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箱をあけよう  作者: ひろりん
第1章:船上編
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この毛布は暖かいです。

寒いです。

ここは、極寒かと思うくらいに寒い。


体中が寒くて

つま先から、指先から

きんきんと痛みが響く。


以前北海道で、スキーに行ったとき

寒いなって感じたけど、

これは比較できないくらいに寒い。



体中が震えて、

口を閉じることも出来ない。



歯と歯があたって、

かちかちと音を立てる。



手足は感覚がすでにない。



自分の体でないみたいな感じがする。



背中と首筋がぞってするほど

冷たい。


氷柱を背中に背負っているようだ。



体を丸めて寒さをやわらげようとしたけど、

体が、手足が重くて動けない。



私、どうしたんだろう。




このまま、体動かなくて、

寒いのが続くと、

どうなっちゃうんだろう。



ゾンビの仲間入り決定?

うーん、せめて綺麗なゾンビに

なれないかな。

体、くずれまくりは乙女として

許せないのよね。



死ぬときは走馬灯とかいうけど、

なんにも思い浮かばない。


私、すっごい薄情者かもしれない。



でも、ちょっと待って。


なんか、すっごい後ろ向き。

こんな自分、すっごい嫌だ。


暗いこと考えるから、後ろ向きになるんだよ。

明るいこと、考えよう。


パルックだよ。

LEDライトだよ。




なんか違う?



まあ、いいか。



そんなことをつらつら考えていると、

体が次第に温かくなってきた。



最初は胸の辺りから。

それから、背中の中心と腰の辺りから

じわじわと暖かさの広がっていく。



まず、背中の氷柱がなくなった。



次に、体の震えが止まって、

かちかちと音を立てていた歯が

音を立てなくなった。



開いていた口から、

大きなため息がゆっくりと出る。



暖かい、


気持ちいい。



手足がじんじんしてきた。

感覚がもとに戻ってきたみたいで

ちょっと痒い。



暖かさが体中に広がって、

血液がながれているのが解る。



自分の心臓がとくとくと音をたてている。



生きてる。



体の緊張が解ける。



大きな暖かな毛布で

体をすっぽり覆われている感じ。



本当に気持ちよい。

毛布に、顔をこすり付ける。

ちょっと硬いけど、暖かい。




私は、こたつかストーブ派だったけど、

電気毛布もいいかもしれない。



帰ったら、電気毛布買ってこようかな。





ん?



帰ったらって、どこから?



私、今、どこにいるんだっけ?



眉を寄せて

私の思考チェック!



「おい、目が覚めたのか?」



耳元で、誰かの声がしました。


聞き覚えのある声ですよ。



暖かいけど、硬いざらざらしたものが

私のうなじをざらりとなでた。




うひょ?


何?




私の瞼がぱちっと開いた。


私の目の前、まさに10cmのところに

レヴィ船長の緑の目がありました。



きれいな瞳。



エメラルドのような瞳って、

歌詞であったけど、

絶対、レヴィ船長のような

瞳のことだよね。



そんなエメラルドの瞳に私の顔が映ってる。

私、すっごくとぼけた顔してない?



そのままにらめっこのように

レヴィ船長の目をみていたら、



「おい、メイ、大丈夫か? 

 起きているのか?

 それとも、まだ寝ぼけてるのか?」



はっ妄想ではなく。

本物です。



あわてて、答える。


「はい、大丈夫。 起きた。」



レヴィ船長は、私の肩をぐっと抱き寄せて、

耳元でつぶやいた。



「体が冷え切っていたから、暖めただけだ。」



ああ、私の電気毛布は船長だったんですね。



船長の首元で私も返事する。



「ありがとう。レヴィ船長。」



冬山で、遭難しかけたら人肌って

言うものね。



ん? 人肌?



