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『黒鋼ノ戦旗 ― 奪われた未来を取り戻すために』  (裏)  作者: 田舎のおっさん
第3部

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第3話(裏) 『蒼視線の囁き ― 監視者の探査が始まる』

――蓮視点


ストラタ光柱が確認されたという速報が届いたのは、

黒鋼連邦・深部研究層の制御機能がようやく安定し始めた頃だった。


蓮は医療区画の通路で、

真白とともにその報告を聞いていた。


「ストラタが……光柱を?」


真白が端末を操作しながら眉をひそめる。


「うん。位置は中央遺跡。

 しかも……観測波長が“夕凪ちゃんの共鳴核”に近いの」


蓮の胸に冷たいものが走った。


「……夕凪を“呼んでいる”のか?」


真白は首を横に振る。


「違う。

 “誰かを検知している”……そんな感じ。

 ストラタ自体が、何かに反応しているの」


蓮は無意識に、自分の胸へ手を当てた。

夕凪とつながる“蒼の鼓動”がそこにある。


しかしそれとは別に、

もっと深いところで、

“別の脈動”が微かに震えていた。


——タン……タン……タン……


(……まただ)


扉の奥の“視線”が近づいてくる。

ストラタの光柱と呼応しているようにさえ感じられた。


真白が蓮の顔色に気づく。


「また感じたのね……“あれ”を」


蓮はうなずく。


「俺が……呼ばれてる気がする」


真白の表情が曇る。


「蓮は“鍵”じゃない。

 でも……

 監視者にとっては“干渉できる存在”なんだと思う」


「……干渉?」


「たぶん……

 夕凪ちゃんと監視者の間に割り込める、

 唯一の“不確定要素”。

 だから監視者は、蓮を観測してる」


蓮は拳を握る。


(俺が……“観測されている側”……)


夕凪を守るはずの自分が、

逆に“道具として使えるかどうか”試されている。


その時。


医療室の扉が静かに開いた。


夕凪が、薄く目を開いていた。


「……れん……くん……?」


蓮と真白は同時に駆け寄った。


「夕凪!

 起きて大丈夫なのか」


夕凪はまだ体は弱々しかったが、

その瞳は以前よりも深く、強い光を宿していた。


「うん……

 でも……言わなきゃ……いけないの……」


夕凪の指先が、蓮の胸元へ触れる。


冷たく震える指だ。


「扉……

 あれは……終わってない……

 わたしの中の“影ちゃん”が……言ってるの……」


蓮は息を呑む。


「影夕凪が……?」


夕凪は小さく頷いた。


「……“監視者”が……目を覚ましたの。

 扉の奥には……ずっと……

 “壊れた意志”が閉じ込められてて……

 それが……

 わたしの統合で……世界へ溢れ出した……」


真白の顔が青ざめる。


「夕凪ちゃん……

 まさか……蒼揺れの原因は……」


夕凪は蓮の手を握った。


「……蓮くん。

 あなたを……見てる存在がいるの……

 “あなたが扉を開く条件”だって……

 言ってた……」


蓮は全身が凍りつくような感覚を覚えた。


(……認めたら終わりだ。

 俺は……鍵じゃない。

 夕凪はもう“鍵として扱われるべきじゃない”。

 監視者なんて……絶対に……)


夕凪は震える声で続ける。


「だから……お願い……

 蓮くん……

 わたしを守るために……

 “自分も守って”」


その言葉は、

蓮が背負っていた重さを正確に射抜いた。


夕凪を守るために戦う——

それは蓮にとって当然の覚悟だった。


だが、

“蓮自身が狙われている”という現実は、

彼の中の何かを大きく揺さぶった。


真白が静かに言う。


「蓮……

 あなたが倒れたら……

 夕凪ちゃんはまた一人で戦うことになる。

 そんな未来、絶対にだめ」


蓮は息を整え、

夕凪の手を包み込んだ。


「……大丈夫だ。

 俺は、俺だ。

 監視者になんて……

 絶対に利用されない」


夕凪の表情が緩み、

そのまま再び眠りに落ちていく。


蓮はそっと布団を整え、

席を立とうとした。


その時。


背後から、

嗄れた老人のような低い声が聞こえた。


「……利用されるか否かではない。

 “どう利用されるか”を決めるのは……

 お前次第だ、蓮」


蓮は振り向いた。


そこに立っていたのは——

黒鋼連邦最深部に潜む男。


影機関を束ね、

扉の技術を追い求める狂気の老人。


刃向 宗六。

蓮の祖父である。


真白が息を呑む。


「……宗六……ッ!」


宗六は蒼光に照らされながら、

薄く笑った。


「ストラタが動いた。

 扉の奥も目覚めた。

 世界は“新しい秩序”へ向かおうとしている。

 そして蓮……

 この世界で最も重要な“不確定因子”は……

 お前だ」


蓮は静かに、冷たく言い返す。


「……俺はもう、お前の道具じゃない」


宗六の笑みが深くなる。


「道具ではないとも。

 だが……“鍵穴”に触れられる者は、

 いつだって一人だけだ」


宗六の目が蓮を貫く。


「——扉の奥は、お前を求めている」


蓮の心臓が強く跳ねた。


ストラタの光柱、

帝都の蒼揺れ、

扉の囁き。


すべてがひとつに繋がる。


(……俺は……

 本当に……“呼ばれている”のか……?)


第三部の戦火は、

蓮の足元から静かに、だが確実に広がり始めていた。

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