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箱をあけよう  作者: ひろりん
西大陸砂の国編
219/240

お手伝いをしましょう。

お久しぶりです。諸事情がありしばらく休止していました。

また本日から始めたいと思います。

いろいろと至らない点も多々あると思いますが、

優しい目で読んでやっていただけると嬉しいです。

*********






先生が生徒に手伝いをお願いする。

これは普通に考えても、まあよくあることですよね。


学生時代にもありましたよ。

ちょっとしたときの教材運びとか、ふとした時の荷物持ち。

実験の後片付けや、他の先生への託や忙しい時の電話番、お茶の御伴の買い出しなどなど。

おいちょっと頼むって、先生達は気軽に呼びつけるのですよ。


まあ、ちょっとの範囲が広いかなって思うことはあるものの、

先生の中には体のどこかしらが痛くて困っていたみたいだから、

仕方ないかなって感じで引き受けていました。


この度のサーリア先生のお手伝いの内容が、

同じ様なお手伝いでしたら、多分頑張ればなんとかなるはずです。


これでも老師様の所で毎日働いていますし、

船でのお仕事で力瘤も少し出来たのです。


イルベリーの王城でも女官としてのいろはを骨の髄まで叩きこまれ、

あの当時は夢にまでなにかが追っかけてきていた経験があります。


神様の守護者として巻き込まれた数々の面倒事も、

私の経験値を多少なりともあげてくれたはず。


いろいろ考えたら、うん、ちょっとは自信があります。


それに、サーリア先生は頭の良い方です。

初心者クラスの私に無理はそこまで言われないはず?


ええ、多分。きっとそう。


「それではこちらの部屋に」


自分なりに仕事内容に予測を付け、うんうんと一人頷いていた私が、

カーラーンさんの誘導で向かった先は、執務室の斜め前の部屋でした。

歩数で言えば、万歩計が30も計測しない程度の距離です。


「この部屋が貴方の仕事部屋になります」


カーラーンさんが扉を開けて下さって、中を見た途端に、

すこしばかり持っていた自信の欠片が、ぱりんバキバキと、

全てが壊れました。


「ええっと、あの、この部屋は……」


ここはさすがに異文化。

郷に入っては郷に従えとばかりに、

私の先入観を悉く壊してくれるようです。


ここで言及しておきますが、お部屋自体に文句を言うわけではないのです。

仮にも仕事部屋というからには、穴が開いているわけでもなく普通の部屋です。

部屋には散らかっていたり、埃なんか一欠けらも転がってないです。

掃除なんか全く必要ではないですね。


問題は部屋そのものではなくて、部屋の中身です。


中身というか、部屋には、棚も机も椅子も無い。

窓もない一間の部屋に、存在しているのは本や書類。


「ここは今回の棚卸の概要資料の簡易留置場所です。

 つまり暫定的には資料室ですね」


この言葉を聞いて、思わず口がへの字に歪みました。


これを資料室と言ってはいけないだろうと、脳裏で誰かが資料室の薀蓄を説明し、

いやいや異世界だからと誰かが補足し、逃げろと誰かが叫び、

気にするな、ここで踏ん張れと誰かがエールを送っていた。


私の脳内カオスな紛糾会議に、目の前に鎮座する現状が、

意味不明だと全ての屁理屈を脳裏の彼方に蹴りだしはじめた。


残ったのは、諦めに似た現実のみ。


事実は小説より奇なりと言ったのは誰だったか。

あの格言は本当だったんですねと遠くを見たくなりました。


ここは大変、ええ、本当にある意味衝撃的な部屋でした。


ギネスに挑戦かと思われるくらいに重ねられた本と書類の山。

富士山の幻が重なりそうな程に積み上げられている。

絶妙なバランスで乗せられたそれらは、ちょっと力を加えただけで、

冬山にありがちな大きな雪崩をすぐにでも起こしそうです。


その上、山は山脈となり連なるのが自然であるとばかりに、

床から始まって部屋の壁一面にそれらは重ねられ、

天辺は天上近くに聳えるものも少なくはない。


まさにピレネー山脈のジオラマと見誤りそうです。

無事に足を踏み入れることが出来る山道と言えるのは、

扉から続く、ぐらぐらと揺れる書類の壁面を有する細い一本道のみ。


「どうぞ、部屋に入ってください」


へ?


