表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『黒鋼ノ戦旗 ― 奪われた未来を取り戻すために』  (裏)  作者: 田舎のおっさん
第4部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/109

第11話(裏) 『臨界線 ― 檻は“世界の境目”となる』

――刃向 蓮 視点


渦は、もう“穴”ではなかった。


それは、

世界と世界を貼り合わせるための“境界膜”

そのものになっていた。


地面でも空でもない。

ただ揺らぎだけが存在する場所。


少女が震える声でつぶやく。


『……ここ……

 息が……しやすい……』


蓮は気づいた。


(檻の空気じゃない……

 外の空気が流れ込んでる)


少女の肩がふるえる。


『こわい……

 でも……あたたかい……』


「大丈夫だ。」


蓮はそう言うが、

胸の奥では別の警告が鳴り続けている。


(――外界接続がここまで進むと、

 檻そのものが“持たない”)


蓮がそれを理解した瞬間。


空間が揺れた。


調停官が叫ぶ。


「あなたたち、もう後戻りできません!!

 このままでは檻が崩壊し――!」


少女の光が調停官の言葉を遮った。


淡く、しかし力強く。


『――ちがう。

 壊れるんじゃない。

 帰っていくの。』


蓮は目を見開いた。


(……帰る?

 檻が……どこに?)


少女は渦の方に視線を向ける。


『この場所は……すごく古い。

 ずっと……だれかの“手の中”にいた場所……』


『やっと……返してあげられる……』


調停官は恐怖に震えた。


「そんなことをすれば――

 檻は! 檻という構造は!

 “世界の片側”が欠落する!!」


蓮はそこに違和感を覚えた。


(世界の片側……?

 じゃあ檻は、もともと世界の一部だった……?)


蓮は調停官を睨む。


「檻は……何なんだ。

 全部話せ。」


調停官は頑なに首を振る。


「話せません!

 話せば“檻が応答する”!!」


蓮は渦の縁に手を触れた。


突然、雷が檻の空間に落ちた。


――朔夜の雷だ。


蓮は確信する。


(繋がっている……

 なら、もう隠す意味はねぇ)


彼は調停官に背を向けて言った。


「もう遅い。

 檻は外界と接続したんだ。

 ここにいる全員の意思で動きはじめてる。」


「止められない。」


少女が蓮の腕をつかむ。


『……蓮くん。

 むこうに……もう一人……いるよ。』


「……朔夜か?」


少女は首を横に振った。


『ちがう……

 あのひとは……“世界”……』


蓮は息を呑む。


(世界……?

 世界の“意思”が……

 こっちに触れようとしてるのか……?)


霧のような波が檻へと押し寄せる。


優しく。

けれど圧倒的な力で。


まるで、


世界の側から檻へ手を伸ばされたように。


調停官が絶望した声で叫ぶ。


「終わりだ……

 檻が“世界の側”へと戻ろうとしている……

 あなたたちの意思で……!」


少女がつぶやく。


『……だって……

 本当はここ……

 誰かが“無理やり形にした”だけの場所……』


蓮は少女の光の揺れを見つめた。


「お前……気づいてたのか。」


少女は静かに頷く。


『蓮くんが……

 “壊してもいい”って言ったとき……

 本当はわかったの。』


『ここはもう……

 その役目を終えてるって。』


蓮の胸に、熱が宿る。


(……こいつはもう、檻に縛られていない)


(檻の機能がどうであれ、

 この子は、自分の“意思”で外へ出ようとしてる)


その瞬間。


朔夜の声が――

はっきりと蓮の胸に届いた。


『……蓮……?

 聞こえるか……』


蓮は息を飲む。


(繋がった……!

 こっちからも……!)


少女の光が震える。


『……二人とも……

 ここに……来ようとしてる……』


霧の圧がさらに強くなる。


空間がきしむ。


調停官が泣きそうな声で叫ぶ。


「このままでは――

 檻は完全に“外界へ還る”!!

 あなたたちは……!

 存在の位相を失い――!」


蓮は少女の手を握り返した。


「いいんだよ。」


「位相が変わるぐらいで俺は死なねぇ。

 お前もだ。」


少女は柔らかく微笑む。


『うん……

 知ってる……

 蓮くんは、死なない……』


渦が、白く染まった。


“最終段階”が始まった。


蓮は一歩踏み出す。


そして宣言した。


「俺たちは――

 外へ出る。」


「檻を返し、

 世界の嘘を剥がし、

 全部を取り戻す。」


少女が言う。


『外で……

 会おうね……

 蓮くん……

 朔夜くん……』


白い光が二人を包む。


檻が、軋みながら――

世界へと戻っていった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