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『黒鋼ノ戦旗 ― 奪われた未来を取り戻すために』  (裏)  作者: 田舎のおっさん
第二部

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第27話(裏) 『統合の祈り ― 痛みも涙もひとつになる』

扉心臓領域は蒼い奔流と閃光で満たされ、

空間そのものが崩壊寸前のように揺れていた。


影夕凪は第三形態のまま震え、

その身体から漏れる光が暴風のように広がる。


「こわい……!!

 消えたくない……!

 でも……夕凪と……一緒にいたい……!!

 わたし……どうしたらいいの……!!」


その泣き声は、

夕凪本人の心の奥底に埋まっていた

“もう一人の声”そのものだった。


夕凪が一歩前へ出る。


「影ちゃん……

 大丈夫。

 わたし……あなたを、ひとりにしない」


朔夜が夕凪を守るように構え、

真白が蓮の手を握りしめる。


蓮は重い覚悟で前に進んだ。


(……逃げない。

 自分の弱さからも、夕凪の涙からも……

 これ以上、逃げない)


影夕凪の蒼翼が広がり、蓮を見つめる。


「蓮くん……

 あなたは……わたしを認めてくれた……

 でも……

 “選んだ”のは夕凪……

 だったら……

 わたしはどうすればいいの……?

 存在してて……いいの……?」


蓮は胸の奥から、

初めて“本当の声”を絞り出した。


「……いいに決まってる」


影夕凪の瞳が揺れる。


蓮は続ける。


「お前は……夕凪の涙でできた。

 夕凪の心が壊れないように……

 俺の優しさなんかじゃなく、

 夕凪自身の願いが……お前を生んだんだ。

 だから……

 お前は“夕凪そのもの”だ」


影夕凪の呼吸が止まった。


夕凪本人も、目を大きく見開く。


蓮は夕凪本人のほうを向き、

静かに言葉を続けた。


「夕凪。

 お前は強い。

 でも……強くなりすぎたせいで……

 泣く方法を忘れそうになってた。

 その代わりに……

 影夕凪が泣いてくれてたんだ」


夕凪の頬に涙が伝う。


「……影ちゃん……

 わたし……

 あなたに助けられてたんだね……

 気づけなくて……ごめん……」


影夕凪は震える。


「わたし……

 夕凪の涙で……

 夕凪の弱さで……

でも……

 夕凪が……

 “弱さも自分だ”って言ってくれたら……

 わたしは……

 どうなっちゃうの……!!?」


夕凪は震える手を伸ばす。


「一緒に……生きてほしい」


影夕凪の目から溢れる涙が蒼光となって宙へ散る。


蓮は夕凪と影夕凪の間に立ち、

二人の手をそっと重ねた。


「影。

 夕凪。

 お前たちは、二人で一つだ。

 弱さも、強さも、痛みも、希望も……

 全部ひっくるめて“夕凪”なんだ」


影夕凪の身体の光が穏やかに揺れる。


夕凪本人が影夕凪を抱きしめる。


「ありがとう……

 影ちゃん……

 ずっと苦しかったよね……

 ずっと……さみしかったよね……

 もう……泣いていいよ。

 だって……わたしたちは同じなんだから……」


影夕凪は声を上げて泣いた。


その涙は蒼い粒子になり、

夕凪本人の胸に吸い込まれるように流れ込んでいく。


蓮は涙をこぼしながら笑う。


「そう……それでいいんだ……

 夕凪……

 影……

 どっちも……大切な“お前”なんだ……」


朔夜はその光景を静かに見つめ、

兄として誇らしげに頷いた。


「夕凪……強くなったな……

 そして蓮……

 よく言ってくれた」


真白は蓮の横で涙をぬぐう。


「蓮……あなた……

 本当に……変わったね……」


影夕凪の蒼い光が弱まり、

夕凪本人へ溶けるように流れ込んでいく。


二人の身体が重なり、

影の輪郭がゆっくりと消え始めた。


「夕凪……

 ありがとう……

 わたしを……

 受け入れてくれて……」


「うん……

 一緒に……帰ろう……影ちゃん……」


その瞬間——

扉が、激しい悲鳴を上げた。


真白が叫ぶ。


「だめ!!

 統合を“鍵の完成”と誤認してる!!

 扉が……暴走を始めた!!

 このままだと……

 夕凪ごと……飲み込まれる!!」


蓮が叫ぶ。


「夕凪!!」


朔夜が刀を抜き放つ。


「統合を止める!!

 夕凪を救え!!

 行くぞ——蓮!!」


蓮は頷き、前へ走った。


夕凪は影夕凪とともに光の中で震えていた。


「みんな……

 助けて……」


蒼い閃光が世界を覆う。


第二部、最終決戦——

最終話へ。

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