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箱をあけよう  作者: ひろりん
西大陸砂の国編
230/240

あっという間に借金持ちです。

今日は二話投稿です。

数分後に二話目を投稿するので、よろしくお願いします。

早めのお昼を食事通りに面したカフェで取りました。


食べたのは、フランと豆ペーストと薄切り肉を一緒にクレープっぽい生地で巻いたブリトーもどき。

甘辛いタレがとろりとかかって、大変美味しかったです。

クリーム色の甘辛ソースは、酸味と甘みが適度に入り、濃厚なミルクの風味にピリッとアクセントが聞いた辛味。まさに、絶品タレです。

豆ペーストは、どちらかというと豆腐のような優しい風味がする。

それに、臭みを抜いた豚肉のような肉は、口に入れたとたんにとろりと油が溶ける。

この二つがフランの上に乗って、仕上げに絶品タレです。

全体的に柔らかで軽めの食感なのに、濃い目に味付た肉がガッツリと舌に残る。

更にフランと豆がタレで微妙に膨らんで、咀嚼するたびにお腹が膨らむ組み合わせです。

これは究極のコラボ。 これならば大食いさんも満足に違いない。

なんて素敵な組み合わせなのでしょう。

あ、ちなみにフランの量を少な目、普通、大盛りで変えられるとか。

なるほど。牛丼屋の、小、並、大盛りって感じかな。

どこの世界も考える事は同じなのですね。


船のコックであるレナードさんがこの店に来たら、目を見張るに違いない一品です。

レナードさんの料理も美味しいけど、これは全く方向性の違う美味しさですよね。

敢えて言うなら、和洋折衷料理ではなく、多国籍料理って感じ。

お肉の具材も何種類かあるらしく、私が食べたスタンダードの他に、

焼き鳥のような具材とか、

真っ赤なソースが掛かったマックリっていう水牛の塊肉とかが人気らしい。


何度か店の前を通った時、いつもいい匂いがして、

大勢の人が美味しそうに食べていたので、一度来てみたかったんです。

せっかく、お給料が入りましたので、今日はちょっと贅沢をしちゃいました。

しっかり味わって、帰ってからメモしておこう。

いや、似たような感じで作れるか試してみるのもいいかも。


それに、食事が来るのを待っている間に、

飴売りの子供が箱を抱えて売りに来ましたので、

可愛い鳥とクマと花の形をした飴を購入しました。


この飴は国の牧場で廃棄される乳糖を孤児院で加工した飴だそうで、

意外に美味しく、この国の一般的な甘味の一つだとか。

売っている子供たちはそこに住む孤児だとジュノが言っていました。

街中のどこにでも居る彼らは、目が合えばきらきらした目で売りに来る。

しかしながら、今までの私には自由になるお金がなかったのです。

ごめんねと何度謝った事か。


今まで、飴売りの子供から目をそらしてばかりだったのです。

ですが、懐が温かい今回は、ちゃんと買ってあげられます。

3本で20ペニー(1クレスの2割)と書かれてあったので、もちろん3個購入です。


「ありがとう。お姉ちゃん」


小さな子供に、満面の笑顔でお礼を言われました。

子供って可愛いですよね。

にこにこ笑っていたら、彼らは、きらきらした目で、小さな箱を開けて中を見せた。


「あのね、こっちのお花のは私達が型を作ったの」

「こっちは、僕がつくったの」


へぇ、そうなんだ。器用だね~お花の形なんだ~うんうん。

でも、そっか、子供の手作りだからかな。

最初に購入した分と比べて、形が結構歪というか、捩じれて叩いて割れた感じ?

うん、前衛的で芸術的です。


「だからね、あのね、優しいお姉さんみたいな人に買ってほしいの」

「僕も。僕も。僕のは鳥だよ」


ずっと一人っ子だったので、お姉ちゃんって一度呼ばれてみたかったのです。

あ、でも、実家からの電話で、生まれてくるのは弟だって、母が教えてくれたのよね。

それなら、名実ともに姉になれるってことですよね。


「あのね、これも、こっちも、すっごくすっごく、美味しいよ」

「美味しいよ、絶対!お姉ちゃんみたいな素敵な人に買ってほしいな」


想像の中で可愛い弟が、おねーちゃん、遊んで~と縋ってくる。飴を手に。

もちろん遊びますとも。全力で!


