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箱をあけよう  作者: ひろりん
第5章:遺跡編
135/240

問題増量キャンペーンはいりません。

人生では大きな分かれ道が必ずあるものだと、

どこかの有名な俳優が、格好つけてハードボイルド風な映画で言っていた。


あれは白黒映画のリメイクだった気がする。


だけど、平凡極まりない私に、

そんな映画人のような分かれ道があるわけがないと、

ちょっとだけ残念だけど、本当は安心していたんですよ。


あってもそれは、進路とか就職とか引越しとか、

身近な分かれ道だと思っていた。


私の前に道があって、後ろに道がある。

だから、ただ真っ直ぐに歩いていけばよかった。


今まで、なるようになるがわが人生のモットーであったような気がする。

よく言えば行き当たりばったりの私の人生に計画なんて、

よく考えなくてもいつも立てたことが無い。


私が立てたことのある計画は、夕食や身近なお出かけ旅行計画ぐらいだ。


いつも「困った時や迷った時は誰かに聞く」を念頭にいれているのは、

自分の実力を理解しているからでもある。


だけど、今の私の問題は誰にも聞けない気がする。


春ちゃんに相談って言うのも変だし。


恋愛ごとなどの相談は、同姓のお友達とかに相談に乗ってもらうのがいいと、

何かの某雑誌に書いてあった。


これって、恋愛相談になるのかしら、ローラさんやミリアさんにしてみようかなあ。

でも、私は実は別の世界から来た異世界人ですーって、今更言えない。

そんなことしたらセランが怒られるからね。


ううむ。

女性でも男性でも文句はいわないから、

お悩み相談室小人とか出てきてくれないものか。



私は、多分唸っていたと思う。

自分の思考に精一杯で、周りを気にしてなかった。


だから、いつの間にか自分が違う場所にいることすら気がつかなかった。



いい加減考えるのに疲れたとき、ふと周りを見渡すと、

私の周りは深い霧が覆っていた。


私の周りには誰も居ない。

ちなみに今、私はどこだかを可笑しな場所を歩いている。


可笑しな場所といっても場所を限定できないのは、

今歩いている場所が空中だからだ。



上も下もない空間をただひたすら歩いていたらしい。

いくら夢だといえ、こんな場所を歩いているなんて、

一体どうしてこうなった。


春海の私を呼びつける夢の類がとも思ったが、どこにも古書店は浮かんでない。

それどころか、私自身が浮いているのかと思う場所に立っているのだ。


悩みが増えるばかりじゃないか。

夢の中でも、悩み事増量なんてキャンペーンはいらないんですよ。



あんまりにも考えすぎて、現実逃避からこんな無機質極まりない場所に

いるのかもしれない。なにしろ、周りには造形物は何一つないのだから。



とりとめも無く、そんなことを思っていたら、どこかで声がした。



(どうしたらいいのだろう。)



あれ?

この質問は、悩み相談室希望ですか?

私とよく似たお悩みを抱えているんですね。

相談されても、わからないんですが、一緒に考えることは出来ますよ。

さあ、話して御覧なさい。


相談A君。君の悩みはなんですか。



(元の世界には、勿論戻りたい。

 でも、手放したくないものが出来たのだ。)



おお、その悩みは私が持っているものとほぼ同じ。

その通りドンぴしゃりですよ。

わが同士よ、一緒に語り明かそうではないですか。

って、元の世界? 


あれ?

今の誰ですか?

