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箱をあけよう  作者: ひろりん
第4章:王城編
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もしかして崩れますか?

侍従長、私を殺そうとした鼻の赤い男の人、王妃様、私、侍従長の部下達の順番で、

私達は狭い階段を下っていった。


突き当たりでは、勿論、入ってきた扉は閉まっている。

扉の前で、辺りをごそごそと探っていた侍従長だが、何も見つけられない。


眉を顰めた侍従長は、王妃様を見たが、王妃様は知らないと首を左右に振った。


そのしぐさにかっとなった侍従長は、王妃の腕をつかみ、壁に叩きつけた。

扱いの荒さに、王妃様が痛みで声を上げた。



「やめてください。 王妃様が痛がってます。

 男なら、弱い女性に手荒なまねは止めてください。

 それに、人質は大事にが基本でしょう。」

  

慌てて侍従長の後ろに廻って、王妃様を掴んでいる手を外すべく声を上げた。


「うるさい。 この扉を開けろ。

 上の部屋に入る仕組みを知っていたなら、ここから出る為の仕組みも知っているはずだ。」


侍従長は、乱暴に怒鳴り散らし、扉があった壁の部分を、バンバンと手で叩き付けた。


「王妃様は知りません。 本当です。

 開け方を知っているのは私です。

 今、開けますから、やめてください。」


侍従長は王妃様の腕を離し、階段の上に王妃様を投げつけるように、その体を押した。

よろよろと王妃様が立ち直り、侍従長の手から逃れるように階段を少しだけ登った。


私は扉の前にたち、足元に鈍く光っていたつるつるの石を踏みつけた。


扉は勿論開く、内側に。

わかっていたので、私は王妃様がいた階段の3段目へ急いで逃れた。


私の後ろにいた侍従長は、危うく石に挟まれる所でした。

ちょっと反射神経が、私より鈍いみたい。

口に出してないはずなのに、そんな感想を持ったことがわかったのか、

侍従長にギロっと睨まれた。

侍従長が飛びのくことはわかっていたので、1番下の段には居なかったのに。


侍従長を先頭に、開いた扉の穴を潜って、拝殿のある下の部屋に入った。 

全員が出たところで、私はほっと一息ついた。


ちょっと油断していたんだと思う。

侍従長のぎらぎらした目が、私を睨んでいることに気がついたときは、膝で蹴り付けられていた。


「生意気な娘め。

 お前は、生きているのが嫌になるほどの、過酷な奴隷船に売りつけてやる。

 私を馬鹿にしおって、今に後悔させてやる。 見ているがいい。」


ニコニコ顔をやめた侍従長さんは、悪役商会真っ青なくらいの悪人顔で

私のお腹をまたもや蹴り付けた。


鳩尾に見事に決まった膝蹴りと、床に倒れた後、上から蹴り付けられた衝撃で、

腹部や胸部に溜まっていた空気が押し出される。

同時に、私の肋骨から、ミシッっていう嫌な音がした。


侍従長、最悪暴力男です。

DVです。

最低悪辣人間のクズ決定です。


3度目の蹴りで、口に溜まっていた空気と一緒に血が床に散らばった。


「やめてください。シグルド。」


王妃様が、私の側に駆け寄って、侍従長の暴力をとめてくれようとしたが、

頭に血が上った侍従長は、興奮した息を弾ませたまま、王妃様を跳ね飛ばした。

王妃様は壁に頭をぶつけたらしく、意識を失って動かなくなった。


そして、私にまたもや蹴りを入れようとしたとき、


「やめろ。メイを蹴るな。」


背後から、紫の声がした。

上の部屋で隠れているはずの紫が、拝殿の扉から出てきて、

そこにあった花を生けていた壷を、侍従長に投げつけた。


壷の中の水と花を被り、壷をぶつけられた侍従長が、後ろによろめき尻餅をついた。

その上に、もう一つの壷がさらに投げつけられる。


