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プロローグ
──黒鋼連邦記録文庫・未公開史料より抜粋──
かつて、この国には数多の孤児と、行き場をなくした民がいた。
産業革命の波に乗れぬ者たち、戦に巻き込まれた者たち。
桜花帝国の影に生き、未来を奪われた者たち。
黒鋼は彼らを見捨てなかった。
蒸気塔は彼らの居場所となり、金属の街は新たな生活を与えた。
だが、その裏側ではもう一つの真実が息づいている。
古代の血脈。
“鍵”と呼ばれる巫女の存在。
その力を巡り、国々は動き始めていた。
少年がひとり――
未来に手を伸ばすように黒鋼へ歩み寄る。
その手が掴んだものが、
救いだったのか、破滅だったのかは、まだ誰にもわからない。
ただひとつ確かなのは、
彼の掲げた戦旗は、
やがて大陸全土を巻き込む激流へと変わるということだけだった。