そして、相談者Aはどこにいるのでしょう。

声はどこから聞こえたのかしら。



霧の中を見渡したら、ある部分にオレンジ色に薄く光る場所があった。

その上まで泳ぐようにして近づいて、ゆっくりと降り立つ。


そうしたら、足元の床が透明なガラスのように下が透けて見えるのに気がついた。

床の表面を足先で擦るが、つるつるしていてやや硬い。


だけどその表面は、ぼうっと光ってなんらかの映像が映し出されている。

それは、なんだか旧式のテレビを見ているような感覚だ。


先ほどの声は多分ここから聞こえてきたんだと思う。



そして、そこに人の影が見えた。

私は、床に両手をついて床の表面からみえる光景をじっと見入った。









*******






3人連れの旅人がいた。


一人は、黒髪を長く伸ばした細面の色白な男の人。

すうっと伸びた鼻梁に切れ長な目、細く綺麗な眉に、

尖った顎が鋭角な雰囲気がかもし出している。

背は、低くも高くも無い一般的な細身な男性だ。


見た目は日本人だが、着ているものは萌黄色とクリーム色を合わせたような昔の衣装。

昔の日本映画で見たような、平安時代とかの直垂チックな服。

楽なのか窮屈なのか解からない格好だ。

腰には竹のような筒と細い日本刀が一本差してあった。



二人目は、真っ赤な髪の綺麗な女の人。

細いのにメリハリがきいたボディに、しなやかな褐色の手足。

そして、朱金の瞳が大きくキラキラしている。

白と赤を基調としたワンピースのような服は、体に張り付くようにして妖艶に揺れていた。

背は割合低く、横の男性の腕に絡めて歩いている様子から、私とほぼ同じくらいだろうか。


同じ身長でも、出るとこが出ていたらこんなにも色気があるのかと、

羨ましくなるほどに可愛くて綺麗な女性だった。


三人目は、白い髪に白く透き通って消えるほどの綺麗な手足。

ナイスバディには程遠い真平らな体躯は、私と良い勝負かもしれない。

でも背は横の男性とほぼ変わらない。

そして、綺麗な新緑を思わせる緑の目。

白の長い上衣にスリットが入り、その下に深緑の足首で括るタイプのズボンが見えた。

こちらは、ぱっと見た限りでは男性か女性かわからない。

実に中世的な容姿をしていた。


男装の麗人と銘を打っても誰も疑わないかもしれないほどに麗しい。


3人ともびっくりするほど共通点がないが、

一つだけ同じものがあった。


男の右手首にオレンジ色の宝石がついた金の腕輪があった。

そして、二人の女性の額に同じオレンジの石が輝いているサークレットがあった。


そのオレンジ色の輝石が太陽の光でキラキラと反射していた。


三人は楽しそうに歩いていた。


森の小道を明るい木漏れ日の中、晴れやかな顔で真っ直ぐに進んでいる。


二人の目は、多分、男性の事がすきなのだと思う。


好意が目に見えて解かる。



だけど、男の方から、先ほど聞こえた声がエコーのように耳奥まで流れてくる。




(どうしたらいいのかわからない)


これは、多分、彼の本音だと何故かわかった。




無邪気に好意を寄せながら、二人が男性に話しかける。

私は耳を澄ました。


「これで、二つ揃った。

 あと3つで宝珠が出来る。

 そしたら、秋久は願いが叶う。」


緑の視線が優しく男に注がれる。


男は、ちょっとだけ笑って、襟首から黒い紐を引っ張り出して、

その先に付いている玉を取り出した。


その玉はメイが持っているのと同じものだった。

違うのは、玉が持つ色。


その上に浮かぶのは赤と黒、そして広範囲の白。



「二つそろえるのに5年掛かった。

 あと3つそろえるにはどれだけ掛かるか、気が遠くなる。」


こちらを向いてとばかりに、赤い髪の女性が男の腕をぎゅっと抱きしめた。


「私達がずっとついているから大丈夫よ。

 秋久とずっと一緒にいるもの。

 たとえ秋久が元の世界に戻ったとしても、私も一緒よ。」


赤い瞳をきらきらと輝かせながら、すりすりと頬を腕に擦り付ける。

その言葉に、もう一人も大きく頷く。


男はその様子に頬を緩ませ、暖かな微笑みを乗せ、ゆっくりと赤い髪を撫で付けた。


「ああ、頼りにしているよ、朱加、樹来。

 ずっと、一緒だ。」


三人の間に穏やかな優しい空気が流れていた。


彼らを映し出していた床の光りが徐々に薄くなり、ふっと消えた。



それなのに、どこからかまだ聞こえてくる。




(本当にどうしたらいいのか、わからない)