チャリン、チャリン。

「ありがとう、素敵なお姉さん」

「毎度あり、優しいお姉ちゃん」


よし、決めた!年が離れているけど、絶対におばちゃん呼びはさせない。

お姉ちゃん一択だ。


私は、不格好な紐付き飴が9個入った紙袋を抱えて、にんまりと笑い、

飴売りの子供達も60ペニーを握りしめて、満面の笑みで去っていく。

お腹一杯の上、ほくほく想像で、なんだかふんわり幸せです。

金銭的余裕があるって、こんなに生活にゆとりがあるんですね。

心の広い我が雇用主の老師様には、心からに感謝しましょう。


あ、服飾市場の側のお店に可愛い服発見!

あんなワンピースもいいよね~隣の靴も素敵です!

いろいろと目移りするけど、とっても楽しい。

ゆとり万歳です!


素敵な買い物もいいが、今は予定通りに雑貨屋に向かいましょうか。

昼時を少し過ぎた、中央の時計塔付近は、いつもながら大層賑わっています。


仕事の合間の昼休みに、書架通りをふらふらする学者。

貴金属通りを面白そうにうろちょろしている、ちょっと変わった異国の服を着た商人。

小さな子供を抱え、夫に弁当を届けてから、布地通りの服を見ながら歩く若い主婦。

焼きたての甘味の甘い香りに誘われて、嬉しそうに食事通りの店で列に並ぶ腰のまがった老女。

その他不特定多数の人たちは、いつもと同じように大通りを賑わしてした。


そんな彼らが集まって何を楽しそうにしているかと、やっぱり噂話です。

マッカラ王国の人たちは、ずばり好奇心旺盛のうわさ好きです。


何しろ、私が雑貨屋さんに向かって歩いているだけで、

町の至る所でいろんな噂話が聞こえてくるのですから。


「今回の祭りは、巫女の代替わりが行われるんだろ?」

「ああ、隣国の王も正式に決まるらしいぜ」

「雨呼びの大規模な儀式が」

「浮気がばれたらしいぜ」

「俺の親戚が軍にいるんだ」

「サマルカンドの王とファイルーシャの王、どっちがなるんだ?」

「絶世の美女が神の代理人として立つらしい」

「続々と信徒たちが集まって、もう神殿はどこもいっぱいらしい」

「賭けは誰がまだ残ってるって?」

「商売するなら好機だよな」

「最近、人買いが横行してるんだろ」

「水不足で、俺の姪がとうとう逃げてきたんだ」

「もう、殆どのワジが枯れたらしい」

「デンマのところの新しい飯が上手いってよ」

「盗賊アラシがいるってさ」

「義賊はとんでもない見目麗しいハンサムらしいってさ」


どうやら皆さんの興味の殆どは、隣のサマーン王国についてらしいです。

毎度毎度、楽しそうで何よりです。


先日までの噂話は、どこかの殺人事件についてだったのです。

留学してきていた坊ちゃん学生が殺されたとか。なんだか物騒ですよね。

あの時は、全員が全員、探偵気取りでいろいろ噂していたものです。

坊ちゃんを殺したのは別の人物だとか、実は坊ちゃんに隠し子がいるとか、

借金を踏み倒そうとしての自殺とか、男相手の道ならぬ恋に絶望して心中とか。

皆さん、思い思いの推理を嬉しそうに話してました。

ですが今は、そんな話題で盛り上がっている人は殆どいないようです。

この国では、人のうわさは75日もいらないってことでしょうね。


さて、この町に来てひと月近くになると、それなりに知り合いも増えてきました。

雑貨屋を探してキョロキョロと布地通りを歩いていると、

この町の住民を代表するような、おしゃべり5人組がいました。

彼らは、自他ともに認める、噂とおしゃべりが大好きな方達です。


「あら、マール、珍しいわね、こんな時間にこんなところで。

 あ、もしかしてあんたも私にお土産のリクエストなの?

 いいわよ。でも、高い物は受け付けないから」


は? お土産?

とりあえず、声をかけられたので近くに行って挨拶をしました。


「こんにちは、なんだか楽しそうですね。 キシアさん、どこかにご旅行ですか?」


彼女は、食材市場でよく出くわすキシアさんで、

旦那様が土木建築副監の役職についてる34歳の結婚6年目の主婦だそうです。

薄緑のワンピースが定番になっている、すらっとした女性です。


「う・ふ・ふっ 聞いてくれる?

