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『黒鋼ノ戦旗 ― 奪われた未来を取り戻すために』  (裏)  作者: 田舎のおっさん
第3部

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第10話(裏) 『触れた先にあるもの』

――蓮視点


世界が、悲鳴を上げていた。


中央石室・内核。

蒼光はもはや澄んだ色ではなく、

黒く濁り、粘つき、怒りのように脈打っている。


番人は崩れ、

防衛機構は破綻し、

それでも“世界そのもの”が、

夕凪と蓮の間に最後の壁を作り続けていた。


「……あと、少しだ」


蓮は、傷だらけの身体を引きずるように前へ進む。


一歩、進むたびに、

世界の“拒絶”が全身を削った。

皮膚が裂け、骨が軋み、

それでも足を止めなかった。


その先で――

夕凪が、確かにこちらを見ていた。


『……れんくん……』


声は、もう遠くない。

夢の中の響きではなく、

“ここにいる人の声”だった。


「……今、行く」


たった数歩。

それなのに、

世界はそれを“絶対に許さない”と叫び続ける。


――ギギギギ……!!


空間が歪み、

最後の“壁”が可視化される。


《最終拒絶層》

《鍵の人間化を認めない》


「……鍵、鍵って……」


蓮は、歯を食いしばった。


「夕凪は――

 道具じゃない。

 装置でも、最適解でもない」


蓮は、右手を前に突き出す。


「夕凪は……

 俺たちと同じ“人間”だ!」


瞬間。


夕凪の胸の蒼光が、

激しく揺れた。


『……わたし……

 こわかった……

 ずっと……

 “わたしは、世界のためにある”って……

 言われてる気がして……』


夕凪の声は、震えていた。


『……でも……

 れんくんが……

 お兄ちゃんが……

 “違う”って言ってくれた……』


夕凪の小さな手が、

震えながら、こちらへ伸びる。


『……だから……

 わたしは……

 “人に戻る”って……

 決めた……』


その瞬間。


――バキンッ!!!


《最終拒絶層》に、

はっきりと“ひび割れ”が走った。


《……鍵対象の意思が、

 世界命令を拒否……》


《……重大な想定外……》


「想定外で、結構だ」


蓮は、一気に踏み込んだ。


世界の圧が、

最後の反撃のように全身を締めつける。


肋が砕け、

視界が白く弾け、

それでも――


「……夕凪!!」


指先が、届いた。


その瞬間。


蓮の手と、

夕凪の手が――

確かに、触れ合った。


――ドクンッ!!!


世界構造核の拍動と、

夕凪の心臓の鼓動と、

蓮の意思が、

完全に同期した。


蒼光が、純粋な“白”へと変わる。


《……鍵の機能、

 人間意思によって上書きされました……》


《……世界修復、

 設計上、続行不能……》


夕凪の身体から、

重くのしかかっていた蒼光が、

ゆっくりと剥がれ落ちるように消えていく。


『……れんくん……

 身体……軽い……』


蓮は、夕凪の手を、離さなかった。


「ああ……

 もう、お前は“鍵”じゃない」


夕凪の瞳に、

蒼ではない、

ちゃんとした“人の色”が戻っていた。


その直後――


――ゴォォォォ……!!!


白へ変わった蒼光が、

一気に“黒い奔流”へ反転する。


《……世界構造核、

 制御不能……》


《修復ではなく――

 世界再起動フェーズへ移行》


蓮は、夕凪を抱き寄せた。


「……やっぱり来たか」


世界は、

“鍵を失った代償”として――

すべてをリセットしようとしている。


夕凪が、蓮の胸に顔を埋めた。


『……お兄ちゃんも……

 すぐそこ……なんでしょ……?』


「ああ」


蓮は、内核の奥に向けて視線を上げる。


「今、朔夜が……

 世界と殴り合ってる」


その瞬間。


遠くで、

確かに“雷鳴”が響いた。


蓮は、夕凪の肩を抱き、

はっきりと言った。


「夕凪。

 ここから先は、

 “誰かが選ばれる世界”じゃない」


夕凪が、小さく頷く。


『……うん』


「俺たちが――

 “世界を選ぶ番”だ」


世界構造核は、

完全に再起動カウントへ入った。


兄は外から、

幼馴染は内から、

妹はその中心で。


すべてが――

最終局面へ向かって、動き出した。

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