表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
箱をあけよう  作者: ひろりん
第5章:遺跡編
153/240

頼もしい息子達。

捕まっているレヴィ船長達のお話です。

どこかで、水の雫が音を立てている。

いつもの海の奏でる騒がしい波の音ではない。


針の穴を通すがごとくに小さな、だが鋭利な刃物を思わせる程に澄んだ音。

水の音は心臓の音のリズムにも似て規則正しく水滴を落している。


30を数えただろうか。

気がつけば、水以外の音が耳に少しずつ拾われる。


さらさらと細かい砂が流れ落ちる音。

そして、体にまとわりつくちくちくとした麻のような素材が肌を逆立てる。

少しずつだが、その感覚で自身の意識が浮上してきているのを感じた。


レヴィウスは、目を開けるために瞼に力を入れるが、

ピクピクと筋肉が痙攣するのみで、瞼は分銅を載せたように重く開かない。


何故動かないと疑った矢先に、香炉の煙を吸い込んだことを思い出した。

薬といっても、あれは麻薬や神経毒と同じ。

事実、体の自由は利かなくなり、意識が途切れた。


本来ならば、体のダメージは計り知れない。


だが、レヴィウスの頭は冷静に今の自分の状態を分析する。

毒や麻薬の類なら、今までに何度も経験済みだ。

その経験から、この状態は死に直結するものではないと判断した。


目が開かないのならば、そのほかの器官の無事を確かめるべく、

一つ一つの自分の感覚を浮上させる。


耳は、さらさらと砂を音を拾いながらも、周りの雑音も拾い始めた。

口内をさらうように舌を動かし、溜まった唾液を嚥下して喉の動きを確かめる。

息を吸い込み、小さく吐き、心臓の音を聞いて手足に信号を送る。

指先、足先共に痺れはない。

足先、指先から順に体の関節を動かしていき、肩まで来たら、

首、耳、そして顎、眉と体の動きを細かに動かしていく内に瞼に薄い光が入る。


どうやら瞼の痙攣が解けたらしい。

目をゆっくりと開けると、真っ暗な視界に動くものがあることに気づいた。


目は先ほど感じた光らしきものを感知せず、暗闇の中でその瞳孔を大きく開く。


何処だ。ここは。

目を開けて、手に力をいれ床を押しながら肘、肩、背中、首とゆっくりと体を起こす。


体にこわばりは見えるものの、何処にも外傷のようなものは見えない。

首を左右にゆっくりとめぐらして暗闇を探ると、

自分のほかに左に2人の呼吸音が聞こえた。


自分のほかにもココには生きている人間が3人いる。

そしてその気配は、自身の見知った者である。

そのことにすこしだけ安堵する。


「目を覚まされましたかな」


レヴィウスの背後から、しゃがれてかすれた老人の声がした。

先ほど呼吸音を探った時に判別できなかった場所からの知らない声に、

反射的に体の全身のばねに力を入れて前方に跳ね起き身構え、声の主に相対する。

心臓が何かで捕まえられたような衝撃を一瞬受けるが、意志の力でその動揺を散らす。


「ほう、これはこれは。

 噂は伊達ではないというわけか」


面白そうに頭を揺らしているようにも見えるが、

暗闇の中、その輪郭は薄っすらとしか捉えることは出来ない。

だが、レヴィウスのことを知っている口調にひっかかりを覚えた。


「……お前は誰だ。俺を知っているのか」


暗闇の中で薄っすらと輪郭を示している人影に向かって問いかけた。

輪郭は、ゆらゆらと体を揺するように歩き、レヴィウスから距離を置く。


「今から明かりを燈す。目を傷めぬようにすこしの間、目を閉じておけ」


レヴィウスの問いには答えず、だが彼を気遣う様子がわかる口調で淡々と注げる。

カチカチと石を打ち合わす音がして、小さな火花が影の顔の一部を照らす。


火花が落ちた先にあるのは薪の塊にも見えるが、違ったようだ。

