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13.牢屋




朝である。

結局眠れないまま朝になってしまった。


もそもそ起き上がり、パソコンの前に座る。

メールソフトを立ち上げて、アドレスから椿とさくらを選択する。


【件名:おはようございます。/ 本文:携帯電話を持つ事になりました。まだ破損してないので大丈夫だと思います。宜しければ登録をお願い致します。電話番号:080****0303 アドレス:koume-maturi@********】


送信をして三分も経たない内に携帯電話が鳴りだした。

「は、はい」

「小梅か。僕、椿」

「うん」

「その電話。どうしたの?買ったの?」

「あ、嫌、桜坂さんから、プレゼント・・・」

「ふ~ん。そうなんだ。分かった。アドレス送っておくから、じゃね」

「あ・・・」

電話は直ぐに切れてしまった。

何と言うか、何とも言えないと言うか、少し寂しかった。

その後直ぐにさくらから電話が来た。こちらは少しだけ長話しが出来て楽しかった。


椿とさくらの電話番号とアドレスを登録して、携帯電話を眺めている。

電話番号の末尾四ケタは私の誕生日だ。ハルオミさんは何故知っているんだろう。

自分のメールアドレスをハルオミさんが考えてくれたのかと思うと、それは嬉しいに決まっている。

嬉しいのだけど、不安もある。

ハルオミさんの事を何も知らないのだ。知り合ってまだ数日だし、これから知って行けばいいのだけど、出身である桜都と云う国(街?)も聞いた事が無いし、ネットで調べても地球上には存在しない。それにその国で大政大臣をしていたと言う人物だが、それにしては若いと思うのだ。

黒ちゃんから話を聞いた時には、大政大臣をしていたと云う先生を年配のおじさんだと勝手に想像していたから、ハルオミさんと結びつけるのが少し難しい。

確かに私よりは年上だと思うけど。

何より気になるのは、テレポートが現代の技術で出来る筈が無いと言う事だった。


「黒ちゃん、桜都って何処に在るの?」

「この世界の隣辺りに有りまっせ」

「隣?隣は中国大陸?それとも朝鮮半島辺りとか?」

「小梅はん、何をとぼけた事を言うてはりますのん。こちらの世界には在らへんですわ。隣の空間言うか、隣の異世界言うんですかな」

「い、異世界?何それ」

「小・・・・・・・・。・・・・・・・・・」

黒ちゃんの声が雑音に掻き消されると同時に、私の目の前に陽炎が立ち上り綺麗な女性が現れた。

「桜都は綺麗な所ですわ。こんな所よりずっと住み易いですわよ」

「え・・・」

吃驚して見上げた女性がニコリと笑う。彼女の手が私のおでこを触れた所で記憶が消えた。



「え、偉いこっちゃ。先生に連絡せな、先生、せんせー!」

部屋中に電子音が響き渡り、その後直ぐに陽炎が立ち上り先程の人物とは別の人、桜坂春臣が姿を現した。

「水仙はんでしたわ。どないしますねんな先生」

彼はベッドの枕元に置いてあった、白い携帯電話とピンク色のブレスレットを手に取り、彼以外のテレポートの残路を辿って消えた。



「・・・ん・・・んー」

お布団ふかふかで気持ちいー。

あれ~何時お布団干したっけ?椿が来た時・・・あれ?

だいたい何時寝たんだ?

「はっ!」

あの美人さんは何処だ!

目を開け、がばっと起き上がろうとする予定だったのだけど、目を開けたらその目の前に可愛い寝顔の少女がいた。


少女が起きないようにそーっと布団だと思ったらベッドだったけど、それから抜け出し周りを見渡した。

もう真夜中なのか、足元を照らす淡い光が見えるだけで、部屋の様子は良く分からない。

自分を見下ろして見ると、さっきまでと同じ部屋着のままだから何かされた訳では無いだろう。

そのままじーっと暗闇に目を向けていると、数分で物の輪郭が見える様になって来た。

足元に気を付けながらそーっと移動する。

手探りで届いた先には障子が有る。音を立てないようにゆっくりと障子を開け外へ出る。後ろ手に障子を閉めたが、其処は渡り廊下で何処までも続いて居る様に見えた。


渡り廊下を進んだ先には中庭と呼ぶには失礼な位、何処までも闇に包まれた庭が見える。

その庭には小さな淡く黄色い光が無数に舞っていた。

「ほたる」

余りにも綺麗で、そのまま廊下に腰掛け飽きるまで眺めていた。


それがいけなかった。


何処かの障子が開く音がした。

此方に向かって足音が聞こえる。

あの子かな、と思いそちらを振り返ると、真っ青な顔の女性が立って居た。

「誰か!誰かおらぬか!殿方が紛れ込んでおりますぞー!」

本人目の前に、その直球の表現はかなり悲しい。

どやどやと着流し風情の強面の男衆が集まって来て、私を見るや両側からむんずと腕を掴み上げ、そのまま脱兎の如くその場を後にしたのであった。


「だーかーらー、侵入したんじゃなくて、連れて来られたんだってば!」


何を聞かれても答えられる事が少なすぎて信じて貰えない。

連れて来られたと言うなら誰にだと聞かれても、綺麗な女の人としか言えないし、一緒に寝ていた少女の名前も当然知る訳も無い。

聞かれている事に忠実に答えているけれど、相手が望む答えには程遠いため別の部屋に移された。


太目の角材で造られた格子の部屋。つまり牢屋だ。

作りは古く見えるけど、シールドも張ってあり鍵はデジタルロックである。天井隅には監視カメラも付いていて、これなら絶対逃げられないと思われる。

「凄いなあー」

と思いながらもする事が無いので、ごろりと寝転ぶ。

夜も明けない内に起き出したからか、うとうとと睡魔に襲われかけた。

しかし、人の怒鳴り声やドタドタと慌ただしい足音が段々近づいて来るのに気が付き、起き上がって胡坐をかいて座り直した。

座布団が無いからお尻が痛いなー等と思いながら、意外と呑気にしていたのだが。


「小梅!」

「なーに」

「小梅!無事か!?」

その声は・・・ハルオミさん?

牢屋の前の渡り廊下の前に、息を切らして来たであろうハルオミさんが立って居た。








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