部屋の光景に項垂れる間もなく、

カーラーンさんは、どんっと強制的に私の背中を押しました。


ぬおっ。


結果的に、私は部屋の中央付近のとととっと入ってしまいました。



知ってますか? 急な飛び出しは危険なんですよ。

ましてや背中を押すなんて、ここが車の多い交差点だったらどうするんですか。

安全巡視の概念を守りましょうよと大きな声で言いたかったが、

ぐっと我慢しました。


なにしろ、危険な一本道にぽつんと立っている私は、

息を密かに止めたり、ゆっくり息を吐いたりと、とにかく音を立てない様に、

注意深く辺りを警戒しつつ恐々と山々を見上げることしか出来ませんでしたから。


だって、ちょっとでも何かすると、雪崩が、山崩れが起きそうなのです。


「あ、あの、外に、で、出たいのですが、い、いかがなものでしょうか」


小さな声でお伺いを立てたが、カーラーンさんは、

部屋の外でにこやかに微笑んでいます。


「なぜ?」


いつもなら、誰かをほっとさせるであろうその笑顔に顔が引き攣りそうです。


なぜと問いますか?見てわかるでしょう!


私が立つ場所は、指で突けば書類書籍雪崩が降ってくる危険山脈豪雪地帯。

ヤッホーと気軽に声をあげれば、埋まるのは確実に私です。


12畳程しかない一間の部屋に、よくもまあここまで詰め込んだものだと、

違うところで息もつかずに、心の片隅で感心しそうになるが、それはそれです。

今は、そんなことを考えている時ではありません。


部屋の中心に立ってみれば、足の裏から伝わってくるのは、

書類の重さにミシミシと音を建てる床板の軋み。

いつか床板が落ちてしまうのではと、ひやりとした冷たい想像が掻き立てられます。


ミシッ、ピキピキッ。


今の音って家鳴り?でも、床から音がしたような……

この床って、ウグイス張り……とかではないですよね。もちろん。


命の危機って言葉が脳裏に点滅してます。


海で山で空で大地で死なない約束はありますが、書籍の山に埋もれた場合、

そのお約束は当てはまらないですよね。

つまり、なだれてきた何かで埋もれ、打ち所が悪ければ死ぬかもしれません。


背中に冷や汗がつうっと流れました。


何故、誰が、どうして、ここまでになるまで放置したのかと、

心底からこの状態を作り上げたであろう誰かに大きな声で叫びたくなる。

が、雪崩の恐怖から声すら上げられない。


そんな私の心情を慮ったのか、カーラーンさんは固まった様な笑顔を解き、

部屋の外の安全圏で困ったように小さく首を振った。


「私達は、本当に、心底から、酷く困っているんですよ。

 これを見て、実際に体感していただければ貴方でも解るかと思いますが、

 早急にどうにかしたいんです。お解りでしょう」


そ、それはそうでしょう。

ですが、なにも態々私を部屋の中に入れなくてもいいのではないでしょうか。

しかし、何も反論せず、私は静かに首を縦に振っただけに止めました。


もう十分に体感しました。

外に出してください。


私の懇願を含んだ眼差しに、カーラーンさんは気が付かない。

それどころか、体感だけでは不十分だとばかりに補足説明を始めました。


「この状態は、不本意な事態が重なって出来た偶発的な惨状です。

 毎年、この時期に合わせて、作業に手慣れた数人の短期従業員を雇って、

 棚卸の前後10日間で計画的に書類を分類し、配送と返却作業を随時行うので、

 ここまで酷い状態にはなっていなかったのですが、

 今年は棚卸が早まった上、専任で雇っていた短期雇いの都合がつきませんでした。

 結果、このざまです」

 

