第5部 第4話(裏)
――中立を壊す方法
黒鋼は、高地からその光景を見ていた。
距離はある。
だが、何が起きているかは分かる。
「……線を引いたな」
副官が、短く息を吐く。
「桜花将、
自らは動かず、
判断を相手に投げています」
「正しい」
黒鋼は、即答した。
◇
中立は、
力で壊すものではない。
選ばせて壊す。
それが、一番後に残らない。
◇
黒鋼は、命じる。
「側面部隊、
さらに一段、位置を詰めろ」
「衝突は?」
「避けろ」
黒鋼は、淡々と言った。
「桜花が、
十分に“前”に出ている」
◇
黒鋼は、地図を指で叩く。
「ここで、
中立勢力が選ぶのは三つ」
一本目の指。
「退く」
それは、敗北だ。
二本目の指。
「踏み出す」
それは、敵対だ。
三本目の指。
「動かない」
それは、崩壊だ。
「……どれを選んでも、
中立は終わる」
◇
黒鋼は、桜花の背を思い描く。
守るためではなく、
秩序を戻すために前に出る将。
「いい役割分担だ」
感情はない。
だが、評価はある。
◇
黒鋼は、最後に命じた。
「こちらは、
動かずに締めろ」
副官が、理解した顔で頷く。
◇
その時、
中立勢力の陣に、明確な動きが生まれた。
誰かが、命令を出した。
誰かが、槍を上げた。
もう、戻れない。
◇
黒鋼は、静かに言った。
「中立は、
壊れるべくして壊れた」
剣は、まだ抜かれない。
だが――
次に抜かれる剣は、
誰の目にも“分かりやすい”理由を持つ。
第5部の戦は、
完全に、姿を現した。




