第5部 第8話(裏)
――位置が決まる
黒鋼は、地図を見下ろしていた。
線が減っている。
そして、
一本に寄っている。
「……集まったか」
副官が答える。
「はい。
逃げ切れなかった者たちが」
◇
黒鋼は、知っている。
戦で最後に残るのは、
強い者でも、
賢い者でもない。
位置を失った者だ。
◇
「桜花が、
前に立ったな」
副官が静かに頷く。
「はい。
抱えています」
「そうか」
黒鋼は、それ以上評価しない。
◇
「こちらは?」
副官の問いに、
黒鋼は即答した。
「抱えない」
「締める」
◇
黒鋼は、淡々と命じる。
「逃げ道を残すな。
だが、
殺し切るな」
「残った者が、
動けない位置に
固定されればいい」
◇
副官が息を呑む。
「……選ばせないのですね」
「もう、
選ばせる段階は終わった」
◇
黒鋼は、最後に言った。
「第5部は、
勝敗の章じゃない」
「誰が、
どこに立つかを
確定させる章だ」
◇
残った者たちは、
もう戻れない。
前に立つ者と、
後ろで締める者。
その配置が、
静かに決まっただけだ。
戦は、
次の形に入った。




