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箱をあけよう  作者: ひろりん
第1章:船上編
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ご飯は温かいうちに食べましょう

レヴィ船長と他2名が、奥の部屋から出てきました。


相変わらず、かっこいいなぁ。


レヴィ船長から目が離せないっていうのは

やっぱり、なにか私の中に、

これは見なくてはいけませんって言うような

サインが出ているのだと思う。


宇宙人や珍しいものを見ているような感覚とも違う。


存在がそこにいるだけで、

私の目がひきつけられて、動かせなくなる。

レヴィ船長が何かをするたびに、

自然と目で追っていく。

声や周りの空気さえも、周りから隔離されているかの

ような気がする。


マートルに感化されたのかな。

ファン心理ってやつかも。


ぼうっとそんなことを考えていた。

ので、セランか話しかけてきていたのに、聞きそびれた。


「おい、メイ、わかるか?」


はっ何言ったの?


あわてて、セランに聞き返す。


「ごめん。もう一回」


「一人で運んできたのか? ルディはどうした?」


ああ、ルディに用があるのかな?


「ルディ、食堂、大変。 僕、一人、運んだ。ルディ、呼ぶ?」


カースが会話に割り込んできた。


「目を離すなと船長は言ってたでしょう。何をしているんですか。彼は」


ルディにはここに来るの言ってない。

忙しそうだったから、そのまま来てしまった。


「レナードさん、ご飯、持って行け言った。どうぞ」


カースは私の顔をにらみながら言った。


「毒入りかも知れないのに、食べられるわけ無いでしょう」


なんて失礼な奴なんだ。

カースに同情したさっきの自分を猛省したい。


「そんな訳ないだろ。メイの持ち物に毒物なんか無かった。

 それに、ホカホカで暖かくて美味そうだ」


セランがお皿から、付け合せの焼き野菜を一つ取り、

口の中に入れた。


「うん、美味い。 冷めちまう前に食べようぜ」


うん。

ありがとう。セラン。


「そうだな、食べよう。

 食べ終わったら、先ほどの件について、

 もうちょっと詳しい事を知りたい」


そういって、レヴィ船長は、席についた。

セランとバルトさんも、レヴィ船長の真向かいに

机をはさんで、座った。


最後まで、私を冷たい目で見下ろしていたカースも

私からふっと目を逸らして、

壁際においてあるゴブレットを4つ取ってきて、

レヴィ船長の横の席に座った。


「ところで、船長。

 このチビは、先日、拾った子だよな。

 なんで、エプロンを着てるんだ?」


バルトさんはワインをゴブレットに注ぎながら、

私の方に、ちらりと視線を向けた。


バルトさんは、いかつい体格なのは

ほかの船員と変わりないのだけども、

なんというか、


むさい枯葉色のおっさん。


体毛がふさふさしてる。

ごついむき出しの二の腕までふさふさ

長い体毛で覆われている。


耳のそばなんて、髭と髪の毛の区別がつかない。

歳は声を聞く限り、年寄りではないだろうが、

若くは見えない。


何故、枯葉かというと、

ずばり、髪の毛の髭も体毛も枯葉色してるのだ。

遠くからみると、蓑虫に見えるに違いない。


食堂で、いろんな船員を見たけど、

彼らは一概に綺麗にしてたし、

ここまで、毛団子ではなかった。


この船の甲板長。

この船の偉い人三人目は、甲板長。

一応、ぺこりを軽く頭を下げておく。


「ああ、レナードがメイを厨房にっていってきたからだ。

 コックが不足しているのは、知ってるだろう。

 前の港で、3人やめたからな。

 募集を急遽かけたけど、身元が確かなものは一人だけ。

 その一人も、まだ、使い物にならない」


レヴィ船長がワインを飲みながら、バルトさんに説明をしてくれた。


「ふん。で、ちびすけの身元はわかったのか?」


カースもワインをぐいっと飲み干す。


「まだですよ。言葉がやっとカタコトで通じるだけなのに、

 詰問しても、意味ないでしょう。

 だから、ルディについていろって言ったのに。

 本来、船の中をうろうろされるのも迷惑なんですよ」


「おい、メイはいい子だぞ。

 三週間、見てきたんだ。わかるさ。

 それに、ケガが治ってきたから働きたいって言ってたんだから、

 レナードの要望はいいタイミングだったじゃねえか」


セランが眉をよせながら、カースに反論する。


「レナードは料理バカですからね。

 船の事情なんて、お構いなしなのですよ。」


料理バカって、レナードさん。

まあ、料理に対する情熱は熱い程でしたよ。

さすが、コックです。


料理を食べながら、話す話題は私のこと。

ご飯はもっと楽しく食べようよ。

せっかくのレナードさんの絶品料理が泣いちゃうよ。


黙って、料理を食べていた船長が、

私の方を見て、言った。


「まぁ、今回はレナードの要望は正しかったがな。

 メイをもっとも有効に使う場所は厨房だ。

 この暖かい夕食を食べたら、その理由に納得だ」


ほっ、ほめられた。

でも、なんで?


「厨房からここまで、一人でくると、

 この荷物なら2度往復するようになる。

 だから、ここに運ばれる料理は、大分冷たくなっている。

 だが、この料理は十分温かい、熱いくらいだ。

 俺達、食べる人の為の工夫をしてくれたメイの心配りは

 厨房で働くにふさわしい。

 レナードの役にたつ仕事をしてくれるだろう」


ちゃんと、見ていてくれた。


嬉しい。嬉しい。


レヴィ船長は私のしたことを認めてくれた。

些細なことだけど、私を認めてくれた。

本当に嬉しい。


胸が一杯で、じーんとして目が潤んできた。


ここにきて三週間。

全然知らない人の中で暮らし、無我夢中で言葉を覚え、

言われるがまま、今日、与えられた仕事をした。


セランやルディも頑張ってるって褒めてくれて、

応援してくたり、かばってくれたりしてくれた。


でも、レヴィ船長の言葉が最高に嬉しかった。


ここがどこだかわからない。

でも、レヴィ船長のいるこの船ならば、私は頑張れる。

そう思った。



*****









料理を食べ終わって、レヴィ船長は私に、

明日から部屋を移動するようにと言われた。


そうだよね。

医務室を私が占拠してる状態だものね。


でも、どこに?


「雑用で使っていた小部屋にハンモックをつるせ。

 ルディと相部屋にする。 

 かたづけたら、二人でそこを使え」


ルディと同室ですね。わかりました。


「コックはコック同士との相部屋にするべきなんだが、

 ここにいる人間とルディ以外は、メイが女だってこと

 知らないからな。 無用な騒ぎを起こさないためだ」


「はい。ありがとう。 明日、部屋、移動」


私は、お皿を片付ける手を一旦とめて、

レヴィ船長の目をじっと見ながら、答えた。


レヴィ船長は私の頭に手をやって、

いいこいいこって感じでなでてくれた。


気持ちいい。

顔がにやけてくる気がする。


「ああ、しっかり働けよ。役立たずはいらん」


言ってることは厳しいです。


でも、レヴィ船長の手は、大きくて、ごつごつしていて、硬くて、

暖かい、やさしい手でした。



この手の温もりは、絶対に離したくない。

だから、明日からも、褒められるように頑張ろう。


そう思って、レヴィ船長の目を見つめ続けた。














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