それが火花の火に引火して燃え始めたら、影がそのうちの一本を持って振り返ったことで、

薪は松明を幾つか集めたものだと解かる。


松明を掲げ持つことでその影が、言葉尻や口調から推し量れる年齢も、

最初の推察どおりに小柄な老人であることが判明した。


「……どうやら、薬の作用は抜けたようじゃの」


レヴィウスが老人を伺っていたように、老人もレヴィウスの状態をじっと見ていたようだ。

小さなため息と共に漏れる小さな笑みに、すこしだけ勘が動きはじめる。

この老人は、俺達を殺すつもりはないとレヴィウスの勘は告げていた。


だが、それだけで警戒を解くわけにはいかなかった。

目の前の老人は、白髪の長く束ねた髪、褐色の皺だらけの肌、そしての青の瞳を持っていた。


髪と瞳だけをみれば、どこにでもイルベリー国にありがちな老人の特徴だが、

暗闇の中に夜目が利く目と、気配を隠すことが出来るほどの穏業の術に、褐色の肌。

色鮮やかな青と緑、金の糸を織り込んだ分厚い布の民族衣装が老人の所属を明らかにする。


どんなに年を重ねようと闇の影としての身にしみこんだ気配と、

民族特有のレグドールとしての特徴は隠すことが出来ない。


「警戒しておるようじゃが、まあ、当然か。

 私の容姿もさることながら、今の状態ではの」


小さな老人は、顔にかかった白い髪の数本を指で耳にかける。


「それはさておき、時間がない。

 お前達には解毒剤を飲ませてある。そこの3人も同様に、直に目が覚める」


レヴィウスは、老人の言葉を聞きながら頷いて続きを促す。


「お前達につけられた足枷も外したし、牢の鍵は外した。

 そして、祭りの本祭の始まる時刻までもう二刻を切っている」


淡々と続けられる言葉に目を見開く。

もう計画の時刻まで時間がないということだ。


「お前達の仲間は、順調に事を運んでいる。

 もうじきに全ての準備を終えて、ここに一人来るはずだ」


老人の言葉にレヴィウスは眉を顰めて、言葉を選んで返す。


「俺達の仲間とは、何のことだ」


「潜入している軍の兵士達とお前達の友人さ。

 フィオンから報告は受けておるのでな。

 大概のことは知っておるよ」


老人は、じっとレヴィウスを見据えた上で、ゆっくりと目尻に皺を寄せて笑った。


「アヤツのいっていたとおりの真っ直ぐな男よの。

 お前達のような友人の側にいるのならば、あの子らも曲がることはあるまいよ」


暖かな微笑みに確かな愛情を感じられる瞳。

それを向けられる覚えがレヴィウスには無かった。


「なんのことを言っているんだ。あの子らとは誰のことだ」


「私の名前は、アルナと言う。

 お前達の友人であるディコンの祖母に当たるものだ」


ディコンという名前を出されたことで、老人の態度も視線の意味も理解した。


「……ディコンとウィケナの。連絡を取っていたのか」


確か、里を母親と共に追い出された後は誰とも連絡を取っていないとウィケナは言っていた。

だが、先ほどの言葉を察するにディコンとはなんらかの繋ぎを取っていたのかと考えた。


アルナはレヴィウスの言葉にゆっくりと首を振った。 


「いいや、あの子らは、私と連絡を取っておったわけではないよ。

 あの子らにとって我らの里と繋がりがあることは、百害あって一利もない。

 だが、私の唯一の孫だ。離れなければならぬも、どうしても切りたくなかった。

 遠くから様子を伺い、時に闇の影の情報に紛れて探るくらいは常にしておったのだよ。

 あの子らの幸せを遠くから見守るだけ。それで私はよかったんだ」


アルナの言葉に、すこしだけ頬に笑みを載せてレヴィウスは答えた。


「もうじき、ウィケナに子供が生まれる。

 貴方のひ孫だな」


アルナの瞳が驚きの情報に目を見張り、呆然とした。

