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箱をあけよう  作者: ひろりん
第1章:船上編
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口が滑りました。

部屋に入るとレヴィ船長とセラン、

そして起きているカースが

じっと私の方を見ています。



三人の視線が痛いです。

私の顔になにかついてますか?

もしかして、ご飯がついたままとか。


想像したらちょっと恥ずかしい。


顔を触ってみたけど、

口元にはついてないみたい。

ほっとした。


でも、なら、なんで? 皆、注目してるの?

おかげで手元がちょっと緊張してしまいます。


お鍋を机の上に置き、

ポケットからハンカチをとりだして

それも、机の上に置いた。



ご飯持ってきたけど、カース食べても

大丈夫なのかな? 

セランにも聞いてみたほうがいいよね。


セランとカースの顔を見て、聞いてみた。


「カース、食べる? 大丈夫?」


レヴィ船長とセランの顔は何か面白いものでも

見つけた子供のような顔。

カースは戸惑っているような顔をしていた。


「カースに食事を運んできたのか?」


セランは髭をなでながら、ニヤニヤしてた。




「ご苦労だったな、メイ。お前は食事済んだのか?」


レヴィ船長は嬉しそうな笑顔。




「はい。美味しい。食事。済んだ」


満面の笑顔でお答えできました。


本当に今日のご飯も美味しかったのです。

思い出しただけで、顔のにやけが止まりません。


「スープ、カース、食べる出来る?」



「ああ、本人が食欲があるなら、食べておいたほうがいい。

 無理はしなくてもいいが、また、今晩か明日には、

 熱が上がるかもしれないからな。

 食べておいたほうが体力も薬の効き目も違う。」


セランから許可が出たので、

どうするのかと思って、カースをじっと見つめた。


「いただきましょう。

 こちらに持ってきていただけますか?」


良かった。

食べれるみたい。


いそいそとお鍋を括っていた

手ぬぐいをはずし、

鍋蓋お皿を机の上に置き、

スープを注いだ


湯気がほかほかしていて、

スープの良い匂いが広がる。


幸せの匂いってこんな感じよね。


スプーンをハンカチから出し

ベットに持っていく。


カースのお膝の上に置くのかな?


こぼれたら危ないよね。


きょろきょろ見渡して、

ベットサイドの飲み薬の下にお盆みたいな

トレイ発見。


トレイの上にお皿をおいて、

ハンカチからパンを取り出し、

お皿の横にセット。


トレイごと、カースの膝の上に置いた。



これなら大丈夫だよね。


「おい、カース、左手で食えるか?

 俺が口まで運んでやろうか?」


「結構です。スプーンを持つくらい。

 問題ありません。」


「意地張るなよ。病気の時くらい

 甘えさせてやるってんだ。」


「気持ち悪いこと言わないでください。

 余計に悪くなります。」


セラン、カースをからかっているのかな。

病人なのに。


くすっとレヴィ船長が笑った。


「おい、セラン、ここはメイにまかせて、

 俺達も食事に行こう。」



セランは肩を軽くすくめた。


「そうだな。腹減ったしな。」



レヴィ船長は私の頭を軽くなでて


「メイ、カースの世話を頼む。」


船長に頼まれました。


初めてです。


頼むっていい言葉だよね。


じーんと感動です。


嬉しくなって思いっきり頷く。


「はい。」







レヴィ船長とセランが出て行って、カースと二人きりです。


カースは左手で起用にスプーンを

操ってます。

でも、パンは食べないのかな?

漬けると美味しいのに。


カースの側にいって


「パン、私、割る、いい?」


私の言葉にカースはちょっと

考えていたけど、そのままこっくりと頷いた。


パンを4つに割って、

それをさらに一口サイズに割る。


結構な重労働なんだよ。

なにしろ硬いからね。


全部割り終えた後、

ふうっとひと息をついた。


いい仕事できたぜって感じ!


「ぶっ!」


いきなり、カースが吹いた。


何事っと思ってびっくりしてたら

そのまま、笑い始めた。


「本当に、思ってることがすぐ顔に出るんですね。」


笑いながら、体を揺すってる。


スープ、危ないです。


「危ない、こぼれる。」



私の慌てた顔をみて、カースは左手を

トレイにあてて、笑いを収めた。


「パン、いただきます。」


カースは私が割ったパンをスープに漬け、

食べていった。


ゆっくりだが、全部、飲みおえた。

結構な量があったと思ったのにね。


じっと見つめていた私の視線に負けたわけでは

無いと思います。

レナードさんのスープが美味しすぎるのが原因ですね。


トレイを膝の上から下げて

机の上に置く。


そのままカースさんが寝れるように

体をベットに倒す手伝いをしようと

側に寄ったら、カースが真剣な目で私を見ていた。


「メイ、聞きたいことがあります。」


ナンでしょう?

