第三話
わたしが大学で前期試験を受験しているその間も、例の郵便物は届き続けた。
毎日、とまではいかないが、週に五日のペースで送られてくる。
郵便屋さんもそろそろ苦笑い。きっとわたしがいたずらをしているとでも思っているんだろうな。
が――、手紙の内容はだんだんと平穏なものへと変わっていった。
『いよいよ夏休みだね。
十代最後の夏休み。どんなチャレンジをするのかな』
『ちゃんと早寝早起きすること。
あと、寝る前に日記をつけてみるのもいいと思うよ』
正直なところ、わたしはこの手紙に少しの感謝を覚えていた。
わたしはこの手紙のおかげで、命拾いをしたのだから。
先月の前期試験、意外とわかる問題も多かった。ほとんど一夜漬けに近い状態で受験したのだから全問正解、とまではいかなかったけど、ちょうど教科書で見ていた部分の問題が出た時には(きたっ!)と思った。試験監督で大講堂に来ていた先生に、長期間休んでいたことを謝ったら、思ったより優しく接してもらえた。
「病院の証明書もあるからねぇ。他の学生さんとの兼ね合いで全部出席ってわけにはいかないけど、試験を受ければ単位をもらえるくらいにはなってるはずだよ」
わたしは全身で安心の息をついた。
この、出席点というやつ。これが一番気にしていた部分だったのだ。
肺炎で講義を休んでしまったわけだから出席点ももらえないし、そもそも授業の中盤以降がすっぽりと抜け落ちてしまっている。この状態で試験を受けても無駄だと思っていたのだ。
だけど、受けてよかった。
全部の単位をとれたってわけじゃないだろうけど、全滅を免れたのは一連の手紙のおかげだ。そういう意味で、あの手紙がわたしの大学生活を守ってくれたともいえる。
わたしは、手紙をまとめて仕舞うためのボックスを買うことにした。
百均にでも行けば売っているだろうと思い、お気に入りのスニーカーに足先を通す。
わたしの夏が今、始まった。