間一髪で2つ目の壷は避けたみたいで、侍従長は尻餅をついたまま後ろに移動していた。


その隙に、紫が私と王妃様を壁際まで引っ張った。


「なんだ、お前は。

 どこから出てきた。」


顔を抑えたまま、紫を睨みつける侍従長は、ふと何かに気がついた様で、

口を開きかけたところで、仲間の男に呼びかけられた。


「おい、シド。 ちょっと来てくれ。 さっき、ドアを開けっ放しにしてたか?」


ちっ、と舌打ちがして、侍従長の靴音が私達の側から離れた。

目が覚めた王妃様が、自分の服で私の口元を拭いて、抱き起こしてくれた。

私の目線が、床下から少し上に移動する。


体のあちこちが痛みで脳に信号を送り始め、口からうめき声が出た。

蹴られたお腹とか肋骨の辺りが、悲鳴をあげていた。

口から吐き出される息が、喉に詰まっているようで苦しい。


意識が朦朧としているせいで、自分の体の痛みに、

どこか無関心を決め込む自分がいた。

痛みが、どこか遠くで勝手に囀っているような感覚だ。



「いや、閉めたと思ったが……。

 それに、残してた奴はどこに行った。 もしかして、下に降りているのか。」


侍従長の戸惑ったような声が聞こえた。


薄っすらと目を開けると、蝋燭の明かりが、

入り口付近から幾つか消えていた。


部屋の隅には、闇と影が微妙な割合で融合された黒い塊が所々に点在する。

蝋燭の灯りが届かない足元は、まったくといっていいほど見えない。



「消えている蝋燭をつけろ。 こう暗くては、何もわからん。」


階段の下を確認しようと、出入り口の扉の方に侍従長が足を向けた。

 

その時、塔のこの部屋に備え付けられてた入り口付近のポンプが、

カタカタと音を立て左右に揺れ始めた。

カタカタの音は、ガタガタと大きくなり、ブシュっと潰れる様な音がして、

ポンプがボンっと音を立ててはじけ、大量の水が管から噴出した。


「うわ、なんだ。 なにが起こった。

 この水はなんだ。 」


男達は、右往左往しながら、向かってくる水を避ける。

大きな噴水は上に立ち上り、真っ直ぐに降りてきて、侍従長に向かってあたった。

侍従長の体は、そのまま向かってくる水に包まれ、水蛇が体をくねらせるような動きで

水流の方向がほぼ90度の直角上に奇妙に曲がり、

塔の天井までうち上げられた。

激しい水の勢いで天井が、ミシミシと音を立てる。


物陰に潜んでいた大きな黒い塊達が、一斉に周りの男達に襲い掛かった。

黒い塊は、ステファンさんやワポルさん達でした。


突然の襲撃に反応する男達だが、手ごわい相手に、剣が落とされ打ち付けられる。

そして、次々と組み伏せられていった。


私の周りに、ふわっと照の膜が覆われた。


さっきのポンプの水と共に、照が帰ってきたのがわかった。

強風で、天窓が閉まっちゃったから、帰って来れるのかと心配したが、

無事に、照が帰ってこれて、ちょっとほっとした。


私の腕輪の中にちゃんと戻っていたのを感じた。

そして、今までになく物凄く怒っていることも。




殺してやる。絶対に許さない。

この男、生かしておかない。



打ち上げられた水は、照の力。

未だに衰えない水流の中で、苦しそうにもがいている侍従長。


照の殺気が、痛みで途切れそうになる私の意識を繋ぎとめた。

そんな照を止める為に、瞑りそうになる目を薄く開けたまま、必死に心で呼びかけた。


(照、お願い、やめて、殺さないで)


止めないで、メイ。

メイにこんな酷いことするなんて、許せるわけ無いでしょ。

こんな奴はクズよ、ゴミよ。 生かしておくと碌な事しないに決まってる。


(わかってる。でも、駄目、照は殺さないで)


嫌よ。こんな目に会ってるのに、何故こんな奴をかばうのよ。


(庇ってない。他にも、彼は酷いことをいっぱいしてきたの。

 だから、その報いは受けるべきだと思う)