じ・つ・は、旦那の母親の妹の娘のいとこがレナーテに住んでてね。

な・ん・と、旦那と二人で間借りできることになったのよ!」


レナーテは、北の大神殿がある街で、もうじきお祭りがあるところですよね。


私が首をかすかに傾け考えていると、

にやにやと笑いが止まらない彼女に、隣にいた彼女の友人が呆れたように声をかけた。

彼女は35歳の金細工職人の妻で4人の子持ちなカデンシアさん。

いつも現実的な意見をお持ちのクールな主婦で、

オレンジ色のスカーフでいつも不機嫌な顔を隠している女性です。


「この時期にあんな人混みに向かっていくなんて、キシアは運がいいのか悪いのか」

「あらやだ!いいに決まってるじゃない!だって、この時期のレナーテよ!

 行けるなら私だって行きたいわよ」


はぁと疲れたように眉間をもんでいる彼女の肩をばんばんと叩くのは、

20以上年の離れた仕立て屋主人と夫婦になって8年目の勝気な38歳の主婦、ソフィアさん。

彼女はいつも大きなリボンをつけた帽子をかぶっていて、顔よりもリボンの方が印象が強い。


「でもねぇ、それって眉唾って噂もあるじゃない。

だって、大神殿の巫女姫ってもう結構な年寄りだって噂じゃない?

よぼよぼのお婆ちゃんが祈っても本当に効くのかしらねぇ」


意地悪そうに言うのは、緑のスカーフを頭からかぶった大きなお尻の女性です。

いつも必ず否定的というか懐疑的なことをいう皮肉屋さんは、ミラミアさん。

口は悪いが、いつも言いにくいことをずばり言う強心臓な女性です。

靴職人で呑兵衛の旦那と愚痴の多いお姑さんを持つ二人の子持ちで、

お尻がとかく大きいのが悩みという35歳主婦です。


「そうねぇ、どう思う?マール」


そろっと抜けようかなと考えていたら、がっしりと腕を掴まれた。


「へ?」


いきなり話題を振られても、いったい何がなにやら。

ええっと最後の話題は、大神殿の巫女姫だっけ? アマーリエのことだよね。

そういえば、あれから全く会えてないけど、忙しいのかな。


「そろそろ代替わりだって噂もあるのよねぇ。

それなら大祭に態々行っても、無駄うちになる可能性が高いってこと?」


「そうよね~で、どうなのよ。

マールはその辺どう思う? 巫女姫、知ってるんでしょう」


濃紺ストライプの流行ドレスを着こなす彼女は、カトレアさん。

高級服店のオーナーでデザイナーの夫を持つ、アイシャドウがパンダな40歳主婦です。


「手に何持ってるの? 甘い匂いさせてるわね~、で、どうなのよ?」


どうと言われても、う~ん、知っているといえば知ってるし、

知らないと言えば知らない関係だ。

アマーリエの生霊となら、果たして知り合いになるのでしょうか。


「代替わりってホントだったんだ。もう年だもんね~」


代替わりって何のこと?

相変わらず、彼女達の噂話はあちこちに飛びすぎていて、何のことやらさっぱりわからない。

だけど、じっと黙って聞いていたら、

どうやら話題は、レナーテの大神殿で行われる大祭のことだと分かった。


「で、そこのところは、どうなのよ?」


どうといわれても、なんて答えたらいいのでしょうか。

巫女であるアマーリエの祈りが効くかどうかって、

サロンパスが効きますよ、みたいに、気軽に答えていいものだろうか。

アマーリエが元気なら、うん、サロンパスは効きそうだよねぇ。 


「ええっと、多分、大丈夫だと思います」


アマーリエの生霊は、元気いっぱいの子供姿だったから、

どうしても年を取ったアマーリエお婆ちゃんの姿が思い浮かばない。

しかし、あれだけ生霊が元気いっぱいだったのだ。問題ないと思う。

あと、甘い匂いはこの飴ですよね、やっぱり。


「ほら!マールがいうなら大丈夫よ。 旦那が物凄く頑張って伝手を探してくれたのよ。

だから、がっつり願掛けしてくるわ」


願掛け? 昔でいうお伊勢参りみたいな感じなのだろうか。


「なにを願掛けするのですか?」


健康祈願とか?


