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『黒鋼ノ戦旗 ― 奪われた未来を取り戻すために』  (裏)  作者: 田舎のおっさん
第二部

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第25話(裏) 『崩れる優しさ、壊れゆく願い ― 蓮、罪を語る』

蒼い結界が閉じ、

世界は扉の最深部——“心臓領域”へ変貌した。


その中心で、


夕凪の光

影夕凪の闇

朔夜の刃

真白の祈り


そして蓮自身の心が、

複雑に交錯していた。


影夕凪が蒼い翼を広げ、

蓮へ手を伸ばす。


「蓮くん……

 まだ選べないの……?」


その声は優しく、

壊れそうで、

同時に底知れない力を孕んでいた。


蓮は喉を詰まらせながら返した。


「……選べるわけ……ないだろ……」


影夕凪が微笑む。


「でしょう?

 だから……私と一緒にいればいいの。

 夕凪を苦しめた“罪”を……

 私が全部、抱えてあげるから」


蓮の指先が震える。


胸の奥で、

夕凪の泣き声が微かに響いた。


『……蓮……くん……

 わたし……こわい……

 いかないで……』


その声に、蓮は心臓を掴まれたように息を呑む。


(夕凪……

 俺は……どうしたら……)


真白が蓮の腕を掴み、

涙を浮かべて叫ぶ。


「蓮!!

 あなた……そんな顔、初めて見た!!

 全部背負わなくていいの!!

 あなたは……

 いつも自分のことを後回しにしすぎなの!!」


蓮はその言葉に胸が刺さった。


(真白……

 お前……そんなこと……思ってたのか……)


真白はさらに続ける。


「蓮……

 あなたが“優しい”のは知ってる。

 でもね……“優しすぎる”のは罪だよ!!

 だれか一人の手を取らなきゃ……

 誰も救えないの……!!」


影夕凪が嘲るように微笑む。


「ねぇ蓮くん……

 真白ちゃんに言われて……

 選べるの?

 あなたが“夕凪を泣かせた理由”……

 教えてあげよっか……?」


蓮の目が揺れる。


影夕凪はそっと触れるように蓮の胸に手をあてた。


「蓮くん……

 あなたは夕凪を助けたいんじゃない。

 “夕凪を助けられなかった自分を許したい”だけ。

 優しさじゃなくて……

 罪悪感よ」


蓮の全身が固まった。


真白が息を呑む。


朔夜が刀を構え、低く言う。


「蓮、その言葉に呑まれるな。

 影は“夕凪の痛み”だ。

 お前の心まで支配させるな!」


だが蓮は……

もう影夕凪の声を無視できなかった。


影夕凪は涙を流しながら続ける。


「蓮くん……

 あなたが夕凪の手を取ったのは……

 “あの時、助けられなかった誰か”を重ねたからでしょ?」


蓮は息を大きく吸った。


胸の奥に封じていた“痛み”が、

ゆっくりと浮かび上がる。


朔夜が驚いたように蓮を見る。


真白が震えた。


夕凪本人が苦しげに名前を呼ぶ。


『れん……くん……?』


蓮はついに口を開いた。


「……夕凪を助けたいんじゃない……

 “誰か”を助けたかっただけなんだ……

 昔……守れなかった誰かを……」


影夕凪が優しく微笑む。


「ね?

 本当は、そうなんだよ……?」


真白は息を呑んだ。


「蓮……

 それ……あなた……」


朔夜は拳を握りしめる。


(蓮……そんな痛みを……)


夕凪本人は震えながら呟く。


『それでも……わたし……

 蓮くんに……助けてもらえて……

 うれしかったよ……』


蓮の目から涙がこぼれた。


影夕凪はその涙を指先で受け止め、

狂気じみた優しさで口にした。


「蓮くんの涙……

 夕凪には重たすぎる……

 でも、私なら……抱えられるよ?」


蓮が震える。


「影……

 お前は……」


影夕凪は蓮の手を強く握った。


「蓮くん……

 夕凪の“痛み”を知らないあなたじゃないと……

 私は存在できないの……

 だから……

 あなたの優しさは……私を“本物”にするの……!!」


その瞬間——


扉が轟音とともに震えた。


選択の門が裂け、

蒼い稲妻が蓮を中心に降り注ぐ。


朔夜が叫ぶ。


「蓮!!

 もう決めろ!!

 でなければ——夕凪が死ぬ!!」


真白が泣き叫ぶ。


「蓮!!

 わたし、あなたの選択なら……

 どんなものでも受け止める!!

 だから……

 自分の心で選んで!!」


夕凪の声はか細く途切れる。


『れん……くん……

 たす……け……』


影夕凪は涙と笑みを混ぜた顔で囁く。


「蓮くん……

 お願い……

 “私”を選んで……

 夕凪を苦しめないためにも……

 あなたが……必要なの……!!」


蓮は胸を押さえ、

叫びたいほどの痛みに耐えながら——


選択の門の前に立った。


世界が、息を呑んだ。


蓮の答えで、すべてが決まる。


第二部・最終決戦、

次回——決着。

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