なるほど、今年はいろいろ悪条件が重なったと言う事ですね。


私だって、社会人をしていた経験はありますし、

この世界でも食堂や王城や働いていた経歴をもつ大人な私です。


一概に仕事といっても、いろいろとあるのは理解しています。

いいことはさほど重なりませんが、悪いことは一気にくるというのも、

よくあるパターンですものね。


「と言うことで、大変困ってます。正直、猫の手も借りたい。

 とはいえ、実際には猫の手は比喩ですし、総長のかねてからの懸案もあり、

 胡乱な人間をここに雇用することは出来ませんからね」


相変わらず早口巻き舌で難しい言葉を使われると、さっぱり解りません。

ああ、言葉の壁は高く険しいです。


「ですが、貴方ならまあ何かあっても我々でも対処できますし、

 あの老師様の所で働けるだけの忍耐力がおありなのですから、

 おそらくなんとかなると期待してます」


今の言葉はなんとなく解った気がします。

期待?しているということでしょうか。

まあ、そこまで言われるなら、

私に出来ることはやろうかなって気になりました。


「まあ、何もしないよりはマシでしょう。

 万が一があったとしても、私達には詮無いことです。

 ここの困った現状が幾分解消される目安がつくと思えば、

 多少のリスクは負うべきでしょうから」


そうですか、ですが何となく解りました。

ここが仕事部屋ということは、要するにこの山を片付けるのですね。

片付けると言えば、ゴミに纏めて捨てるですよね。


あ、ゴミ処分ってこの職場ではどうなっているのでしょう。

塔のゴミは一階の処理場に持って行くようになってたけど、

ここも同じかな?

シュレッダーは、この世界にはもちろんないから、焼いて砕いて埋めるのかな?

それともゴミ収集日があって、その日にゴミ捨て場に運べばいいのかしら?


「ああ、解っているとは思いますが、これらはゴミでは有りませんよ。

 それどころか全てにおいて重要な資料なのです。

 これらは大事に扱ってくださいね」


なるほど、これは大事な資料なのですか。

まあ、わざわざ集められたと言うことは、そうなのかもしれません。


あ、ということは、片付けるって、ま、まさか、この山を……


一瞬で固まった私の背後で、コホンとカーラーンさんが一咳しました。

私の首が、ギギギっと油を刺してない人形の首の様に山を振り返ります。


言葉もなく立ちすくんでいる私に、カーラーンさんの言葉が、

耳にやけにくっきりはっきりと響きます。


「これらの書類や本を、書架市場のそれぞれの既定の場所に片付けてください」


えええええ?

これ全部ですか?


「ああ、ご心配なさらずとも全てでは有りませんよ。

 扉脇の左側の箱は私がサーリア司書長にお持ちするものですので、

 箱の中の書類については貴方は触れる必要はありません」


みかん箱程の大きさの箱が3つ、ちんまりと扉の左側の壁沿いに鎮座していました。

確かに全部ではないでしょうが、パッと見た比率は1対9、いや1対20くらい。

つまりほぼ殆どが片付け対象物です。


「今日から5日間で、これらすべてを片付けてください」


「無理です」


私ははっきり首を横にふりました。

書架市場を知らない素人に何をしろと言うのでしょうか。

常識から考えても、まずもって無理です。


出来ない仕事は最初からちゃんと言う。

これは、仕事をする上で常識です。

安請け合いをした途端に、後悔することは目に見えてますからね。


「無理でもやってもらいます。

 ああもちろん、貴方一人でこれを片付けろとは言いません」


その言葉にほっとしました。そうですよね。

この書架市場の右も左も解らない私一人で、なんて無茶は言わないですよね。


ならば、カーラーンさんが手伝ってくださるのでしょうか。

首を傾げて言葉の続きを待っていたら、徐にドンと音かして床が揺れた。


地震?