男の声が、また別のところから流れてくる。

そちらに目を向けた。


2,3歩ほど離れた場所に先ほどのようにオレンジ色の光りがぼうっと燈る。

そこまで歩いていって、同じように覗き込んだ。



綺麗の緑の森の中で、金の髪で褐色の可愛らしい女性が居た。

その横で、先ほどの秋久と呼ばれていた男性が、その手を取っていた。


「セイ、俺は君を守りたい。だから、君の兄さん達と一緒に戦うよ。

 よそ者の俺を君は受け入れてくれるか?」


茶色の穏やかな瞳の女性が、涙を流してその手に自分の手を重ねる。


「秋久、愛しているわ。

 貴方が、どこの誰でも貴方を愛してる。」


秋久は、セイの手に唇を当てて、誓いの言葉をいう。


「セイ、愛してる。

 俺の世界に帰る時は、君も一緒に連れて行っていいか。」


「ええ、嬉しいわ。

 貴方と一緒ならば、どんな世界だってついて行きます。」




二人はしっかりと抱き合った。


その後ろで、にこやかに微笑んでいる樹来と、

ふてくされたように頬を膨らましている朱加が、

手を叩いて二人を祝福していた。



幸せな空気がここにも流れる。


なんと、彼女を連れてもとの世界に戻る予定なのですね。

なるほど、そんな選択肢がありましたか。



またもや消えるが、またあの声が別のところから聞こえる。


(どうしたらいいのか、わからない)


なぜ?

連れて帰るで解決したのではなかったのでしょうか。



私はオレンジの敷石を追うようにして、その映像をまた追っていった。




そこは、なにやら森の中の集落。


うっそうと茂る大樹を背に、大勢の人間が原始的な槍とか剣とかを持って、

ぎらぎらと淀む目で、こちらを睨んでいる。



こちら?


いや、正確には私の方ではなくて、秋久と呼ばれていた男性を睨んでいる。


彼は、腕に小さな赤子を抱いていた。

金の髪に褐色の肌の可愛らしい子供だ。確実に奥さん似ですね。


秋久と呼ばれた男の側には先ほど見えた二人の綺麗な友人の姿も、

奥さんになったはずの綺麗な女性の姿もない。



「俺達を裏切るのか、秋久。

 お前の力で、神の力であいつらを殺し尽くせば、苦しみは終わる。

 何故それが解からない。」


集団の中から、一際体格のいい男が進み出てきて

秋久に槍の先を突きつける。


「駄目だ、解かってくれ、ドリュー。

 この力は、人を殺す為の力ではないんだ。

 憎しみで殺すために使えば、それ以上の力となって、

 君達に襲い掛かる。 人知の超えた力とはそういうものなのだ。」


秋久は、白い布に包まれたわが子をしっかりと胸に抱きしめている。


「黙れ、軟弱者の臆病者。

 お前の力を見込んだから妹と婚儀を許した。

 それなのに、妹が死んだら、あっさり逃げるというのか。」

 

