表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Chain  作者: 進道 悠輝
2/7

act 1:十歳の誕生日 [Starting]

物語は動き出す。


―それは


運命だったのかもしれない。



時雨はその日、住み慣れた孤児院で誕生会を祝われていた。

5歳のとき、幼くして両親を事故で亡くした時雨は、近くの施設に預かられることになった。

それから既に五年。施設の先生や他の子供たちとは、とても頑丈な黒い鎖で繋がれていた。

決して切れることのない、固い絆。

それは結ばれた関係、つまり鎖の形がよく表していた。

漆黒の鎖は二、三重にまで重なって、結ばれている。

暗闇の中、小さなロウソクの灯を皆で楽しそうに囲んで、10歳になったことを祝ってもらった。

その日は時雨にとって、とても嬉しい日になった。

そんな日の夜の出来事だった。

その日は、時雨にとって、10歳になったことよりも、重要な記念日になった。

どこからともなく聞こえた男の声。

その言葉は今でも鮮明に時雨の記憶に残っていた。

彼の第一声は、確か。

「ハーイ、時雨ちゃん。コンバンハ」

「だ……だれ?」

何も知らない時雨は、身体を震わせながら、得体の知れない謎の若い青年の声に怯える。

「時雨ちゃんはぁ……」

男の声は一息置いて、時雨に訊ねた。

「"鎖"見えるよね」

「……知ってるの?この"鎖"のこと」

時雨は彼の言った鎖という言葉に反応し、訊ねるように言った。

「当然。僕も見えてるんだからさ♪」

時雨は昔、孤児院の友達に鎖のことを訊いたときに、他の人には見えないことを知った。

だが、耳に入ってくる声は、それを知っている上に、見えると言うのだ。

「……教えて」

「ハイ?」

聞き返すその声に対し、時雨は力強く言い放った。

「私に……この鎖のこと、教えて!」

その言葉に続くように、時雨は言う。

「昔から見えるのに、鎖はしっかりそこにあるのに、これが何なのか、全然わからないよ!!」

時雨の泣くようなか細い声に、その声はゆっくり答える。

「そっスねぇ……簡単に言うなら、この鎖は…」



――関係。



「かん……けぇ?」

「そっ、人間同士の関わりっス」

時雨は足の震えも忘れるほどに、その話に食い入っていた。

謎の声は、彼女に全てを話した。

それぞれの鎖の個々の違いは関係の強さによるもの。

その鎖を司る者が"鎖術師"であること。

そして、時雨にその素質があること。

「…さじゅつし?」

「そう。鎖を正しく導く者っす」

「それに、私がなるの?」

時雨は少し驚きながらもそう訊ねる。

「はい。充分に素質はあるはずです」

「それって…具体的には何をするの?」

「主には鎖…つまり、人と人の関係を断ち切ろうとする魔物を討伐すること」

重たい口調で言った声が、妙に時雨の心を締め付けた。

「それって…私とみんなの関係も?」

時雨が震えるようにか細い声で、恐る恐る彼に訊ねた。

「ハイ……下手をすれば、そうなることもありえます」

その一言は、時雨を動かすきっかけとなった。

「私……やるよ。できるかはわからないけど、身近な人との関係ぐらいは守っていきたい!」

これが時雨の、鎖術師としての運命の始まりとなる、記念日となった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