act 5.別れの宣告 [Gray Rain]
色褪せた
―瞳のように。
あれから、謎の少年は去っていった。
妙に引き際がよかったことがイマイチ不思議だったが。
その日はよく寝付けなかったのだが、深夜二時ごろにはパタリと寝付いてしまったようだ。
次の日の朝は、寝た時間が時間だけに、起きるのは遅かった。
「む……ん、何……これ?」
眠たい目を擦りながら、時雨は机の上に見える、見覚えのない紙を手に取る。
―サヨナラ。
グレイより
「何……?」
時雨は、机に手を叩きつけ、俯いた。
「どうして…っ!」
そして、叫んだ。
この日は休日のため、学校はなかった。
やることもない時雨は、街中を歩くことにした。
"何か"を、探すように。
グレイを、探すように。金髪の人物が前を通る度に、チラッと目を移してしまう。
「違うのか…」
そのとき、路地裏に向かう、見覚えのある帽子を被った金色で長髪の青年を見かけた。
(あの帽子、それに身長や体つき……グレイ!?)
時雨は、彼を後ろから追ってみることにした。
グレイらしき人物は路地裏から紫色の光に包まれ、消えていった。
時雨もその後に続くように、光に飛び込んでいった。
その先に見えたのは、あの少年だった。
「あんた……僕の身体に、何した?」
やはり、そこにいたのはグレイだった。
「紫色闇鎖のこと?」
「多分……それ」
グレイは苦しそうな顔を浮かべ、少年に問いかけていた。
「紫色闇鎖は相手の脳に直接呼びかけることができる鎖術。そして、それを受けた者は……死ぬ」
「じゅーぶん、わかってる。僕の未来が死ってこと……そして、今できる……最後の使命もね」
グレイはヘッと笑いながら、得意気に言い放った。
「ほぅ……」