ドリューと呼ばれた男は、殺意を煌かせながら手を出した。


「お前が使いたくないなら、俺が使う。

 玉をよこせ。 使い方は、見ていたから知っている。」


秋久は、悲しそうに首を振った。


「この玉は僕にしか使えないんだ。

 二人も僕の声にしか応えない。」


ドリューは鼻でふんと空気を飛ばして、にやりと笑った。


「ならば、その子供を使うまでよ。

 お前の血を引くその子を玉に捧げれば、玉もあいつらも言う事を聞くだろうさ。」


その言葉を言い放つとドリューの手から槍が秋久に向かって放たれた。


秋久は腰に下げた日本刀らしき刀を抜くと、その槍を叩き落とす。


「生意気なまねを。おい、全員で奴を潰せ。

 槍を射掛けろ。子供も死んでもかまわん。」


その乱暴な命令に応えてドリューの背後から多くの槍が一斉に秋久に向かって放たれた。


秋久は、くるりと向きを変えて赤子を抱えて走り始めた。

雨のように降ってくる槍を器用にかわしながら、走り続ける。


だが、いつのまにか追い詰められ、森の岩場の外れで囲まれた。

秋久は整わぬ息で、左腕を上げて腕輪に向かって何かを呟いた。


だが同時に、横から一本の大振りな槍が赤子に向かっていた。


その軌道に気がついたとき、秋久は体を捻り、

赤子を庇うようにして背中から槍に貫かれた。

その槍は心臓を貫通し、真っ赤な血が胸から下げていた白い玉と赤子に掛かる。


「朱加、樹来、この子を頼む……。」


秋久の言葉が死に際の最後の吐息を共に漏れ落ちた。

赤子が間髪をいれずに泣き叫ぶ。


ドリューは秋久の右手首を切り落として、血に染まった腕輪を自身の腕につける。

そして、泣き続ける赤子とぼうっと白く光る玉を取り上げた。


泣き続ける赤子を後ろに控えていた男達に渡して、血まみれの白い玉を宙に掲げる。


「さあ、新しい主の声に応えよ。

 出てくるがいい。 そして、我らが敵を殲滅せしめよ。」


その声に応えるように、白い玉は赤く熱を帯びて光り始めた。

が、そのまま点滅を始める。


赤い髪の女性がふわっと、腕輪から現れた。

随分と眠たそうなようすで、疲れているように目を擦っていた。


「なあに、秋久、まだ眠い……。」


しかし、足元に広がる鮮血と血の匂い、そして自分の主であった男の無残な死体が、

その赤い目に強烈に焼き付いた。


「秋久、秋久、どうして、誰がこんなこと。」


血で汚れるのもかまわず、血溜まりの中に膝をついて事切れた顔に手を触れる。

もう息をしていない。


「そんな男にかまうことはない。 お前の次の主は俺だ。

 この腕輪を見ろ。これはもう俺のものだ。

 だから、俺の言う事を聞け。この玉の力を使うのだ。

 我らが敵をすぐさま殲滅せよ。」


得意げな顔でにやにやと笑う大きな男に、朱加の目が驚愕に見開かれる。

そして、憎しみと怒りに満ちた顔でドリューに向き直った。


赤い髪が蛇のようにうごめき、大量の炎が立ち上る。

赤い目が、らんらんと光り今にも爆発しそうな殺意を溢れさせていた。


ゆらりと幽鬼のように立ち上がると、真っ直ぐに指をドリューに向けて指した。


「誰がお前など主人と認めるものか。

 その腕輪は我らの友愛の証だ。お前などが持てるものではないわ。

 下郎の分際で、わが主人を手に掛けた罪をその身に受けるがいい。」


赤い目からは、真っ赤の血が溢れていた。


彼女の血の涙はどんどんと赤黒くなり、血煙をあげる。

彼女自身がその炎を取り込むようにして、体が炎に溶けた。


そして、ドリューを含むその男達の上に舐めるように炎が広がった。

彼らは全身を一瞬で炭に変え、その眼窩は溶けて落ちる。

強すぎる焔が骨も残さず焼き尽くされる。


高温で焼かれた死体の手首から、

秋久から取り上げた腕輪と白い玉がカランと音を立てて落ちた。

腕輪からオレンジ色の石がころんと転げて外れた。


朱加は嘆きの咆哮と怨嗟の声をあげる。

血まみれで横たわっている秋久の死体を抱きしめて、その身を一緒に焼き焦がす。


火の勢いが留まる所知らず、どんどんと森を村を掃滅させていった。


炎が荒れ狂う中、腕輪から白い髪を靡かせて樹来がふわっと現れた。

オレンジの石をぎゅっと握り締め、その顔を悲しげに歪ました。


そして、落ちていた白い玉と腕輪を取り上げて、

泣きつかれくたりとなった赤子を腕に抱えた。


秋久の血を引く赤子は、朱加の炎には焼かれないから無事だった。


朱加の暴走を止める事なく、樹来は赤子を連れて場所を移動する。

村はずれの、老人と小さな子供ばかりが住む小さな集落だ。


樹来が訪れた先は、赤子の祖母が住んでいる家。

秋久を認め、実の子のように受け入れた唯一の人。

樹来のことも、朱加のことも、好意的に受け入れた珍しい人でもあった。


年をとり、枯れたような白い手に、樹来は赤子を託した。


「セネカ、秋久は殺されました。セイの異母兄が殺したのです。

 その為、朱加が暴走してます。」


老婆はぐずる赤子をあやしながら、樹来の言葉に驚愕した。


「なんということを。秋久は我らの恩人でもあるというのに。」


老婆の顔が、くしゃりと悲しげに歪む。


「私は、朱加を収めなくてはなりません。

 ですから、この子を貴方に託します。

 お願いです、セネカ。 秋久の遺児を立派に育ててください。」


樹来の顔には、決死の覚悟が見え、セネカには止めることなど出来なかった。


「わかりました。元よりこの子は我が孫。

 この子は私の命に代えても守りましょう。」


真っ直ぐに樹来を見据えて、セネカはしっかりと頷く。

 