だが、呆然は呟きと同時に嬉しそうな微笑を見せた。


「……子供、ウィケナに。  

 そうか、いつまでも子供だと思っていたが、時は移ろい流れていくものだね。

 ああ、ひ孫か、どんな顔がしておるのだろうか。 ディエムに、私の息子に似ておるかの。

 この手に抱いて、見れぬのが残念だよ」


「この里を出て、会いにいけばいい。ウィケナならば、歓迎するだろう」


アルナは、レヴィウスの言葉に、苦笑して首を振った。


「いいや。その申し出には心惹かれるが、私は決してあの子らの前には顔を出さぬよ。

 そのほうがあの子らのためになることを私はよく知っておる。

 レグドールとの繋がりは切れたままでよいのだ。

 そのほうが幸せな生涯を送れる」


アルナは、きっぱりとレヴィウスに自分の意思を伝える。

その目には戸惑いも揺れも全く感じられない。

だから、レヴィウスもその瞳に、その意思を否定することは止めた。


「……わかった。」


アルナが何故自分達を知っていたのかとか、どうして助けるのかは解かったが、

その瞳に映っている何かがレヴィウスには気になった。

先ほどからその瞳に映る意思。 それは何かを必死に求める瞳だ。


「それで、俺達に何をさせたい」


レヴィウスが口火を切って、アルナの言を求めた。

アルナは面白そうに目を細めて、大きく安堵の息を吐いた。


「ああ、本当にフィオンが言っていた通りの男だよ。

 お前達に頼みがあるんだ。 後生だから聞いて欲しい。

 あの子を、ディコンを助けてほしい。 

 先ほど、アニエスの従者が牢から連れて行った。

 儀式の為にという名目でディコンを殺すつもりだ」


ディコンの行方を聞いて、レヴィウスの頭の中でゼノの計画が高速で変更されていく。

その上で、先ほどアルナが明かしたフィオンとの繋がりを組み上げる。


「……どこにいった」


レヴィウスの頭の中でゼノの持っていた地図と幾つかの道が順繰りに浮かんでは消える。


「遺跡の最深部だ。 誰も開けられない扉の中。

 我らの祖と力あるものの封印が一緒に眠っている場所だ」


誰も開けられない扉の一言で、メイの顔が浮かんだ。

彼女がここに居ないと言う事は、違う場所。


このアルナが俺達のことをここまで知っていると言う事は、フィオンからの情報。

それは長の孫娘である、あの女狐アニエスも知っていることだろうと推測する。

だからこそ、メイだけをあの時連れて行ったのだろう。


ならば、メイはその扉を開けるため最深部に居るはずだ。

そして、フィオンの別れ際の意味深な言葉。

多分、フィオンは今メイの側にいるのだろう。


嫉妬がゆらゆらと心で揺れるが、それはぐっと押さえつける。

あのフィオンの様子では、メイへ気持ちは恋まで進んでない。

だが、フィオンは程無くメイに惹かれるであろうということは、

レヴィウスには解かっていた。


レヴィウスとフィオン。

二人は全く似てないようで似ている。


出合った時どこかそんな風に感じた。


自分がメイに自然に心惹かれたように、フィオンも気にしていた。

出合ったのは自分が早かったし、メイの心は俺に向いている。


だが、もし自分がフィオンならば諦めるか。

いや、絶対にそれだけで済ますはずがない。


僅かな時でも二人で過ごしたなら、メイに対する執着は確実に育っているはず。

ならばこそ、彼はメイを必ず守っているだろう。


ぎりぎりと歯軋りしたい気持ちを裏腹に、現実の計画に気持ちを引き戻す。


「俺達をそこまでつれていくことは可能か」


「ああ、可能だ。 もうじき本祭が始まる。

 アニエスは私にディコンの姿を見せ付ける為にその場に呼ぶだろう。

 一緒に連れて行くことは出来ないが、目印を残す。

 私の衣装の裾に緑の染料を滲みこませておる。

 解かりにくいかも知れんが、これが精一杯だ。