私は、詰まりそうになる喉で必死で呼吸しながら、

意識を、途切れ途切れで照に向かって呼びかけていた。

私の喉が呼吸するたびに、ヒューヒューと耳障りな音を鳴らしていた。



なら、私が殺すことが報いでいいじゃない。

ギタギタに切り裂いて、水の中で体を引きちぎってやる。



(ただ、殺すだけじゃあ駄目なの、照。

 アイツのしてきたことで、酷い目に会った人は他にも沢山居るの。

 その人たちを助けるために、今、侍従長は死んだら駄目なの)


他の人間の為に、私の怒りを納めろというの。


(違う、私のためだよ。 

 聞いた以上、ここで侍従長が死ぬのを黙認したら、

 私は、後で絶対後悔する。

 全ての罪をあばいて、彼が皆に犯罪者として認められる中で死んでいくのなら問題ない。

 でも、今のままだと唯の誘拐犯で終わってしまう。

 そんなこと許せない。)


照の怒りがだんだんと静まってくる。


怒りに我を忘れて、簡単に殺してほしくない。

照に、こんな奴を殺させるなんて、絶対に嫌だ。


(お願い、照、我慢して。

 こんなに簡単に、彼に、死を、安らぎを、逃げる場所を与えないで。

 こんな男に、安らぎなんて与える価値もないのよ。)


