第一話 焦土に拾われた少年
灰の匂いが、鼻に刺さった。
黒煙が立ちのぼる故郷の村で、蓮はうずくまっていた。
耳鳴りと熱。
焼け落ちた家の残骸。
まるで世界が終わったようだった。
「……朔夜……夕凪……」
声が震える。
朔夜とは喧嘩ばかりだったが、それでも家族同然だった。
だが返事はない。
蓮の視界に映るのは、焦土と折れた木々だけだった。
その時――
ドォォン、と地面が震えた。
黒い鋼鉄の脚が大地を踏みしめ、
蒸気を噴き上げる巨体が霧の向こうに現れた。
**黒鋼連邦の陸蒸気兵《黒鋼獣》**だ。
蓮は本能的に身をすくめた。
敵だ。
本来なら恐れるべき存在。
だが、機体の足元にいた人物を見て、蓮は動きを止めた。
白髪を後ろに束ねた老人――
村で「宗六じいさん」と呼ばれていた男だった。
「怯えるな、蓮。
黒鋼は……お前を守る国じゃよ」
「宗六……さん? なんで、ここに……」
老人は優しく微笑み、蓮を抱き起こす。
「桜花は、お前たちを切り捨てた。
古代の“鍵”に触れたせいで、この村は滅ぼされたのじゃ。
黒鋼ならば未来をくれる。
お前にも……夕凪にも」
「夕凪……? 生きてるんですか……?」
「生きておる。黒鋼が守っておる」
その言葉を聞いた瞬間、
蓮の胸にあった“絶望”という名の重石が崩れ落ちた。
もし夕凪が生きているなら、
守れる場所があるなら――
それは、黒鋼だけだ。
宗六は続けた。
「朔夜は強い。だが戦争は、強さだけでは救えぬ。
お前はどうする? 蓮よ。
未来を奪われたまま座して死ぬか?」
蓮は震える拳を握り締めた。
「……違う、俺は……
未来を取り戻したい。夕凪を……守りたい!」
宗六の目が一瞬だけ、冷たい光を宿す。
「なら来い。
黒鋼連邦が、お前に力を与える」
蓮が手を伸ばした瞬間、
陸蒸気兵が蒸気を吹き上げ、膝を折って“迎え入れるように”屈んだ。
瓦礫の村を離れた瞬間、
蓮はもう二度と振り返らなかった。
その背中には、
幼馴染・朔夜が知るはずのない“別の正義”が宿り始めていた。
読んでくださって、ありがとうごさいます。
こちらは黒鋼連邦から見た“裏の戦場”。
蓮の揺れる正義や、黒鋼の影の動きまで追っていただけて嬉しい限りです。
もし「裏側の真実もおもしろいな」と思ってもらえたら、
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これからも蓮の選ぶ未来と、黒鋼連邦の闇を
一緒に追いかけてもらえたら嬉しいです。
次の更新でまたお会いしましょう。




