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『黒鋼ノ戦旗 ― 奪われた未来を取り戻すために』  (裏)  作者: 田舎のおっさん
第4部

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第9話(裏) 『揺らぐ檻 ― 第二段階共鳴、始動』

――刃向 蓮 視点


《檻》の空間が、

“呼吸するように脈動”していた。


赤、青、白――

混ざるはずのない管理波形が干渉し合い、

壁は軋み、床は浮遊し、

まるで世界が方向を見失っているようだった。


《外因性波形の増大を確認》

《原因:英雄個体(天城朔夜)の戦闘》

《共鳴値:異常領域》


蓮は、短く息を吐いた。


「……暴れてやがるな、朔夜」


少女は胸を押さえ、苦しげに言う。


『……誰かが……

 “守る痛み”を……

 すごい勢いで……

 広げてる……』


(なるほど……

 灰境州全体が、朔夜に反応してるってわけだ)


昨日、細い一本だった“線”が、

今は太く強い光となって檻に届いている。


調停官が現れた。


その顔は青ざめ、声は震えている。


「……最悪です。

 《檻》が――“外”に引っ張られている……!」


蓮は目を細めた。


「外へ……?

 まさか、ここに空間ごと?」


「そうです!!」


調停官は珍しく声を荒げた。


「本来、“檻”は外界と完全隔離された構造です。

 それが今、朔夜の戦闘による波形干渉で……

 檻の座標が外界の揺らぎに同期し始めている!」


少女がはっと顔を上げる。


『……じゃあ……

 外に……近い……?』


「近いどころじゃない。」


蓮は言う。


「外がこっちに近づいてきてる。」


調停官は絶望の表情で蓮に詰め寄った。


「やめてください……

 あなたたちの共鳴が続けば、

 この檻は外界と“衝突”するんです!」


蓮は、静かに首を振る。


「違う。

 “檻が壊れる”だけだ。」


調停官は凍りついた。


少女が蓮の服を掴む。


『……こわい……

 でも……

 行きたい……』


蓮は優しく言う。


「怖さは、前に進んでる証拠だ。」


少女の光が強く揺れた。


蓮は、檻の中心に歩く。


「第二段階を始める。」


調停官が悲鳴に近い声をあげる。


「第二段階……?

 いったい何を――!」


蓮は答えない。


檻の床が、

少女の光を受けて波打つ。


そこに蓮は手を触れ、

“共鳴の核”を殴りつけるような意識で力を込めた。


《内部破壊波形を検知》

《パターン一致:刃向蓮による共鳴干渉》

《構造安定度:23%》


少女の光が、蓮の背中に流れ込む。


二つの光が混ざり合い――

檻そのものの“内側”に、

渦のような歪みが発生した。


少女が叫ぶ。


『……穴が……

 開く……!

 でも……

 外じゃ……ない……!』


蓮は頷く。


「第二段階の穴は、

 “檻の奥”に開くんだ。」


調停官が驚きに目を見開いた。


「ま、待って……!

 檻の“奥”だと!?

 そんな場所、記録に――」


蓮は冷たく笑った。


「それはあんたらが管理できてない“外側”ってだけだ。」


少女は涙を浮かべながら叫ぶ。


『でも……

 この穴……

 怖い……!

 落ちたら……

 帰れない……!』


蓮は即答した。


「落ちるのは“俺たち”じゃない。」


そして、檻の底に広がる闇を見下ろす。


「――檻そのものを落とす。」


調停官が声にならない叫びを漏らした。


「やめろ……!

 檻が落ちれば、世界全体が――!」


「落ちない。」


蓮は少女の手を握る。


「落ちるのは、檻に“閉じ込めてきた側”の仕組みだ。」


「俺たちは上へ行く。

 檻は下へ沈む。」


少女の光がさらに強まり、

渦が拡大する。


《警告:檻の基底が崩落開始》

《警告:外界座標との距離が急速に縮小》


蓮はついに宣言した。


「第二段階――完了だ。」


少女が息を呑む。


『……じゃあ……

 次は……?』


蓮は静かに答えた。


「第三段階は――

 “外との接続”だ。」


その瞬間。


朔夜の雷が、

檻の壁に“直接”響いた。


檻全体が震え、

少女の光が跳ね上がる。


外の戦場と檻の境界が、

一気に薄くなった。


蓮は微笑んだ。


「行くぞ、朔夜。

 お前の戦いは、

 こっちにも届いてる。」

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