「やだぁ、もう、マールたら、私の口から言わせるの」

「結構有名な話なんだけど、マールったら知らないの?やっぱり子供ねぇ」

「マールが知らないんだったら、大人が教えてあげようか?」

「でもでも、口に出すのは恥ずかしいかも~」

「ここでどうどうというのはねぇ」


彼女達は、きゃっきゃっと、恥ずかしがりながらもにやにやと笑う。


「でも、どうしても知りたいというなら、教えてあげよっかなぁ~」


言いたいのですね。

ニヤニヤと緩む頬を両手で支え、体を変にくねらしている5人組は、

アラフォーコント5人組と私はひそかに命名している。


「ねぇ、もういいでしょう。言っちゃおう」

「実はね、レナーテの大神殿は月の女神様の神殿なの」

「私も結婚してすぐに言ったのよ。もう10年以上前だけど」

「彼女のその時の子供が長男。私の場合は長女」

「その女神様の神殿でお祈りすると、子宝に恵まれるって言われているの」

「月の女神様は、強く逞しい子を授けてくださるのですって。

 でもアンタの旦那に似たら、逞しくは到底無理よね」

「それに。女神様のお力で子供が生まれても、あんたの旦那が頑張らなきゃどうしようもないだろうに」

「そうそう、女神様のお力にすがる前にすることしなくちゃ」

「あら、そんなの当り前だわ。旦那もその気で、ついに秘密の秘薬を手に入れたのよ」

「なにその怪しげなものは」

「でも、効くのよこれ。私の母の友人の知り合いが、これで朝までガッツリだったんですって」

「キャーいいわね、それ。ウチの旦那も元気がなくてさぁ。で、どこで手に入れたのよ」

「これ、実はレナーテで売ってるらしいのよ」

「あ、聞いたことがあるわ。祈願に来る人の殆どが秘薬使ってるって。あれ本当だったんだ」

「そうそう、それでね~」


彼女達5人組は、一度話し出すと本当に話が止まらないのです。

今は、ひそひそと円陣を組んで、内緒話に夢中です。

ここ街中なんですけど。

ちなみに皆さんが気軽に通る大通り。

私、もう、ここで失礼してもいいでしょうか。

掴まれていた手に、そっと白い飴を握らせて、

ちらちらと視線を寄越す彼女らのテーブルの上に、飴を4つ転がした。


「ありがと。でも、いいわね~私も祭りに行きたかった」

彼女らは、ぽいぽいっと口に飴を入れる。

「あら、この飴、久しぶりだわ。ありがとね。

 でもさ、その分ちょっと多めに休日手当てをもらえるのだからいいじゃない」

「何言ってんの。手当てなんて微々たるものよ。修理代に消えちゃうわ。

 ほら、この間、私の子供が壊した旦那の職場の備品、あれすっごく高かったんだって」

「これ、子供の頃よく食べたわね。懐かしい。

 え、壊したのって、ただの木切れじゃなかったの?」

「違ったのよ。あれ、伯爵様の靴の木型だったんですって」

「ちょっと当たって落としただけで端が割れちゃうなんて、不運だわね~」

「ホントだわ。本格的に壊れなかったのは心底助かったけど、

 金額聞いて目が飛び出ちゃうかと思ったわ。

 修理に三か月分の旦那の給料が飛んで行っちゃうくらいだったの」

「あら、それならあんたはこんなとこで油売っていていいの?」

「いいのいいの。お姑さんにたて替えてもらったから。

 もとはといえば、子供たちをあの部屋で遊ばしていたお姑さんが悪いのよ」

「小金持ちっていいわね。そういえば、金持ちっていえば、この間迎賓館でさぁ」

「この飴、甘いけど、甘すぎないのがいいのよね。

 あ、聞いた聞いた。バカ息子が殺されたって話でしょう」

「腰ぎんちゃくだったあの禿教頭が犯人なんでしょう」

「そう? 私はもっと甘い蜂蜜を使った飴の方がいいわ。形もなんだか芋みたいだし。

 でね。仲間割れってやつ。あいついつもお店に来たら私のお尻触るのよ。

 靴の修理に頻繁に来るのはいいけど、私のお尻は売り物じゃないのよ」

「まぁ、あんたのお尻は目立つから」

「蜂蜜飴って、無茶いうわね。いいじゃない、形が芋だろうが石だろうが、飴だし。

 それよりもさぁ、禿校長の奥さん、賠償金を払うのが怖くて逃げちゃったって」

「夜逃げねぇ~どこに行こうってのかしら」


うん、どんどんと、話がずれていくね。

飴の話題は一瞬でした。

気が付けば、彼女達の話題は、私を素通りしている。

まぁ、いつものことです。


彼らの煩悩トークはどんどん深みに嵌っているようなので、とりあえずお暇する事にしました。

だって、お話が終わるのを待ってたら、夕の鐘まで付き合わされる。

町の人達や彼女達の家族いわく、一種の拷問に違い苦行なのだそうです。

飴ひとつで逃がしてくれるなら、御の字です。


