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Chain  作者: 進道 悠輝
3/7

act 2:恋心 A. 2/13 [st.Valentine's Day Eve]

感情は―


自分を迷わせる。



御門時雨、16歳。

この年、高校に入学した。

季節は2月。人々が恋に燃える月でもあった。

2月14日のバレンタインデー。

これが主な原因だろう。

男子に関しては、チョコレートがもらえるだろうか。などと期待に胸を膨らませている。

さらに、今日は前日の13日なので、一際テンションが高い。

「時雨ぇー。時雨は、誰かにチョコあげんの?」

「んー。誰にも」

少し悩む振りをして、時雨は答えた。

実は全く悩んでなどいない。最初から、誰にもあげるつもりはなかったから。

「そっかぁ。あげないんだぁ」

「そういうリオはどうなの?」

彼女は時雨の友人、周防莉緒(スオウリオ)

明るい性格で、人と話しているときの彼女は、とても楽しそうに笑っている。

「私は……」

そう言って、莉緒は頬を赤く染めて、恥ずかしそうに俯く。

「バレバレ。誰かにあげるんでしょ?」

そう時雨に告げられた莉緒は、小さく頷いた。

(羨ましいなぁ。私に恋してる余裕なんかないしなぁ)


そうして、時雨は帰宅する。

昔住んでいた孤児院ではなく、今は近くのアパートで暮らしている。

理由の一つは、孤児院の人に鎖術師に関しての秘密を漏らさないように。そしてもう一つは、おかしな同居人のせい。

「お帰りィ、時雨ちゃん」

時雨の帰宅を察すると、奥からは黒いニット帽を被った金髪の男が現れる。

長い髪を後ろで束ねた形の髪は、彼には妙に決まっている。

「ハァ……ただいま、グレイ」

グレイと呼ばれた男はニヤニヤと笑いながら、一言。

「そんなしかめっ面ばかりじゃあ、可愛いお顔が台無しですよ?」

この彼女の隣で笑うは、彼女にもとに就いた使い。

その名をアール・グレイという。

彼こそが、時雨の十歳の誕生日に、声をかけた張本人である。

「ほら、こぉんなに可愛いのに」

近寄って、抱きしめようとしたグレイを時雨は一蹴。

「黙れ、ケダモノ!!」

「ケダモノ……」

グレイは、その場でガクリとうなだれる。その彼を哀れむ様子もなく、時雨は帰りに買ってきたコンビニ弁当を無言で食べ始める。グレイとは視線を逸らすように、彼に背を向けて食事をとっている。

「ヒドいなぁ」

「自業自得!」

時雨は鮭弁当を半分残し、

「ハイ」

と言ってグレイに差し出す。食べろということだろう。

そのことがグレイにとって、とても嬉しかった。

(この箸!まさか、関節キス!)

グレイは差し出された弁当の上に乗せられた、使用済みの箸を見て、思わずにやけてしまう。

「いただきまーす!!」

そして、その箸を手に取り、口に含む。

「フフ…」

「何笑ってるの?変なの……」

グレイは頬を染めて、満面の笑みを浮かべていた。

「そういえば、仕事は?」

時雨はそんなグレイは放っておくと決め、一言訊ねる。

「ン?明日の午後二時ごろに魔物…鎖牙(サーガ)が来ます。ポイントは…」

そう言って、グレイは不適な笑みを浮かべた。

「時雨の通ってる、―清涼(せいりょう)高校です」


―!?


「誰……!?誰が標的なの…」

「そんなの、わかりませんて」

時雨は不安そうな面もちでベッドに倒れ込んだ。

やはり、身近な人が狙われるということに不安を抱いているのだろうか。

「ハァ……明日の二時って、授業中じゃん。確か…科目は体育」

時雨は気持ちを落ち着かせるためか、ゆっくり目を瞑る。まるで眠るように。

「そんなに心配しなくても、僕が見張っとくから大丈夫」

グレイが時雨とは対照的な、明るい声で囁いた。

「あんたはイマイチ信用できないし」

「心外ですねぇ。これでも信用できる人間なんですよ」

呆れ顔で言い捨てる時雨に、グレイは苦笑しながらつぶやいた。

「それに、相手は下級鎖牙です。あなたの実力なら、心配するほどのものじゃありませんて」

「そう、かな?」

時雨の顔色が少しだけ明るくなった。グレイの励ましは少なからず効果があるように見える。

「ハイ。もちろん」

「フフ……少しは気が楽になったかな。ありがと」

「いえいえ」

そうして彼は、微笑む少女を楽しそうに見つめていた。

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