その時、はっと気がついた。



私、裸です。



ブラどころか、パンツもきてないです。




のおおおおおおー




意識したとたんに、体中が熱くなってきた。


いま、顔面真っ赤選手権とか

あったら、私、優勝間違いなしだと思います。



レヴィ船長は私が見える範囲では、

同じく上は着ていません。



下は……



考えると頭、破裂しそうです。



すいません。

鼻血でそうです。



しばらく、レヴィ船長は、

私を抱き寄せたまま、

髪をなでてくれていた。



するするとなでてくれるその手が

気持ちよくて、しばらくされるままに

なっていたら、落ち着いてきた。



レヴィ船長が小さな声でぼそっと言った。


「本当に小さいな。」



うう、そうです。

その通りです。

胸もお尻も小さいんです。


自分でもわかっているのだから

言わないで下さい。




「体は大丈夫か?痛むとこはないか?」



体?



そういえば、腕が痛いです。



というより、全身筋肉痛です。



「腕、ちょっと、痛い。あとは、ちょっとだけ。」



筋肉痛って言葉わからないからねぇ。



背中に回っていた左手が

私の腕に伸びて、

やさしくさすってくれた。


「まあ、しばらくは痛いだろう。

 だが、問題は無い。

 大きなケガはしてないからな。」



ケガしてない。



そうだよ、この間から、

ケガ三昧だったのだから、

ケガが無いのは良いことだよ。



あれ?


ケガって、今、なにか

頭の中でちろっとねずみが走りました。



瞬間、思い出した。



カース!



どうなったの?



カース、頭から血がどばって

出てたよね。



頭のぽわぽわした感じが

冷水を掛けられたように

一瞬でさめた。



「レヴィ船長、カースは?

 ケガ。大変、生きてる?」



レヴィ船長は、私の顔を見ながら

やわらかな笑顔で微笑んだ。



「ああ、メイのおかげだ。

 カースは生きてる。

 ケガは、セランが診ている。

 命にかかわるようなケガではないそうだ。

 まだ、意識が無いが、

 問題ないだろう。」



そうなの。


良かった。


ほっとした。


大きなため息がでる。


嬉しくなって

口角があがる。


にこにこ。



満面の笑みってやつです。


うん、よかった。



レヴィ船長がすっと私の側から

離れて、ベットから降りた。



……レヴィ船長ってトランクス派だったんですね。




じゃなくて、


よかった。

もし、レヴィ船長もなにもつけてなかったら

目の行き場が無いところでした。



一応、私だって、嫁入り前の娘ですし。



頬をちょっと染めて、

もじもじシーツの中でしてました。



早々と服を着たレヴィ船長は、

ベットの上にバサッって服を置いた。



「替えの服だ。

 おまえの服が乾くまで、

 これ着てろ。」



置かれた服はちょっと大きめ。


でも、折って折って着たら

何とかなるかな。


「着替えてたら、セランのところに

 顔を出しとけ。」


そういって、レヴィ船長は部屋を出て行った。


改めて、部屋を見渡すと、


ぎっしりと本が詰まった本棚。


床に打ち付けられている書き物机。


壁には、国旗みたいな布。


それに、猫足なお風呂。


衝立に飾棚にクローゼット。





ここは、

レヴィ船長のお部屋です。

寝室です。



初めて見ました。

奥の部屋って

こんなふうになっていたんですね。



ほやっとしてました。



しばらくして、

レヴィ船長の言葉を思い出した。



そうだ、着替えて

セランのとこいかなくちゃ。



心配してるかもしれないし。


カースの状態はどうなんだろ。



それに、厨房のお手伝いしないと。


そういえば、マートルは無事かな。


探し物見つかったのかな。



ゆっくり、体を起こして、

服を着ていく。



いろいろ考えること、

やらなくてはいけないこと

一杯あるけど、筋肉痛はいつ治るだろうか。



それが問題だ。



部屋からゆっくり出て、

壁をつたいながら、

セランのいる医務室へ降りていった。




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