「秋久の血を継ぐこの子には、私から出来うる限りの守りを与えましょう。

 この腕輪をこの子の腕に、そしてこの玉をお守りに持たしなさい。

 秋久の故郷、我らと約束した豊かな国に

 この子がいつか、帰ることが出来るやもしれません。」


そういって樹来は姿を消した。


老婆は、窓から遠めに見える村が焼き尽くされる劫火を呆然とみて、

そして手の中の赤子をぎゅっと抱きしめた。


そして、秋久が以前に語った、彼の故郷の話をふっと思い出した。


豊かな清水に、緑なす大地、豊かな自然に囲まれた豊穣の地。

夢のような世界の話。


それに比べて、今目の前にあるのは焼き尽くされていく不毛の地となる大地。


「この子は大きくなったら、秋久の国にいけるのか。

 その時、我らも連れて行ってはもらえないだろうか。

 のう、赤子や、そうそう、名前がいるのう。

 秋久とセイの子供だから、……アイク、アイクでどうかな。

 アイク、大きく強くなれ。 我ら全てを守れるくらいに大きな子に育て。」



オレンジの色がふっと消えた。


なんだかよくわからないが大河ドラマを一本見た感じだ。

もう、お腹一杯といった満腹感がある。


しかし、同じ異世界人のドラマは壮大であった。

私とはかなり違う。

緊張感が漂っているというのだろうか。


そういえば、私のほかにも異世界人ってこの世界にいたのねえ。

この人も私と一緒で抜けてた人ってことで、春海に怒られたのだろうか。


もしかしなくても、こちらも叱られ仲間でしょうか。

そう思えばなんとなく親近感に駆られますね。



(どうしたらいいのだろう)


また、あの声が聞こえてくる。

どうしたらいいなんて、私に解かる訳無いでしょう。


相談者Aさんはあのドラマを見るに、死んでいるわけですから、

ここは神様に直接相談とかでは駄目なんでしょうかね。

私では、随分重い相談役は分不相応だと思うわけですよ。


それに、ちょっと物申したいですよ。

一体私の悩み解決に何のお役立ちとなるというのだろうか。


同じ異世界人でも私には大河ドラマは務まらないのです。

こんな壮大な大河ドラマを見せて、私にどうしろと。



「神様の守護者、お願いです。」


あれ?

今、誰か何かを言いました?

見渡したけれど姿は見えず。


「神様の守護者、彼らを助けてください。」


いや、死んでいる人を助けるなんて、無理無理です。諦めてください。

私は神様の守護をいただいてますが、神ではありません。

非力な、最弱な、頼りにならないと三拍子そろった普通の人間ですよ。



どうしろというのだと、確かに言いましたし思いました。

ですが、出来ることと出来ないことがあるのですよ。


「神様の守護者、貴方を待っていたのです。」


いや、待っていられても困るから。

というか、ここ私の夢のはずだよね。


それならば、私の言葉を少しは聞いてくれてもいいのではないでしょうか。


「神様の守護者、貴方に全て委ねます。」


待って、待ちたまえ。

早合点はいけない、委ねるな。


私の話を聞いてください。お願いします。



「神様の守護者、貴方を信じてます。」



うう、お願いをかなえてもらえる気満々ですね。

頼んでくる人ってどうして、こう押しが強いのでしょうね。



元の世界に帰るだのの前に、問題ごと巻き込まれ決定のようです。

難問課題増量キャンペーンはいらないと言っているのに、

所詮、私には断るなんて選択肢は最初から含まれてないんでしょう。

私の悩み事は後にしろと言う事ですね。


神様の守護者って、実はくじで言ったら大凶かもしれない。

ちょっとだけ、遠い目をしたくなるのは仕方ないと思います。



ところで、貴方は誰ですか?



誤字直しました。

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