藤のある庭 2
翠は、あとで私にだけ、教えてくれた。
あるいは、吐露してくれた。
なぜ少女を拒絶したのか。
あんな、その場に無言のまま置き去りにするなどという、あまりにひどい拒絶を平然とすることができたのか。
翠は、私にのみ、言った。
「もうたくさんだ、和明。
たしかにきみの言うとおり、彼女にとってあれは精一杯の強がりだったのかも知れない。
でもね、なぜそれに僕が付き合わないといけないのかい?
僕は、他人のために自分が左右されるなど、真っ平なのだよ。
僕は皆を気持ちよくさせるための象眼物などではないし、見知らぬだれかへの無私の奉仕者でもない。
好きだという言葉には、だれもが従順にならねばならないという決まりでもあるのか?
もう、いいかげんにしてくれ」
そう言って、私までも置き去りにした。
まっすぐ、ただの1度も振り返らずに去って行き――そしてその日より翠は姿を消して、再び現われたのは、それからもう4日もたった日のことだった。
今さら、だれも校門前でのことをぶり返そうとはしない。
翠もまた、私が切り出そうとしているのを敏感に感じ取れば、私を徹底的に拒絶し、周囲から排除しようとした――そして彼の取り巻きの者たちもそれにならって、私が近づくことを煙たがるようになった――ため、私は、あのことについて口にすることをあきらめてしまったのだった。
いいかげんにしてくれ。
翠はそう言った。
では翠にもまた、似た経験というものが合ったのだろうか?
あるいは、あの少女のように申し込まれ、付き合ったことにより、苦い破滅が翠の過去にはあるのか。
そしてまた別の見解により、あれは翠の見せた唯一の失態――失点だったのだと思える。
翠が私をそこまで信頼していたとは到底思えないからだ。
たしかに私もまた群衆というものに入れない、そこからはみ出した者ではあったけれど、それは完全に翠のものとは違う。比べることすらおこがましいほどの、劣等な理由からだったのだから。
が、のちに私は何度も思い知らされることになる。
確固たる形を持つ確かな親しさなど無分別な愚者にこそふさわしい、無様な馴れ合いなのだということを。
あのころ、翠は私だけを認めてくれていたのだ。
私たちは同じだとか、似たもの同士だとか、そんな傷のなめ合い、共依存などではない。
翠の行為・思考は到底理解を超え、その不可思議さに惑わされ、振り回されているのだと思い、とまどいばかりを覚えていた私なのに、翠は私を……私だけに、すがっていた。
私を認めてくれていた。
ほかのだれよりも。
ああ……そうでなければ、これは、あまりにひどい仕打ちではないか! 翠!




