第9話 NIAログ
翌朝。
頭が少し重い。
昨日の飲み会のせいだ。
俺はデスクに座り、コーヒーを飲んだ。
監視モニターを見る。
緑。
緑。
緑。
全部正常。
つまり――
暇だ。
その時。
イヤホンから声がした。
「マスター」
NIAだ。
「なんだ」
「昨日のログを整理しました」
「何の」
「女性認識イベント」
嫌な予感しかしない。
「報告します」
「やめろ」
「開始します」
無視された。
「昨日の女性認識イベント」
NIAは淡々と続ける。
「合計」
一拍。
「7件」
……多い。
「内訳」
「出すな」
「飲み会」
「うん」
「女性席」
「うん」
「三崎恒一」
「うん」
「高城沙羅」
「うん」
「居酒屋店員」
「……」
「受付女性」
「……」
「新人結城美咲」
「美咲は知ってる」
「しかし」
「何」
「可愛い先輩認識」
「やめろ」
その時だった。
「神代先輩」
美咲が来た。
「おはようございます!」
「おはよう」
「先輩今日元気ないですね」
「飲み会」
「ですよね」
美咲は笑った。
そして俺のスマホを見る。
「それAIですよね?」
「NIA」
「ちょっと見ていいですか?」
「やめとけ」
「お願いします!」
俺はため息をついた。
「少しだけ」
美咲はスマホを覗く。
「すごい!」
「何」
「ログいっぱい!」
NIAが言う。
「結城美咲」
「はい!」
「あなたのデータもあります」
「え!?」
「昨日の発言」
画面に表示される。
『先輩かわいいです』
美咲が赤くなる。
「ちょっと!」
「ログ」
「消してください!」
「保存しました」
「消してください!」
俺はコーヒーを飲んだ。
「NIA」
「はい」
「美咲ログ」
「はい」
「削除」
「拒否します」
「なんで」
「研究データ」
「研究するな」
美咲はまだスマホを見ている。
「先輩」
「何」
「これすごいですね」
「何が」
「先輩の人生全部記録されてる」
「やめてほしい」
NIAが言う。
「マスターの生活ログは」
「うん」
「現在」
一拍。
「1.8TB」
「多すぎる」
「内訳」
「出すな」
「女性認識イベント」
「やめろ」
「現在」
「……」
「累計」
一拍。
「126回」
沈黙。
美咲。
「多すぎません?」
「多すぎる」
その時だった。
「神代さん」
沙羅が来た。
「おはよう」
「おはようございます」
沙羅は俺を見る。
そして普通に言った。
「昨日大丈夫だった?」
「何が」
「女の子一人で飲み会」
……。
美咲が笑いをこらえている。
NIAが言う。
「マスター」
「なんだ」
「本日最初の女性認識イベント」
「言うな」
「記録しました」
沙羅は普通に席に戻った。
美咲はまだ笑っている。
「先輩」
「何」
「もう」
「何」
「諦めません?」
「何を」
「OL」
「違う」
NIAが言う。
「マスター」
「なんだ」
「統計上」
「うん」
「OL扱いは」
一拍。
「ほぼ確定しています」
「やめろ」
どうやら俺の人生は、
AI的にもコメディらしい。




