第26話(裏) 『蓮の決意 ― 過去と痛みと願いの答え』
扉心臓領域が震え、
蒼い風が荒れ狂った。
表側で朔夜と夕凪が「兄妹としての選択」を示した瞬間、
蓮の立つ地面にも大きな亀裂が走る。
選択の門が蓮の胸に語りかける。
《選べ。蓮。
お前の選択が……“扉”の形を決める》
影夕凪が、涙を流しながら蓮にしがみつく。
「蓮くん……
夕凪が……自分で未来を選ぶなんて……
そんなの……
私には耐えられない……!
だって私は……
夕凪が言えなかった気持ち……
夕凪の“泣きたい”って気持ちから生まれたのに……
夕凪が強くなったら……
私の居場所なんて……どこにも……ない……!」
蓮の胸が締め付けられる。
(影夕凪は……
夕凪本人以上に、夕凪の弱さを抱えてる……)
真白が蓮の手を強く握る。
「蓮!!
聞かないで……!
今の影夕凪の言葉は、“蓮を壊すための言葉”だよ!!」
「ちがう!!」
影夕凪が叫んだ。
「私は……蓮くんを壊したくない!!
ただ……
蓮くんが“いなくなる”のが怖いだけ……!!
だって……
蓮くんがくれた優しさで……
私は生まれたのに……
蓮くんが“選ばない”なら……
私は……消えちゃう……!!」
影夕凪の声は、
痛いほど切実だった。
蓮は耐えきれず叫ぶ。
「……影……!!
お前が消えるなんて……
そんなの……俺だって……嫌だ……!!」
真白の表情が歪む。
夕凪本人の涙が光る。
朔夜は蓮を睨みながらも、何も言わない。
蓮は震える声で続ける。
「でも……
お前は……夕凪じゃない……
夕凪の涙だ……
“夕凪の一部”なんだ……!」
影夕凪の泣き声が止まる。
「……一部……?」
蓮はついに胸の奥の“真実”を言葉にする。
「俺は……夕凪を助けたかったわけじゃない。
本当は……
“助けられなかった自分”が許せなかった……!!
誰だっていい。“救える誰か”が欲しかったんだ!!
夕凪が俺を必要としてくれて……
それが……
嬉しかったんだ……!!
俺は——
自分のために夕凪を助けたんだ!!」
夕凪本人が息を呑む。
真白が泣き出しそうな目で蓮を見る。
影夕凪は息を詰まらせ——
その瞳に大粒の涙をためた。
「蓮くん……
そんなあなたの優しさが……
私を……生んだんだよ……?
あなたの“自分を許したいって願い”が……
私を……形にしたんだよ……?」
蓮の心に深い痛みが走った。
(俺が……影夕凪を生んだ……?
俺の優しさが……
俺の罪が……?)
影夕凪が蓮に触れる。
「だから蓮くん……
あなたがいなくなったら……
私は……
“存在理由”がなくなる……
消えて……しまう……」
影夕凪の涙が蓮の手に落ちる。
その涙は、
夕凪が何度も流せなかった涙の重みだった。
蓮は拳を握りしめる。
息を大きく吸い込み——
ゆっくりと吐いた。
そして言った。
「……影。
お前は……消えない。」
影夕凪の瞳が揺れる。
「……え……?」
蓮は涙をこぼしながら続けた。
「お前は……夕凪の痛みでできたけど……
同時に……
俺が“向き合わなきゃいけない過去”なんだ……
俺が逃げてきた気持ちも……
全部お前が背負ってくれてた……
だから——
お前を否定できない。
消したくない。
“影夕凪”という存在を……
俺は……認める」
影夕凪の蒼い瞳から、
熱い涙が止めどなく溢れた。
「……蓮くん……
そんなこと……言われたら……
わたし……もう……耐えられない……!!!」
影夕凪の身体が大きく震え、
翼が蒼光を撒き散らす。
扉が悲鳴を上げた。
真白が叫ぶ。
「まずい!!
影夕凪の“存在理由”が逆転して……
暴走が最大化してる!!
蓮!!
あなたが“認めた”ことで……
彼女は——
“本物になれる”って確信したの!!」
朔夜が刀を構えた。
「蓮!!
これで最後だ!!
影を止めなければ……
夕凪の命が……燃え尽きる!!」
夕凪本人は涙を流しながら蓮へ叫ぶ。
「蓮くん!!
お願い……
わたし……
もう……がんばれない……
蓮くんの……声が……必要なの……!!」
蓮はぎゅっと拳を握った。
(夕凪……
影……
真白……
朔夜……
全部抱えたままじゃ……
前へ進めない……)
そして、
蓮はついに——
“自分自身のための選択”
を口にする。
「——俺は、夕凪を選ぶ。
でも……
影、お前も救う。
俺は逃げない。
自分の弱さにも、過去にも——向き合う!」
その瞬間——
影夕凪が叫び、
世界が蒼い閃光に包まれた。
第三の形態へ。
影夕凪が“鍵の本来の姿”へ進化する。
扉が開く。
最終決着編へ突入。