打ち上げられていた水の勢いが治まり、ポンプから吹き出る水の量が、

通常のものと同じくらいになる。

水の中で溺れていた侍従長は、ぐったりとした様子で床に転がされる。


そう、わかった。


照の言葉が聞こえてきた。

まだまだ怒っていることはわかるけど、とりあえず怒りを納めてくれたようだ。

ほっとして、体の力が抜けた。


「メイ。すぐに、救護室に運びます。

 もう少し、我慢してください。」



すぐ側で、ステファンさんの緑の瞳が私を見ていた。

ふっと、私は微笑みを浮かべた。



ああ、レヴィ船長に会いたい。

あのエメラルドの瞳に会いたい。

そして、もう大丈夫だと、ただ抱きしめてもらいたかった。

レヴィ船長の暖かい胸が恋しかった。




ステファンさんが、私を抱き上げようとした時、ぐらっと床が揺れた。

私だけではなく、全ての人が揺れていた。 塔は上下左右に揺れた。


私は、床に倒れたままで、周りが揺れる中嫌な予感がしていた。

塔が、壊れるのかもしれない。

だけど、今、私、動けない。



その時、なぜだか春海の言葉をふっと思い出した。



天井に気をつけてって言った気がする。



天井を見上げると、月の光に照らされた天井には、ほぼ中心に小さな穴が開いていた。

そして、その穴を起点に、2本の大きな線が、右に向かってくっきりと入っていた。


あれ? 天井の模様ってあんなのだったっけ。

よく目を凝らすと、だんだんと線は大きくなってきている。

あの線は、もしかしなくても亀裂だ。

天井にヒビがはいり、ビシビシと音を立てていた。


天井は、半面ガラス。

天井のガラスが割れている。

割れたガラスは刃物と同じ。


脳裏に、盛大な警戒警報が鳴り響く。


痛む喉を押さえて、出来うる精一杯の声で叫んだ。


「ステファンさん、皆をこの拝殿の側に、ここに呼んで。急いで。」


ステファンさんの服を掴みながら、上を見上げて倒れたまま、叫んだ。


「天井が崩れるの。 落ちてくるのよ。」


天井が、バキバキと音を立てて、大きなガラスの破片が3つに割れて、

天井から降ってきた。


ステファンさんが見上げて、間に合わないと判断したのか、私を抱きこんだ。

私の声を聞いて、駆けつけようとしていたワポルさんたちは、

足元が揺れる為、真っ直ぐに走れない。




間に合わない。




そう思った時、照の腕輪が熱くなり、ワポルさん達やステファンさん、

犯人の男達の周りに、一気に膜がリボンのように張られた。

そして、その膜は一斉に引っ張り上げられ、ほぼ全員が、

塔の片側に張り付くように、強制的に力で、壁に体を押し付けられた。


皆は、何が起こっているのかわからない顔をしていたが、その振り返った目の前を、

人間よりも大きな、鋭い刃物のように尖ったガラスが落ちてきて、床に、ぐっさりと突き刺さった。


月の光が、突き刺さったガラスの切っ先でキラキラと反射して、

壁の漆喰を照らし、明るさを増す。

目の前に刺さった大きなガラスの刃物に、じっと見ていた自分達の顔が映し出される。


もし、あのままあそこにいたらと、その考えが皆の頭に浮かび、顔が青くなる。


呆然としている中で、再び足元が酷く揺れた。

そして、ガラスが刺さった場所から、おおきな亀裂が入り、そこから床が崩れ始めた。


ステファンさんは、私を一層強く抱きしめ、

ワポルさんは、王妃様と紫をその大きな体の下に入れて庇っていた。


私達は逃げることも、悲鳴をあげることも出来ず、ただ、壁に床に張り付いて、

その大きすぎる振動と崩壊の音をじっと耐えていた。



ガラガラと、上から屋根が降ってくる音がしていた。

未だに床はぐらぐらと揺れている。


ステファンさんに抱きこまれたままで、何も見えないけれど、

この塔が崩れているのだとわかった。


そして、私達の周りに感じる、暖かい照の力の膜。

ポンプの管から流れる水が水煙に変化する。

薄い霧のようになった空気が、砂埃に混じる。


照の霧のような膜が、振ってくる瓦礫から、礫から、衝撃から、私達を守ってくれていた。


ステファンさんの腕の中で、朦朧とし始めた意識をわずかに残し、

塔が崩壊する音を、私は聞いていた。










塔の外、渡り廊下でステフやワポル達が出てくるのを待っていたゼノ達は、

突然の塔の崩壊になすすべも無かった。

出来たのは、これ以上被害を拡大させないために、総員を退避させることだけだ。



塔の中から、突然、何かが爆発したような音がしたと思うと、

塔がぐらぐらと左右上下に揺れ始めたのだ。


あっという間に、螺旋階段の右半分の石組みは壊れ、

階段の下にぽっかりと開いた空間に吸い込まれたように見えた。


螺旋階段が崩れると同時に、部屋の石組み、壁の石組み、屋根、

全ての右半面が崩れ落ちた。


その時、上から降ってきた大きなガラスの破片が、

石や瓦礫と共に下の空洞に吸い込まれ、しばらくして、耳が劈くような大きな音が響いた。

音の時差で、地下に掘られている穴が以外に深いものだと知った。


もうもうと砂埃が立ち登る。

周りで、その煙にむせている声がする。

