

私は魚って言うと三枚下ろし。

でも、ラルクさんは縦5枚下ろしかな。

魚の中心から骨に向かって真っすぐに刃をいれて、

両脇から中心へ持っていく。

結果、身が4枚、中骨が一枚って感じ。



ラルクさんは一匹捌いて、沢山の切り身を作ると

「ん、メイ、やってみて。」

って包丁渡してくれました。


あまりにも簡単に包丁を渡されたので、

受け取ってしまいました。


こんなに長い包丁ははじめて使います。


でも、以前に確認した時には、出刃包丁らしき包丁は、

この厨房には無かったんだよね。


よし、初挑戦します。

でも、ラルクさんの五枚下ろしは力がとっても要りそうです。

ので、従来通りに三枚下ろしにさせてもらおう。



魚の背に包丁をまっすぐ横に入れて、骨に沿って中心まで持って行きます。

その後はお腹から背に沿って。

尻尾の部分をもって、下から上に包丁を骨伝いにまっすぐ動かします。

包丁は長いし切れ味抜群なので、力を入れすぎると手がなくなるかもしれない。

ゆっくり慎重に。うん、三枚下ろし完成です。


塩漬けにしている為、魚の身はしっかりしまっていて、水っぽくない。

普段なら下ろすときに、魚の油が気になるのだけども、

この包丁は幅が狭いから、油きれがいい。


うん、だんだん、慣れてきましたよ。


5つ目の魚を捌いていると、

マートルとレナードさんがやってきました。


「おう、メイ、今日からまたよろしくな」


「はい、レナードさん。よろしくお願いします」

魚を捌く手を止めて、挨拶をする。


「メイ、おはよう。今日もお互い頑張ろうな」


「はい、頑張りましょう」

にっこり笑顔で答えます。


うん、特訓の成果が出ていると思います。

挨拶にかぎっては完璧ですよ。


「メイ、話し方かなり上手になったね。カースさんに特訓受けてるって

 皆が言ってたけど。うん。いいと思うよ」


マートルが褒めてくれたけど、挨拶に限ってですので。

ここ重要です。


「ありがとう」

すぐ、ぼろが出ると思うけどね。


ところで、レナードさんが、私の捌いた魚をじっとみてます。

ナンでしょう。


「メイ、お前、魚も捌けるんだな。うん、ぎこちないがまあまあだ。

 もうちょっとうまく捌けるようになったら、生の魚を捌くときの戦力になる。

 頑張ってくれ」


マートルが私が残していた、中心中骨の部分を

平たく重い中華包丁みたいな物で細かく砕いていきます。


今日の朝食は魚なんですね。

楽しみです。


わくわくしながら次々に魚を捌いていきました。

 


50匹以上捌いたでしょうか。

瓶の魚が、ようやくなくなりました。

当然ながら、手が非常に魚臭いので、

皿洗いの樽側に干していた、私専用のオレンジの皮を刷り込みます。


次に、ラルクさんがコーンを練りこんだパン生地を渡されたので、

私の手のひらより、ちょっと小さなサイズにちぎって

丸くして、石釜で焼き始める作業を始めます。


板の上に次々と乗っけてパンを入れていきます。


竈にはマートルが砕いた中骨部分を使ったお団子が入ったスープ。

ラルクさんが味付けをして、くるくるレードルを回してます。


レナードさんは、私が捌いた切り身に香辛料と粉を振って、

大きなフライパンでジュウジュウと焼いてます。


最後に、マートルが酢と油と刻んだ酢漬野菜でソースのようなものを作ってます。


はう、お腹がすいてきた。なんて美味しそうなの。

この匂い、たまりません。



そうこうしているうちに完成です。


今日はコーンパンに魚のソテーと野菜を挟んだサンドイッチ。

魚のすり身団子が入ったコーンスープ。

サンドイッチにはマートルが作ったソースがいい感じでお魚をしっとりさせている。

食べた時に、じゅわってお魚の味とまざってパンに染み渡ります。



皆、次々に朝食を平らげていきます。

早く、私の番が来ないかな。

美味しそうだな。

でも、待ってる時間が長いと倍美味しいっていうからね。

我慢、我慢。



ルディが下げてくれたお皿を海水につけ、

程よく汚れが浮いてきたお皿からかたづけていく。


もはや、お皿洗いは手馴れたモンです。

えっへん。



そうしてやっと私とルディの朝食タイムです。

ああ、待ってました。

いただきます!!!







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