第7話 悠斗、会社に来る
翌日。
インフラ運用課の朝は、いつも通り静かだった。
監視モニターにはグラフ。
CPU使用率。
ネットワークトラフィック。
全部平和。
つまり――
暇だった。
俺はコーヒーを飲んでいた。
「神代先輩」
隣から声。
結城美咲だ。
「ん」
「このログなんですけど」
画面を覗く。
「それ」
「はい」
「正常」
「ほんとですか?」
「うん」
「よかったです」
新人はまだログの判断に慣れていない。
そこにスマホが震えた。
メッセージ。
悠斗
今会社の近くなんだけど
昼飯いける?
俺は返信した。
来い
昼休み。
会社の受付。
「神代さん」
受付の女性が言う。
「お客さん来てます」
「誰」
「黒川さん」
ロビーに行く。
悠斗がソファに座っていた。
「おう」
「おう」
悠斗は立ち上がる。
そして俺を見る。
数秒。
「……やっぱOLだな」
「違う」
その時だった。
「神代先輩!」
元気な声。
振り向く。
美咲だ。
「昼ご飯行きませんか?」
そして悠斗を見る。
「あれ?」
「先輩のお友達ですか?」
「悠斗」
「黒川悠斗です」
「結城美咲です!」
二人は普通に挨拶する。
悠斗は俺を見る。
そして小声で言う。
「後輩?」
「うん」
「完全に先輩女性扱いされてるな」
「そう」
美咲は笑っている。
「先輩、ほんと顔広いですね」
「普通」
その時だった。
「神代さん」
振り向く。
高城沙羅。
「お昼?」
「はい」
沙羅は悠斗を見る。
「あら」
そして言った。
「神代さんの彼氏?」
沈黙。
悠斗が吹き出した。
「違う!」
俺も言う。
「違う」
沙羅は少し驚いた。
「そうなの?」
「友人」
「なるほど」
悠斗は笑いをこらえている。
「すげえ」
「何」
「会社でも完全に女扱い」
「やめろ」
NIAがイヤホンから言う。
「マスター」
「なんだ」
「本日も女性認識イベントが発生しました」
「記録するな」
「保存しました」
美咲が不思議そうに聞く。
「先輩、またAIと話してるんですか?」
「NIA」
「便利そうですね」
悠斗は俺を見て笑う。
「なあ」
「何」
「これ」
「何」
「マジで面白いな」
「面白くない」
悠斗は言った。
「いや」
「何」
「お前の会社」
「うん」
「コントじゃん」
……否定できない。
美咲が言う。
「じゃあお昼行きましょう!」
「行く」
悠斗がニヤニヤしている。
「なあ凛」
「何」
「今日だけで」
「うん」
「何回女扱いされた?」
NIAが答えた。
「現在5回目です」
「言うな」
「ログ保存しました」
悠斗は笑いながら言った。
「やっぱりお前」
「何」
「完全にOLだろ」
「違う」