 染料の目印を辿って追ってくるがいい。

 詳しい段取りはもうじきくるお前達の仲間に聞け。いいな」


そういってアルナはすっと背筋を伸ばして踵を返した。


「まて、本当に……いいのか」


レヴィウスの問いがアルナの背に刺さる。

この問いの意味はアルナにもはっきりと解かっている。

本当にそこまでするほどに愛している孫のディコンに告げなくてもいいのかという意味だ。


本心はわが手で抱きしめてアニエスの凶手から守りたい。

だが、自分の年老いたこの手では不可能であり、

それをすることは自分の決めた意思に反する。


ごくりと唾を飲み込み、ぎゅっと拳を握りこむ。

そして、レヴィウスを振り返りながら真剣な顔で応えた。


「ああ、ディコンには私の事は何一つ言わないでくれ。

 それでいい」


ゆったりとした仕草でアルナはそうっと牢屋の出口を押し開けて出て行った。

その後姿は、生真面目な友人、ディコンを思い出させる。

やはり、血は繋がっているのだなと感じて、レヴィウスはすこしだけ嬉しくなった。








アルナの居なくなった場所で、レヴィウスはぼそっと呟くように発言した。


「起きているんだろう。 いい加減に答えたらどうだ」


その言葉にレヴィウスの左側に横たわっていた体がむくりと起き上がった。


「気がついていたのか。 まあ、当たり前だな」


ゼノが硬くなった首をほぐすようにして体全体を伸ばし始める。


そして、そのさらに左横でもう一人が体を起こす。


「そうですね。 レヴィウスなら解かっていたでしょう」


カースは膝や肘の汚れを、パンパンと軽く叩き落としていた。


その更に奥で、申し訳なさそうな顔のカミーユがゆっくりと体を起こしてきた。

3人とも無事の様子だ。





「それで、いいんだろうな」


レヴィウスの問いは先ほどのアルナの要望を聞いていいのだろうなと言う事だ。


ゼノも勿論解かっていてとぼけるほど馬鹿じゃあない。

今はそう時間がないのだから。


「ああ、だがすこし待て。

 彼女が言うにはもうじき誰かがココに来るはずだ。

 ああ、言っている側からきたようだな」


ゼノが伸びてきた髭をそりそりと撫でていたら、

カタっと牢の出入り口が開いた。


フードを深く被った男が、入ってきてすぐにはあっと大きなため息をついた。

そして、フードを跳ね上げ顔をあらわにする。


「よう、ミオッシュ。元気だったか。

 すまねえな。手間かけちまって」


ゼノは気楽な様子で楽しそうに笑顔で笑いかけた。


「はあ、貴方は何でこんなところで暢気に捕まっているんですか。

 馬鹿でしょう、阿呆ですね、埋められたいんですか」


ビン底眼鏡をすっと持ち上げて、ゼノに詰め寄る姿は怒りをあらわにしている。

仮にも部下であろう彼は、敬語なんて敬意をともなわなければ意味が無いことを体言している。


「いいや、これも計画のうちだからよ。

 こうなるだろうってことは大体の予測はしてあったんだ。

 本当に癪だが、問題ない。

 あの王城の狸達が闇の影を案内に使うって決めた時点で修正してある。

 まあ、俺達に薬を嗅がしたところは予想外だったが、

 アイツは俺達を死なせないと解かっていたから心配はしてなかった。

 予備の配置も終わっているはずだ」


ゼノの落ち着いた様子からそうではないかと思っていたが、

その通りだと聞いてすこしだけ部下のミオッシュは落ち着いたようだ。


「そうですか、それならばいいのです。

 先ほど、住人の殆どが遺跡の外に出ました。

 これから神前の巫女舞があるらしく、里中の人間が遺跡の前に集まっています。

 学者達と後から来た貴方達の友人は、既に脱出経路を辿らせました。

 合図と共に、決められた位置で壁を爆破して脱出します。

 ですが、奴隷の救出地点に問題がありました。

