第5部 第6話(裏)
――中立が消える時
黒鋼は、動きを止めなかった。
だが、前には出ない。
「……消えたな」
副官が、息を吐く。
「中立勢力、隊列崩壊。
撤退が始まっています」
「それでいい」
黒鋼は、淡々と言った。
◇
中立は、守られて初めて中立だ。
自分で守れない時点で、
すでに成立していない。
◇
黒鋼は、命じる。
「側面部隊、
道を“残せ”」
副官が、確認する。
「……追撃は?」
「要らん」
黒鋼は、即答した。
「逃げ場を残さなければ、
混乱は収束しない」
◇
黒鋼は、戦場を俯瞰する。
桜花は、
止める位置で剣を振った。
前に出すぎず、
退かせすぎない。
「……いい線だ」
評価は、正確だった。
◇
黒鋼は、剣を下ろす。
「中立は、
ここで終わった」
それは、敗者への宣告ではない。
世界への更新だ。
◇
副官が、低く問う。
「次は……」
「次は、
残った連中だ」
黒鋼は、地図を指で叩く。
「逃げ切れたと思った者。
様子見に回った者」
◇
黒鋼は、視線を前に戻す。
「第5部は、
ここからが本番だ」
中立が消えた世界では、
誰もが立場を選ばされる。
桜花も、
自分も。
◇
黒鋼は、静かに言った。
「分かりやすい戦は、
終わりも分かりやすい」
そして、
次は――
分かりやすく、
逃げられない。