その衝撃を受けて、書類の山がぐらっと右に揺れた。


「わっ」


私は、咄嗟に横の書類の山を両手で押さえました。


「あ、ごめん」


どこか軽い口調で謝られるが、倒れそうな書類の山は待ってくれない。


「あ、ああ、うわっ」


ぐらぐらと揺れ動く山の波に、目が手が離せない。


「はあ、もう少し行動には気を付けないと、いつも言っているでしょう」


カーラーンさんの呑気な声が聞こえます。

それに応えたのは、年若い少年の声です。


「すいません、カーラーンさん。荷物が重くて、つい」


次第に収まってきた雪崩るかもしれない書類の山を全身で押えつつ、

私はゆっくりと背後を振り返りました。


そこには、14,5歳くらいの少年がいました。

ほっそりとした体躯にひょろりと伸びた感じのもやしのような少年。

もやしと印象が違うのは、健康的な日焼けの肌とそばかす。

くりくりの日に焼けた茶色の髪がちょっと可愛いですね。


私の不躾な視線を受けながらも少年は何の反応もしない。

なにやら人の視線に慣れているような感じだ。


少年は、軽く頭を掻くと、担ぎ籠の中の荷物を幾つかを取り上げ、

くるりと振り返り私を手招きした。


「そこ通りたいんだけど」


道は、人が二人すれ違う程には幅はない。

となれば、私が先に退くしかないということです。


私は、なんとか書類の山を整えて、そうっと方向転換して、

山々を揺らさない様にゆっくりと扉の外に出ました。


扉の外を踏みしめた時には、安堵の余り、息を大きく吐きました。


危険地帯からの生還です。

ああ、空気が美味しい気がします。


入れ替わりに部屋に入った少年は、

平気な顔でその危険地帯に足を踏み入れます。


それどころか、慣れた様子で持ってきた資料を、

扉の左横の3つの箱に分類して入れるなど、てきぱきと仕事をこなしてます。


更に、持っていた書類などを右に左にと、山の上に積み上げます。

どうやら山にも分別があるらしく、これはこっちとかの呟きが聞こえました。


考えなしに積み上げているわけではないようです。

少年は新たな書類の束や書籍を、倒れない様に、崩れない様に、

絶妙なバランスで、とても器用に上に乗せていきます。

ああ、また山が高くなったようです。


私がどこぞの名探偵ならこう言うところです。


犯人は、お前か!と。


危ないでしょう。重ねすぎです。

世の中には何事も程々という言葉があるのですよ。


「ああ、また増えましたか」


私が文句を言う前に、

カーラーンさんの深いため息が横で聞こえました。


「仕方ないよ、カーラーンさん。毎年のことだしね。

 それに、今年は特に、皆、自分の仕事で手一杯だからね」


少年は返事をしながら何度か往復して、持ってきた籠の中を空にしたら、

今度は手前の山の書類や本の幾つかを籠に入れていきます。


少年の動作には迷いが無く、きちんとした順番があるようです。

どこにどう取っていいのか熟知しているような動きです。

山を崩すことなく上手に資料を持っていく様子は、ジェンガを彷彿させそうです。

その様子は熟練の匠の頼もしさを感じます。


「俺は、出来るだけのことをしているつもりだけど」


首には汗拭き用タオル、頭全体を手ぬぐいの様な布で覆い、

大掃除の主婦の様に巻いている様子も、実に玄人っぽいです。


そんな少年に、カーラーンさんは頷きました。


「もちろんですよ。解ってます。

 貴方は本当に良く働いてくれます」


少年がすることを感心しながら見ていたら、

カーラーンさんがポンと私の右肩を叩いた。


「ジュノ、ちょっとこちらに」


少年をが仕事の手を休めてこちらを向いた。


「はい。なんでしょう、カーラーンさん」


緑豆もやしの様なほっそりした少年が、

ぱんぱんと軽く手をはたきながら近づいてきた。


「ジュノ、彼女は貴方の学問所の後輩です。

 これから数日間、短時間ですが彼女を貴方の助手とします」


少年は、汗を拭きつつもこくりと頷いた。


「はい、解りました」


少年の返事に満足そうに頷くと、カーラーンさんは私に言いました。


「彼はベテランです。安心してください。

 貴方は彼の指示通りに必要な物を取ってきて、不必要なものを返却する。

 それだけです」


まあ、先達がいるなら何とかなるでしょうか。


「昼の鐘から夕の鐘の一刻前までの短時間ですが、

 しっかり働いてください」


え?手伝いって1日だけじゃないの?数日?

