表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『黒鋼ノ戦旗 ― 奪われた未来を取り戻すために』  (裏)  作者: 田舎のおっさん
第4部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/109

第14話(裏) 『境界踏破 ― 世界深層との“直接呼応”』

――刃向 蓮 視点


白い光の床が崩れたあと、

蓮と少女が立っていたのは――


空でも地でもない。

ただひとつの“揺れる地帯”。


世界と世界がこすれ合うような音が、

足元から背骨へ伝わる。


少女が蓮の腕にしがみついた。


『……ここ……

 歩く場所じゃない……』


「歩けるさ。」


蓮は少女の肩を軽く抱く。


「お前が“道”を作ってる。」


少女は驚いて、蓮を見上げる。


『わたしが……?』


蓮は頷く。


「お前の光が、世界の深層に“形”をつけてる。

 檻の中心だったお前にだけできることだ。」


少女の身体から光が漏れている。

透けている部分が増えている。


それでも彼女は、しっかりと蓮の手を握っていた。


蓮の胸にも、同じ光が脈打つ。


(――朔夜の光だ)


境界が揺れるたび、

朔夜の声が微かに響く。


『……行く……必ず辿り着く……』


少女は胸に手を当てる。


『にいちゃんの光……

 ここまで……届いてる……』


蓮は空間の奥を睨んだ。


(朔夜……

 お前も、世界意思に接触したか)


そのとき――

周囲の空が“沈んだ”。


黒ではない。

闇でもない。


ただ、世界の下層が“露出”した。


そしてそこから、声が降りてきた。


『――境界に立つ者たちよ』


少女は震える。


『……世界……?』


調停官が遠くで膝をつき、頭を抱えていた。


「世界意思……直接干渉……!?

 こんな近さは……前例が……!」


蓮は世界の声へ目を向けた。


「何の用だ。」


返ってきた声は、言葉ではなかった。


だが意味ははっきりしていた。


『――選べ』


蓮は眉をひそめる。


「……何をだ。」


声が続く。


『境界の鍵。

 お前たち三つは同調した。

 だが――

 一つは必ず“深層へ落ちる”。』


『世界がそうなるように造られた。』


少女が息を呑む。


『……深層へ……落ちる……?

 それって……消えるってこと……?』


蓮は少女を抱き寄せる。


「そんな未来、認めねぇよ。」


しかし世界意思は淡々と告げる。


『選択は避けられない。

 三者が揃えば、世界は“対価”を求める。

 境界は一度しか開かぬ。

 出口も一つしかない。』


少女が泣きそうな声で蓮を見上げる。


『じゃあ……

 誰か一人が……“残される”の……?』


蓮は迷いなく答えた。


「残す気はない。

 三人そろって抜ける。」


世界の影が揺れた。


『不可能。

 構造上、成立しない。

 鍵は二つまで。

 三つ目は“支え”となり――』


蓮は拳を握った。


「黙れ。」


世界が一瞬、静まる。


蓮は少女の背を支えたまま前へ進む。


「お前のシステムなんざ知らねぇ。」


「俺たちは三人で外に出る。

 それ以外は認めない。」


少女の光が強く瞬く。


『蓮くん……こわくないの……?

 世界そのものに逆らうなんて……』


蓮は少し笑った。


「怖ぇに決まってんだろ。」


「でもな……

 “選ばされる”なんて、もっと嫌だ。」


少女の目が潤む。


世界意思が再び告げる。


『――拒絶を確認。

 ならば試練を与える。』


境界が大きく揺れた。


白い空間が裂け、

灰境州の霧が目の前に広がった。


向こうにいる。

朔夜が、確かに。


蓮の胸が熱くなる。


世界意思の声が重く降りてくる。


『境界を越えたとき、

 三者の位相は統合される。』


『統合が成功すれば、

 三人は世界を“再定義する鍵”となる。』


『失敗すれば――

 誰か一人が深層へ落ちる。』


少女が蓮にしがみつく。


『いや……

 いやだよ……

 三人で、外に出るんだよ……!!』


蓮は優しく彼女の頭を撫でた。


「泣くな。」


「深層になんか落ちさせねぇ。

 俺が全部支える。」


世界が揺れた。


『――ならば来い。

 境界の中心へ。

 三者の座標を揃えよ。』


少女の光が蓮の胸へ溶ける。


朔夜の光が、

灰境州の向こうで強く脈動する。


(来いよ、朔夜。)


(境界の中心で――会おう)


蓮は白い空間へ足を踏み出した。


世界が道を開いた。


三者の統合の儀式が、ここから始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