 2箇所、地盤が固く穴が開かないのです。 

 奴隷の配置場所には3箇所に渡って既に穴を開けてます。

 その三箇所でどこまで出来るか解かりません。

 その場所に梯子をかけて自ら出てこれる者のみ救う予定です。

 体力、運のあるものは助かるでしょう」


ミオッシュの言葉に、ゼノはしっかりと頷きながらにやりと笑った。


「ああ、里の松明にも仕掛け終わっているはずだ。

 時間になると松明から煙が一斉に上がる。

 それを合図に里の住人の一部を確保しろ。

 老人と子供だが、盾に使え。 いいな。

 決してこちらからは脅し以外の剣は抜くな。

 反抗してきた者だけを切れ」


ゼノの言葉で、カミーユとミオッシュの顔が一瞬で引き締まる。


「「はい」」


「ああ、ミオッシュ、アレ持ってきてるか?」


ゼノは無遠慮にすっと片手をミオッシュに突き出した。


「なんで私に持たすのかと思っていたのですが、そのつもりだったのですね」


そう言いながら、ミオッシュは懐から小さな塊を取り出してゼノの手のひらに乗せる。


ゼノはくるっとレヴィウスとカースの方に向き直り、

その肩をぽんと軽く叩いた。


「メイちゃんと、ディコンはお前達に任せる。

 そして、これも預ける」


ゼノが渡したもの。それは練り火薬の塊。


「俺は、ちょっと問題を片付けてくる。

 俺からの連絡が途切れた時点で軍が出動することになっている。

 最初の予定では、今の時刻には脱出して帰路についているはずだからな。

 多分、夜明けまでにはここに到着するはずだ。

 あれと合流してすぐに里に攻め込まないようにさせる。

 

 だから、お前達だけであの部屋にいけ。

 脱出通路は必ず残しておけ。いいな。

 そして、例のものが最悪のケースであった場合、

 コレを封をすこしだけ切って投げつけろ。

 唯の粘土に見えるが空気に触れると発火する発光弾つきの火薬だ。

 軽く天井も空まで吹っ飛ぶ。

 慎重につかえよ。あのレグドールの武器がなんであったとしても、

 コレだけの量の火薬でなんの問題も起こさないはずもない。

 動かなくなれば、後は俺達が後始末する。

 いいな、決して無茶をするな」


カースはそれを受け取りながら、真剣な顔で頷いた。

レヴィウスは、ゼノの肩に置かれた手を外しながらすこし笑った。


「大丈夫だ。父さん、俺達は貴方の子供だ」


すこしだけ震えていたゼノの両手から力が抜けた。

そして、満面の笑顔で二人の息子を送り出す。


「ああ、頼んだぞ、息子達」


レヴィウスとカースはお互いの顔を見合わせて、さっさと牢を出ていった。

ゼノ達はその後姿を嬉しそうに見ていた。



「頼もしいですね、レヴィウス船長。

 彼らが僕の上司なら、満点の上司なんですけどね」


「ああ、本当ですよね。

 あの二人が居たら、2倍威力って感じですよね。

 なにしろ総長の抱えるマイナス点がないですからね」


カミーユとミオッシュが堂々と呟くが、それさえも今のゼノには唯の愚痴にしか聞こえない。


「煩い。 いいだろ。

 これが俺の持ち味なんだ。

 若造にはない素晴らしい味わいがわかるのはいい女だけでいいんだよ」


ゼノの上機嫌に釣られるようにして残る二人も微笑んだ。







ゼノと分かれたレヴィウスとカースはアルナが通るであろう道筋の近くの部屋に、

潜伏するように道をひたひたと進む。


「待ってろ、メイ。 すぐにお前の元に行く」


レヴィウスの決意をこめた言葉に乗せるように、カースも言葉を呟く。


「ええ、お願いですから無茶をしないでくださいよ、メイ」


二人の言葉は、祈りにも似た誓い。

二人は、その言葉が届くようにメイの面影を目の奥でそっと追った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