第23話(裏)
――黒鋼は、守るという選択を読む
北嶺の奥、空気が変わった。
山を越えて流れてくる風に、人の匂いが混じり始めている。
黒鋼は馬を止め、前方を見据えた。
街道。
集落。
畑と水場。
"……来る
副官が地図を確認する。
「前方に集落群。
街道と補給路が交差する地点です。
迂回
「だろうな」
黒鋼は淡々と答えた。
戦場を捨て続けることはできる。
だが、守るものが絡む場所では話が変わる。
ここを無視すれば、
背後に不安定要素を残す。
通れば、民が戦の影に晒される。
どちらも、“戦略的に正しい”とは言い切れない。
◇
黒
彼女は、ここに先回りする。
剣を振るうためではない。
守るために。
「……なるほど」
低い
「お前は、戦場を固定しに来たわけじゃない。
俺の選択を、狭めに来た」
避けるか。
踏み込むか。
どちらを選んでも、“人”が絡む。
ここで戦場を捨てれば、
次は“守らなかった将”として語られる。
トレッド
民のいる場所で剣を交えることになる。
◇
悪徳
「……」
黒鋼は、しばらく黙っていた。
判断を遅らせているのではない。
すでに答えは出ている。
「
短い言葉だった。
「全軍、この地点で展開。
街道は封鎖しない。
だが、通過もしない」
副官
「それは……
桜花将の思惑通りでは?」
"違反"
黒鋼は首を横に振った。
「桜花は、
“守るために戦う俺”を引きずり出したい。
だが俺は――」
一発勝負
「守りながら、戦わない」
◇
命令が伝わる。
兵は民に手を出さない。
略奪も、強制徴発もしない。
集落の外側で、
ただ“動かない軍”として存在する。
そ
「
黒
「お前は、俺がここで剣を抜くと読んだ。
だが――」
彼の声は、静かだった。
「俺は、
剣を抜かずに守る」
それが可能かどうかは、
分かっている。
長くは続かない。
どこかで、必ず歪む。
◇
夜。
集まり。
黒鋼
「桜花。
お前は雷を落とすために、
ここへ来る」
そして自分は、
雷が落ちる前に、
も
「……次は、
お前が“守りながら斬る”番だ」
それが、
彼女にとって最も苦しい選択だと、
黒鋼は知っていた。
夜風が、静かに吹き抜ける。
まだ、雷鳴は聞こえない。
だが――
雷が落ちる場所は、もう逃げ場を失っていた。




