第15話(裏) 『境界震動 ― 三者の光、ついに重なる』
――刃向 蓮 視点
白い空間が、脈動していた。
壁という壁が薄く透け、
無数の光線が空間内部へ向かって吸い込まれている。
その中心へ――
蓮は少女の手を引いて歩いていた。
少女の身体は半透明になりつつあり、
光の粒が風のように体から漏れている。
『……蓮くん……
もう……限界かもしれない……』
蓮は歩みを止めず、
少女の手を握る力だけを強めた。
「限界なんか知らねぇよ。
お前はもう“檻の中心”じゃない。
檻から外へ出たんだ。
だったら――俺が支える。」
少女の目が潤む。
『でも……わたし……
もともと“ここ”にいた存在だよ……
外に出る資格なんて……』
「資格なら俺がやる。
お前を外へ連れていくための資格を。」
蓮は空間の中心へ視線を向けた。
そこには、白い渦があった。
物質でも光でもない。
時間と空間が折り重なって、
“境界の子宮”とでも呼べる場所が蠢いている。
調停官がその前にひざまずくように立ち尽くしていた。
「これが……“本当の境界”……
人が踏み込んではならない領域……
蓮……あなたは……」
蓮は調停官を見ない。
ただひたすら、渦の中心へ進む。
その瞬間――
空間が“鳴った”。
白い渦が、青へ変わった。
少女が息を呑む。
『……にいちゃん……!』
蓮の胸が熱くなる。
(朔夜……
来るのか)
胸の中の光が拍動する。
少女の光と完全に重なり、
その脈動が境界全域へ波紋となって広がる。
渦の色が三色に分かれた。
蒼(朔夜)
白(蓮)
灰(少女)
三つの光が――
同時に“接続”を開始した。
世界意思の声が空間に落ちる。
『――同調率、99%』
『境界、開放準備完了』
『三者の座標が揃う。
世界は対価を求める。
誰か一者を深層へ――』
蓮が遮るように言った。
「黙れ。」
白い空間が震えた。
世界意思が揺らぐ。
その揺らぎはまるで“恐れ”のようだった。
蓮が一歩、前へ出る。
「何度言わせる。
三人で抜けるって決めたんだ。」
世界意思の声が重くなる。
『構造上、不可能――』
「構造を壊すんだよ。」
白い雷のような光が蓮の足元を走った。
調停官が震えながら叫ぶ。
「蓮……!
あなた……“異位相覚醒”している……!
人類の枠を越えた……
世界と対等な存在になりつつある……!」
少女が蓮の袖を握った。
『蓮くんは……怖くないの……?
世界に逆らうのって……
存在そのものが消えるかもしれないのに……』
蓮は小さく笑った。
「俺だって怖いさ。
でもな――」
蓮は手を少女の頬に添えた。
「怖いからって、
お前と朔夜を深層に落とす未来なんざ、絶対に許せねぇ。」
少女が泣きそうな顔で頷く。
世界意思の声が再び降る。
『――ならば試練は続行される』
『三者が境界中心へ揃う瞬間、
統合儀式が開始される』
『成功すれば三者は世界の鍵となり、
失敗すれば――』
蓮が目を細めた。
「誰かが深層に落ちる……だろ?」
世界意思が沈黙する。
蓮が挑むように言い放つ。
「成功させればいいだけだ。」
少女が蓮の手を握り返す。
『蓮くん……行こう……
にいちゃんが……待ってる……』
蓮は深く息を吸った。
「行くぞ。
境界の中心で――三人で世界を変える。」
蓮が白い渦へ踏み入れた。
世界意思が震える。
『三者の位相、100%同調!!
境界開放まで――あと一歩……!』
光が弾けた。
境界が開く。