私は彼女達に小さく頭を下げて、すすすっと移動しました。

彼女らは話題を止めないまま、小さく手をふってお別れです。


そういえば、今度のレナーテのお祭りに、ラマエメ先生達も行くって聞きました。

アラフォーコント5人組によると、レナーテは新婚旅行のメッカと言うところらしい。

結婚が決まった先生達が、子宝祈願を兼てのハネムーンなら、人気があるのも当然です。


それでなくともお祭りは人が集まるもの。

レナーテのお祭りは老若男女問わず、大変人気がある祭りだそうです。

そういえば、ジュノも行きたがっていた。


どんなお祭りなんだろう。

皆のうわさを集めて想像したら、とんでもないお祭りに思えて仕方ない。


でも、お祭りと言うからには、港祭りみたいに賑やかで、楽しいのでしょうか。

いつか、私もレヴィ船長たちと一緒に行けたらいいなぁ。

遠い空をふっと見上げた。  



******



ところで、街の噂話で気にかかる単語がいくつか耳に残りました。

時間が経つにつれ、警告のように脳裏に広がります。

それは、故障、弁償、賠償金という悪夢ワードです。


それが先ほどまで気になっていた事と結びつき、なんだか背中が寒くなってきた。

私が気になっている事というのは、そう、白玉の点滅です。


過去にない点滅する玉現象。

改めて考えると、電化製品なら電池切れか故障を真っ先に疑うところです。

電池?は関係ないから、故障が濃厚ですよね。

で、故障しているなら、やはり原因があるはずと考える。


『原因』


ちらりと考えただけで、ランダムな映像が頭に浮かんだ。

その一つ一つに、たらりと冷や汗が流れる気がした。


実は、晴嵐に紐をつけてもらうまで、白い球はポケットに入れっぱなしだった。

その間にどこかでぶつけたり、落としたり・・・うん、あったね。

着替えている間にとか、荷物を移し替えたりするときとか・・・何度も床に落とした気がする。

だって丸いし、ほら、ころころって。


今思えば、結構乱暴に扱っていた気がする。

神関連だし、多分丈夫だから問題ないと思っていたけど、意外と繊細な造りだったのかな。


掃除しているときにも落として、踏んで・・・あ、階段でも落とした気がする。

ほら、あっと言う間にころころ、こーん、こーんって落ちて、慌てて下で拾うと。


・・・原因に思い当れば当たるほど、白い球は故障の可能性が強いです。

こ、故障した場合って、普通、お直しとか修理とかが必要だよね。

その場合って、どこかに玉修理専門職人にお願いするのかしら。


先程のミルミアさんの言葉が頭によぎる。

給料三か月分が吹っ飛ぶって、なんですか。


専門の修理って、もしかしてお高いものではないでしょうか。

確か、神社で経理ソフトが壊れたときは、万単位で修理代かかったよね。


・・・修理にいくらかかるんだろう。高いのかな。

神様関連グッズだものね。安く、ないよね、やっぱり。

できれば分割払いにしてくれないだろうか。24回とか36回とか48回で。


私のリッチ気分はお給料を得て数刻で霧散した。

私の3000クレス三年計画が、早くも破たんしたことを悟った瞬間だった。


北風が吹いている気がする。


虚しいって、言っていいかな。

ふふふ、何かの歌詞にあった、夢は儚いって本当だったのね。

現実はとことん厳しいのですね~はぁ。


今まで通り、できるだけお金は使わない方針で過ごすしか方法はないだろう。

それで、コツコツと返済するのです。


残った4つの飴玉の袋をそっと鞄の中に入れた。

大事にしましょう、貴重な甘味です。


お洒落な洋服店でマネキンが着ている服は可愛くて素敵だけど、無理みたい。

今日これからのお買いものは出来るだけ安くを目標にいきたいと思います。

やっぱり古着屋さんで服をそろえようと思います。

うん、節約って大事だよね。


晴嵐だって鬼じゃあないんだから、無理は言わないはず。

私の懐事情を説明して、分割払いのお願いをしよう。

借金返済貯金と、イルベリー国への帰国資金貯金。

コツコツ貯めていけば、何とかなるかなぁ。


晴海の様に、晴嵐が手が空いたときに相談にのってくれるだろうか。

うん? そういえば、忙しい時に手間をかけさせるなって言ってたような?

・・・えっと、見て、くれているよね? 



こちらの世界でも、人の噂は75日は、もはや都市伝説だろうと言いたい。

だって、75日前のニュースってあまり覚えてないです。

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