建物の落ちてきた瓦礫が、穴の中でドサドサと音をたてた。

そして、その度に、砂埃が上に立ち上る。


どこかの排水管が壊れたのだろう。

霧雨状になった水分を含んだ水煙が、砂埃に混じる。

砂埃と水煙が、あちらこちらの空中でぶつかった。

パンパンっと、水風船が割れるような音が聞こえてきた。

その音がするたびに、もうもうと立ち上った砂煙が少しずつ治まり、

視界がくっきりと晴れはじめた。



ゼノ達の目の前にあったのは、塔の残骸という成れの果て。

絶妙なバランスで、左半分だけ残っている塔であった。

強い風が吹けば、その不安定なバランスはあっという間に崩れるに違いない。


その想像もしていなかった塔の姿に、周りの人間は声もなく立ち尽くしていた。


「ほほほ、どうやら、運は我らに味方したということかの。

 見てみんか、ゼノ、ハインツ、上じゃ。」


のんきな、それで居てどこか楽しそうなポルク爺さんの声で我に返った。

そして、示された場所を全員が目を皿のようにして見つめた。


塔の上で、ワポルが手を振っていた。

そして、ワポルの後ろには、王妃とステファンと侍女とあと数人。

皆、無事に見えた。


その姿に、周りから歓声が上がる。


「おお、奇跡だ。 凄い、こんなことって。」

「皆、無事みたいだ。 本当によかった。」

「本当に運の良い奴らだよ、全く。」



ほっとしたのか、周囲は思い思いのことを好き勝手言っている。



「ほほ、これは、奇跡などではないのじゃぞ。 

 これはなるようにして成ったということかの。

 先程、下に落とした泥と石灰が、

 塔の仕掛けの左半分の機能を麻痺させたと言う事じゃろうの。」


ワポルの言葉に、皆の顔が明るくなる。

あの作業をした自分達がいたから、この奇跡が起こったのだと言われたからだ。


何人かが、手を取り合って喜びを分かち合っていた。



上では、同じように明るい顔をしているワポルが、しつこいくらいに手を振っていた。

塔は、ワポルが手を振るたびに、揺れ動いているようにこちらからは見えた。



「おい、ワポル、わかったから手を振るな。 崩れるぞ。」


ロイドが、自分の横で大きな声を張り上げた。

能天気な顔をしていたワポルが、ピタッと手を振るのをやめた。


これは、どうしたらいいのだろうと皆が方法を考えているところで、

予想外の声が後ろから、話しかけてきた。


「なんだい。こんな夜中に呼び出されてなにかと思ったら、

 随分と大変なことになってるじゃないか。

 これは、一体、どういうことなんだい?」


大きな体を揺すりながら、ポルクに呼び出されたと思われる女性が、

ポルク爺さんの側に立っていた。


「おお、ティーダ。 呼び出してすまんかったの。

 頼んだものは持ってきてくれたかの?」


「ああ、洗濯ロープだろ。

 一番丈夫で長い物をもってきたよ。」


そういって、肩からおおきな包みをドサッと下ろした。


ポルク爺さんのさすがの対応に、ゼノとロイドは苦笑した。

昔から思っていたことだが、この爺には、どこまでいってもかなわない。

いつも、自分達よりもずっと先を見ている。

昔も今も、本当に頼もしい師だと。


「ロープの長さは足りますか?

 あそこまで、かなりの長さが必要になりますが。」


ロイドが、ティーダの側に立って、床に下ろされたロープの塊を持ち上げた。

ずしっと腰に来る。 これは、かなりの重さだ。


「ああ、先週に届いたばかりの洗濯ロープさ。

 普段、使い勝手を良くする為に、適当なところで切るんだけど、

 これは、まだ切ってない。 だから、1000mあるはずなのさ。」


「なるほど、それならば足りるの。」


「ですが、あそこまでどうやってこのロープを届ければいいのでしょう。」


「なに、簡単じゃ。飛んで届ければいい。ほれ、来たぞ。」


そういって見上げた先には、2羽の梟がばさばさと大きな羽音を立てながらやってきた。

ポルク爺さんの前まで降りてきて、空中でクワっと声を上げた。


「ほい、お前さんたち、ご苦労じゃがこのロープの先を、

 あの上まで持って行ってくれんか。 お前の本当の主人にのう。」


クワックワッ。


二羽の梟が了解のように鳴いて、ロープの端を銜えて、塔の上まで上がっていった。

ロープがするすると上に伸びていく。


そうして、梟がたどり着いた先で手を伸ばしていたのは、

夜目にもわかる、黄金の髪をなびかせた美しい女性。

美しい月の光が、スポットライトのように王妃様を照らしていた。

マリア王妃が伸ばした両手に、二羽の梟が、大人しくとまった。


神話に出てくる女神のような情景を、皆の心に植えつけた瞬間だった。

そして、無事な王妃の姿にハインツは感涙し、その強い視線で王妃を見つめていた。


ばさばさと音をたてる羽音を最後に、細い糸で繋がっていた私の意識が

ぷつりと切れた。

久々の照の大暴れに、作者はちょっと気分がいいです。

最初はもっと大暴れの予定でしたが、収拾がつかなくなるので、

この辺でおさめました。


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