首をかしげて、一応頷く。


「座ってください。立っていられると落ち着かない。」


そうですね。


椅子を引き寄せて、座った。

カースの顔を見た。


「何故、私を助けたのです? 貴方にとって私は嫌な人間でしょう。」


まっすぐに私をみつめる目。


「何故? 助ける、理由、無い。」


私も、カースの視線にまっすぐ返す。


「理由もなく、命をはって私を助ける義理もないでしょう。」


目に苛立ちと、悲しい光がさす。


「義理? 解らない。 でも、目の前、危ない、自然、体、動く。」



危ないって思ったとたん、体が動くのって

一種の本能だよね。

ほら、ねこが動くゴキブリつかまえる動作って感じの。


カースは私の目から視線を逸らし、

大きくため息をついた。



「馬鹿でしょう。自分が死ぬかもしれないのに。」



なんか、この言葉今日、何度も聞いた。


馬鹿って、自分で解っていても、

人に言われたくない言葉ナンバーワンだよね。


むっとしていると、カースの目の光が弱く揺れていた。




「貴方に謝らなくてはいけません。

 私は、個人的な事情から貴方に酷くあたったのですから。」


 

謝る?


首をまた、ひねっていると、カースは苦笑した


「覚えてないのですか? 貴方の首を絞めたでしょう。」


そういえば、そうでした。


でも、もう、痛くないし。


「痛くない、だから、忘れた。」


カースの目が優しい色を含んで

しょうがないなって顔をしていた。


「貴方は、私の妹に似ているんです。

 髪と瞳は同じ黒で、物怖じせず、すぐ

 人に好かれる性格でした。」


へぇ。


妹いたんだ。


「妹、カースの?」


「ええ、5才下でしたから、生きていれば

 今の貴方よりずっと上でしたね。」


今、生きていればって言った?

じゃあ、亡くなってるの?


「まあ、貴方よりもっと容姿は美しかったですけどね。

 母に良く似た顔立ちでしたので。」


しんみりしていたのに、

一体、何が言いたいんだ。


「妹と貴方を勝手に重ねて、

 子供の貴方に八つ当たりしてたんです。

 私は、もういい大人だと言うのに。」


「カース、幾つ?」


「28です。」


「私、子供、違う。22。」


カースが目を丸くした。


「今、22って言いましたか? 嘘でしょう?」


頬を膨らませて反論する。


「嘘、言わない、私、22。」


その頬にカースの左手が伸びて、

頬の風船をつついた。


「22歳ならば、こんな反応しないでしょう。

 貴方の行動は14,5の子供と同じですよ。」


ガーン。


子供と同じ。


大人要求しても信じてもらえないのは

そのせいだったんですか。


俯いていたら、涙が出てきそうです。




「いろいろとすいませんでした。」


その言葉に、顔を上げた。


「ありがとうございました。」


カースは晴れやかな笑顔を私に向けていた。

その瞳には一切の屈託が見えなかった。

なんだか解らないけど、カースの心の中の

葛藤が消えたって事かな。


嬉しくなった。

にっこり笑って、カースの言葉を受け止める。

「はい。」




カースって綺麗な顔立ちしてるの。

美人顔って言うのよね。

こんな風に笑顔を向けられると

照れちゃうのよ。



ほけほけしながら、私は調子に乗りすぎたらしい。


口が滑った。


「私、妹、カース、同じ思う、いいよ。」


カースはちょっと、びっくりした顔をしていたけど、

そのあといつもの意地悪そうな顔に戻った。


「ほう、妹になりたいと。」


え?


ちょっと、その嫌な笑顔なんですか?



「命を助けられたことですし、良いでしょう。

 貴方を私の妹にしてあげましょう。」


いや、心の関係っていうか、

実質を求めてないのですが。



「私の妹は才色兼備でした。

 私に似てとても頭が良かったのですよ。」


それはそれは。



「私の妹になるからには、

 しっかり躾けてあげましょう。」


ひっ


カースの後ろにロッテンマイヤーさんが見える気がする。


「まずは、その言葉使いからですね。

 毎日、仕事が終わってから2時間ほど

 みっちり教えてあげましょう。」



スパルタ?


私の顔色は今、紫とか緑色とかになっているに

違いない。それに比べて、カースの顔色は

酷く明るく、嬉しそうだった。


いじめっこ兄貴ですか?


顔を引きつらせていると、

カースが左手であのペンダントを持ち上げた。


「メイ、この紐、貴方でしょう。

 ありがとうございました。」


ああ、気づいたんですね。


「はい、どうも。」


にっこり笑顔で答える。




「そういう時は、どういたしましてですよ。」


カースの顔がスパルタ教師の顔に。


かわいい妹ではなく、いじめられる生徒の間違いじゃないでしょうか。



でも、元気そうになってよかった。


まあ、明日は明日の風が吹くって言うしね。










私は、全然気がつかなかったのだか、

私の胸に下がっていた白い玉の、

縦五分の一の程のスペースに青い色が

綺麗に染まった。


















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