其れも昼の鐘からって、いつ決まったのでしょう。


突然の延長宣言にビックリしていたら、

少年はあっさりと頷いて、私に向き直りました。


「そっか。働く時間も俺と同じだな。正直困っていたんだ。

 一人でも手伝いが入ったらここもなんとか出来るかもしれないよね」


少年は本当に嬉しそうに笑いました。

眩しい笑みです。


「ジュノ、早速彼女に作業の流れと大方の仕事を叩きこんでください。

 少々荒療治でも構いません」


え?


「はい」


実によい返事をした少年は、私の正面に立つと、

頭に覆っていた布を取って、流れ落ちる汗と汚れた手の平をぐいっと拭いた。

埃避けの布の中から出てきたのはふわふわくるくるの茶髪。

日に焼けて健康的なジュノの頬のそばかすは、

大人成りかけの子供といった印象を覆せない。


14,5くらいだろうか。

思わず年齢を推測しながらも、その顔はどこかで見たことがある様なないような。

そんなあやふやな記憶がもやもやと脳裏に雲を掛けてくるが思い出せない。


記憶の端から零れ落ちたようです。

自慢ではないが私の記憶なんて、基本が穴だらけなのだから仕方ないですよね。


まあ、勝手に毀れたのだからいつか思い出すだろうと思っていたら、

少年は、やや綺麗になったであろう右手を私に差し出した。


「俺はジュノ。よろしくな。えーと」


あ、自己紹介ですね。

出された手に私の右手を重ねる。

握手をした手は、幼い外見に似合わず驚くほど大きい。

まだ少年なのに、野球のグローブの様な分厚く頑丈な大きな手です。


「私はマールです。ジュノさん、よろしくお願いします」


ジュノの手の平の皮膚は、年齢に似合わずごつごつして硬い。

このまま何年か育つと、船乗りなレヴィ船長のお仲間たちの手の平と変わらない、

働き者の大人の手となること請け合いです。


後で聞きましたが、少年ジュノは、本当にベテランだそうです。

この棚卸の仕事歴は、なんと5年になろうという強者だそうです。


小さい時から体の弱い母を支える為、子供が出来るありとあらゆる仕事を、

かたっぱしからしていた経歴を持つ、スーパー少年なんだそうです。

単純に職歴を問えば10年選手。

紛れもなく勤労少年です。

酷い時には1日に5つも仕事は梯子していたとか。


それを聞いて、貧乏な家計を助ける為に、

新聞配達に勤しんでいた少年の話を思い出しました。

雨の日も風の日も、一日も休まない立派な勤労少年。


苦労しているのですね。

ちょっとほろっときそうです。


彼が仕事を始めたであろうのは4歳の年だとか。

4歳の私は親の手伝いもせず、近所の子供たちと幼稚園で、

無邪気に遊んでいた記憶があります。


文化の違いといいますか、家庭環境の違いもあるとは思いますが、

ジュノは実に立派です。

世が世なら二宮なんちゃら賞を差し上げたい気分です。


頑張っているジュノ少年を偉いねって褒め称えたい。

多分、周りの大人も同じように思っているんじゃないかな。


ああ、話が逸れました。

まあ、それは兎も角。今は、目先の現実からです。


カーラーンさんは私の就業条件などを、

おおざっぱですがジュノ少年に説明をしました。


「ジュノ、彼女は残業は一切無しです。そのつもりで」


あ、そうですね。

お気づかい有難うございます。


残業したら、老師様のご飯が作れないし、せっかくの職がおろそかになる。

最悪、首になるかもしれない。そうすると無一文ホームレスまっしぐら。


それは、絶対駄目です。

最初からそう言ってもらえると大変助かります。

カーラーンさんは、よく気が廻る方ですね。


これから毎日老師様にお願いして、この時間に来れるようにしなくちゃいけませんね。


まずは、今日帰ったら棚卸の手伝いが必要なようですってちゃんと報告して、

老師様に明日からの仕事の了承を取るようにしなくちゃ。


今日みたいに、掃除洗濯買い物だけなら、急げば午前中で終わるかな。

明日から忙しく、いや、今日から忙しくなりそうです。


うん。

気合い入れましょう。






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